もんむす・くえすと!の世界に降り立った1人のヒーローアバターの話 作:ジョーカー:ゼノ
グランべリアの眼前……アルカンシエルが、仁王立ちしていた。
「……どうした、来ないのか?」
「……同胞三体、すでにやられたようだ。今、三体とも生体反応が消失した。」
「……そうか。」
有利な成り行きだが、あくまで今は思考の外。この瞬間は、目の前の勝負に専念するのみ……
「……はぁあっ!!」
グランべリアは気を解放して、構えた。
「ほう、流石の気迫と言った所か……魔王城の戦いでは全力で無かったとの事、言い訳ではないようだな。だが……!!」
アルカンシエルも腕をクロスしてから、思いっきり気を解放した。
「それでも私の力は、万全の貴様さえ上回るのだ!それを証明してやろう、グランべリア!」
「来るがいい、アルカンシエル!魔剣士グランべリアの剣、とくと見せてやろう!」
二人はぶつかり合って消え、部屋中を縦横無尽に駆け回りながら攻防した。
「はぁっ!」
「ぬぅっ!」
バチィッと一撃が衝突し、二人は距離をとる。次に攻め込んだのは、グランべリアだった。
「行くぞっ!!」
その巨剣に炎の魔力を込めて、アルカンシエルに切りかかった。
「ふんっ!」
しかしアルカンシエルはそれを素手で受け止め、斬撃を止める。
「なにっ!?」
「剛ぉっ!!」
そして腕に力を込め、胸に掌底を叩き込んだ。
「ぐ……がはっ……!!」
仰け反るが、歯を食いしばって耐える。そして、彼女を抜き胴で一閃した。
「乱刃・気炎万丈!!」
「っ!!」
アルカンシエルの全身に、紅蓮の斬撃が叩き込まれた。
「ふ……!!」
「っ!」
アルカンシエルは振り向き、グランべリアの顔面に拳を放った。しかし彼女は手を突き出し、拳を受け止める。
「ぐぐ……ぐ……!!」
「ふん……!!」
アルカンシエルの拳が、爆炎を宿した。
「なにっ!?」
「だぁっ!!」
そしてグランべリアの手を弾き飛ばして、顔面を打ち抜いた。
「ぐぅああっ!!」
グランべリアはぶっ飛び、柱に叩きつけられる。アルカンシエルはそんな彼女を見て、両手にエネルギーを溜め……
「はああああーーーっ!!!」
フルパワーのエネルギー弾を連射した。それは直撃し、爆発が連続する。
「ぐぅあああ……!!」
「ふっふっふ……はははは!!」
連射するだけ連射して、止まる。そして、高笑いした。
「見よ、この力を!!」
そう言って床に踏ん張り、ダッシュしてからグランべリアの腹を打ち抜いた。
「ッッ……!!!」
ものすごいパワーでぶん殴られた事によって柱が粉砕し、グランべリアは壁に叩きつけられる。
「最新鋭の生体工学が可能にした、限界以上の筋力!」
更にアルカンシエルは飛び上がり、空中でタイヤのように高速回転してから、グランべリアに踵落としした。
「生体カーボン製のシナプスによる、極限の運動性!」
「がっは……!!」
グランべリアは倒れ込み、アルカンシエルはそんな彼女を見下ろした。
「その全てが、貴様の肉体を完全に上回っているのだ!!」
自分の体を見せつけるようなポーズを取り、そう言い放った。
「……そんなに誇らしいか、その作り物の体が……研鑽して磨き上げた訳でもない、与えられただけの力が……」
グランべリアは立ち上がりながら、血を吐き捨ててそう言う。
「……ああ、誇らしいなぁ!戦うためだけに、私は生み出されたのだから!これこそが、私の生存目的!ただ戦い、ただ勝つためだけに私は造られたのだ!」
アルカンシエルはそう言って、その顔面に爆炎を宿した拳を振り下ろした。しかしグランべリアはそれを素手で受け止め、衝撃を完全に殺した。
「……なにっ!?」
「がぁああっ!!」
そして渾身の気合砲を放ち、アルカンシエルを吹っ飛ばした。
「っ!!」
彼女はぶっ飛んで、尻もちをつく。
「ぐ……!!」
すぐさま立ち上がり、両の拳に紅蓮の炎を宿す。
「受け切れるかっ!!?この技を!!」
そしてグランべリアに突進して、その拳を連打した。しかし彼女は明鏡止水の心で全て避け、最後の一撃を剣で受け止める。
「なに……!!?」
「……無理はよせ、アルカンシエル。」
「無理……とは、何の事だ?」
「私には分かる……本音では、お前は何も誇ってはいまい。その力も、肉体も……与えられた全てをな。」
「…………」
アルカンシエルは拳を引き、グランべリアから距離をとる。彼女も構えを解いて、距離を取った。
「……なぜ、そう思う?」
「私は剣を振るい、幾多もの相手と戦った。当然、様々な戦士の自画自賛を何度も耳にする羽目になる。だが、お前の言葉ほど空虚に聞こえる自賛は聞いた事がない……お前は自分の体を誇っているどころか……むしろ嫌悪している。」
「聞いた話と違うぞ、グランべリア……剣より口の方がよく動くのだな……」
「なに、ただの余技だ……」
確かに、自分の流儀ではない。どうやら、あの二人に影響されてしまったようだ……
「続けるぞ。」
「ああ。」
二人は一瞬で接近し、猛攻した。
「はぁあっ!!」
グランべリアがアルカンシエルの胸を斬る。
「ふぅんっ!」
彼女は踏ん張り、グランべリアを殴り返した。
「く……!」
グランべリアは一回転して、その顔面に後蹴りした。
「がぁあっ!!」
しかしアルカンシエルは蹴りを顔に受けながら踏み込み、渾身の頭突きでぶっ飛ばした。
「ちぃいっ!」
グランベリアは吹っ飛んでる最中になんとか体制を整え、アルカンシエルを見る。彼女は既に、そこまで迫っていた。
「覚悟っ!!」
「そこだっ!」
グランべリアはアルカンシエルに足払いをして、すっ転ばせた。
「んなっ!?」
「せぇいっ!!」
そして、剣を突き下ろそうとしたが、彼女は素早く躱して立ち上がり──
「フンッ!!」
グランべリアに山突きした。
「ぐぐぅっ……!!」
グランべリアはモロに直撃するが、何とか倒れるのは防ぐ。そうして、アルカンシエルの方を向き直した。
「……お前は、最強の肉体を備えて生まれてきたという。逆に言えば、初めから最強であるがゆえ、それ以上の研鑽も不要。それはすなわち、いっさいの可能性が閉ざされた肉体……戦士として、お前の境遇はあまりにも不遇だ。」
「……グランべリアよ、何が言いたい?」
「……そして、もっとも不遇なのは、お前自身は戦士の魂を備えていた事だ。最強の存在として生み出され、進化も進歩も閉ざされた虚しさ……ただの愚者なら味わう必要もなかった空虚さを、お前は日々痛感している。」
「……」
「……お前は、羨んでいるのだろう?非力でか弱い、そして無限に可能性を秘めた全ての生命を……己の肉体を鍛え、さらなる強者と戦うことのできる全ての戦士を……お前には、どんなに望んでもそれが出来ないのだから。」
アルカンシエルは下を向いて、青筋を立て、歯軋りをする。
「……羨ましくなどあるものか!この私の肉体は完璧だ!!貴様とて、手も足も出ないではないか!」
「……それ以上、自分を卑下するな。戦士として、今のお前は余りにも痛々しい。そんなに否定するのならば、見せてやろう……」
グランべリアは剣を掲げて、気を解放した。
「己以上の強者を打ち破るため、さらなる可能性を求める戦士の様を!!」
「ああ、見せてもらおうか……そんな事が、本当に出来るのならばな!!」
アルカンシエルも気を解放した。
「まずは、風の力だったな……」
グランべリアは、風の力を剣に宿した。
「……初歩的な魔法剣か?そんなもので、私の装甲が破壊できるとでも……?」
「次に、土の力……」
更に、土の力を剣に宿した。途端に剣が不安定になり、抑え込むには技術を要した……
「魔法剣の二重掛け……?いや……これは、確か……」
まさか、魔王城で勇者がグランべリアに放った……
「そして、水の力……くっ、これほど制御が困難だとは……!!」
水の力を、剣に込めるグランべリア。
「おのれ、させるかっ!!」
そのグランべリアを見て、アルカンシエルは殴りかかってきた。しかし彼女は、明鏡止水の動きで避ける。
「ち……!」
「最後に、火の力……!!」
グランべリアは火の力を剣に宿した。凄まじい気が練り合わされ、物凄いエネルギーを形作った。
「ルカ……やはりお前は大した男だ。人間の身で、これほどの技を使いこなしたとは……」
「ならばその技ごと、この一撃で粉砕してくれる……!!」
「技を借りるぞ、ルカ……カドラプル・ギガァっ!!!」
「うぉおおおおおおおっ!!!!」
なんと、グランべリアはカドラプル・ギガを放った。全てを打ち砕く力がアルカンシエルに直撃し、大爆発を巻き起こした。
「ぐぁああああああああッッ!!!!」
「ふん……!!」
それで倒れそうになるアルカンシエルだが……倒れる寸前に止まり、起き上がってきた。
「うぉおおおおおおっ!!まだだぁああああっ!!まだ終わってないぞぉおおおおっ!!!」
アルカンシエルはボロボロになりながら、意地で起き上がってグランべリアに迫った。
「……もう無理はよせと言った筈だ……」
グランべリアは剣を置き、両手を合わせてエネルギーを込めた。
「私が……私が負けるかぁあああああああ!!」
「貴様の技も借りるぞ……ヴィクトリー……!!」
アルカンシエルの紅蓮の炎を纏った拳が、グランべリアに迫る。
「はぁあああああああーーーッッ!!!!」
「……かめはめ波ッ!!!!!」
グランべリアの超かめはめ波が、アルカンシエルの胸を貫いた。
「がっっ……は……っ!!?」
アルカンシエルは拳を振り上げたまま静止する。拳の炎が消えてから……ゆっくりと自分の胸を確認した。そこには、彼女のかめはめ波によって大きな風穴が空いていた……
「……ぐ……見事……がはッッ!!」
アルカンシエルはそう言って、床に倒れ伏した……
「……」
グランべリアは剣をとって納剣し、倒れたアルカンシエルを見た。
「……全て、貴様の指摘した通りだ。私は、この可能性の閉ざされた肉体が疎ましかった……いっそハイヌウェレやラプンツェルのように、精神が破綻した方が楽だったのだがな。この肉体の一部になった戦士型妖魔達の影響か……我ながら、実に難儀な性分だ……」
「……そうならば、別の生き方もあっただろう。」
「いいや、無かったのさ……私の稼働時間は、五年に満たない……どちらにしろ、私には五年程度の寿命しかなかったのだ……極端に短い命が、この究極の肉体の代償……」
「そうだったか……なおさら、残酷だな。」
「心身を鍛え、強者に打ち勝つという醍醐味……一度でいいから、味わってみたかったのだがな。それを認める気になった時には、もう叶う術もない……つくづく、私は恵まれんな。」
「……」
アルカンシエルは笑いながら、グランべリアを見る。
「だが……最後の勝負にだけは恵まれた。見事だ、グランべリア……欲を言うなら、勇者ルカや武闘家ヴィクトリーとも戦ってみたかった……」
「……最初に奴らと戦っていれば、お前にも救いはあったかもしれんな。」
「いや……この身には過ぎた話だ……もう私は、何も羨まずに……済む……」
アルカンシエルはそう言い残して、目を閉じ……力尽きた。その顔は、むしろ満足感に満ちた、安らかで幸せそう顔だった……
「……土にも還ることさえ出来ない肉体か……せめて魂は、また戦士として生まれ変わるように祈る。」
戦士の誇りをここまで弄び、愚弄したプロメスティン達……グランべリアは、深い怒りを胸に抱いたのだった……
流血表現
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もっとする
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このままでいい
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しなくていい