もんむす・くえすと!の世界に降り立った1人のヒーローアバターの話   作:ジョーカー:ゼノ

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決戦当日

 翌日……決戦当日。

 ルカとアリスは食事を終えて広間に集まっていた。すでに四天王もいるらしい。四天王達は今日の作戦に関して、綿密なブリーフィングを行っていた。

 しかし……

「……遅い。」

 そう、ヴィクトリーの姿が無い。

「まだかあいつは……」

「まさか、朝飯でも食い漁ってるんじゃないのか……?」

 そんな事を話してる時だった。噂をすればなんとやら、ようやくヴィクトリーが来たようだ。

「遅いぞ、ヴィクト……っ!?」

「ああ、悪ぃな。すまなかった。」

 彼は、ボロボロの服とは似合わない程の穏やかな表情だった。何より、気が感じられない……いや、気を消している訳じゃない。本当に何も感じないのだ。

 彼はここに来てからまず、たまもの方に向いた。

「今日の作戦の事は分かってるさ。俺とルカで『世界のへそ』って所に行けばいいんだろ?」

「うむ、後は四天王の作戦成功を祈りながら待機じゃ。」

「分かった。」

 たまもの話を聞きながら、綺麗な道着に着替え、リストバンドを腕に付ける。

「『天国の門』とやらが現れたら、ルカとすぐに乗り込めばいいんだな。」

「ああ……」

「余も元の体に戻ったら、ただちに駆けつけよう。それまで、決して無茶をするなよ。」

「分かってるって。」

「軽はずみに無茶な事はしないよ。」

 たまもがパンッと手を叩いた。

「では、行くぞ皆!準備は良いか!」

「ああ!」

「は〜い!」

「ええ……」

 こうして、四天王は各々の担当する塔へと出陣する。アリスは封印装置の元へ、そして二人は『世界のへそ』へ……

 いよいよ、世界中の人間と魔物を巻き込んだ大決戦が幕を開けたのである。

 

 世界のへそ……ガルダが二人を下ろし、飛び去る。

「ここが、世界のへそか……」

「みてぇだな……」

 そこは浮世離れしている土地だった。美しい花が咲き乱れ、まるで桃源郷のような場所だ。天界への入口どころか、ここが天界なのではないかと錯覚するほどの絶景。しかし、ここでも『世界のへそ』の中心部ではないらしい。

「それにしても、不思議な所だな……」

「ああ……俺の世界にも、こんな所は無かった。」

 足を進めながら、二人は周囲を見回す。作戦の決行時間は、午前九時……今から一時間後だ。

「九時ちょうどに、精霊封印と聖素具現化結界をとっかえるんだっけ?」

「ああ、そして『天国への門』が現れるんだ。」

 そんな事を話し合いながら、二人は進む……

「ん、何だあれ?」

 ルカが、天使をかたどった石像に目をつけた。そして、それにしがみつく男性の石像……

「天使の像じゃねぇか、これがどうしたってんだ?」

「いや、男性の石像が……あ、あっちにも……ここにもあるぞ。」

 先に進むにつれ、悪趣味なアートが増えていく。

「何か気持ち悪ぃな……」

「だろ……?」

 中には、男性のしがみついていない天使像もある……何か、嫌な予感がする。

「立ち去るがいい……」

 不意に、道を塞ぐように立つ石像が語りかけてきた。

「わーっ!?」

「しゃ、喋った……!?」

 二人は構え、臨戦態勢になる……が、襲いかかってくる気配はない。

「ここは神聖な地、立ち去るがいい……さもないと、天罰が下ろう……」

「……襲ってこないのか?」

「じゃあ、ほっといても平気か……」

 ヴィクトリーがその横を通り過ぎようとした時だった。天使像から、奇妙なガスが吹き出した。

「っ!?」

 彼はガスに当たるより先にバク転し、距離をとった。

「この……!!」

 そして着地と共に、キッと天使像を睨む。それだけで天使像が爆砕し、粉々に吹っ飛んだ。

「……」

「驚かせやがって……」

 一瞬で避けて、気合砲で一発。それだけで天使像を吹っ飛ばしてしまった。

「よく分かんねぇけど……何らかのトラップであることには変わりなさそうだな。」

「だとすると、この男の石像は……」

「こいつらの犠牲者だろうな……」

 そんな事を話しながら、二人は先へと進んだのだった……

 

 しばらく進むと、庭園のような広場に出た。たまもの話によると、ここが『世界のへそ』の中央部らしい。

「ここに『天国への門』があるんだな。」

「ああ……今は見えないけど四天王の作戦が成功すれば現れるはずだよ。」

 二人は息を吐き、階段に腰を降ろそうとしたその時だった……目の前の石像が目を開き、気を解放した。

「うわぁっ!?」

「な、何なんだ……!?」

「くくっ、勇者がここまで来たのか……」

 可愛らしい少女に、豊満な胸と悪魔のような羽根と角がついた石像のモンスター……

「モンスター!?まさか、気配を全く感じさせないなんて……!」

「ちっ、何か居るとは思ってたんだけどな……!」

 強者であればあるほど、自身の魔力を隠すのが得意だ。全く感知できなかったって事は、こいつは相当の手練れか……

「我は、ガーゴイル……『天国への門』を見張る監視者。聖魔大戦より前から、この門を見張り続けた……いつしか、使命など」

 長々と話すガーゴイル娘の顔面に、ヴィクトリーの両足蹴りが炸裂した。

「っ!!?」

 彼女はものすごい勢いでぶっ飛ばされ、遥か遠くで倒れてしまった。

「うっせぇ!かかってこい!」

「僕もやるぞ!」

 二人は構え、気を解放する。

「ならば、前置きはいらんかっ!!」

 ガーゴイル娘はこちらに突進してきて、怒涛の猛攻をしかけてきた。

「ふんっ!」

「はぁあっ!」

 しかし二人は押し返し、ヴィクトリーが彼女の脇腹に蹴りを入れた。

「ぐっおぉ……!?」

「だぁっ!!」

 ルカの蹴り上げが、彼女を上空に打ち上げる。

「ッッ!!」

「貰ったぁ!!」

 ヴィクトリーが飛び上がり、その腹に拳を落とした。

「ぉおおっうっ……!!」

「トドメッ!」

 そしてルカの閃殺が一閃して、彼女は真っ二つになった。

「……門を見張り続けている間に、時代は移ろっていたか。貴様らほどの猛者が、地上に現れるとは……」

 そうして彼女は封印される。二人も気を鎮め、ようやく一息吐いた。

「よし、ようやく倒したな……」

「ったく、気が抜けねぇや……」

 後はここで大人しく待機して、四天王達の成功を待つのみだ……

「なぁ、ヴィクトリー。」

「ぁん?」

 ルカはヴィクトリーの隣に座り、話しかける。

「四天王達は、大丈夫なのかな……」

「さぁな……ただ……」

「ただ……?」

 ヴィクトリーは顔を上げ、ルカに微笑む。

「あいつらが遊んでばっかじゃねぇ事は、俺達が一番よく知ってるだろ?大丈夫だ、何とかなるさ!」

「……だよな!」

 そう言って、彼女らのことを信じながら、時を待とうとした……その時だった。

「……!!」

 ヴィクトリーがいきなり立ち上がり、きょろきょろと周囲を見回す。

「どうした?」

「……ルカ……ネクスト・ドールの連中を覚えてっか……?」

「え……?」

「現れたんだよ、四天王達の前に……!!」

「!!」

 ネクスト・ドール……確か、対四天王用の人造妖魔だったか……

「くっ……!ヴィクトリー、ここで……」

「いやっ!たまもの言う通りにしといた方がいいと思うぜ……こっちにも来たみてぇだしな……」

「え……!」

「ふふふ、その通り……」

 不意に、ルカの声が響いた。

「え……!?」

「おめぇらは、ここでオレ達がぶっ倒す。」

 ヴィクトリーの声もだ。

 声の主は、二人の目の前に現れたのだった。

「う……ウソ……!!?」

「な……何だと……!?」

 目の前に現れたのは、なんとルカとヴィクトリーだった。その姿も、そして声まで同じだ。

「……サイヤ人は、本来使い捨ての戦闘員が多いから、顔のパターンが少ない……だから俺のは納得出来っけど……」

「そんな……じゃあ、僕は……!?」

「ふふ……」

 偽者のルカが、ルカに微笑む。

「そう、ボクは君だよ。汚れし勇者の切り札として、僕が送り込まれたのさ。」

 偽者のヴィクトリーも、不敵に笑った。

「だぁが、このままなら全くの互角……だから、ちょっとだけこっちを有利にさせて貰うぜ……」

 目の前に居る二人の体が、たちまち変異していく。髪が伸び、胸が膨らみ……そして、なんと女体化してしまった。

「な……!?」

 女体化した彼らは、ニヤニヤと二人を見てくる。

「うふふ……こうなると、こっちの方が有利だよね。」

「オレ達の技術に加えて、房中術も出来るから……」

「……これは、幻覚か……!?」

「おめぇら、いったい……!」

「幻覚なんかじゃない、ボク達は君のクローンさ。」

「ワミエルとの戦いで採取されたおめぇらの幹細胞を元に、生み出されたんだ。だから……」

 ドッペルヴィクトリーは、超サイヤ人2になった。

「っ!?」

「こんな事も出来る上に、戦闘力は完全に互角。プラス女の武器だ……まぁ、オレはそんな事をする気はさらさらねぇけどな。」

「……戦闘力は完全に互角だぁ?」

 ヴィクトリーはドッペルヴィクトリーの前に立ち、睨んだ。

「じゃあ見せてやるよ……」

 ヴィクトリーはそう言って、気を解放した。

「……へぇ、超サイヤ人になんねぇのか?」

「今はこれで充分なんだよ……」

 睨み合うヴィクトリー達を横目に、ルカ達も剣を構える。

「はぁあっ!」

「無駄だよっ!その剣技はボクにも使える!」

 ルカの剣技がぶつかり合い、相殺される。

「言っただろう?ボクは君なんだよ。その技も、もちろん君と全く同じ技量で使いこなせるのさ……」

「……じゃあ、この技もか!?」

 あの時に見た、見よう見真似に過ぎない。それでも、僕の体は覚えている……

「はぁああああっ!!」

 右腕に土の剛力。その動きに風を、心に水を、その爪に炎を宿し……

「なんだ、その技……!?そんなの、ボクは知らない……!」

「エレメント・スピカァッッ!!!」

 四属性の力を右腕に重ね、ドッペルルカを引き裂く。

「ぐはぁあああっ!?」

 あっちは大丈夫そうだ。

「くそ……!何故……何故当たらない……!?オレとおめぇは同じ……互角の筈なのに……!」

 ドッペルヴィクトリーはヴィクトリーに猛攻するが、彼は軽々と避け続ける。

「……やっぱり、おめぇはサイヤ人として不完全だ。」

 彼はそう言いながら消え、超スピードで彼女の首と背中と腹に手刀を叩き込んだ。

「がはぁあっ……!!?」

「どりゃあぁっ!!」

 そして顔面を思いっきりぶん殴り、彼女を地面に叩き伏せた。

「……」

「ぐ……!!」

 彼女は起き上がってバク転し、かめはめ波を放つ体制になった。

「か……め……」

「やめとけって、俺には通用……」

 そう言いかけた時だった。不意にドッペルルカの持っていたワームソードが、ヴィクトリーを拘束した。

「うぐぅっ!?」

「ルカっ!?」

「しまった!」

「ふふふ……」

 ドッペルルカは不敵に笑い、ルカを見る。

「降参しなよ。さもないと、こいつは助からないよ……」

「うぐ……!!」

「くそ……!!」

「…………」

 ドッペルヴィクトリーはかめはめ波を、ドッペルルカの足元に放った。

「わぁっ!?」

 ワームソードの拘束が解け、彼女は尻もちをついてしまう。

「な、何するんだ!絶好のチャンスを作ったってのに……」

「何するんだはこっちの台詞だ!!二度と邪魔すんじゃねぇ!次に邪魔したらぶっ殺すぞ!!」

「ひっ……わ、分かったよぅ……」

 その光景を見ていた、ルカとヴィクトリー本人は、目を丸くしていた。

「こいつら、僕達とは対象的に絶望的にチームワークが悪いみたいだね。」

「ああ、俺達の悪い所が浮き彫りになってるな。まさに、真逆の俺らって感じだな。」

 なんて、今目の前で喧嘩しているもう一人の自分を見ながら話したのだった。

「……悪かったな、相棒が変な事してよ……」

「お、おう……」

 ヴィクトリーとドッペルヴィクトリーは再びぶつかり合う。

「……ふんっ!」

 ヴィクトリーは気を解放し、彼女の一撃を受け止めた。

「……なにっ!?」

「はぁあああ……!!」

 そして、鋭いフックで脇腹に一撃した。

「ぐぅっはぁあ……!!?」

 彼女はそれで揺らぎ、フラフラと後退しそうになるが──ヴィクトリーは、逃がさなかった。

「おめぇは、自分で強くなった事がねぇ!」

 更に、彼女の全身を猛烈な拳の連打で乱打した。凄まじい速度で連打し続け、一方的にタコ殴りにする。

「サイヤ人としての努力、強くなるという努力がおめぇにはねぇんだ!!」

「〜〜〜ッッ!!!」

「おめぇは所詮、ワミエルの時の俺だ!!」

 ズドンッと腹に重い一撃を放つ。

「ぁ……が……!!!」

「そんなおめぇに……過去の俺に……今の俺が負けるかーーーっ!!!」

 そして、思いっきりアッパーを放ってぶっ飛ばした。

「がっはぁああ……!!!」

 ドッペルヴィクトリーは超サイヤ人じゃなくなり、地面に落ちて気絶してしまった。

「いつか……もっと強くなって、俺に挑んで来い!その時は、必ず戦ってやる!!」

 彼はそう言って、その体から溢れる気を納めたのだった。

「魔天回帰っ!!」

「ぐぁあああっ!!」

 ドッペルルカは魔天回帰をくらって、封印された。どうやらあっちも問題無く終われたようだ……

「……それにしても、クローンか……もう何でもアリだな……」

「ああ……」

 ヴィクトリーとルカは、階段に座る。

「……四天王、どうにかなると思うか?」

 ルカが、改めてヴィクトリーに聞いた。あんな戦闘をしたばかりなのだ、もしかしたら天界はネクストドール以上の何かを隠してるかもしれない……そう不安になっていたのだった。

 それに対し、彼はちょっと考え……

「何度も言わせんなって……心配すんな、四天王の実力は俺達が一番知ってる。」

「そうだよな……大丈夫か!」

 そう、僕達は四天王と刃を交えた事があるのだ。だから、心配する事はない。

 二人は四天王を信じて、待ち続けた……

流血表現

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