もんむす・くえすと!の世界に降り立った1人のヒーローアバターの話   作:ジョーカー:ゼノ

197 / 227
掴み取った平和、そして……

 ………………

 …………

 ……

「……」

 ヴィクトリーが、ベッドで目を覚ました。ここは何処だと言わんばかりに、辺りを見回す。察する限り、イリアスヴィル付近の辺境の田舎らしいが……

「……目覚めましたか。」

 声が聞こえた。この声は、聞き覚えがある。

「エデン様……」

「大丈夫ですか?」

 彼女は全裸ではなく、エンリカの装いでここに来ていた。そうして、ベッド付近の椅子に座る。

「大丈夫だけど……お、俺は……いってぇ何日寝てたんだ……」

「一ヶ月です。」

「えぇっ!?」

 ヴィクトリーにその情報が入った瞬間、電撃のような衝撃が走る。

「一ヶ月!?一ヶ月も寝てたんか、俺は!?じゃ、じゃあ、あの後……一体何が……」

「全ての力を使い果たしてあなた達は気絶しました。そして、ルカは魔王城に……あなたはここ、エンリカに運ばれました。」

「エンリカ……」

 窓の外を見る。確かにエンリカだったが……前みたいに人はたくさん居ないし、気も少ない。

「エンリカの人は、イリアスヴィルの復興が進んだみたいで帰りました。魔物達は……隠れる必要も無くなったので、ほとんどはイリアスヴィルに引っ越しました。今ここに居るのは、私やミカエラを慕う天使やエルフのみです。」

「……そうか……」

 ヴィクトリーは笑い、次の質問を投げた。

「……なぁエデン様……天界の連中は……」

「ほぼ全員が降参しました……少なくとも天使は全員ですね。黒のアリスに従う魔物や、プロメスティンが生み出したキメラモンスターやロイドモンスターも抵抗を止めたそうです。」

「そうか……そりゃ良かった……」

「その後、目立った争いも起こってはいません……敗者への追い打ちは、各国の王や女王が禁止されたみたいですよ。」

「……そうか!」

 この一ヶ月で、争いはほとんど起きなかったのか……ルカの奴、喜んでるだろうな……

「……」

 ヴィクトリーはハッとしたような顔で、ベッドから体を起こした。背中が破けたボロボロのシャツのまんま、外に出ようとする。

「……どうかしたのですか?」

「ルカの気だ……それに、アリスも!」

 ヴィクトリーは外に出て、エデンがそれを追うようについていく。エンリカの前……そこには、ガルダが降り立っていた。

「ルカ〜!」

「ヴィクトリー!」

 再会を果たした戦士達は走り寄り、握手する。

「やっぱり、お前も一ヶ月寝てたのか?」

「そう言うおめぇだってぇ!」

 再会を喜ぶ二人の横で、アリスとエデンが見つめ合ってた。

「……まさか、イリアスの犬と共闘することになるとはな。」

「私も、魔王と手を組むとは思いませんでした……不思議なものですね……」

 アリスとエデンはそう言いながら笑い……握手した。

「集まりましたか……」

 そう言って現れたのは、ミカエラだった。その横に、バーダック:ゼノも居る。

「ミカエラさん……それと……」

「バーダック。」

 ヴィクトリーがそう言いながら、バーダック:ゼノの肩を叩く。

「その者のお陰で、犠牲は最小限に留まりました。感謝しなければなりませんね……ヴィクトリーにも、バーダックにも……」

「そうだったんですか……」

 バーダック:ゼノは笑いながら、ミカエラを見る。

「フン、俺はただ暴れただけだ。」

「そうか……よく頑張ったな……そんでもって、すまねぇな……いつも色んなところに借り出しちまって……」

「構わねぇよ……憂さ晴らしが出来んなら、上等だ。」

 バーダック:ゼノはそう言って笑い、光に包まれた。そしてカードとなり、ヴィクトリーの手に戻る。

「ひ、人が……カードに……」

 ルカとアリスがそれを見ながら、軽く驚いた。ヴィクトリーはバーダック:ゼノのカードをカードホルダーにしまった。

 その後は、ミカエラさんから色々話を聞いた。まずは感謝の挨拶、ルカに何故エンリカが寂れたのか……俺達の体から聖素が消えて、何故かイリアスの力が感じられるとか……

 俺達はあの時見た光景を、ミカエラに説明してみる……

「……そうですか。」

「イリアス様が、そんな事を……」

 二人の元熾天使は顔を見合わせ、考えた。

「私は、私こそがイリアスの御心を一番理解していると思っていましたが……」

「絶対者の孤独など、簡単に理解できるものではありませんからね……しかし、熾天使である私達から何か出来る事があったかと思うと……」

「……やり切れませんね……」

 しかしイリアスはこれで消えた。ミカエラも心残りは無く、エデンと一緒にここで暮らすようだ。

「エデン様……俺もたまにここに来るからさ、また戦わねぇか?」

「当然です……次は負けませんよ。」

 エデンは笑いながら、ヴィクトリーと握手した。

「……」

 ミカエラは意外そうな顔で、エデンを見る。彼女が、武闘家みたいな事を言うのが、珍しいらしい。

「……それじゃあ三人とも、凱旋パーティに行くぞ!」

「ああ!」

「え、俺もかよ!?」

「当然だ!」

「ええ……あなた達の帰還を、世界が待っていますよ。」

 ミカエラも笑い、ヴィクトリーとルカの肩を叩いた。

「それじゃあ、僕達は行きます!ミカエラさん、色々ありがとうございました!」

「エデン様!俺、もっともっと強くなるからな!」

 こうして戦士達は、エンリカを後にした。そして、ガルダの背に乗って平和になった世界を回るのだ……

 

 〜ハイライトをお送りします〜

「わーい、ルカお兄ちゃんが帰ってきたー!魔王をお嫁さんにして、帰ってきたー!」

 イリアスヴィルの少女がそう言って、ヴィクトリーが吹き出した。

「あははははは!何だそりゃ!あははははっ!」

「ち、違うよ!!」

「笑うな!!」

「うわぁあああああああっ!!!」

 アリスとルカの鉄拳が飛び、ヴィクトリーをぶっ飛ばした。

「す、すげぇ……」

「夫婦の力って奴か……」

 それを見ていた村人が、驚きながら言う。

「だから、違うってば!!」

 

 イリアスベルク……

「あのチビ共、頑張ったんだぜ。感謝してやれよ。」

 ベジットが、ドラゴンパピー達のことを言いながら、ヴィクトリーに向き合う。

「そうか……」

「俺も引退かと思ったら、こんな所で出番とはな……やれやれ、カードってのは分からねぇな……」

「SDBHで、使う機会あったら使ってやる。」

 ヴィクトリーはそう言って、ベジットをカードに戻した。

「ヴィクトリー、済んだか?」

 ルカは……軽く、マントが引っ張られた痕があった。

「……おめぇ、何があった?」

「いや、その……プチ達が僕を呼び出して、いきなり飛びついてきて……」

「ひゃ〜……あいつら、そんな事すんのかぁ……」

「……」

 アリスは、何故か目を逸らしていた……

 

 ハピネス村……

「……」

 頭に矢が刺さったベジータが、不機嫌そうに腕を組んでた。

「おめぇ、何があったんだ……?」

「知るか……おおかた、味方のどいつかが撃ち間違えたんだろ……」

「え、えへへ……」

 ベジータの視線の先……ハーピー姉妹が、汗を垂らしながら笑ってた。

「あ、あはは……ご愁傷さん……」

「フン!」

 ベジータはカードに戻り、ホルダーの中に入った。

「ヴィクトリー。」

 後ろから呼んだのは、クィーンハーピーだった。

「クィーン。」

「……どうです?今夜、私達のパーティに参加しませんか?」

「いや、今度にしとく。」

 秒でヴィクトリーは答え、クィーンハーピーも微笑んだ。

「そんじゃ、また今度!」

「ええ……待っていますよ……」

 

 ナタリアポート、サン・イリアをすっ飛ばしてサバサ……

「私の娘の婿になる事も(やぶさ)かではないと言えないことも無くはないか!?」

「うるせぇ!!ならねぇっつってんだろ!!」

「はぁ……」

 ヴィクトリーとサバサ王が、ボカボカと殴り合い、サラも頭を抱えながら覗いてる。

「あ、あはは……」

「げ、元気だなぁ……」

 悟空:GTとルカが並んで、二人のやり取りを見る。二人とも戦士ということもあり、通じ合うものがあるのだろう。その様子は、非常に楽しそうだった。

「ブロリーをぶっ倒した後にいきなり崩れるから、どうしたもんかと思ったけど……幸せそうで良かったぜ……」

「は、はぁ……」

「そんじゃあ、後で頼むぜ。」

 そう言って悟空:GTはカードとなり、ルカはカードを取った。

 そんなこんなで、ヴィクトリーはサバサ王をノックアウトしてしまった。

「や、やったぜ……」

「ふふ……強くなったな、武闘家よ……」

 サバサ王は笑いながらヴィクトリーに親指を立て、笑う。彼もそれに応じて、笑った。

 さすがのサバサ王も、ヴィクトリーの意思の硬さに参ったようだ……

「……では、ルカよ。」

「……って、今度は僕かい!!」

 この説得は、だいぶ長く続いた……

 

 色々すっ飛ばして、サキュバスの村……

「わぁああああっ!!」

 悟空:GTがイモを食べながら、サキュバスから逃げてる。

「……あいつ、サバサにも居なかったか?」

「あれは別の奴だ。」

「へぇ……」

「悠長に話してねぇで、助けてくれよ〜っ!!」

 見ると、サキュバス達はじゃがいもが沢山入った袋を持っていた。

「待たなさーい!!」

「ねぇっ!?お芋あげるから!!ねぇ!!まてぇええ!!!」

「イモは食う!!だけどオラ浮気はしねぇぞ!!チチにぶっ殺されちまう〜!!」

「は、はは……」

 ヴィクトリーはそう笑い、指パッチンする。すると悟空:GTはカードになり、彼のカードホルダーに収まった。

「しかし、何でイモが……?」

「村長が、配り歩いてるのよ……」

 声をかけたのは、エヴァだった。

「村長さんが……?」

「ええ……おかげでこの村はイモだらけ……全く、あのイモ村長め……」

「あはは……」

 ヴィクトリーもルカも、そう苦笑いした。

 まぁ、平和で良かった……

「ちょっと待ちなさい!私達の出番が……」

 残念モンスターが、飛び出してきた。

「うるせぇ!どうせ原作と同じ展開だろうが!!」

 しかしヴィクトリーは残念モンスター達を蹴り飛ばし、吹っ飛ばした……

「おいおい……」

 

 そんなこんなで、全ての町を回った。ヴィクトリーもカードを全て回収し、満悦のようだ。途中途中で僕もヴィクトリーも誘惑されたのは、何だったんだろう……

 そして僕達は、再び魔王城に戻ってきたのだった……

「ふぅ、疲れたなぁ……」

「久しぶりに魔王城でメシ食わせて貰おうかな〜……久しぶり?」

「一ヶ月も寝ていたのだ、そういう感覚になるのも無理は無い。」

 そんな会話をしながら、魔王城に入る三人。

「……お帰りなのじゃ。そして二人とも、よくぞ試練を乗り越えた!」

 戻ってきた僕達を出迎え、たまもはぱちぱちと拍手する。

「試練って、なんの事だ……?」

「ど、どういう事なんだ……?」

「……」

 隣のアリスはと言うと……何故か、全く感情の覗えない表情をしていた。

「お主達は各地で、淫らな誘いを受けたじゃろう。実はアレは、ウチの根回しがあったのじゃ。あれこそ、魔王の婿になる者に与えられる試練。どんな誘惑にも乗らない精神力が試されていたのじゃ!」

「えぇっ!?」

「ははぁ……」

「魔王様の婿となるには、魔王当人より強くならなければならぬ。その条件は、かつての魔王城の戦いでクリアしておる!さらにお主は、数々の誘惑を見事に振り払った!よって後見人であるウチが、ルカとヴィクトリーのどちらかを魔王様の婿として認めよう!」

「え……えええ!?」

「俺はパスしとく。」

 ヴィクトリーは何食わぬ顔で、即答した。それに対して、たまもがぎょっとする。

「な、なんと……そ、即答とは……」

「だって、俺はまだまだ一人でやりてぇ事があるし……もっともっと、強くなりてぇんだ。それにお婿さんってトシでもねぇしよ……」

「それ言ったら、僕もなんだけど……」

「俺は別にそこまでアリスが好きじゃねぇし……何より、アリスが好きなのはルカだ。」

「な……!!」

 アリスの顔が紅潮した。どうやら、その通りらしい。

「むふふ、それもそうじゃのう……古今東西空前絶後、ルカしか眼中に無かったからのう……」

「ち、違う……余は、そんな……!」

「い、いきなり……こんな……」

 たまもはアリスをルカに向け、ヴィクトリーはルカをアリスに向ける。そして、二人ともそのケツを叩いた。

「ぁっ!?」

「ぅっ!?」

 そして、見つめ合う二人……二人は顔を赤くしながらしばらく見つめ……ルカが告白の言葉を述べ始めた。アリスも応じ、彼に愛の言葉を捧げる……

「アリス……」

「ルカ……」

 それを見る、たまもとヴィクトリー……

「…………ウチらの存在は忘れられているのじゃ。」

「にひひ、いいじゃねぇかよ……しばらく、二人にしてやろうぜ……」

「いや、この後に婚姻の証として早速子作りしてもらうつもりじゃ。」

 ルカとヴィクトリーも吹き出し、たまもを見た。

「こ、子作りって……」

「そ、そんなの……急すぎておかしいよ!」

 そうか、早めに世継ぎを産まねぇとダメなのか。ひゃ〜、アリスの婿さんって大変だぁ。

 なんて、ヴィクトリーはすっかり対岸の火事という感じで眺めていた。

「赤ちゃんは、二人産んでやる。男の子と女の子だ、それで妥協してやろう。」

「えぇっ!そ、そんな……」

 早速アリスは脱ぎ始め、ルカを睨む。彼は蛇に睨まれた蛙の如く、動けずに居た。

「それでは、後は若い二人に任せるとして……ヴィクトリーよ、今日という今日は逃がさんぞ。」

「ひっ……!?」

 ヴィクトリーはたまもの嫌な気を感じ、逃走した。

「あっ、待たんか〜!」

「待つかよ!」

 そう言って彼は逃げるように魔王城から出て、飛んだ。

「……」

 魔王城から、「あひぃ」というルカの声が響いた。その声を背に受け、ヴィクトリーは足早に飛び去った……

 

 ルカとアリスの行為は三日三晩に及んだらしい。おかげで、更に一週間寝込む事になったとか……

 思った通り、人と魔物の共存は実現した。俺とルカもそれを成した英雄として、崇められている。

 

 そして今、俺達は……

「……よう。」

「ああ……」

 地図にも載らないような、海の何処かにある孤島で向かい合っていた。

「まさかおめぇから決着を付けてぇなんて、言われると思ってなかったぜ。」

「僕も、君に影響されちゃったみたいだからね……」

 二人はそう言い、お互いを睨み合った。

「……決着だ!」

「ああ……行くぞ、ヴィクトリー!」

流血表現

  • もっとする
  • このままでいい
  • しなくていい
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。