もんむす・くえすと!の世界に降り立った1人のヒーローアバターの話   作:ジョーカー:ゼノ

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始まりの出会い

  イリアスヴィル。この世界のとある小さな人里だが、イリアス神殿という神殿が大きく佇んでいる。

  勇者になるには、旅立ちの年齢になった時に、このイリアス神殿で女神の洗礼を受ける必要がある。

  そして、その旅立ちの年齢を三日後に控える少年がいた。

「あと三日か……母さん、僕もとうとう旅立つ日が近づいてきたよ。」

  朝日を浴びながら、少年は装着している指輪に語りかける。彼が付けてる指輪は、流行り病で死んだ母親の形見であるという。

  彼の名はルカ。この村で暮らし、勇者を目指しながら日々修行している少年である。

  そんなルカは朝食を終え、今日も修行に向かったのだった。

 

  人里に近い野山を走り、基礎体力作りをしている時だった。

「落ちるなんて聞いてねぇぞぉおおおおおお!!!!!」

  空からやかましい声が響く。見ると、なんと自分と同じくらいの少年が空から落ちてきてるではないか。

「な、何だっ!?」

  唐突かつ超展開で硬直してしまう。空から落ちてきた少年はというと、落ちながら手足をばたばたさせてる……が、すぐに冷静になった様子で、近くの木に目をつけ、そこから伸びる枝に手を伸ばし、それを掴んで一回転する。

  だが余りの衝撃に、枝はあえなく折れてしまった。

「うわぁっ!?」

 そうして転がりながら、彼は地面に落ちてしまった。

「いっててて……お〜いてぇ……舞空術使えねぇとやっぱ不便だな……くっそ〜……」

 頭を摩りながらぶつくさと言う少年に近寄り、声をかけてみる。

「あ、あの……大丈夫ですか?」

「大丈夫に見えっかよ……お〜いてぇ……」

 少年は服の汚れを払いながら立ち上がる。どうやら、特に深刻な問題は起きてないようだ。

 しかし、この少年は何者なのだろうか。いきなり空から落下してきた彼は、武道家のような独特な格好をしている。見ない顔だったので、とりあえず村の者では無いことは明らかだった。

「よっと。えーっと……」

 少年は立ち上がり、ふと周りを見渡す。そして、そこら辺の木に目をつけた。

 すたすたと木に歩き寄り、止まる。

「……こいつでいいかな……」

 そう言うと少年は右足を下げ、半身になり、そして拳を作って腰に携えて身を落とし、正拳突きの構えをとった。

「な、何を……」

 とりあえず、木をパンチしようとしてるのは理解出来るが……

「とりゃっ!」

 予想通り、木に思いっきりの正拳突きを放つ。しかし、予想外にもズンッという鈍い音が響いた。

「……やっぱり弱体化してやがる……慣れねぇもんだな……」

「……!」

 見ると、木の幹にはくっきりと拳の痕が残ってる。鍛錬の積んだ武闘家と、それなりの怪力じゃないと、出来ない技術だろう。

 ルカは察した。「こいつ、ただ者ではない」と。

「あ、あの……名前を……」

「ん?俺か?俺はヴィクトリー。旅の武闘家さ。おめぇは?」

「僕はルカ。よろしくね。」

 その名を聞いた瞬間に、ヴィクトリーは目を見開く。

「ルカ……!?じゃあ、おめぇがイリアス様の言ってたルカっちゅう奴か!?」

 イリアス様。見ず知らずの空から落ちてきた世間知らずそうな武闘家から、その名前が発せられるとは思ってもいなかった。

「イリアス様……!?」

 こうなってしまっては、空から人が降ってきただけの話では済まない。

「……どうやら、お互いに状況判断が必要なようだな……」

「そうみたいだね……」

 

「へぇ〜……別の世界から……イリアス様に連れてこられて……」

「なかなかスケールのでけぇ話だろ?」

 二人とも野山を駆けながら、お互いの事の全てを話した。

 ヴィクトリーの話には、にわかには信じ難い所や何が何だか分からない所もあったが、イリアスというマジックワードにより説得力を帯びていた。

 そして現に、別の世界からこのヴィクトリーがやってきたのだ。

「それにしても俺、勇者って聞いたモンだから、もっと筋骨隆々の人間想像してたぞ〜……世の中って分かんねぇもんだな〜。」

「僕だって、武闘家と言えばそれこそ筋肉モリモリのマッチョマンを想像してたよ。」

 互いに笑いながら、素直なイメージを口にする。

「おめぇ、腕は立つのか?ほら……実戦経験とか……」

「え……ま、まぁ……それなりには……」

 実は実戦経験など皆無に等しかった。それ以前に、こんな感じで修行する事も余りなかった。あるとしても、イリアス神殿に洗礼を受けにきた戦士から少し教えてもらうのが殆どだった。

 当然、魔物なんかとは見た事も戦ったことも無い。

 ヴィクトリーは、それを見透かした。

「……あんまねぇみたいだな……」

「うぐっ……」

 しかし、次には驚くべき提案をしてきた。

「どうだ?一回だけ!一回だけマジで勝負してみねぇか?」

「えっ……」

 冗談じゃない。相手は木の幹に拳の痕が残る程のパンチを放ってくる。あんなのまともにくらったら死んでしまう……かも。

「わ、悪いけど……ちょっと遠慮……したいかな?」

「びびってんのか?」

 彼は挑発的な笑みを浮かべながら、目の前に立ちはだかった。もう完全に、やる気まんまんらしい。

「ぅ……」

 確かに、相手は強敵かもしれない。だけどこれから先はこいつより大きな敵が待ち構えているに違いない。

 何より今は勇者と武闘家。すなわち、男と男が向かい合ってる状況だ。ここで断ったら勇者として恥をかくだろう。

 ルカは勇気を出し、いい感じの木の棒を拾う。流石に生身の人間相手に剣を使うのはマズイと思ったので、木の棒で代用する事にした。

「分かった……よろしく頼むよ……」

 思わず笑みがこぼれる。今の僕は最高に決まってるんじゃないのか。

「そう来なくっちゃ。」

 ヴィクトリーが白い歯を向けて笑い、そして構える。ルカも木の棒を剣に見立て、構える。

 葉が擦れる音、風の吹く音が二人の沈黙の間に響く。やがて風が止み、葉のざわめきが収まった時だった。それが、開始の合図となった。

「はぁっ!」

 仕掛けたのはヴィクトリー。走り寄り、拳を放ってくる。

 だが、大振りの攻撃はルカにも見切る事が出来た。

「ちぃっ!」

 その場で左足を軸に回転して廻し蹴りを放つ……が、これも大振りな攻撃。蹴りは見切られた。

「やぁっ!」

 その顔面に木の棒を振り下ろすと、意外にも命中し、彼はよろけた。

「ぎっ……!!」

「たぁっ!」

 よろけてる所にまた木の棒を振り下ろす。しかし、受け流され、頬にパンチが叩き込まれた。

 確かに痛かった……けどさっきの威力は出てない様だ。

「マジバトルでそんなパワーを集中してるヒマはねぇんだ……さっきの威力は出ねぇから安心しろ。」

「そうか……やっ!」

 構え直し、その鳩尾に突きを放つ。だが、彼の掌が棒の先を止めた。

「たっ!」

 すると、距離を詰められ、顔面に高速で拳が叩き込まれた。打拳を顔面にくらったとはいえ、所詮は素人武闘家の速さ重視の軽いジャブ。立て直す必要すらなく、脇腹に木の棒を叩きつけてから距離をとる。

「……やるじゃねぇか……へへ……」

 ヴィクトリーは脇腹を抑えながら、賞賛しながら笑みをこぼした。

「そっちこそ……」

 ルカの方は、初めての実戦で笑う余裕は無いが、好成績で少し満悦していた。

「まだまだ行くぞぉっ!」

「おうっ!」

 二人の実践訓練は長く続いた……

 

「ろ、ロニーさーん……や、薬草と傷薬ください……ふ、2人分……」

 修行が終わり、道具屋に立ち寄る。

 人柄の良さそうなおじさんが、ルカを見て笑顔を向けた。

「おっ、また修行に行ってたな……今回は特にボコボコになってきたなぁ。えっと、そっちのお連れさんは?」

 彼はヴィクトリーに目を向け、不思議な顔をする。

「え、えと……俺はヴィクトリーだ……ここら辺の人間じゃねぇけど訳あってルカと修行してた……」

 道具屋は珍しそうな顔もしたが笑顔に戻り、ルカに格安で薬草と傷薬を売った。

「勇者のお連れさんならお前さんの分も格安だ!」

「へへ……サンキュ……へへへ……」

 道具屋は天井を見上げ、息を吐く。

「そうか……もうルカも後三日で旅立ちの時か……寂しくなるな……」

 少し寂しそうな声で、そんな事を言った。

「そうですね……」

「ルカが魔王を討伐して帰ってきた時には、ここも畳んでいるだろうな……」

「いやぁ多分そんな事ねぇと思うぞ。おっちゃん優しいし。」

 ヴィクトリーが、口を挟む。それを聞いて、道具屋は笑った。

「ふふふっ……勇者の連れさんがそう言ってくれるなら……まだ頑張っちゃおうかなっ!」

 少し明るくなった様子で張り切る。元気が出たみたいで良かった。

「それじゃあ、僕達はこの辺で……行くよ、ヴィクトリー。」

「はーい。」

「まいどありっ!」

 ルカ達は、道具屋を後にしたのだった……

 

「いってぇえええええ!!!」

「が、我慢してよ……この世界にはこれしか無いんだから……」

 ルカの家。質素で小さめの家だが、少年一人で暮らすには大きめの家。ヴィクトリーは取り急ぎそこで居候する事に決めた。

「や、薬草なんて使ったの初めてだからよ……こ、こんな染みるもんなのか……」

 薬草の扱い方を教え、自分で治療させたらなんとこのザマである。

「僕より強そうなのに、こんな所で弱いんだね……」

 ルカは少し呆れた様子で、ヴィクトリーの苦戦する様を見ていた。

「それにしても今日が終われば後二日か……はえぇもんだな〜時間ってのは。」

「もうお互いすっかり友達気分になってるしね。」

 ヴィクトリーは、窓から夜の人里を覗く。

「後二日……修行は付き合うけど流石に今日みてぇな実戦はしねぇぞ……かなり消耗するし……」

「あはは……」

 提案したのは君だろうが……でも、実戦を経験できてよかった事に代わりは無い。悪態はつけないなと思い、僕は黙ってその言葉を飲み込んだ。

「よしっ!今日はここらで寝るぞ。俺は……別に立ちながら寝れるからいい。」

 そう言うとヴィクトリーは部屋の隅に移動し、目線を下げ、目を瞑る。

「えっ、えぇ……ちょ、ベッドぐらい余ってるから……って、あぁもうホントに立ちながら寝てるし……」

 とは言え遅い時間に変わりは無い。今日はもう寝よう……

 そう思い、自室に行こうとした時だった。

「あっ、便所何処だ?」

 ずっこけてしまった。突然寝て突然起きて、いきなりトイレ何処だって……

 イリアス様の送った戦士とはいえ、こいつと旅を共にするのが少し不安になってきた……

流血表現

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