もんむす・くえすと!の世界に降り立った1人のヒーローアバターの話   作:ジョーカー:ゼノ

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天使殺しのハインリヒ

 罪人の封牢に渡り、封印術式をコピーしようとする戦士達。しかし、そこに黒のアリスが乱入してきた。

 彼女のパワーは超サイヤ人3のヴィクトリーでさえ、押される程だったが……

「あなた達の力は、だいたい分かりましたもの。おおかた、ハインリヒの血統の方はあなたと互角のようですからね。」

 黒のアリスは攻撃の手を止めた。

「おいおい、因縁より俺をとったってのか?」

「勘違いしないで下さい……私は、大好物は最後にとっておく性分ですので……それに……」

「それに……?」

「余計な邪魔は、興醒めですわ……」

 黒のアリスは背後へと視線をやった。

「……覗き見とは無粋ですわね。この私が、何かおかしな事をするとでも……?」

「……!!」

「くっ!」

 ヴィクトリーは超サイヤ人3になり、ルカも剣を抜いて構える。

 この激戦の最中、気付きもしなかったが……天使達が、周囲を取り巻いていたのだった……

 

「……自分が信頼されているとでも思ったのですか、元魔王?汚れし勇者を抱き込み、何か企むくらいの事はやりかねない……エデン様は、そうお考えなのです。」

 大天使の一人が、そう言いながら黒のアリスを睨む。酷く冷たい視線だったが、黒のアリスの方は全く気にしていない様子だった。

「……悲しいですわね、これだけイリアス様にお尽くししているのに。そんなに私が信用できないなら、二人の始末は譲りますわ……」

「そうしてもらいましょう……あとの始末は、我々が。」

 黒のアリスはくまのぬいぐるみを取りに、ヴィクトリーの横を通り過ぎる。

「……まだ、上があるのでしょう?」

「……!」

 そんな事を耳打ちして、くまのぬいぐるみを抱えた。

 さて、問題はこの周囲を取り巻く天使達だ。

「ぐっ……!」

「くそ……黒のアリスとの戦いでパワーを殆ど使っちまってるんだぞ……!」

 天使達は包囲の輪を狭め、二人の周囲を取り巻いてくる。しかし、どうやら兵隊クラスの天使ばかりではないらしい。やたら羽根が生えてるでかい天使が一体……あっちには大樹に変な器官や女の上半身が生えてる天使が一体……

「……僕だけじゃ、どうにもならないぞ……!」

「でも、やるしかねぇんだ……!」

「ふふっ……あなた達とはまた楽しみたいので、頑張って下さいね。次こそは、粉々にブッ殺して差し上げますからね……ふふふっ……」

 絶体絶命の二人にそう笑みを投げかけ、黒のアリスは立ち去った。しかし、無数の天使に取り囲まれている状態は変わらない……

「あ、アリス……もうとっくに五分は経った筈だ……!」

「す、すまん……!まだ時間がかかりそうだ……!なんとか稼げるか、二人共……?」

「流石に、この数はちょっと……」

「稼げて、三分って所か……」

「ああ、やるしかない……!」

 覚悟を決め、気を解放しようとした時だった。不意に石碑から、柔らかな生命の波動が広がった。

「っ?」

「な、なんだ……?」

「これは、霊魂……?まさか、イリアス様の封印が……」

 石碑から気が広がり、そして人の姿が浮かび上がる。柔らかな青年の姿をした、不思議な霊魂だ……

「……結界の効果が弱まったようだね。おかげで、何とか姿を為すことができた……」

 霊魂の青年は、静かに口を開く。穏やかでありながら、どこか鋭い力を込めた口調だ。

「……おめぇは……」

「ま、まさか……!」

「はじめまして……かな?」

 青年はルカの方を向いて、微笑んだ。

「僕の方は、君の事を良く知ってるんだけどね……僕はハインリヒ……伝説の勇者とか英雄とか、そういう名前で呼ばれた者だよ。」

 大天使が、霊魂の前に出てきた。

「術式のデータ化、封印が薄れるほどまで進んだようですね。しかし、亡霊ごときがさまよい出た所で……」

 大天使の言葉を遮るように、神速の刃が一閃した。ハインリヒの霊が静かに剣を抜き、そして疾風のような斬撃を放ったのだ。

「やれやれ……あれから五百年、若い天使は僕の事をほとんど知らないのかな。」

「ふん、亡者の分際で何様だと……っ!?」

 大天使の胴が、腕もろとも切り落とされた。そして粒子となって消散していく。

「……は、はえぇ……!!お、俺でも……ほとんど見えなかった……!!」

 ヴィクトリーは目をぱちくりさせながら、ハインリヒを見ていた。

「馬鹿な……なぜ亡霊が、天使の体を切り裂けた!?」

「しかも、一撃で滅ぼすとは……!この亡霊、いったい……!」

 ハインリヒは周囲の天使を見回す……

「ひぃ、ふぅ、みぃ……全部で20体か。僕を相手にするには、ずいぶんと少ないね……」

 更にハインリヒはそこら辺の天使に一撃する。その天使も真っ二つになり、消え失せた……

「まぁ、仕方ないか……五百年前、僕がずいぶん減らしたからね。」

「き、貴様ぁーっ!!」

 激昂する天使の体に、疾風のような斬撃が叩き込まれる。その腕前も、尋常ではないが……

「な、何で天使を……?いくら霊体でも、天使は攻撃を受け付けないのに……」

「……数多くの天使と戦ったせいで、僕の体は聖素を浴びすぎた。肉体はとうに聖素に侵食され、魂も聖エネルギーに近い状態になっている。そんな僕を、天使達はこう呼んだのさ……『天使殺しのハインリヒ』とね……」

「ば、馬鹿な……噂には聞いていたが、ここまでとは……!」

 ハインリヒはそう言う天使兵に目を向け、笑う。

「君、ここ数百年の新顔かい?先輩の言う事は、素直に聞いておけばよかったね……」

 そう告げたハインリヒは、既に残像だった。一瞬で間合いを詰め、天使の胸へと無慈悲に剣を突き立てていたのだ……

「有り得ない、こんな……!」

「全員でかかれば、亡霊ごとき……!」

「おっと、俺が居ることを忘れんな。」

 ヴィクトリーが天使兵達をぶっ飛ばし、次々に消散させていく。ハインリヒはそれを見ながら、他の天使兵も見回した。

「これだけの数が相手だと、骨が折れるね……と言いたいところだけど、折れる骨さえない魂魄の身。ルカ君……ちょっと君の体を借りるよ。」

「え……?」

 是非もなく、ハインリヒの霊魂はルカの体にしゅるりと入り込んでしまった。

「わ……わわわ……!そんな、いきなり……!」

「大丈夫、君の体に傷一つ付けはしないさ。ここは僕に任せて、のんびり見学でもしていてくれ……」

 ルカの精神は頭の片隅に追いやられてしまった。一方で、ルカの体はハインリヒに憑依され、天使と戦い始める……

「おっ、やり始めたな……!」

 ハインリヒがルカに何か言ってる最中に、ヴィクトリーは天使達を次々と叩き伏せた。

「ぐっ……!」

「この……!」

「猿の癖に……!」

 天使兵のエネルギー波が、ヴィクトリーに迫る。しかしヴィクトリーはその場でコマのように回転して、エネルギー波を弾き飛ばした。弾いたそれが、周囲の天使を撃ち抜いていく。

「な……!?」

「ヴィクトリー君、君もなかなか慣らしてるみたいだね……精霊無しで、本当に凄いと思うよ……」

「おめぇ、何で俺の名前を……?」

「嫌だなぁ……ずっと一緒に居たし、時には一緒に戦ったりしたじゃないか。時にルカくんの間違いも正したり……」

「おめぇ、何言ってっか全然分かんねぇぞ……」

 ヴィクトリーとハインリヒは天使兵をなぎ払いながら、会話する。

「まさか、こんな化物が地上に……!こんな相手、智天使か熾天使クラスで無ければ……!」

「うるせぇーっ!!」

「ふふ……出でよ、シルフ!ノーム!並びにウンディーネ!サラマンダー!」

 ハインリヒは、四精霊を同時に召喚した。

「うぉおっ!す、すげぇ……はは、ははは……!!」

 どうやらルカに精霊の使い方を教授しているみたいだ。

「はぁあーっ!!」

 ヴィクトリーはギリギリ限界パワーを解放して、気を爆発させた。

「おぉっ、彼に負けてる場合では無いかもね……それじゃあシルフ……」

「わぁ〜い!ハインリヒ〜!」

「さぁ、一緒に踊ろうか!」

 ハインリヒは疾風のような速度で天使兵達を薙ぎ払った!

「ノームも、久しぶり……ねぇ、久々なんだから何か喋ってよ。」

「…………」

 ハインリヒの大地の力を込めた一撃が、天使を粉砕した。

「な……!?」

「よそ見を、すんなぁーっ!!」

 続くように、ヴィクトリーのフルパワーの一撃が天使を粉砕した。

「こんな、こんな馬鹿な……!あ、悪魔め……!来るなぁ……!」

 尻込みしながら、天使兵は矢を飛ばす。

「ふんっ!」

 ヴィクトリーはハインリヒの前に出て、矢を受け止めた。

「……天使の癖に、感情が表に出すぎだね。」

 ハインリヒは跳んで、ヴィクトリーの背中を踏み台にしてジャンプ。明鏡止水の動きのままに、天使兵達を切り裂いた。

「凄まじい腕ですね、天使殺しの異名も頷ける……」

 樹木の天使が出てきた。

「おめぇはっ!?」

「私はグラナエル……そこらの天使とは別格ですよ……!」

 ヴィクトリーとグラナエルは激突し、攻防する。

「……じゃあみんな、アレをやろうか。サラマンダー、息の合わせ方を忘れちゃいないよね……?」

「お前こそ、五百年ぶりなんだから力加減を誤るなよ……!」

「分かってるさ、行くよ……!」

 ハインリヒの右腕に、土の剛力が宿った。その動きに風が、心に水が、爪に炎が宿り……

「な、なんだ……この技……!」

「すげぇ……!!」

 意識の中のルカも、グラナエルと戦闘中のヴィクトリーも驚愕する。

「四精霊の力を、この腕に込めて……エレメント・スピカッッ!!!」

 四属性の力を右腕に重ね、グラナエルを引き裂いた。

「おっ……ぉおおおっ……!!?」

「トドメは君に譲るよ……」

「……」

 ヴィクトリーがニッと笑いながら、グラナエルから少し離れた所に現れた。

「波っ!!」

 そして、かめはめ波でグラナエルの胸を貫いた。

「ま、まさか……私が……!!」

 グラナエルは消し飛び、消散する。

 風、土、水、火……

 四属性の力を凝縮させた体術の破壊力は、凄まじいものだった。

「……むっ!」

 などと思っていたら、羽根が多数ある天使が手からビームを放ってきた。ヴィクトリーはそれを弾き、かめはめ波を撃ち返す。

「ふんっ!」

 彼女がそれを弾くと、ヴィクトリーが目の前にいた。

「ぐっ!」

 そのままと掴み合い、押し合う形となった。

「おめぇ、名前は!?」

「私はルナエル……!せめて、あなただけは私が倒します……!」

 ハインリヒがそいつに目をつけて、深呼吸する。

「残るは、あの大きいのが一体だけか。正直、この程度の相手に使うべき技じゃないんだけど……君には一度、本物を見せておくべきだね。」

「えっ……?」

 ルナエルとヴィクトリーが激突してる最中に、ハインリヒは剣を掲げた。

「来い、シルフ……」

 ハインリヒが風の魔力を剣に込める。

「はぁああああっ!」

 ヴィクトリーはルナエルに猛攻し続けていた。

「ノーム……」

 ハインリヒが土の魔力を剣に込める。

「ぐっ!」

「なんのっ!」

 ルナエルは羽根で周囲をなぎ払い、ヴィクトリーはそれをジャンプして避ける。

「ウンディーネ……」

 ハインリヒが水の魔力を剣に込める。

「どぉしたルナエルっ!?その攻撃に特化した図体が俺のスピードについて来れねぇのか!?」

「な、なめるな……!」

 ルナエルは両手から、光のエネルギー波を放った。

「ふんっ!」

 一方はヴィクトリーに伸びて、彼はそれを弾き返す。

「……」

 一方はハインリヒに伸びて、彼は炎を纏った手でそれを消し飛ばした。

「サラマンダー……」

 そしてそれを剣へとあてがい、四精霊の力を刃に宿す。

「じゃあなっ!」

「えっ?」

 ヴィクトリーはハインリヒの背後に瞬間移動した。

「……いいのかい?君の獲物だったじゃないか。」

「さっき譲ってもらった。」

「ふふ……」

「……!!」

 ルナエルが、こっちに気付いた。

「く、くそ……!」

「おっと。」

 ヴィクトリーはギャラクティカドーナツで、ルナエルの動きを封じ込めた。

「ぐぅっ!?」

「おぉ、その技は……」

「は、早くやれ……!意外と力いるんだ……!」

「ああ……覚えておいてくれルカ君、これが……」

「う、動けな……そんな……やめ……!!」

 ルナエルに、渾身のカドラプル・ギガが炸裂した。その威力は周辺の地形を変えて、大地を深く抉っていた……

「……これが、カドラプル・ギガだよ。」

「……」

「……」

 あまりの凄まじさに、言葉が出てこない。その威力は、ルカが放ったよりも倍はあるだろう。ルナエルは影も形もなく、完全に消え去ってしまったようだ。これが、伝説の勇者ハインリヒか……

 彼はルカの体から出てきて、二人に向く。

「……それじゃあ二人共、そろそろさよならだ。長き幽閉の果てに、僕の魂も疲弊仕切っているからね……」

 そして口にしたのは、別れの言葉だった。

「天使殺しのハインリヒ、今のが最後の一暴れさ。」

「みてぇだな……」

「そんなの、ひどすぎるよ……五百年も封印されて、解放された瞬間に消え去るだなんて……」

「肉体は滅び、魂魄は輪廻に還っても……それでも、僕の魂は消えはしない。君の剣に、そして君の心に……ルカ君、勇者の魂は君が引き継いでくれ。」

「はい、この剣に誓って!」

 ルカはエンジェルハイロウの柄に握力を込める。しかし、ハインリヒは首を横に振った。

「……その剣には、何も誓っちゃいけない。そして、君は僕のようになってはいけない……僕の言いたい事、分かるよね?」

「……はい。」

「勇者には、二つの義務がある。世界を救う事と……そして、待っている人の元に生きて戻る事だ。僕が果たせなかった二つ目の義務も、どうか忘れないでくれ。」

「……はい、出来る限りは……」

「出来る限り、か……困ったもんだね、君も。くれぐれも僕のようになっちゃ駄目だよ……」

 ハインリヒはルカ抱きしめてから、離れてヴィクトリーの方に向いた。

「……俺も、義務を果たしてやるさ。」

「そうしてくれると、僕も嬉しいな……ヴィクトリーくん。」

「ハインリヒ……残念だな、こんな出会いで……出来るものなら、おめぇといっぺん戦ってみたかったんだけど……」

「うん……だけど、ルカ君がきっと僕より強くなるさ。だから……」

「ああ……またな、ハインリヒ……」

「うん、またね。」

 ヴィクトリーはハインリヒと握手してから、ハインリヒに向けて親指を上げた。彼の魂は、穏やかに微笑み……そして、ひらひらの風と共に消散してしまった。天使殺しは最後のひと暴れをしてから、天へと還ったのだった……

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