もんむす・くえすと!の世界に降り立った1人のヒーローアバターの話   作:ジョーカー:ゼノ

179 / 227
グランべリアのカドラプル・ギガとかめはめ波

 グランべリアの眼前……アルカンシエルが、仁王立ちしていた。

「……どうした、来ないのか?」

「……同胞三体、すでにやられたようだ。今、三体とも生体反応が消失した。」

「……そうか。」

 有利な成り行きだが、あくまで今は思考の外。この瞬間は、目の前の勝負に専念するのみ……

「……はぁあっ!!」

 グランべリアは気を解放して、構えた。

「ほう、流石の気迫と言った所か……魔王城の戦いでは全力で無かったとの事、言い訳ではないようだな。だが……!!」

 アルカンシエルも腕をクロスしてから、思いっきり気を解放した。

「それでも私の力は、万全の貴様さえ上回るのだ!それを証明してやろう、グランべリア!」

「来るがいい、アルカンシエル!魔剣士グランべリアの剣、とくと見せてやろう!」

 二人はぶつかり合って消え、部屋中を縦横無尽に駆け回りながら攻防した。

「はぁっ!」

「ぬぅっ!」

 バチィッと一撃が衝突し、二人は距離をとる。次に攻め込んだのは、グランべリアだった。

「行くぞっ!!」

 その巨剣に炎の魔力を込めて、アルカンシエルに切りかかった。

「ふんっ!」

 しかしアルカンシエルはそれを素手で受け止め、斬撃を止める。

「なにっ!?」

「剛ぉっ!!」

 そして腕に力を込め、胸に掌底を叩き込んだ。

「ぐ……がはっ……!!」

 仰け反るが、歯を食いしばって耐える。そして、彼女を抜き胴で一閃した。

「乱刃・気炎万丈!!」

「っ!!」

 アルカンシエルの全身に、紅蓮の斬撃が叩き込まれた。

「ふ……!!」

「っ!」

 アルカンシエルは振り向き、グランべリアの顔面に拳を放った。しかし彼女は手を突き出し、拳を受け止める。

「ぐぐ……ぐ……!!」

「ふん……!!」

 アルカンシエルの拳が、爆炎を宿した。

「なにっ!?」

「だぁっ!!」

 そしてグランべリアの手を弾き飛ばして、顔面を打ち抜いた。

「ぐぅああっ!!」

 グランべリアはぶっ飛び、柱に叩きつけられる。アルカンシエルはそんな彼女を見て、両手にエネルギーを溜め……

「はああああーーーっ!!!」

 フルパワーのエネルギー弾を連射した。それは直撃し、爆発が連続する。

「ぐぅあああ……!!」

「ふっふっふ……はははは!!」

 連射するだけ連射して、止まる。そして、高笑いした。

「見よ、この力を!!」

 そう言って床に踏ん張り、ダッシュしてからグランべリアの腹を打ち抜いた。

「ッッ……!!!」

 ものすごいパワーでぶん殴られた事によって柱が粉砕し、グランべリアは壁に叩きつけられる。

「最新鋭の生体工学が可能にした、限界以上の筋力!」

 更にアルカンシエルは飛び上がり、空中でタイヤのように高速回転してから、グランべリアに踵落としした。

「生体カーボン製のシナプスによる、極限の運動性!」

「がっは……!!」

 グランべリアは倒れ込み、アルカンシエルはそんな彼女を見下ろした。

「その全てが、貴様の肉体を完全に上回っているのだ!!」

 自分の体を見せつけるようなポーズを取り、そう言い放った。

「……そんなに誇らしいか、その作り物の体が……研鑽して磨き上げた訳でもない、与えられただけの力が……」

 グランべリアは立ち上がりながら、血を吐き捨ててそう言う。

「……ああ、誇らしいなぁ!戦うためだけに、私は生み出されたのだから!これこそが、私の生存目的!ただ戦い、ただ勝つためだけに私は造られたのだ!」

 アルカンシエルはそう言って、その顔面に爆炎を宿した拳を振り下ろした。しかしグランべリアはそれを素手で受け止め、衝撃を完全に殺した。

「……なにっ!?」

「がぁああっ!!」

 そして渾身の気合砲を放ち、アルカンシエルを吹っ飛ばした。

「っ!!」

 彼女はぶっ飛んで、尻もちをつく。

「ぐ……!!」

 すぐさま立ち上がり、両の拳に紅蓮の炎を宿す。

「受け切れるかっ!!?この技を!!」

 そしてグランべリアに突進して、その拳を連打した。しかし彼女は明鏡止水の心で全て避け、最後の一撃を剣で受け止める。

「なに……!!?」

「……無理はよせ、アルカンシエル。」

「無理……とは、何の事だ?」

「私には分かる……本音では、お前は何も誇ってはいまい。その力も、肉体も……与えられた全てをな。」

「…………」

 アルカンシエルは拳を引き、グランべリアから距離をとる。彼女も構えを解いて、距離を取った。

「……なぜ、そう思う?」

「私は剣を振るい、幾多もの相手と戦った。当然、様々な戦士の自画自賛を何度も耳にする羽目になる。だが、お前の言葉ほど空虚に聞こえる自賛は聞いた事がない……お前は自分の体を誇っているどころか……むしろ嫌悪している。」

「聞いた話と違うぞ、グランべリア……剣より口の方がよく動くのだな……」

「なに、ただの余技だ……」

 確かに、自分の流儀ではない。どうやら、あの二人に影響されてしまったようだ……

「続けるぞ。」

「ああ。」

 二人は一瞬で接近し、猛攻した。

「はぁあっ!!」

 グランべリアがアルカンシエルの胸を斬る。

「ふぅんっ!」

 彼女は踏ん張り、グランべリアを殴り返した。

「く……!」

 グランべリアは一回転して、その顔面に後蹴りした。

「がぁあっ!!」

 しかしアルカンシエルは蹴りを顔に受けながら踏み込み、渾身の頭突きでぶっ飛ばした。

「ちぃいっ!」

 グランベリアは吹っ飛んでる最中になんとか体制を整え、アルカンシエルを見る。彼女は既に、そこまで迫っていた。

「覚悟っ!!」

「そこだっ!」

 グランべリアはアルカンシエルに足払いをして、すっ転ばせた。

「んなっ!?」

「せぇいっ!!」

 そして、剣を突き下ろそうとしたが、彼女は素早く躱して立ち上がり──

「フンッ!!」

 グランべリアに山突きした。

「ぐぐぅっ……!!」

 グランべリアはモロに直撃するが、何とか倒れるのは防ぐ。そうして、アルカンシエルの方を向き直した。

「……お前は、最強の肉体を備えて生まれてきたという。逆に言えば、初めから最強であるがゆえ、それ以上の研鑽も不要。それはすなわち、いっさいの可能性が閉ざされた肉体……戦士として、お前の境遇はあまりにも不遇だ。」

「……グランべリアよ、何が言いたい?」

「……そして、もっとも不遇なのは、お前自身は戦士の魂を備えていた事だ。最強の存在として生み出され、進化も進歩も閉ざされた虚しさ……ただの愚者なら味わう必要もなかった空虚さを、お前は日々痛感している。」

「……」

「……お前は、羨んでいるのだろう?非力でか弱い、そして無限に可能性を秘めた全ての生命を……己の肉体を鍛え、さらなる強者と戦うことのできる全ての戦士を……お前には、どんなに望んでもそれが出来ないのだから。」

 アルカンシエルは下を向いて、青筋を立て、歯軋りをする。

「……羨ましくなどあるものか!この私の肉体は完璧だ!!貴様とて、手も足も出ないではないか!」

「……それ以上、自分を卑下するな。戦士として、今のお前は余りにも痛々しい。そんなに否定するのならば、見せてやろう……」

 グランべリアは剣を掲げて、気を解放した。

「己以上の強者を打ち破るため、さらなる可能性を求める戦士の様を!!」

「ああ、見せてもらおうか……そんな事が、本当に出来るのならばな!!」

 アルカンシエルも気を解放した。

「まずは、風の力だったな……」

 グランべリアは、風の力を剣に宿した。

「……初歩的な魔法剣か?そんなもので、私の装甲が破壊できるとでも……?」

「次に、土の力……」

 更に、土の力を剣に宿した。途端に剣が不安定になり、抑え込むには技術を要した……

「魔法剣の二重掛け……?いや……これは、確か……」

 まさか、魔王城で勇者がグランべリアに放った……

「そして、水の力……くっ、これほど制御が困難だとは……!!」

 水の力を、剣に込めるグランべリア。

「おのれ、させるかっ!!」

 そのグランべリアを見て、アルカンシエルは殴りかかってきた。しかし彼女は、明鏡止水の動きで避ける。

「ち……!」

「最後に、火の力……!!」

 グランべリアは火の力を剣に宿した。凄まじい気が練り合わされ、物凄いエネルギーを形作った。

「ルカ……やはりお前は大した男だ。人間の身で、これほどの技を使いこなしたとは……」

「ならばその技ごと、この一撃で粉砕してくれる……!!」

「技を借りるぞ、ルカ……カドラプル・ギガァっ!!!」

「うぉおおおおおおおっ!!!!」

 なんと、グランべリアはカドラプル・ギガを放った。全てを打ち砕く力がアルカンシエルに直撃し、大爆発を巻き起こした。

「ぐぁああああああああッッ!!!!」

「ふん……!!」

 それで倒れそうになるアルカンシエルだが……倒れる寸前に止まり、起き上がってきた。

「うぉおおおおおおっ!!まだだぁああああっ!!まだ終わってないぞぉおおおおっ!!!」

 アルカンシエルはボロボロになりながら、意地で起き上がってグランべリアに迫った。

「……もう無理はよせと言った筈だ……」

 グランべリアは剣を置き、両手を合わせてエネルギーを込めた。

「私が……私が負けるかぁあああああああ!!」

「貴様の技も借りるぞ……ヴィクトリー……!!」

 アルカンシエルの紅蓮の炎を纏った拳が、グランべリアに迫る。

「はぁあああああああーーーッッ!!!!」

「……かめはめ波ッ!!!!!」

 グランべリアの超かめはめ波が、アルカンシエルの胸を貫いた。

「がっっ……は……っ!!?」

 アルカンシエルは拳を振り上げたまま静止する。拳の炎が消えてから……ゆっくりと自分の胸を確認した。そこには、彼女のかめはめ波によって大きな風穴が空いていた……

「……ぐ……見事……がはッッ!!」

 アルカンシエルはそう言って、床に倒れ伏した……

「……」

 グランべリアは剣をとって納剣し、倒れたアルカンシエルを見た。

「……全て、貴様の指摘した通りだ。私は、この可能性の閉ざされた肉体が疎ましかった……いっそハイヌウェレやラプンツェルのように、精神が破綻した方が楽だったのだがな。この肉体の一部になった戦士型妖魔達の影響か……我ながら、実に難儀な性分だ……」

「……そうならば、別の生き方もあっただろう。」

「いいや、無かったのさ……私の稼働時間は、五年に満たない……どちらにしろ、私には五年程度の寿命しかなかったのだ……極端に短い命が、この究極の肉体の代償……」

「そうだったか……なおさら、残酷だな。」

「心身を鍛え、強者に打ち勝つという醍醐味……一度でいいから、味わってみたかったのだがな。それを認める気になった時には、もう叶う術もない……つくづく、私は恵まれんな。」

「……」

 アルカンシエルは笑いながら、グランべリアを見る。

「だが……最後の勝負にだけは恵まれた。見事だ、グランべリア……欲を言うなら、勇者ルカや武闘家ヴィクトリーとも戦ってみたかった……」

「……最初に奴らと戦っていれば、お前にも救いはあったかもしれんな。」

「いや……この身には過ぎた話だ……もう私は、何も羨まずに……済む……」

 アルカンシエルはそう言い残して、目を閉じ……力尽きた。その顔は、むしろ満足感に満ちた、安らかで幸せそう顔だった……

「……土にも還ることさえ出来ない肉体か……せめて魂は、また戦士として生まれ変わるように祈る。」

 戦士の誇りをここまで弄び、愚弄したプロメスティン達……グランべリアは、深い怒りを胸に抱いたのだった……

流血表現

  • もっとする
  • このままでいい
  • しなくていい
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。