もんむす・くえすと!の世界に降り立った1人のヒーローアバターの話 作:ジョーカー:ゼノ
グランゴルドで暴れる蜘蛛之皇女達を封印した、ルカ。しかし彼は、未知の方法で別時空から来たルカだった。
ルカは、なんとヴィクトリーに修行を申し込んできた。それに快諾し、戦士達は時を越えて、握手を交わした……
そして話を聞くことになったが……
「あ、そうだ。」
ヴィクトリーは思い出したようにそう言って、魔王城の方角に向いた。
「魔王城に行って、たまも辺りに何か頼んでみっか。」
ヴィクトリーはそう言いながら、飛ぼうとした。
「ちょっ、それはまずいんじゃないか!?別時空から来た筈の僕が、ここの人物に触れまくると歴史が……」
「心配すんな。多分バレねぇし、上手いこと言ってやるからさ!」
「多分て……むむ……」
「強くなりてぇんだろ?いいから付いてこいって!」
「わ、分かったよ……相変わらず、いい加減なんだから……」
「よし、決まりだな!行こう!」
ヴィクトリーとルカは飛び、魔王城に向かった……
自前で飛ぶとなると、時間が多少かかる。
「……ここだと、人間と魔物の共存が成功したんだな。」
ルカは光の羽で空を飛びながら、眼下を見てそう言った。
「魔王城まで、ゆっくり向かおう。その間に、教えてくれねぇか?おめぇの世界で何が起きたのか……」
ヴィクトリーはルカと並び、その顔を覗き込んだ。ルカは悲しそうな感情と怒りが混ざったような目で、彼の方へ向いた。
「……ここの僕とお前は、アリスに勝ったのか?」
「ああ、死闘だったけどな……」
あの時のアリスは、めちゃくちゃに強かったのを覚えている。決死の20倍界王拳での猛攻と、ルカのフルパワーの乱刃・気炎万丈で、ようやく決着がついたのだった。
「僕の世界だと、違うんだ。」
「なに?どういう事だ?」
「僕達は四天王達に打ち勝った後、アリスと戦う事になったんだ。それで……僕が、負けたんだ。」
「なんだと!?」
確かに、あの戦いはどちらが勝っても負けてもおかしくはないだろう。このルカは、別時空から来たと言っていた。なので、そんな世界線があってもおかしくはない。
「ここから先は、アリス本人から聞いたんだけど……アリスに負けた僕は凌辱されて失神して、ヴィクトリーだけは戦おうとしたらしい。そして、もうダメかと思ったその時……お前は超サイヤ人に覚醒したんだ。」
「そこでかっ!?ずいぶんはえぇんだな〜……」
本来なら、プロメスティンとの戦いでなる筈だった超サイヤ人……早すぎる覚醒だった。ルカを痛めつけられ、自分の実力が及ばなかった事に怒り、覚醒したのだろう。
「ああ……超サイヤ人になった事で、アリスの闘志にも火がついたみたいだが……逆転に次ぐ、逆転。ヴィクトリーが、勝利したんだ。だけど……」
「だけど……?」
確か俺達の歴史では、そこでイリアス達が攻めてきたんだが……
「イリアス達が攻めてきて、ヴィクトリー一人で立ち向かったんだ。」
「俺一人で……?」
「うん。他の魔物は天使には触れない様子だったし、ヴィクトリーだけが何故か天使に触れる事が出来たんだ。それで、立ち向かっていたんだけど……」
そこからは、語らなかった。しかし、ぷるぷると震えながら握りこまれていた拳が、何があったかを語っていた。
「やられちまったのか。」
敢えて口にしなかった事を、ヴィクトリーは遠慮なく言う。それにルカは、頷いた。
「……僕が起きた時には、ヴィクトリーは血まみれで、片腕が無くなっていた……それでも、何とか生き延びていたんだ。」
ルカは怒りと悔しさを目に宿して、ドスの効いた声でそう言った。おそらく、自分の非力に責任を感じているのだろうか。
「おめぇとアリスは、どうやって助かったんだ?」
「ヴィクトリーは倒れる寸前、僕達に仙豆っていう不思議な豆を食べさせたんだ。それで、助かったんだよ。」
「……」
どうやら、そういう事らしい。魔王城で超サイヤ人となり、アリスを倒したものの、天界軍にボロ負け。今の所は、そんな感じだ。
「その後、僕とアリスは世界中で天界軍を蹴散らした。たまにヴィクトリーが瞬間移動してきて、一緒に戦う事もあった。」
「おめぇ、イリアスヴィルには行ったか?」
「あ、うん……村自体は滅ぼされてたけど、一部の人を除いてみんなエンリカに転送されていたよ。天使達はミカエラさんが何とかしてくれたし、無事に世界中の天界軍を蹴散らす事が出来たよ。」
「そうか、そりゃあよかった。」
「いや……ここからなんだ。」
ルカは、重い顔でそう言った。
「アルカンシエルっていうキメラモンスターが、魔王城に強襲してきたんだ。」
「アルカンシエル……あの、グランべリアと戦ってたデカブツか。」
「ヴィクトリーは立ち向かおうとする僕とアリスを気絶させてから、単身でアルカンシエルに向かったんだ。」
「どうなっちまったんだ?」
「……」
ルカは、黙り込んで目を伏せてしまった。
「……そっかぁ、やられちまったんだな。」
「ああ……僕が目を覚まして、向かった時には既に……」
「……」
自分が死んだという話を聞くのは、何処か妙な気分だった。決していい気分では無いが、冗談でも笑い話でも何でもなく、本当に向こうの自分がルカ達を守るために死んでるのだから。
ルカには、仲間の死は重すぎるだろう。辛かっただろうに、こうして話してくれている事に感謝せねば。
「ヴィクトリーは、僕に戦いも教えてくれてたんだ。だから、頼りになるのはお前だけだって……」
「そうか……」
ヴィクトリーはここで、ある事を質問するのを忘れていた事に気付いた。
「おめぇ、どうやってこの時空に来たんだ?」
そう、これが一番の疑問なのだ。危うく、質問するのを忘れる所だった。
「ヴィクトリーが殺されて、僕は部屋で放心状態になっていると……ある男が、急に現れたんだ。」
「ある男……?」
「うん……髪が赤くて、肌が白くて、青い服に身を包んだ魔物……とも違うんだけど、人間じゃない事は確かで……放たれてる気は禍々しくて、どう妥協してみても味方じゃないというイメージだったんだけど……」
「……」
心当たりが、一つある。この特徴、そして急に現れるという現象、更にルカを別時空に飛ばす能力……
「そいつが手を差し伸べて、言うんだ。『さぁ、来るがいい。お前に選択肢は無いはずだ。』って……」
「……それで、ホイホイついて行っちまったのか。」
ルカは、こくんと頷いた。
「……修行が終わったら、そいつの所に飛ぶつもりだよ。」
「この世界に、居るのか!?」
「多分ね……でも、『帰る時は一人で来い。』って言ってたんだ。」
「……」
気になる所はあるが、今はあくまでこのルカの問題の解決が中心だ。それに俺はタイムパトロールじゃねぇ。面倒事はゴメンだ。
そう思いながら飛んでいると、魔王城が見えてきた。
「……見えてきたぜ。」
「うん、行こう!」
二人は飛ぶスピードを高め、魔王城に向かった……
「……平和じゃのう。」
「ええ……」
たまもと八尾が向かい合い、碁を打っている。
戦況は、僅かにたまもの方が押していた。そうして彼女は碁石を掴み、打とうとした時だった。その手を止め、笑った。
「……たまも様?」
八尾が、怪訝な顔をして硬直する。しかし、それの訳が分かった。来客だ。
「ヴィクトリーか、入ってこい。」
たまもがそう言うと、ゆっくりと襖が開かれた。
「ヤッホー!」
「おう、やっほーなのじゃ!」
たまもとヴィクトリーは、元気に挨拶する。八尾がその様子を見ながら、会釈した。
「これはこれは、久しぶりじゃのう。」
「ああ、八尾さんまで!相変わらず手でけーなー!」
彼はそう言いながら、八尾と握手する。獣の手だが、ちゃんと握手できていた。
「……」
ルカもヴィクトリーと並び、彼女らに会釈した。
「ん?ルカよ、もう帰ってきたのか?魔王様はどうした?」
「あ、えっと……その……」
「アリスなら、今頃弁当でも食いながらこっちに向かってんだろ。」
まごまごするルカに代わって、ヴィクトリーが応えた。
「って、そんな事はどうでもいいんだ。いい修行場所とか用意出来ねぇか?例えば、重力が10倍になる結界の中とか……」
「む、久しぶりに二人で修行するのか?全く……ルカもこんな修行おたくに付き合わされて、災難じゃのう。」
「は、はぁ……」
たまもはぴょんっと立ち上がり、襖を開ける。そこには、巻物がたくさんあった。
「ちょいと待っていろ。その間に、八尾の相手でもしてやれ。」
「俺、囲碁は出来ねぇんだけどな……」
「僕も……」
ヴィクトリーは座り、八尾と囲碁をやった。ルカはというと、それを見ているだけだった。
「それにしても、エデンとはどうなった?」
たまもは、何気なくヴィクトリーにそう聞いてみた。
「ああ、エデン様か。たまに連絡くれるよ。メシ作ってくれたり、修行相手請け負ったりしてくれるから、そこそこ仲良くはやってるつもりさ。」
「……」
エデン……僕がまだ知らない、新たなる戦士が居るというのか。今の会話を聞くところ、味方に感じられるが……
「それにしても、二人共成長したのう。」
八尾が、唐突にそんな事を言ってきた。
「魔王城に来た当時ですら凄まじい気を見せつけてくれたというのに、まだまだ強くなるのか……ふふん、貴様の力は底なしのようだな。」
「ああ……でも、まだまだこんなんじゃだめだ。もし、イリアスよりつえぇ奴が現れた時に、何にも出来ねぇさ。」
「流石は武道家……いや、武闘家。」
八尾がそう言って、碁を打った。
「いやあ、まだまだ未熟者さ。」
ヴィクトリーがそう言って、碁を打とうとした時だった。
「見つかったぞ!」
たまもはそう言って、一つの巻物を手にしていた。その巻物には、『無之修行空間』と書かれている。
「おお、何だそりゃ?」
「妖狐一族に伝わる、修行空間じゃ。まぁ見ていろ。」
たまもは巻物を開き、手で印を結ぶ。
「開ッ!!」
そして、その床に魔法陣を展開させた。
「さぁ、来るがいい。」
「よし、行くぞルカ!」
「ああ……」
たまもとヴィクトリーとルカは魔法陣を踏み、消えていった……その場に残るのは、八尾だけだった。
「……私、待っていないといけないのでしょうか……」
「……」
そこは、広い寺院の中庭のような空間だった。しかし、その広さは桁違いで、地平線の向こうにまで続いていた。そして心無しか体が重く感じる。
「妖狐の中でも神次元に至る者は、だいたいここで修行するものなのじゃ。ここなら、気兼ねなくやれるじゃろ?」
「ああ……」
「ただし、気をつけることが幾つかある。まず、この寺院の外に広がるのは『無』じゃ。だから何だという話じゃが、ここの広さはこの星と同じ……迷ったら、二度と出れなくなるぞ。」
たまもは次に、寺院の中を指した。
「食料や寝床や着替えは、あそこじゃ。食料の数に限りは無いが、あまり美味いものでもないぞ。」
たまもはそう言ってから、今度は手をぽんと叩く。
「おっと、ここの重力は元の世界の10倍じゃ。それに加えて、気温は50度から-40度まで可変する。それに加え、空気は地上の四分の一。ヤバくなったら、寺院の中に駆け込むがいい。そこなら安全じゃ。」
「ああ、無理はしないつもりだよ。」
「時の流れも違うぞ。ここでの一年は、向こうでの24時間じゃ。でも無駄な歳はとらんから安心しろ。」
「まんま、精神と時の部屋だな……」
「元の世界に戻る時は、ウチに念じるといい。すぐに帰してやろう。それじゃあ、気が済むまで頑張るのじゃぞ。」
たまもはそう言って魔法陣を踏み、消えてしまった。その魔法陣も消え失せ、残るのはルカとヴィクトリーだけだった。
「フロとトイレはあっちみてぇだな。」
ヴィクトリーはそう言いながら、寺院方面を確認する。
「か、体が重い……あ、暑くて息苦しい……」
「あったりめぇだ。重力は10倍、気温は可変、酸素も四分の一ぐれぇなんだから。でも、元の世界で修行するより100倍は価値のある修行になりそうだぜ。」
二人はそう言いながら、まずは寺院に入った。
「わっ、一気に体が楽になった……」
「どうやらここの環境は、地上での理想の環境と同じに整えられているみてぇだな。」
ヴィクトリーはそう言いながら、タンスを開け、胴着を取り出した。
「んじゃ、着替えたら早速始めっぞ。遊びに来た訳じゃねぇんだ。」
「ああ……!」
ルカはヴィクトリーと共に着替える。あの二尾妖狐と、同じ格好だ。
「な、何かヴィクトリーとペアルックみたいでやだな……それに、女の子っぽいし……」
「そうこだわるなよ。動きやすいぜ、これ。」
ヴィクトリーはそう言いながら、肩をぐるぐると回しながら跳躍した。
「この修行に、天使の力も精霊の力も極力使わねぇ。むしろ、素の戦闘力を極限まで高めてもらうつもりだ。」
「素の戦闘力を……?」
「ああ。既におめぇは精霊の力も天使の力も極まっている状態みてぇだ。そこから、素の戦闘力を底上げすりゃ必然的に精霊の力も天使の力もぐーんと上がる筈さ。」
「そうか……頑張るよ!」
「よし、始めようぜ!」
二人は修行場に出て、修行を開始した……
別時空の魔王城……夜の10時辺り……
「なに!?ルカが行方不明だと!?」
アリスの耳に、そんな情報が入ってきた。伝えたのは、ヴァンパイアだった。
「は、はい……先程様子を見に行ったら、忽然と姿を消していまして……」
「ぐっ……それは困った事になったな……あのドアホめ、何処に消えた……!?」
アリスがそう言いながら、髪を掻く。ヴィクトリー亡き今、戦力の要となるルカが消えてしまえば天界軍との戦いは絶望的なものになってしまう。どうにかして、ルカを探し出すしかない。
「話は聞かせてもらったぞ、魔王様。」
そう言って入ってきたのは、たまもだった。
「む、たまもか……いや、今はそれどころでは無いのだ!」
「分かっておる。ルカの捜索は、ウチの妖狐達に任せるとしよう。それに、あのルカは何時かまた帰ってくる……そんな気がするのじゃ。しかし今から、ルカ無しの作戦を練るしかないみたいじゃな……」
「……余も、そう信じたいが……何処に行ったのだ、こんな時に限って……」
アリスとたまもは、早速ルカ無しの作戦会議を開く事にした。
天界軍との激突の時まで、あと35時間……果たして、ルカは帰ってくるのだろうか……