もんむす・くえすと!の世界に降り立った1人のヒーローアバターの話 作:ジョーカー:ゼノ
「……ふぅっ。」
ヴィクトリーの足元に顔面に拳の痕をつけたローパー娘が倒れる。彼女の命に別状はなく、ただ気絶しているだけだ。
俺だって魔物をぶっ殺したい訳じゃない。強いヤツと戦って、そいつが悪いヤツならこらしめて改心させたいのだ。人と魔物との共存に賛成もしているし、仲良く出来るんなら仲良くしたらいいと思っている。
「ヴィクトリ〜!」
「お、遅かったな。」
ルカとアリスが、ようやくヴィクトリーに追いついた。
「あっ……エンジェルハイロウ無しで倒したのか……」
「ふむ、死なせてもいないようだな。」
とにかくこの密林を出れば、イリアスポートは目前だ。
「よし、行こうぜ二人とも!」
「あぁ!ここを出れば活気に満ちた港町だ!」
「各地の名産品や、海の幸が余を待っている……」
「……」
いつもは呆れる所だが、食べ物だけで済むだけマシに思えてきた。
「ドコが活気に満ちた港町だ……」
「あ、あれぇ……?」
イリアスポートについたわけだが……
「港町と言う割には活気が無いな。」
「そうだね、何かあったのかな……?」
港町というから、活気に満ちて、商人や出店が並んでいる……かと思いきや、少し寂れた様子だった。通行人もまばらで、とても商業の要所とは思えない程だった。
「オッス!おっさん!」
ヴィクトリーがら出店をやっていた主人に声をかける。
「ずいぶんと寂れてる様子だけどさ、何かあったんか?」
主人はため息を吐き、言った。
「そりゃ寂れもするさ……昨年からセントラ大陸との往復便が出ていないんだ……」
「なに……!?」
「えぇっ……」
セントラ大陸への船が出ていないなんて、そんなの初耳だ。
「な、何で船が出ていないんですか……!?」
ルカが食い気味に主人に迫る。
「……ひでぇ嵐が原因さ。聞いた話じゃ、沖を出たところで激しい嵐に襲われるそうだ。」
「嵐……?」
「いつもって訳でもねぇんだろ?」
まさか船が出る時に限って嵐が来ることなど……
「それが、いつもなんだよ。どんなに晴れていても、船が沖から出ると嵐が襲ってくるらしい。」
ヴィクトリーも食らいつく。
「……船が出る時に限って?」
「船が出る時に限って。」
「……マジ?」
「マジ。」
………………
「め、めぇったな……そんなの絶対魔物の仕業だろ……どうすりゃいいんだ……」
ヴィクトリーが首を傾げ、アリスを見る。
「アリス、心当たりはねぇか?」
「……ふむ、少しだけなら……」
今まで黙っていたアリスが答える。
「何か知っているのか?アリス。」
「今はあまり多く話せぬが……ある強力な妖魔が船での横断を邪魔しているのだ。イリアス大陸とセントラ大陸を遮断し、冒険者をイリアス神殿に向かわせない事が目的だな……」
「ある強敵な妖魔……」
「なるほど、そいつを倒しゃいいんだな……」
風を起こしている原因が魔物なら、倒してしまえばいい。
船が出せないせいで、ここの人達の生活もめちゃくちゃになっている……そんな事をする魔物を、黙って放置する訳にはいかない……!!
「やめておけ、貴様らでは太刀打ち出来ん。」
アリスは冷たく言い放ち、二人はガクッとする。
「それにしても、これでは各地の名産品が楽しめんではないか……」
「……」
「んな事どうでもいいんだ。今は目の前の問題に集中しねぇと……」
ヴィクトリーの言う通りだ。このイリアス大陸から出られないのは非常に困る。魔王討伐が目的なのに、こんな所で足止めをくらうわけにはいかないのだ。
「さて、どうしようか……」
「俺はいざとなったら泳ぐぞ。」
無茶言うな、脳みそ筋肉。
「手はあるわ!勇者一行様!」
「ま、まさか……!!」
「この声は……!!」
そう、またまた現れたのだ。残念なラミア……アミラが。
「私は残念なラミア……アミラ。潮風に吹かれ、佇むヘビ。」
「おめぇちょっとしつけぇぞ……」
「お前、イリアスベルクに住んでるんじゃなかったのか……?」
「私はアミラ。旅をする蛇。略して旅蛇。ダーリンに付き添い、時には先回り……」
ヴィクトリーがアミラの言葉を殺し、口を開いた。
「おめぇが来るって事は、また何か情報があんだろ?」
「その通り。私はただウザいだけのキャラでは無いのよ。」
ヴィクトリーがルカを見てにひひと笑う。
……いや、何故この状況で?
「……で、今回の情報は何だ?聞かせてくれ。あ、おめぇのスリーサイズには興味ねぇ。」
「ぅぐぐっ……な、なかなかやるわね……」
一体、何の戦いをしているんだこいつらは。
「……コホン。私が集めた情報によれば、この町を出て少し行った所にとある洞窟があるの。そこにキャプテン・セレーネが遺した財宝があるのよ。」
「あのキャプテン・セレーネが……?」
「知ってんのかルカ?」
キャプテン・セレーネ……今から百年近く前、世界の海を股にかけた伝説の大海賊。その名は田舎者の僕ですら知っていた。
「ひとつなぎの大秘宝?」
それを知らないヴィクトリーは、とりあえず頭に出た単語を言った。
彼の言葉で、アリスと僕とアミラがずっこける。
「余達は麦わらの一味か!!作品が違うわドアホ!!」
「そもそも、こんな片田舎にそんなものある訳ないだろ!」
「つーか、この世界にグランドラインもレッドラインも無いわよ!」
「何もそこまで突っ込まくても……」
突っ込み終えた所で、話を戻す。
「……まぁ、その秘宝の中に、『海神の鈴』と呼ばれるアイテムがあるらしいの。この鈴があれば、どれだけ海が荒れ狂っていても沈まないようになるそうよ。」
「そいつはすげぇや!」
「なるほど、それがあれば……」
あのキャプテン・セレーネの遺した財宝だ。そんなものがあっても不思議ではない。その『海神の鈴』とやらがあれば、セントラ大陸に渡れる筈だ!
「でも、その洞窟は魔物の巣窟になっているみたいよ。多くの冒険家がキャプテン・セレーネの財宝を求めて入ったらしいけど……ほとんどの人は戻って来なかったみたい……きゃっ!アミラこわい!」
ヴィクトリーが青筋を浮かべて、片手を上げて渾身の怒りのかめはめ波を放とうとしている。
その技を使うのはまだ早いぞ。今は有益な情報が手に入った事を感謝しなければ。僕はそう思い、ヴィクトリーを抑えた。
「アミラのうれしはずかし情報はここまでよ。お役に立てたかしら?」
「あぁ……微妙に腹が立ったけど、すごく役に立ったよ。」
「ふっ……それでは私は潮風の向こうに消えるとするわ……」
アミラが立ち去ろうとして、また僕達の方に振り返る。
「なお、私のエロシーンはありません。ラミアス」
言葉の途中で、ヴィクトリーがラミアの足を掴む。
「とっとと帰れぇえええええええ!!!」
「いやぁああああああああ!!!!」
……海の彼方に、ぶん投げてしまった。
「お〜さっぱりしたぁ……」
ヴィクトリーは手をパンパンと叩き、空を見る。
「……ふむ、海賊の秘宝か……おいしいものは無さそうだし、あっても腐っていそうだな。」
……いや、今は食べ物の事なんてどうでもいい。
その『海神の鈴』とやらがあれば、セントラ大陸へ渡れる筈だ。
「行こうぜ、ルカ。その鈴が無けりゃ船は出れねぇんだろ?」
「あぁ……行こうか。」
こうして、僕達は予定には無い秘宝の洞窟の探索へと向かったのだった。
道中、キャンプを張り野営に備えることになった。
「意外に距離があったんだな……こんな事なら、イリアスポートで一泊すればよかったよ……」
秘宝の洞窟への道のりは短くなく、道中で野営するハメになったのだ。どうやらそう甘くは無かったらしい……
「う〜ん、無計画な勇者だなぁ。」
「まったくだ。さぁ二人とも、今日は一緒に修行だ。」
アリスの突然な提案に、僕達は驚く。
「い、一緒に修行か……」
「悪くねぇかもな……」
思えば、今の今まで、別々に修行してきた。二人で修行するのもたまにはいいかもしれない。
「勇者と武闘家……初めて見た時から、よくある組み合わせだと思っていた……」
コクコクと二人は頷く。
「……それで、貴様らはどっちの方が強いのだ?」
……はっ?
僕達は顔を見合わせ、首を捻る。そして、そのまま黙ってしまう。
「なに、簡単な事だ。今日は貴様ら二人、どっちが強いかを競えばいい。」
「実戦訓練ってやつか……?」
そう言えば……実戦訓練は、旅する前に一度したきりだ。
あの時の戦い、今思うとどうしようもない戦いだっただろう。だが、この旅で僕達は強くなった。それならば……
「へへっ……俺も気になってた……俺とルカ、どっちが強いのかよ……」
ヴィクトリーがやる気に満ちた笑顔で言う。
「そういう事か……」
ようやく事の趣旨を理解出来た。
「え……と、剣は……」
「これを使え。」
アリスはそう言い、ルカに木刀を渡す。
「それなら遠慮なく攻撃できる筈だ。さぁ、さっさと始めろ。」
「あぁ、ありがとう!」
ルカとヴィクトリーは距離をとり、互いを見た。
「……」
「……」
風が止み、木々が静まる。
景色が黒に染まり、互いだけを視界に映す。
………………
………………
ダァンッ!!と二人の踏み込みが大地を鳴らす。
「でやっ!」
「ふんっ!」
ルカのなぎ払いがよけられ、そのこめかみに蹴りが迫る。
「ぢっ!!」
その蹴りを止め、互いが静止する。
ルカの持っていた木刀にビリビリと衝撃が残る。
「かぁっ!!てやぁっ!!」
その足を弾き、兜割りをヴィクトリーにかます。
だが、その木刀はヴィクトリーをすり抜けてしまった。
「こっちだ。」
「いっ!?」
攻撃を放ったヴィクトリーは残像。本物はすぐ後ろにいた。
「……む、残像拳か……珍しい技を持っているな……」
アリスは二人の戦いを腕を組みながら見ている。
残像拳……猛スピードで動き、自分の影をそこに残すという技だ。
極めれば五体ぐらいの残像を残すことができると言う。
ヴィクトリーの放った拳にルカの体が吹っ飛ぶ。
「でやぁっ!」
そして、吹っ飛んだルカに追い打ちをかけようと、跳び込んだ。
「……!!」
ルカの木刀から煙が出ている。
どうやら、すんでの所で防御したらしい。
「はあぁっ!!」
そして、木刀を振り上げ、ヴィクトリーの顎を打ち抜いた。
「がっ……!?」
顎に打ち込まれた撲撃に体が浮き、、脳が揺れる。
だが、一瞬で意識が戻り、身を反らし、バク転で距離をとった。
「……まさかおめぇに先に攻撃されるとはな……やるじゃねぇか……」
ヴィクトリーはニヤニヤと笑いながら口から出た血を拭う。
「……よーい……ドンッ!!」
「!?」
踏み込む音が聞こえた瞬間に、ルカは頬に打拳をくらい、地面に叩き伏せられる。
接近が見えなかった。おそろしいスピードで迫り、一気に間合いを詰めてきたのだ。
「おっし……俺も一発……」
「……やるね……」
ルカが立ち上がり、頬から出た血を拭う。
「準備運動はここら辺でいいだろ。こっからはマジでやるぞ……!!」
「おう……!!」
そう言い、二人はぶつかりあった。
拳と木刀がぶつかりあい、ドカドカと乱打する。
「はぁっ!!」
ルカが踏み込み、雷鳴突きを放つ。
「ぐぎぎ……!!」
ヴィクトリーはその刀身を掴み、腕力だけで突きを殺した。
「がぁっ!!」
ヴィクトリーの目が鋭くなり、気合砲が放たれた。
ドンッという音と共に衝撃が響く。
「ぐっ……!!」
それを何とか歯を食いしばって踏ん張り、ヴィクトリーを睨む。
「お、俺の気合砲に耐えやがった……!」
「てやぁっ!!」
ルカの木刀に力が込められ、殺された突きに威力が宿る。
油断したヴィクトリーの体にそれが命中し、倒れる。
だが一瞬で持ち直し、ルカの所に向いた。
「そこだっ!」
その時既にルカが跳びこみ、ヴィクトリーに兜割りをかます所だった。
「ふんっ!!!」
その木刀をパンッと掴み、完全に止めてから頬に足刀を放つ。その足刀をくらったルカはグラッと肩膝をつき、ヴィクトリーを見る。
「し、白刃取りなんて初めて使ったぞ……」
「僕も初めて使われたよ……」
そう言い、立ち上がる。互いの目には闘志がメラメラと燃えており、既にこれが訓練であることを忘れていた。
「ジャン拳!!パー!!」
「当たるかっ!!」
ルカはヴィクトリーの攻撃を避け、その顔に木刀を振り下ろした。
「待っていたぜ……!!」
「えっ……!?」
ヴィクトリーがルカの木刀を額にくらい、ニッと笑う。
すると、ルカの脇腹に拳がめり込んだ。
「ぐふっ……!?」
「超龍撃拳……!!」
そして、重い一撃のラッシュが続き最後のアッパーカットで体が宙に浮く。
「だあっ!!」
トドメの気合砲でダメ押しされ、体にダメージが響く。
「ぐっ……!!」
何とか着地し、深呼吸をする。
「……この技で決める……!!」
「……あぁ、俺もだ。」
ルカは木刀を寝かせ、構える。ヴィクトリーは手を合わせ、エネルギーを込める。
「うぉおおおおおおおおおおおお!!!!」
そして二人は、互いに走り寄り、技を放った。放たれたかめはめ波が空に飛び、天を貫いた。
「……が……!!」
二人の内の一人が倒れる。立っていたのは……ルカだった。
「か……勝った……!?」
ルカの魔剣・首刈りがかめはめ波より早く炸裂した。技をくらったヴィクトリーのかめはめ波は見当違いの方向に飛んだだけだった。
「なんと……余はヴィクトリーが勝つと思っていたが……」
アリスが目を瞬かせ、驚く。ルカは勝利の余韻と、脱力感で地にへたばってしまった。ヴィクトリーも仰向けになり、空を見る。
「すげぇやルカ……はっははは……」
「お前こそ……あははっ……」
もう限界。体力も気力もすっからかんだ。
「……ふむ、やはり貴様らの動きには無駄がありすぎるな。」
「や、やっぱり?」
「……」
ヴィクトリーは少し脱力気味に、ルカはガクッとしてしまった。
「そうは言っても、戦うのだけで精一杯なんだよ……」
アリスは少し黙った後、ヴィクトリー達に言った。
「その動きに風を宿し、その動きに土を宿し、その動きに水を宿し、その動きに火を宿す……」
「……?」
「これこそが戦いの極意。これを体得しなければ、魔王を討ち倒すことなど不可能だ。」
「……わ、悪いけど何が何だか分からないよ……」
「お、俺も……」
そんな禅問答みたいな事を言われても困る。
「はぁ……とりあえず貴様らは、心を鍛える所から始めんとな。……ほら、禅でも組んで瞑想してみろ。」
「げ、げえぇ……」
「僕、こういうの苦手だなぁ……」
二人は疲れた体を引きずり起こし、禅を組む。
「ぶつくさ言うな。堕天使エリゴーラは、瞑想で己の体をたちどころに癒したという。さすがにそれは眉唾だろうが、瞑想における精神統一で得るものは多い筈だ。」
二人は静かに瞑想した……
すると、ルカの体のキズがみるみる内に塞がっていった。
「ほ、ホントだ……!キズが治ったぞ!」
「!?」
「な、なんだと!?そんな訳があるか!貴様、いったいどういう体をしているんだ!」
二人は仰天し、目を見開く。
「変なのか……?堕天使なんとかってやつは、瞑想で傷を癒したってアリスが言ったんじゃないか。」
「そんなの、普通に考えればデマカセの類だろうが!瞑想して傷が治るなど、物理的におかしいぞ!」
「ぷ、プラシーボ効果って奴か……?ルカ、おめぇ本当に純粋な人間か……?」
「いや、だって……」
ルカはまた静かに瞑想をする。
そしたら、更にキズが塞がっていった。
「ほら、出来たじゃないか。」
「何それ、こわっ……」
「す、すげぇ……」
何だか引かれたり驚かれたりされて複雑だ。
そんなこんなで、今日の旅はここら辺で床につくことにした……
流血表現
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もっとする
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このままでいい
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しなくていい