もんむす・くえすと!の世界に降り立った1人のヒーローアバターの話 作:ジョーカー:ゼノ
クロムと共にラ・クロワを倒した戦士達。地下の異変にも、二人は気付く。
「アリスの母ちゃんの気が消えた……」
「アリスの方も、終わったみたいだな……」
「……」
破壊音も消え失せ、あの邪悪な気も無くなった。一瞬だけ穏やかな気になって、消え失せたのが感じられた……って事は、アリスの母ちゃんは最期に正気を取り戻したのだろうか。
「姉様……」
シルク・ドゥ・クロワの三体が、クロムの背後に控えている。
「ロザとクィーンラミアの支配権をも奪ったか……私に油断があったとはいえ、腕を上げたものだ……」
「姉様の肉体は、すでに死んでいた……まさか、あの事故の時に……」
「これは私のミスだ……お前が気に病むことはない。」
ヴィクトリーが起き上がり、クロムの方に向く。
「おめぇら、いったい過去に何があったんだ……?」
「……」
クロムは、重々しい口を開く。
昔、クロムとラ・クロワ……もといシロムは、同じ研究所で暮らしていた。クロムはその日、独自の酵素を用いた培養肉の精製に成功したらしい。培養肉の性質を確認するのに、黒染試薬を使う。そいつはどうも、見た目はヒドゥン反応薬とかいうのに似てるというのだ。そう言えばあったな、リリィの研究所に……あの訳わかんねぇ黒い液体……
ヒドゥン反応薬ってのはタンパク質が混ざると反応し、大爆発を起こす極めて危険な薬品だという。心配になったシロムは、クロムの実験室に飛び込んだ。すると、案の定クロムはヒドゥン反応薬と黒染試薬を間違えてて……シロムはクロムをかばい、爆発に巻き込まれた。
「……あの時、私は爆発で体が真っ二つになったんだ。」
ラ・クロワがそう言う。そこからの説明は彼女がしてくれた。
自分が死ぬと確信したや否や、自分にゾンビ化の施術を施したそうだ。シロムは自分の体をアンデッドにして、ネクロマンサーとして自分の体を操るという形をとったのだ。しかし、もうその時点で自分が本当にシロムなのか分からなくなっていた……
「だからお姉ちゃんは、あの後すぐに家を出て……」
「あの事故が原因で私が死んだと思ったら、お前は思い悩むだろう。ゆえに愛想を尽かしたような素振りで、お前の元を去った。」
「……」
「……」
ヴィクトリーとルカは黙ってしまう。
何も言えねぇ……そんな事を思いながら。ただ一つ分かるのが、これがシロムなりに妹を思っての行動なのだろう。しかし……
「あれから、自分の研究所に腰を落ち着けたが……技術はともかく、感情も思考も鈍っていく一方だった。このままでは、私は本当の死体になってしまう……それを恐れ、ゾンビを人間に戻す技術を必死で研究したのだ。その過程で、私は多くの屍を築いた。」
ラ・クロワはズタボロの体を、クロムの方に向ける。
「シロムならば……お前の姉なら、決してそんな事はしなかった筈だ……」
「お姉ちゃん……」
「……まるで罪悪感が湧かないんだ……どれだけ殺しても。今の私ならば、良心の呵責なく何でも出来るだろう。私はラ・クロワ……目的のためなら何でもやってのける外法の魔芸師。シロムは、とうの昔に妹をかばって死んだんだよ……」
ラ・クロワは目を瞑って、倒れ込んだ。
「……クロム、そろそろ私を終わらせてくれ。何度も教えただろう?外法の魔芸師を葬るのも、魔芸師としての務め……と。」
「……」
クロムは涙を流しながら、戸惑い続けてる。やはり、腐っても自分の姉……こんなの、辛すぎる……
「躊躇するな、とうに私は死んでいる。教えた通りにやるだけだ……」
「迷える肉体に、永遠の安らぎを……土は土に、屍は屍に……」
涙で顔をぐしゃぐしゃにしながら、クロムは両手で印を組んだ。その手から、まばゆい魔力が放たれる。
「屍よ、屍に還れ……」
ラ・クロワ……いや、シロムは嬉しそうに笑った。
「感謝するぞ、クロム……我が、愛する妹……」
そう言い残し、ラ・クロワの体は塵となって消えていった。
呪われし不死の肉体は、安らかな眠りに就いたのだ……
「……奴は最後まで、妹を大切に想っていたのだろうな。」
いつの間にか、アリスが僕の隣に居た。
「うん、そうだね……」
「……」
クロムは三人の方を向く。
「……ちょっとだけ、一人になりたいのじゃ。その間に、やるべき事をやってくるがいい……」
「うむ、封印装置を叩き壊して元の姿に戻らなければ!」
「ああ、そう言えばすっかり忘れていたな。」
「すっかり忘れるな!」
アリスとルカは本来の目的を果たしに、先に行ってしまう。ヴィクトリーは後から続こうとするが、クロムの事が気になっているようだ。
「……」
「おーい、ヴィクトリーっ!」
「あ、ああ……すまねぇ!」
ヴィクトリーは、二人を追いかけた……
「ここは、グランゴルド城と似てんなぁ。」
立ち並ぶ機械類に、中央の大きな装置。この場所は、クィーンアントを封印していた設備に酷似していた。
「こいつだな……」
「そうだね……これを壊せば……」
アリスが目を瞬かせた。
「いや、これは……装置自体が聖素化しているだと!?」
アリスの手が、装置をすり抜ける。
「天使が相手の時と同じか?」
「じゃあ、俺達が……!」
二人は、装置に一撃放つ……が、それさえもすり抜けてしまった。
「あらぁっ!?」
「そんな……天使だって斬れる剣なのに……!」
「『天国への門』と同様に、極めて純度の高い聖素なのだろう。装置を組み上げた後、機能を保ちながら聖素化させるとは……天界の連中、よほど余の体を元に戻したくないと見える。これは流石に、お手上げだぞ……」
「諦めるのか?装置が目の前にあるのに……!」
「触れねぇ以上はどうしようもねぇさ……これは諦めるしかねぇみてぇだな……」
「悔しいが、おめおめ下がるしかないのか……!」
触れないんじゃ、どうする事も出来ない。ぶっ壊す事も、運び出す事も出来なければ、もうお手上げだ。
「ディスクや資料も残されていないみたいだね。ラ・クロワが予め処分したみたいだ……」
「装置の破壊は出来なかったが、場所は確認できた。敵側としても、この装置は簡単に動かせるようなものではないはず。決して、無駄足ではない。捕らわれている人間達も、これより救出するのだしな。」
「うん、そうだね……」
「ラ・クロワとシルク・ドゥ・クロワもぶっ飛ばせたんだ。こいつらを放置してたら、犠牲は増え続けていただろうな……」
「そうだね……」
こうして、戦士達は封印施設を後にした……
地下牢に捕らわれてた捕虜も救出し、出来ることは全て終わった。ルカとヴィクトリーとアリス、そしてクロムもバイオラボの前で息を吐く。
「クロム、おめぇはこれからどうすんだ?」
「これからも魔芸の研究に邁進し、技術を高めるのじゃ。いかに魔王様に怒られても、儂はアルテイスト家の血族じゃからのう。」
アリスはヴィクトリーの隣に出て、コホンと咳をつく。
「……魔王城の出入り禁止は、特別に免除してやろう。今回の一件に関し、貴様は確かに務めを果たしたのだからな。」
「魔王様……」
「……だが、降霊術は禁止。余の前でやるの、ぜったいダメ。」
「まぁだ引きずってたんか……」
「……」
やっぱり、そこは譲れないんだなと思ったルカだった。
「アルテイスト家に伝わる魔芸は、確か三種類。ゾンビ術、降霊術……そして、からくり人形術だったはず。からくり人形なら、特に問題もない。魔王直属の魔芸師として、認可される可能性はあろう……」
「うむむ、からくり人形か……小さい頃、ほんのさわりしか教わった事は無いが……でも、それも面白そうじゃな。一族に伝わる秘伝書に目を通し、一から学んでみるのじゃ。」
「うん、僕も応援してるよ。」
「もちろん俺もだ!」
からくり人形なら、多分誰の迷惑にもならないはず。
「色々と世話になったのう、ルカ、ヴィクトリー。魔王様も、御機嫌ようなのじゃ。からくり人形の技法を高め、また魔王城に参上するのじゃ。」
「うむ、せいぜい頑張るがいい。」
「それでは、ユー、レイ!」
クロムがそう言うと、ヴィクトリーとルカの体からユーとレイがにゅるんと出てきた。
「わっ……」
「おめぇらまだ俺達の中に居たんか……」
「ごめんなさいね〜」
「居心地がよくて、つい……」
「行くぞ!さらばじゃ!」
ユーとレイを連れ、クロムは立ち去って行った。彼女の協力が無ければ、ラ・クロワは倒せなかっただろう。
「アルテイスト家秘伝のからくり人形術、なかなかに楽しみだ。その為にも、早く平和を取り戻さねばな……」
「ああ、そうだね……!」
当初の予定は果たせなかったが、成果は大きい。敵の腹心を打ち破り、封印装置の場所も分かった。
これで、この地で出来ることは終わったのだ……
天界……
「……結局、あなたの腹心は成果を上げられませんでしたね……ルシアとかいう人間といい、ラプラスとかいう機械といい……」
エデンが、真っ先にプロメスティンにつっかかった。プロメスティンは彼女を睨みつける。
「貴女の率いる天使だって、同じでしょう……中には不意打ちで目を貫かれただけで使い物にならなかった天使も居たな……」
「……」
エデンは青筋を立てて、プロメスティンの前に立った。
「……たまには、本気で殺し合いましょうか?」
「ご冗談を……」
二人の間で殺気がバチバチとぶつかり合う。
「はいはい、そんなピリピリしてはいけませんよ。集中出来ないじゃないですか……」
黒のアリスがそう言って、二人を静止させた。くまのぬいぐるみに水晶を持たせて、アリスフィーズ15世と超サイヤ人3になったヴィクトリーの戦いを見ているようだ。
「何も成果を上げられなかった貴女が、何を呑気に……!」
「黙りなさい駄天使。それは貴女だって同じですよ……それに、私は楽しんでいる最中ですので……」
「ぐぅうっ……!!」
駄天使……第一の天使も、第二の天使も堕天使となった。第三の天使である私に対して、黒のアリスがそう私にあだ名を付けたのだ。
「さて、偉大なる天使長様を虐めるのはもう止めにしておきましょうか。」
「ああ、根に持たれても困るからな……」
「……」
歯ぎしりをしながら、拳を握る。
「所でエデン、この人は私が食べちゃってもいいんですか?」
黒のアリスは無神経に、エデンに水晶を見せた。超サイヤ人3のヴィクトリーが、猛攻している姿が映し出されている。
「イリアス様が連れてきた、例の異世界の戦士ですか……確かに凄まじいパワーの持ち主には間違いないですが……どうせ私の足元にも及びません。」
「その割には、結構驚いていた気がしますが……」
「人間にしては、凄いと思っただけです。」
「それに、天使長がこの方を相手にそんな心構えでいいんですか?」
「……どういう事です?」
「……」
黒のアリスはクスッと笑う。やはりこの駄天使、何も分かってない……
「とにかく……その男も汚れし勇者も、倒せるものならさっさと倒して成果を上げてほしいものですね……」
「うふふっ、かしこまりました。それでは、私が直々に参りましょう……」
くまの人形に水晶を定位置に置かせ、抱きかかえる。
「次に連中が向かう場所は罪人の封牢だろうな……ハインリヒを封印している結界を使って何か企んでいるようだが……」
「情報提供、ありがとうございます。」
黒のアリスはプロメスティンに微笑み、会釈する。
「そちらに天使の部隊も送ります。貴女だけでは不安なので……」
黒のアリスはエデンの方を向き、にっこりと笑った。
「では、せいぜい邪魔をしないようにして下さいね。私が楽しんでいる所に横槍を刺したら、ブッ殺しますからね……」
その場に鋭い殺気が波動した。
「……ふん。」
「……」
プロメスティンは涼しい顔で、笑う。エデンは生唾を飲み……黒のアリスを睨んだ。
「……では、そうするように部下に命令しておきます……」
かくして、黒のアリスは罪人の封牢へと飛んで行った。その後を追いかけるように、天使の部隊も飛んでいく。戦士達も、バイオラボから罪人の封牢に向かっていた……
流血表現
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もっとする
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このままでいい
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しなくていい