もんむす・くえすと!の世界に降り立った1人のヒーローアバターの話   作:ジョーカー:ゼノ

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決着のかめはめ波

 戦士達はピンチに陥っていた。流石に実力に差がありすぎた。

「ルカ……いい作戦とか思いついたか……?」

「い、いや……」

 モンスターの女王を相手にするにはまだ実力不足だった。アリスの言う通り、二人で来なきゃ確実に失敗していただろう。今は互いのピンチを、首の皮一枚で繕っている状況だ。

「……勝負を早めます!」

 その声を聞いて二人ともハッとして、構えた。

「はぁっ!!」

 クィーンハーピーの蹴りが二人に直撃する。

「うぐっ……!?」

「がっ……!?」

 確かにダメージはあった。決して軽くないダメージだ。

 だが……

「……威力が落ちてるぜ……」

 本来ならば、吹っ飛んで大ダメージを受けるであろうクィーンハーピーの蹴り。その威力が、今の一撃には無かったのだ。彼女の心の迷いが決定的になった事で、本来のパワーが出せなくなってしまっているのだ。

「うん……威力が無くなってるね……」

「う、うるさいっ!」

 そう言い、クィーンハーピーは二人に猛攻を仕掛ける。ルカは数発食らってから全て見切り、ヴィクトリーは全部ガードする。

「そこっ!!」

 ヴィクトリーがタイミングを合わせ、彼女の足を掴んでたぐり寄せる。

「だぁああ!!」

「やあぁっ!!」

 そして、二人の一撃がクィーンハーピーの顔に入った。

「うぐぁっ!」

 彼女は吹っ飛び、着地する。だが、そこにルカが素早く踏み込んで、その懐をとった。

「なっ!?」

「魔剣・首刈り!!」

 その一撃で彼女の体が、宙に浮かぶ。

「がはぁっ……!!」

「いくぞぉっ!!」

 そこにヴィクトリーが走ってきて、ルカの背中を踏み台にして、跳躍した。

「うわっ!?僕を踏み台にっ……!?」

「だぁあああっ!!」

 そして、その拳に自分の全勢力を込めて、クィーンハーピーの頬を打ち抜いた。

「ぶっ……!!」

 猛スピードで地面に激突してしまう、クィーンハーピー。だが、すぐに体制を立て直し、構える。

「ようやく構えたな……女王様……」

「何だか知らないが、何とかなりそうだね……」

「ふ、ふふふ……その程度で勝ったつもりですか?」

 クィーンハーピーは素早く二人の中に入ったかと思えば、羽根と蹴りの一撃で二人をぶっ飛ばした。

「がっ……!?」

「うぐっ!!」

 だが、二人は踏ん張って持ち直し、また構える。

「はぁっ!」

 クィーンハーピーは、二人に風の刃を放った。それも本来の威力を出せていないようだった。

「ふんっ!」

 ルカは簡単に防いだ。

「こんなん!避けるまでもねぇやいっ!!やーっ!!」

 ヴィクトリーがそう叫ぶと、風の刃が消し飛んだ。

「……!!」

「わっ……!!」

 衝撃が集落中に響き渡り、こだまする。ビリビリという音と共に魔力が残留し、やがて消えてしまった。

「な、何を……!?」

「気合いでかき消した!」

 呆気にとられるクィーンハーピーを、ルカは背後から切りつける。

「きゃっ!」

「隙まみれだぞ!」

「こ……の……!!」

 彼女はいきなりルカの体を押し倒し、押さえ込んできた。

「あうっ……」

 彼は彼女の柔らかな匂いや肌触りに体が震え、力が抜けてしまう。

「貴方はこの手の攻撃に弱いようですね……このまま陵辱刑に……」

 その言葉の途中で、ヴィクトリーが跳び蹴りをかます。直撃し、彼女は吹っ飛び、地に転がった。

「勝負を急いでもう一人いるのを忘れてたな……」

 すぐさま体制を立て直すクィーンハーピー。その様子を歯ぎしりをしながら見て、ヴィクトリーは舌打ちした。

「ちっくしょ〜……ルカ、あいつを倒すには気合砲や首刈り以上の大技しかねぇ……このまんま戦っていても、俺かおめぇのどっちかが力尽きちまう……!!」

「……どうやらそうみたいだね……」

 二人のスタミナはそんなに残っていない。おそらく後五分でどっちかが倒れるか倒れないかの瀬戸際だろう。

「ルカっ!俺に任せてくれ!!イチかバチかの確率だけど、あいつを倒せる大技を出してみせる!!」

「そ、そんな大技……あるのか!?」

 かめはめ波。まだこの世界では撃った事の無い技。

 そして、撃てるかどうかも分からない技だが、撃てれば確実にクィーンハーピーを倒せる筈。撃てなかったらは、考える間でも無い。

「任されてくれるか!?」

「分かった……!!」

 ルカが引き下がり、ヴィクトリーとクィーンハーピーが対峙する。

「……どうあっても、決着をつけたいそうですね……ふふふ……」

 彼女が不敵に笑うと、その羽をふわふわと舞わせた。

「さぁ、攻撃を仕掛けて来なさい……惨めに果ててもいいのなら……」

 思わぬ絶好の好機。ここしかない……!!

「じゃあ、遠慮なく行かせて貰うぜ!!」

 ヴィクトリーはそう言い、走りながら手と手を合わせ、全身のエネルギーを込める。

 今なら絶対に撃てる。あのかめはめ波が。

「か……!!」

「……何ですか?それは……まさかこの技を打開する技だとでも言うのですか……?」

「め……!!」

 ヴィクトリーはそんなクィーンハーピーの言葉を無視し、エネルギーを込める。

「は……!!」

 すると、青白いエネルギーの塊が彼の手の中に現れた。

「な、何っ……!?」

「め……!!」

 エネルギーが膨張し、充実していく。やがて膨張したエネルギーは溢れんばかりに手の中で閃光を放った。

「や、やめ……!!」

「波ぁああああああ!!!」

 そして、そのエネルギーを手から一気に放出した。かめはめ波は成功したのだった。それは見事にクィーンハーピーに直撃し、爆発を起こした。

「きゃあぁあーーーっ!!!」

「うわわっ!」

「わぁっ!」

 凄まじい衝撃と爆音が、ハーピーの集落周辺に響き渡る。

「な、何……?」

「何が起こってるの……?」

 寝ていたハーピー達がなんだなんだと出てきた。もくもくと土煙が晴れ、肩膝をついたクィーンハーピーがそこにはいた。大ダメージを負っていて、もう戦えそうには無かった。

「そ、そんな……この私が……」

 二人の戦士は激闘の末、クィーンハーピーを倒したのだった。

「ゼェ……ゼェ……!!」

 ヴィクトリーはその場に倒れてしまう。クィーンハーピーはと言うと、そんな彼を見るだけ。どうやらダメージが深く、戦意を失ってしまったようだ。

「る、ルカ……合図を……!!」

「あ、あぁ……えいっ!」

 予め持たされた魔法信号筒を真上に投げつける。それは空中で弾け、色とりどりの光を生み出した。これがハーピーのボスを倒した合図だ。

「今だっ!突っ込むよ!」

「イリアス様っ!どうか私に力を……!」

 あちこちで茂みがざわめき、ハピネス村の女性がなだれ込んでくる。

「あ、あいつら……クィーンハーピーと戦ってる間、すぐそこまで来てたんか……」

「みたいだね……」

 女性達はこっちを見て、クィーンハーピーに目をつけた。

「あいつがハーピーのボスかい!」

「ボスさえ抑えれば……!」

 その様子を見て、クィーンハーピーは少し驚いた。

「……そうですか……村の女性達までが、攫われた男達を助けに……」

 そう呟くクィーンハーピーを、村の女性達が取り囲んでいく。

「に、人間まで襲撃してきた!?」

「女王様!女王様は……!!」

 ハーピーの殆どが、ここに集まってきてしまった。ルカは剣を掲げ、クィーンハーピーの前に立った。

「頼むよ……村の男達を返して、こんな事はしないと誓ってくれ。そうでないと、斬らなきゃいけなくなるんだ……」

「……できない、と言った筈です。」

 覚悟した顔で、クィーンハーピーは目線を落とす。僕はヴィクトリーの方を見てしまった。

「……」

 地に伏せながら、ヴィクトリーも頷く。

 仕方ない、少しばかり封印させてもらうか……僕が剣を振り下ろそうとした時だった。

「ちょ、ちょっと!やめてくれぇっ!」

「待ってくれ!女王様を斬らないでくれ!」

 なんとハーピーの家々から飛び出したのは人間の男達だった。

 若い青年から、老人まで、あちこちの家から駆け寄ってくる。広場に飛び出した男達は、傷ついたクィーンをかばうように間に入った。

「はっ!?」

「へっ!?」

 二人とも驚いてしまう。

 相対する村の女性達にも、動揺が走る。

 なんと彼らは攫われた村の男達だったらしい。

「ど、どうなってんの……!?」

 男達は普通に服を着ており、その顔も健康そのもの。

 どう見ても、ひどい目にあったような様子は無い。

 視線を回すと、マルクという男がハーピーに婿入りしていたり、娘持ちの父親が娘と同年代程のハーピーと結婚していたり、元旅人が七児の父になっていたり……

 攫われた殆どの男達がハーピーと婚姻を結んでいるようだ。

 思わぬ光景に、僕達も他の女性達も目を丸くするのみ。

「そういうわけで、ハーピー達をやっつけるなど、やめてくれんか?」

「彼女達は、私達の妻子なんです。だから、戦うのはやめにしてください……」

 おじさんと、若い男が僕達に言う。

「じ、じゃあ、このハーピーが私の子になったり……」

「あのハーピーが私のお母さんになったりするってこと……?」

「その通り。」

 男達の中から、一人の老人が歩み出てくる。

「今やハーピー達は、我々の妻子であり、家族なのじゃ……」

「そ、村長……」

「お、お前さん、無事じゃったのか……!?」

 村長に、村長代理の老婆が駆け寄る。

「ふむ、儂がいない間、迷惑をかけたのう。ハーピー達は我々の家族、そして村に残された女達も我々の家族じゃ。家族同士で戦い、殺し合うなど嘆かわしい事よ……」

「その通り!俺のお袋も、嫁のピアーナも家族なんだ!家族同士でいがみ合うなんて、やめてくれ!」

「そうだそうだ!」

 村長や、若い男に便乗する村の男達。

 そんな様子を見て、村の女性達も含めて、僕達は立ち惚けるばかり……約一人は倒れてるけど。

 そして、クィーンハーピーが口を開いた。

「……ハーピーには女しか存在しない以上、繁殖には人間のオスを借りるしか無いのです。しかし……人間の魔物に対する憎しみが高まっている今、誰がハーピーの巣へ婿になど来てくれるでしょうか。」

「で、でも……何も攫わなくたって……」

「村の人たちの許可を……」

「私達とて、ただ黙って滅びるわけにはいかないのです。たとえ無理矢理に攫ってでも、男は必要でした。」

 他のハーピー達が次々に口を開いた。

「でも、決して粗末に男を扱ってないし……」

「里の掟で、村の外には出せなかったけど、男はとっても大切なんだから。」

 ヴィクトリーがはははと笑い始め、仰向けになり、目元を隠す。何だかここまで来たら愉快な話になっているのかも知れない。

「じゃあ、男達はひどい目にはあってなかったって言うことですか?」

 村長がまず最初に答えた。

「無論じゃ!儂なんか、若返った!いや、返り抜いたと言っても良いぞ!なにせ毎晩毎晩……」

「なるほど……お爺さんや、少しあっちで話でもしようかの……」

 老婆が殺意のようなものを放ちながら、村長の肩を掴む。

「ひいぃ……婆さんや、違うんじゃ……これは……」

「……」

「あははは……」

 これは、どうしたものか。

 見れば、あちこちで同様の揉め事が起きている。中には、非常に深刻な話をしている家族もいる。

「どうやら……男達も、帰れない立場みてぇだな……なはは……」

「……どうしようか、アリス。」

 いつの間にかルカの隣にアリスが居た。

「……余が知るか。」

 う〜ん、どうしたものか……とりあえず、男達は無事なので、このままハーピーを退治するというのも違う気がする。

「むむむ、もういっそ、皆家族!それでいいじゃろう!」

 老婆に首を絞められながら、老人は高らかに宣言する。

「そうだ!その通りだ!」

「ハピネス村とハーピーの巣、家族としての付き合いをしていけば、問題無いはず!」

 いつしか、そういう方向で話がまとまっていく。

「これ以上はハピネス村とハーピーの問題だ。ニセ勇者一行が関与できるのはここまでだろう。」

「うん、そうだね……」

 僕は、当事者同士の話し合いが一番望ましい。正直なところ、これより先の問題には関わりたくないというのもある。

「……これは、ハピネス村とハーピー達が次の世代から次の世代に渡って、長い目を持って解決するべき問題だな。にひひ……」

 ヴィクトリーがそう笑い、僕達も頷く。

「たまにはいい事言うじゃないか、脳みそ筋肉。」

「ほら、ヴィクトリー、立てるかい?」

 ヴィクトリーはまたにひひ、と笑うとこう答えた。

「もう俺にはハナクソをほじる気力もねぇや……ははは……ははははは……」

 どうやら、一番頑張ったのに、この結末は意外すぎて、一番脱力してしまったらしい。まぁ、無理も無いか。

 

 それから、夜遅くまで話し合いは続いた。

「それでは、ハピネス村から強引に男性をさらうことはしない、と誓いましょう。」

「ふむ、我々も村の男性をなるべく多くハーピーの里に婿に入れると約束しよう。その代わり、ハーピーの娘達も、村で農作業を手伝って下され。」

 こうした友好関係を期に、ハピネス村とハーピーの間との協定が結ばれた。それからは、もうお祭り騒ぎ。人もハーピーも関係なく、広場で食うわ飲むわ踊るわの大はしゃぎだ。

 その中にヴィクトリーも混じり、食いまくってる……あいつ一人でこの里の食料を食い尽くさないだろうな……

「あの時の攻撃、効いたわよ〜……」

「何だおめぇ……」

 そして何だか知らないけど、鼻に包帯を巻いたハーピーに絡まれている。

「これというのも、全部あんた達の活躍のおかげさ。ハピネス村一同を代表して、礼を言うよ。」

 おばさんが僕に礼を言ってくれた。

「いえいえ、勇者ならば、当然の事です!」

 勇者というのは、肩書きではなく行動によって示すものなのだ。ゆえに、断じて僕はニセ勇者ではない!

「別に恩を売りたい訳ではない……が、余は甘いものが好きで好きでたまらん。」

「よしきた!ハピネス蜜をたっぷりプレゼントするよ!今日はこの壺に入った分しかないけど、どうぞ!」

「ふむ、決してこれを期待していた訳では無いぞ。」

「あーっ!ずりぃぞおめぇだけデザートなんてもらってーっ!!」

 そこにヴィクトリーが飛び込んで来るが、アリスは意地悪な顔でひょいと壺を上げる。

「このハピネス蜜は余のものだ。それに貴様はもう充分食っただろう!」

「デザートは別腹だ!こんちくしょー!」

「お前ら……」

 僕はただ、ヴィクトリーの食欲と、アリスの意地汚さに呆れるのみだった。

「でも、ハーピーの里に婿に行く男は、納得できるのかな……?」

 踊りの輪を見ながら、そう呟いてしまう。まるで、村から生贄に出されたようなものではないか。

「その心配は無用だよ、若い勇者くん。」

 声をかけてくれたのは中年の男だった。

「この一件で我々とハーピー達は手を取り合うことになった。今後は深い絆ができる筈さ。それに、ハーピーのアレの味を知ってしまうと……もう人間の女なんか……」

「おっさん、おめぇの奥さんらしき人がクワ持って構えてっぞ」

 ヴィクトリーが蜜ツボを持つアリスを追いかけながら向く。

 お前らまだやってたのか……

 やれやれ、これで良かったのだろうか。しかしこれも、人間と魔物が手を取り合う第一歩なのだ。

「どう思う?アリス……」

「あまい……」

 アリスは満足そうにヴィクトリーと一緒に壺にたっぷり入ったハピネス蜜をスプーンですくって舐めている。いつの間にか、仲直りしてる……ちなみにスプーンは、ヴィクトリーが持ってきたらしい。

「ハーピーの側も、事情を説明してから男を婿に貰ったら良かったのにな……」

「でも、そんな余裕無かったんだろ?仕方ねぇっちゃ仕方ねぇけどさ……」

「そもそも、それでも婿が来なかったらこういう事になったのだろう。貴様らはドアホか。」

「……」

「……」

 確かにその通りだけど。

「そもそもの原因は、人間側が魔物との接触を拒絶するようになったから。それも、あの下らん教えがあるからでは無いのか?」

「イリアス五戒の『魔と交わることなかれ』っちゅう奴か。」

「そうだ。その馬鹿げた戒律のせいだ。」

 ルカはため息を吐き、言う。

「……そんな事言うなよアリス。まるで、イリアス様の教えが悪いみたいじゃないか。」

「だからそう言ってんだろ。」

 お前は建前でもいいから信仰しろよ。

 しかし、その戒律のせいで、魔物との接触自体がタブー視されることになったのも事実である。

 人間側が拒絶してしまえば、魔物は人間に性交を強制するしかない。そうしなければ子孫を残せず、滅びてしまうのだから……

「……おっと、いけない。イリアス様のおっしゃることに疑念を挟むだなんて……」

 疑念を払うように頭をぶんぶんと左右に振る僕。その様子を眺め、アリスとヴィクトリーは深々とため息を吐いた。

「でもさ、強引にオトコ攫う事が横暴だった事は確かだろ。」

「ふむ、ハーピーの女王も、やむを得んとはいい、迷いを振り払えなかったようだ。」

「……そうなのか?」

 僕とヴィクトリーが同時にアリスを見る。

「当然だ。そうでなければ、ハーピーの女王たる者が貴様ら程度に負けるか。心に迷いが生じ、貴様らを本心から攻撃出来なかったのだろうな。」

「そうなのか……」

 やはり女王も本心では迷っていたのだ。

 ともかく、この一件は解決したと言いたいものだ……

「あ、そうそう、ルカ。」

「ん?どうした?」

 ヴィクトリーは、不意にルカに一粒の豆を渡した。

「今日の戦いで、消耗してるだろ?それ食って回復しておけ。」

「えぇ……こんな豆一粒じゃ、回復出来ないと思うんだけど……」

 そう言いながら、二人は揃って豆を齧る。その時、不思議な事が起こった。体の疲れは吹き飛び、腹も満腹になる。

「っ!?」

「ふぅ、生き返った〜っ!」

「こ、これは……!?」

 何の変哲もない、固めの普通の豆だったハズ……しかし、どうやら違うようだ。

「へへへ〜、仙豆っていう有難い豆だ!まだまだ沢山あるけど、貴重なモンだから大事に使うぞ!」

「へ、へぇー……」

 ……そんな便利なものがあるんなら、グランベリアと戦い終わったあとにでも食えばよかったのに。しかし、その効能は本物な上に、何やら数に限りがある模様。あまり、多用するものでは無いな……

「……あまい。」

 二人が豆を齧った後ろでアリスは、はちみつを舐めていた……

 

 そして翌日。

「お主達には本当に世話になったのう。」

「またハピネス村に来なよ。あんた達なら大歓迎さ。」

 村長代理の老婆と、おばさんが僕達に言う。

 そこにクィーンハーピーも続いた。

「いくら事情があったとはいえ、我々は確かに間違っていました。それを正せたのは、あなた達のお陰です。あなた達の旅が良きものになる事を、心より願っていますよ。」

「皆さんも頑張って下さいね!」

 おそらく、人と魔物との絆が試されるのはここからだ。しかし僕は、友好関係が維持される事を信じている。

「ありがとな!また遊びに来いよ!」

「どうか、ご達者で……」

「えへへ、また遊びに来てね〜!その時は、相手してくれると嬉しいな……」

 こうして、僕達はハーピーの里を後にする……かと思いきやヴィクトリーがクィーンハーピーの所に向かっていった。

「あのさ!今度会ったときはさ、俺と一対一で勝負してくんねぇか!?」

 ヴィクトリーのその言葉に、困惑気味に答えるクィーンハーピー。

「……は、はぁ……」

「戦士としての本気のおめぇと戦いてぇ!負けたら何でもしていいし、そん時は俺も今よりもっともっと強くなってみせるから!」

 そこにアリスがヴィクトリーの隣に立つ。

「こいつはこういう奴だ……お前が本調子じゃない事ぐらい見透かしていたのだろう……さて、どうする?」

 クィーンハーピーは笑いながら答える。

「……何年も生きていて、そんなユニークな言葉は初めて聞きました……「負けたら何でもしていい」……その言葉、忘れたとは言わせませんよ?」

「サンキュー!女王様!あんた、いいハーピーだ!」

 ヴィクトリーはそう言い、クィーンハーピーに礼を言った後、ルカの所に走る。

 ……と、今度はアリスが呼び止められていた。

「あの……もしかして、あなた様は……」

「余は、旅のグルメだ。大した者ではない。」

「そ、そうでしたか……余計な詮索は無用でしたね……」

 とにかく、ハピネス村を後にしたのだった。

 こうして、ハピネス村とハーピー達との諍いは、無事解決したのだった……

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