もんむす・くえすと!の世界に降り立った1人のヒーローアバターの話 作:ジョーカー:ゼノ
過去から来たルカ
ルカとの一騎打ちから、何日が経った日。いつも通り、この世界は平和だった。
そんな平和の最中、グランゴルドで蜘蛛之皇女が封印装置を破壊し、暴動を起こしたらしい。あっという間に街では蜘蛛が暴れ回り、兵隊や戦える人間とアリ娘とゴーレム達が出動する。
「しょうがねぇな……」
そんなグランゴルドの定食屋で、たまたま飯を食いに来てたヴィクトリーは、すぐに蜘蛛之皇女の気の場所に駆けた。
「はぁあっ!!」
「ふんっ!」
蜘蛛之皇女はアラクネロードを連れ、暴れていた。どうやら封印されてる間に、力を蓄えていたらしい。
「く、くそ……どうすれば……!!」
「くっ……すばしっこいわね……!!」
兵士も魔導師も、みんな圧倒されているようだ。強い蜘蛛モンスターの前では彼らでは、勝負にならないだろう。
よし、ここは俺が出よう……そう思った時だった。
「待て。」
暴れ回る二体の前に立ったのは、ルカだった。風に髪とマントを靡かせながら、彼は颯爽と蜘蛛モンスターの大軍の前に登場したのだった。そうして、鋭い目で彼女らを睨めつけている。
「な……!?」
それを見ていたヴィクトリーが、驚いた。
あいつ、確かアリスとどっか旅してるんじゃねぇのか?それなのに、来たのはルカ単身だ。しかもこのルカ、何かが違う……!
そう思っているヴィクトリーとは違い、蜘蛛之皇女とアラクネロードが、ルカを見てクスクス笑っていた。
「ほう……汚れし勇者か……」
「また私達の前に立ちはだかると言うのね……」
今度の彼女らは、ひと味違う。前と戦った時より、遥かにパワーアップしているのが分かる。油断のできない戦いを強いられそうだが……
「立ちはだかる……?違うな……僕はお前達を倒しに来た。」
ルカはなんと、強気に、そう答えた。確固たる自信があり、彼女らを睨みながら、はっきりとそう言ったのだった。
「うふふ……」
アラクネロードはそう笑い、指をパチンと鳴らす。すると、それに呼応した蜘蛛娘が何体も現れた。
「あははっ!犯してあげる!」
「うふふっ!後悔するのね!」
当然、彼女らも力を蓄えていた様子で、一体一体がそれなりに強敵だ。しかし──
「……シルフ。」
ルカは体に風の力を纏い、剣を握る。そうして、一瞬で敵の群れの一番後ろの奴の背後まで走った。そうして辿り着くと同時に、僅かな突風が彼を追いかけるように吹く。
「……かっ!?」
次の瞬間、彼女達の体に斬撃が走り、その剣の効果によって封印された。辺りに、バラバラと蜘蛛が現れ、カサカサと逃げ惑う。
「ほう……」
それを見ていたアラクネロードが、ニヤニヤ笑っている。先程の閃走の如きスピードを見ても、余裕の様子だ。
「次はお前達の番だ……」
彼女を睨みながら、ルカは言う。その言葉の色には慈悲がなく、また冷徹という言葉が似合うほど冷たかった。
「へぇ……」
アラクネロードと蜘蛛之皇女はクスクスと笑い、彼を見る。
「愚かな……以前とは違う事が、まだ分からぬのか……」
「私もあの時とは違う……今度はお前を搾ってやる……」
「やめておけ、お前達は僕に一瞬でやられる。分かってるんだぞ。」
彼の妙な発言に、ヴィクトリーも彼女らも、引っかかった。『分かってるんだぞ』という言葉……まるで、彼が未来から来たかのような言葉であった。どういう事なのだろうか……
しかし、彼女らはそんな事は気にせずに、ルカに向いた。
「ふふふ……中途半端な力を身につけた人間がどうなるか……思い知らせてやろう!」
アラクネロードはそう言い、気を解放した。あの時とは段違いの、凄いパワーが波動する。
「……」
ルカは眉も動かさず、剣を構える。どうやら、動じていない様子だ。
「はぁっ!!」
アラクネロードは渾身のエネルギー波を、ルカに放った。大爆発が巻き起こり、衝撃が轟く。そうして爆発による爆煙が晴れた時……そこに、彼の姿は無かった。
「……!」
ヴィクトリーは、民家の屋根に目を向ける。すると、そこにはアラクネロードと蜘蛛之皇女を見下ろすルカの姿があった。彼女らは、それに気付いていないようだが……
「ふん……跡形も無く消し飛んだようね……」
「呆気ないのう……ふはははははっ!」
「……」
どうやら、ルカの動きを見切れたのはヴィクトリーだけらしい。それ程までに、彼の動きは戦闘のために洗練され、磨き上げられたものだった。
「…………」
ルカは、両手をヒュバババッと動かしてから、蜘蛛之皇女達に突き出した。そうして突き出したその手に、エネルギーを込める。
「アラクネローーード!!」
ルカは蜘蛛之皇女達に向かって、超高密度の気が込められたエネルギー弾──バーニングアタックを放った。
「!!!」
「くぅっ!?」
彼女らは、それを飛び避ける。その眼下では、大爆発が巻き起こっており、当たったらタダでは済まなさそうなのが伝わった。それに安堵していたアラクネロード──
「はぁあっ!!」
彼女の背後で、ルカが剣を振り上げていた。動こうとしたが、もう手遅れ。振り上げられた剣は、今度は勢いよく振り下ろされる。
「っ!!?」
アラクネロードの体が唐竹割りにされ、縦に斬撃が入る。斬られた所からは、魔物の肉体を構成する成分──魔素が、霧のように噴き出しながら消失していく。そうして、その体が真っ二つになった。
「はぁあーっ!!」
更にルカは容赦しなかった。彼女の体に何度も斬撃を往復させ、細切れにしたのだった。そうして次には手を向け、バラバラになった彼女にエネルギー波を放ち、消し飛ばした。
「……っ!!」
バラバラになった肉体の塵が集合し、蜘蛛の形になって、ぽとりと地面に落ちる。そうして辺りを見てから逃げようとするそれを、魔導師達が捕らえた。
「なに……!?アラクネロードが、一瞬で……!?」
「今度はお前の番だ。蜘蛛之皇女。」
ルカはそう言い、蜘蛛之皇女に剣を向けた。
「ふ、ふん……確かにパワーアップしたのは私達だけでは無いらしい……」
彼女は構え、ルカに向いた。
「しかし妾だけは、先のアラクネロードのようにはいかんぞ……すぐに嫐り、喰らってくれる……!!」
「……」
彼も剣を構え、しっかりと彼女を見る。
「はぁああああっ!!」
蜘蛛之皇女は気を解放し、猛攻を仕掛けてきた。
「……」
ルカの纏っている力が、風から水に、一瞬で切り替わる。そうして降りかかった攻撃の嵐を、流水の如き動きで避け続けた。
「がぁあっ!!」
蜘蛛之皇女は隙を見て、ルカに足払いを放った。しかし彼は、足でそれを受け止める。
「なにっ!?」
「ふんっ!!」
そして、彼女の胸を袈裟切りした。
「ぐぁあっ!!?」
「……」
更にルカは跳び後ろ蹴りをして、彼女を勢いよく蹴り飛ばした。
「ぐぅああああっ!!」
蜘蛛之皇女は壁に叩きつけられ、壁は粉砕して瓦礫になる。そして瓦礫が、彼女を覆った。
「はぁあーっ!!」
しかしすぐに気を解放し、瓦礫を吹っ飛ばした。
「……」
「ハァーッ……ハァーッ……!!」
彼女は息を切らせながら、クスクスと笑う。余裕を装っているつもりなのだろうが、どちらが不利なのかはハッキリと分かっていた。
「やるではないか、素晴らしいぞ……まさに想像以上だ……!!くっくっく……!!」
「……」
無愛想な表情を浮かべるルカに、蜘蛛之皇女は手を差し伸べ、微笑んだ。
「どうだ?妾の餌としてではなく、妾の婿として来る気は無いか?毎晩を妾と共に過ごし、極上の快楽を味わいながら、美味いものを食い、美味い酒に酔う……悪くはないだろう?」
「興味無いね。」
ルカはきっぱりとそう告げる。その返答に腹が立ったのか、彼女の額に青筋が浮かんだ。
「ふん……どうせそう返すと思ったわ。ならば貴様に残された道は一つ。妾の餌になるしかない……!!」
「言ったはずだ。お前じゃ僕には勝てない、と。」
「くっくっく……!!」
蜘蛛之皇女の青筋が立ち……だんだんと、収まった。
「所で、貴様の剣は素晴らしい剣だな。少し、見せてくれんか?」
突然そんなことを言われたルカは、困惑する。
「何を企んでいる?」
「何も企んではおらぬ。それとも、妾に剣を渡すのが怖いか?」
「……」
ルカは少し考え……エンジェルハイロウを、蜘蛛之皇女に投げた。彼女はそれをキャッチし、その刀身を見る。
「ほほう、これがかの堕剣エンジェルハイロウか……確かに、凄まじい力を感じるぞ……くくくっ。」
蜘蛛之皇女はそう言いながら、ルカの顔に目を向けた。
「あのアラクネロードを倒せたのは、この剣のおかげ……そうは思わんか?」
「何が言いたい?」
「なぁに、簡単なことだ……所詮、貴様はこの剣が無ければ妾に勝つことは出来んのだ!!」
蜘蛛之皇女は踏み込み、ルカの眼前に高速移動して、エンジェルハイロウを振り下ろした。彼はそれを、素手で受け止めた。
「なにっ!!?」
「……ふっ……」
蜘蛛之皇女は気を全開放し、腕に力を込めた。
「がぁあああああ……!!!」
「……」
しかしルカは、押される気配も無い。むしろ、蜘蛛之皇女を押していた。
「うぐっ……!?ぐぐぐっ……ぐっ!!?」
「どうやら、そうでもなかったみたいだね……」
ルカはそう言いながら、蜘蛛之皇女の胸に手を添えた。
「な……ま、待てっ……!!!」
次の瞬間、彼の手から放たれたエネルギー波が、彼女の胸を貫いた。
「ぐはぁあ……っ!!?」
蜘蛛之皇女はぶっ飛び、地面に倒れ込んだ。その胸の穴からは不思議と出血は無く、代わりに魔素が溢れだしていた。
「ぐっ……ゲホッ……!!ぐはぁあっ……!!」
「……」
悶絶する蜘蛛之皇女に、ルカはつかつかと歩み寄る。
「ま、待てっ!待つのだ!な、ならば貴様にはアラクネ族が制圧した土地や、膨大なる資源を与えよう!だ、だから……」
そう言いかけた彼女の口に、エンジェルハイロウが突き刺さった。
「あがっ……!?」
彼女は消散し、大きなクモの姿になった。
「い、今です!」
そのクモを、宮廷魔導師の一人が捕らえた。これで、騒動は解決した……
「……」
凄まじい実力を見せつけた、ルカ……そんな彼を見ていたヴィクトリーは、思った。ルカにしては、容赦が無さすぎる。感じられる気は彼本人のものなのに──
「ヴィクトリー。」
「うわっ!?」
ルカが、いきなり目の前に現れた。
「お、おめぇ……最初から気付いてたんか……!?」
「お前が見てることぐらい、気付いてるよ……」
ルカはそう言いながら、後方に手を向ける。エンジェルハイロウがルカの手に引き寄せられ、それをキャッチする。そして納剣した。
「……ここじゃ、話しづらい。ちょっと、町の外にまで行こうか。」
「あ、ああ……」
グランゴルド郊外……ここは人通りも少なく、魔物も住み着いていない。
「……」
「……」
そんな所で、ヴィクトリーとルカは向かい合っていた。
「そういや、礼を言わなきゃな。蜘蛛之皇女達をやっつけてくれて、ありがとな。」
「いや……蜘蛛之皇女達はお前が倒す筈だったんだけど、つい……」
「誰がやっつけても、同じだと思うけどさ……」
「そうか……僕は、無意味に歴史を変えてしまったのか……?」
「歴史……?どういう事だ?」
「……」
ルカは、黙り込んでしまった。ヴィクトリーは唾を飲み、口を開いた。
「……単刀直入に聞くぞ。おめぇ、誰だ?」
「……」
ルカも、深呼吸をして落ち着く。
「……これから話すこと、信じてくれるか?」
「ああ。今はそれしか、頼りがねぇからな……」
「分かった、話そう……まず僕は、ここより過去からこの世界に渡ってきたんだ。」
「過去から……?」
「うん……と言っても、つい一ヶ月ちょっと前なんだけど……」
一ヶ月ちょっと前──確か、俺達が本格的にイリアスと激突した辺りか、その前だったか。
「でも、そんなコト言いにわざわざ来たわけじゃねぇんだろ?」
「うん……」
ルカは頷いてから、俺に向いた。
「僕に、修行をつけてくれ。」
「……へ!?」
出てきたのは、予想外の言葉だった。いや、これまでの言葉全てが予想外だ。いきなり過去からルカが来て、修行をつけてくれと頼んできたのだ。誰かにこんな事を話したら、狂ってると思われるだろう。
「し、修行って……俺、剣技は出来ねぇぞ?」
ルカはそれを聞き、深く頭を下げた。
「それでもいいんだ。ただ、お前と一緒に修行したいんだ!」
「ルカ……」
「……」
ヴィクトリーは少し考えてから、顔を上げた。
「……詳しい事は後で聞くとして、今のおめぇがどの程度の戦闘力かを知りてぇ。ちょっと、軽く手合わせしてみっか?」
「ああ……!」
ルカは頭を上げ、剣を構えた。
「はっ!!」
ヴィクトリーは超サイヤ人となり、ルカを睨んだ。
「!!」
ルカはそれを見て、圧倒的なヴィクトリーの力を感じる。そして、すぐに実力差を理解した。
「こいよ。」
「……はぁあっ!!」
ルカはノームの力を解放した。筋肉が張り、凄まじいパワーが宿ったようだ。
「いくぞ、ヴィクトリー!」
「はよ来い!」
ルカは片手でエネルギー弾を放ちながら、ダッシュしてきた。ヴィクトリーはエネルギー弾を弾き飛ばし、エネルギー波を放った。
しかしルカはそれを弾き飛ばし、跳んで、そのこめかみに思いっきり蹴りを入れた。
「ぐ……!!」
ヴィクトリーは直撃を許してしまい、揺らぐ。
「シルフっ!!」
ルカは精霊を一瞬でシフトし、疾風怒涛の斬撃の嵐で猛攻してきた。
「ふっ……!」
ヴィクトリーはその全てに対応し、ルカに足払いをかけた。
「うわっ!?」
その足払いはヒットし、彼をすっ転ばせた。
「はぁっ!」
ヴィクトリーは足の裏を天に向けてから、かかと落としを放ってくる。
「ウンディーネ!」
ルカはまた精霊をシフトし、流れるようにそれを避けた。
「ちっ!」
ヴィクトリーは、起き上がりざまのルカの頭に、後ろ廻し蹴りを放つ。しかし彼はまたまた精霊をノームにシフトし、その足を掴んだ。
「なにっ!?」
「だぁあっ!!」
そして、思いっきり地面に叩きつけた。
「ぐっはぁあ……!!」
「はぁあっ!」
更に、サッカーボールか何かのようにヴィクトリーを蹴り飛ばした。
「ぐぅうっ!!」
彼は地面を指でガリガリ削りながら、後退する。そして立ち上がった。
「へへへ……っ!!」
そして、笑いながら気を解放し、超サイヤ人2となった。金髪が更に逆立ち、体から滲み出た気がバチバチと電光する。
「!!?」
「へへへ……俺がスロースターターなコト、忘れてた?」
ヴィクトリーは一瞬でルカの眼前に迫り、蹴り飛ばした。
「ぐぁあっ!!」
「はぁああーっ!!」
更に両手にエネルギーを貯め、連続エネルギー弾を放った。
「うわぁああああっ!!」
容赦のないエネルギー弾の連打に直撃してしまい、爆発が連続し、ルカは大ダメージを負ってしまった。
「はぁっ……はぁっ……!!」
ルカは跪き、肩で息をしながらヴィクトリーを見た。
「……よし、ここらでやめにするぞ。」
ヴィクトリーはそう言って、超サイヤ人を解いた。
「……」
ルカは精霊を引っ込め、瞑想する。すると、傷が癒えていった。
「精霊のシフトがはえぇな。無駄な力を使わずに、超サイヤ人と渡り合ってたぞ。」
「やっぱり、思った通りだ……僕の世界のヴィクトリーより、めちゃくちゃ強いじゃないか……!」
「……」
そう言えば、そうだった。こいつ、別の時空から来たルカだっけか。ならば、その時空にも俺がいる訳で……
「特に、あの変身……あんな変身、僕は知らない……」
「その気になれば、これより強くなるさ。」
二人は深呼吸してから、向かい合った。
「……よし、一緒に修行しよう!わくわくするなぁ!」
「うん、よろしくな!」
ヴィクトリーとルカは握手をした。
「……でも修行する前に、聞かして欲しいな。おめぇの時空で、何があったのか……」
「……そうだったな。まだ話してなかったか……」
修行する前に、ルカの話を聞くことになった。果たして、過去では何があったのか……