もんむす・くえすと!の世界に降り立った1人のヒーローアバターの話 作:ジョーカー:ゼノ
ルカの居なくなった時空……天界も、動いていた。
「……」
プロメスティンは、アルカンシエルが回収してきたヴィクトリーの髪の毛を元に細胞を培養し、その細胞を元にある薬を作っていた。あの注射器で注入するタイプの薬ではなく、丸薬だ。
「プロメスティン様。」
アルカンシエルが、声を掛けてきた。
「なんだ、アルカンシエル。」
「いったい、そのようなものを作って何を……?」
「これを貴様らに投与し、戦闘力の飛躍をしてもらう。そうすれば、四天王などコケに出来るはずだ。」
「……」
アルカンシエルは、戦士だ。戦士の心を持ったアルカンシエルは、その丸薬を見て嫌そうな顔をしていた。
「どうした、アルカンシエル?まさか、この戦いを戦士の戦いだと思っているのか?」
「……」
「残念ながら、これは戦争だ。手段を選んでいるヒマなどない。」
プロメスティンはそう言って指を鳴らし、ネクスト・ドールを招集した。
「皆の者……もしもこの闘争に勝つ気があるのならば、この丸薬を飲み込め。」
そう言いながら取り出した、五粒の丸薬……それには、凄まじい力が篭っているのが感じられた。
「あははっ!上等ぉ……!」
「ふふん……こんな丸薬に頼る間も無いと思いますけどね……」
「右に同じ……」
「……それがプロメスティン様の命令ならば……」
「何でもいいじゃない、とにかくそれで私を満たせるんなら……!!」
ハイヌウェレ、アンフィスバエナ、ツクヨミ、アルカンシエル、ラプンツェルの五体はその丸薬を手に取り……一斉に、飲み込んだ。すると、五体の体の内から凄まじい力が溢れ出した。
「……!!」
「はぁああっ!!」
「何ですか……この力は……!!」
「……」
「あははっ!疼いちゃうっ!たまんないわァ……!!」
サイヤパワーの篭った丸薬は、ネクスト・ドール達に凄まじい戦闘力の飛躍をもたらした。溢れ出る気と、湧き出てくるガッツに彼女達は歓喜していた……ただ一体を除いて。
「勝てる……勝てるわ!!あのアルマエルマなんて、目じゃないほど強くなったわ!!」
「これは、あのサイヤ人の力ね……うふふ、エネルギーがとめどなく溢れてくる……!!」
「たまも……あなたが守るはずだった友の力で、あなたを殺してやりますよ……!!」
「………」
「ああっ、あの汚れし勇者と交尾したいっ!!体を無理矢理ホールドして、嫌がる勇者を無理矢理犯してやりたいっ!!」
思い思いの意気込みを口にしながら、歓喜するネクスト・ドール達。それを目の前にして、プロメスティンは嗤っていた。
「……テストは、成功か。」
ボソリと、そう呟きながら……
「……」
エデンは裸のまま、今現在の情勢をメモしていた。
「……」
あの憎き野蛮な猿を葬る事に成功した今、全力で攻めるしかない。
アルカンシエル……とかいうモンスターを生み出したプロメスティンが功績を上げたのが気に食わないが、今はこの戦いに勝つ事に集中せねば。
「全てはイリアス様のために……!」
とは言え、ルカという汚れし勇者が人間側の戦力の要になっている。この少年は、我々天使にダメージを与えられる、謎の力を宿した剣を持っているのだ。それに、この一人のせいで智天使のワミエルが潰されてしまっている。決して、油断はできない。
しかし、悩みの種はそれだけだ。いざとなれば、ルカも自分の手で葬ってしまえばいい。
「……今度は私が……イリアス様に尽くします。」
そう呟き、エデンはまたメモを書く筆のスピードを早めた……
「……」
黒のアリスは下界の何処かに降り立ち、世界を見渡していた。
「……さぁ。」
くまのぬいぐるみが、自分の腹からホイポイカプセルを取り出た。それを投げ、出てきたのはピアノだった。
「うふふ……」
黒のアリスはそのピアノを奏で始めた。
美しい音色が響く。まるで、世界の音すらも自分のものに成り代わらせるように……
「……くまさん、世界とは何と美しいのでしょう。」
ピアノを奏でながら、黒のアリスはくまのぬいぐるみに語りかけた。
「私は、魔王として世界を見渡していました。そうして考えた結果、我々人外こそが至上の存在と気付きました。神の創りし存在の中で、唯一の失敗……人間。私は世界を……全てをより美しき理想郷にするべく、この戦いで勝利を手にします……あの下衆女神に成り代わって……!!」
黒のアリスの奏でるピアノの音色が、重圧になる。
「うふふふっ……うふふふふっ!あと少し……あと少しで、世界の全てが、この手に……!考えただけで、ゾクゾクしてきますわぁ……!」
夜空に、黒のアリスの笑い声と重圧なピアノの音色が響く。征服の野望を宿した漆黒のアリスは、嗤っていた……
「……」
イリアスは、水晶で部下を見ながら考え事をしていた。
「まさか、あの戦士が裏切るとは……」
ヴィクトリーの事だ。
あのヴィクトリーを連れてきたのも、訳がある。本来ならば、サイヤ人の残虐性と超サイヤ人による圧倒的なパワーで魔王討伐を成して貰おうと思っていた。
結果、超サイヤ人は魔王を討った。しかし、止めの拳は自分に向けられたのだった。完全に想定外だ。
ヴィクトリーは噂通りの残虐なサイヤ人ではなく、『戦いが好きなだけの優しい男の子』だったのだ。敵となってしまった以上、殺すしかない。だから、プロメスティンにヴィクトリーの殺害を命令したのだ。
「……」
しかし、あれだけの力をただ殺すのも勿体ない。なんとかして、自分達の力に転用できないか……
イリアスは、考え込んだ……
動いているのは、天界軍だけでは無かった。四天王やアリスが招集され、会議室で輪を作っていた。
「困ったわね……まさか、ルカちゃんまで居なくなっちゃうなんて……」
「しかし、今は我々だけで何とかせねば……」
「それに、ルカは死んだとは限らない……見つかる筈よ……」
「ああ、部下達に全力の捜索をさせている所じゃ。」
アルマエルマ、グランべリア、エルベティエ、たまもの順に口を開く。
「それより、目の前の状況をどうにかせねば。明日にはドレインラボにもバイオラボにも行かねばならんのだろう。」
アリスが本題を切り出してきて、たまもは頷いた。
「そうじゃ。大まかな作戦は出来ておる。」
そう言いながら、たまもは紙を取り出して開いた。
「まずアルマエルマとエルベティエじゃが、お主にはドレインラボの制圧を頼みたい。行けるか?」
「面倒だけど、ルカちゃんもヴィクトリーちゃんも居ないんじゃやるしかないわね……」
「ええ、任せて。」
アルマエルマとエルベティエは頷いて、拳を握る。
「ウチは、バイオラボの制圧に向かう。あそこには捕虜がいる他、ラ・クロワという曲者も居るらしいからのう。」
「たまも一人で……?大丈夫なのか?」
たまもの提案に食いついたのは、グランべリアだった。
「安心せい。ウチを誰だと思っている。」
たまもは無い胸を張り、ふふんと笑いながらそう応えた。
「……それで、私と魔王様はどうすれば?」
「その事なんじゃが……グランべリアは、魔王様と一緒に罪人の封牢に行ってほしいのじゃ。」
「少しいいか?」
グランべリアが頷くより先に、アリスが口を開いた。
「グランべリアよ、貴様はルカのカドラプル・ギガで大怪我をしていて、ぐっすりと眠っているのではなかったのか?何故ここにいる?」
「……」
グランべリアは下を向いてしまう。そんな彼女の代わりに、たまもが口を開いた。
「ルカが居なくなったと伝えたら、バネ細工のように起き上がったのじゃ。それから、何を言っても聞かなくてのう……」
「ルカもヴィクトリーも居ない今、私が動くしかないと判断しました。」
「しかし、貴様はまだ傷が……」
「魔王様。」
たまもは、眉間に皺を寄せてアリスに向いた。その額には、汗が垂れている。
「案外、そうも言ってられん状況の筈じゃ。天使の殆どはルカやヴィクトリーが潰したものの、まだ黒のアリスやプロメスティンといった曲者まで居る……ここは、少しでも無理をしなければ、勝てん筈じゃ。」
「それに、私の傷なら全快しました。今なら、思いっきり動く事が出来るはずです。」
「……そうか。」
とりあえず、大まかな作戦のあらましはそんな所だ。
本当はルカが見つかれば、それが一番いいのだが……とりあえず、ルカが見つからない限りはそう動くしかない。
魔王城の戦士達は、明日に備えた……
時も次元も越えて、無之修行空間……
「よしルカ、だいぶ強くなったみてぇだな。」
「ああ……!」
極限環境による凄まじい修行によって、ルカの戦闘力は凄まじく飛躍していた。お陰で、適わなかった超サイヤ人2と互角に戦えるぐらいだ。
「今回は、何で俺が天使に触れるのか教えてやろうと思ってな……」
「お前が、天使に触れる理由……?」
「ああ……」
ヴィクトリーは拳を握り、腕をクロスした。
「はぁあああっ!!」
そして、超サイヤ人ゴッドとなった。
「!!」
燃えるような神の気が波動し、ものすごいオーラが放たれる。それで、赤髪が靡いた。
「……理由は、俺が潜在的にこの気を持っていたから。そして今、この神の気を表に出した所だ。」
「……」
気を、全く感じない。今までの超サイヤ人とは、次元そのものが違う。強い……強すぎる……!!
ルカはそう思いながら、固唾を飲む。
「すげぇ事を言ってやる。俺はこれよりあともう一段階、上の次元がある。」
「え……!?」
「そして、この世界のおめぇはそれに打ち勝ったんだ。」
「え、えぇっ!?」
全く、イメージ出来なかった。この世界の僕は、そんなに強くなったのか……!?
「要するに、今回の修行でおめぇには俺を超えてもらおうと思ってんだ。そうでもしなきゃ、あの戦いには勝てねぇと思う。」
「……」
ルカは、また生唾を飲んだ。あれほどの力を見せつけられ、これより上に行けと言うのか……
「勿論、俺を超えて終わりなんかじゃねぇ。おめぇには、俺を超えて更にその上を見てもらいてぇ。」
「出来るのかな。僕に……」
「……『出来る』。」
ヴィクトリーは真剣な顔つきになり、そう応えた。
「一瞬でもそう思えば、それは不可能じゃなくなる。ちゃんと頭使って努力すれば、なるようになる。」
「……」
「さあやろうぜルカ!あっちの世界じゃ俺は死んじまったんだし、おめぇが皆を守る力を付けるんだ!」
「ああ……やってやる!!」
超サイヤ人ゴッドとなったヴィクトリーと、ルカがぶつかり合った。二人は高速移動しながらぶつかり合い、掴み合った。
「へっ……!!」
「うぐぐぐっ……!!」
気が波動し、エネルギーが轟く。
「はぁあっ!!」
ヴィクトリーは跳び廻し蹴りを放って、ルカをぶっ飛ばした。
「ぐっ!!」
ルカは体制を立て直し、シルフの力を解放する。そして高速移動を連続し、ヴィクトリーの背後に迫った。
「ふんっ!」
彼はそちらには目も向けず、裏拳でルカの顔面を打ち抜く。
「ぐぁっ!?」
「たぁあっ!!」
更に、後ろ廻し蹴りでルカを蹴り飛ばした。
「ぐっ……!!」
直撃する寸前、ルカはノームの力を使って踏ん張った。
「がっはぁ……!!」
しかし体中に駆け巡るような衝撃は、完全に殺し切れなかった。体は吹っ飛び、宙に舞う。
「だりゃあぁーっ!!」
次の瞬間、ヴィクトリーの正拳突きがルカの顔面を打ち抜いた。
「ぐはぁあっ!!」
彼は尻もちをついて倒れ、息を切らす。
「はぁ……はぁ……」
やはり、強い。なんて速く、重い攻撃なのだろう。実力を総動員しても、あと一歩届かない。
「どうしたルカ!そんなもんか!」
「いや、まだだ……!!」
ルカは立ち上がり、気を開放した。
「うぉおおっ!!」
そしてノームの力をその腕に込めて、ヴィクトリーに殴りかかった。
「っ!」
ヴィクトリーは回避はしたものの、その頬に拳がカスッた。
「たぁあっ!!」
ルカは、そのこめかみ目掛けて蹴りを放った。ノームの力が篭った、強烈な蹴りだ。
「っ……!!」
その蹴りは直撃し、ヴィクトリーは揺らいだ。
「だぁあっ!!」
更にルカは気を爆発させ、エネルギー波を連射した。それは直撃し、爆発が連続する。
「ふっ!」
しかし彼は無傷のまんま、エネルギー波に直撃しながら突進してきた。
「なにっ!?」
「だりゃあーっ!!」
そして、ルカの顔面に両足蹴りを叩き込んだ。
「ぶっ!?」
ルカはぶっ飛ぶが、体制を整えて壁に足をつけ、その壁を蹴って勢いよく突進した。
「はぁあっ!!」
「うぉおっ!!」
渾身の土の力が篭った拳と、燃え盛る神の拳がぶつかり合った。エネルギーと衝撃が轟き、凄まじい気の嵐が発生した。やがて衝撃は完全に相殺され、ゼロへと消えた……
「へへへ……!」
「ふふん……!」
二人は体制を整え、気を沈める。
「やっぱりおめぇはすげぇよ……こんな短期間で、超サイヤ人ゴッドに一矢報いちまうとはな。」
「い、いや……圧倒されっぱなしだったよ……はぁっ……はぁっ……!」
どうやら、ついていくのが精一杯だったようで、そこでルカは息を切らしてしまった。これ以上動くのは、危険だろう。
「そろそろ疲労してきたか。休憩すっぞ。」
「いや、まだだ!まだ僕は……」
そう言いかけたルカの肩を、ヴィクトリーはぽんと叩いた。
「どうやら、無理をしすぎて自分を考えねぇのは向こうのおめぇも同じだったか……」
「僕も……?」
「……今は休もうぜ。強くなるために、休む事も大切だ。」
ヴィクトリーは、そう言いながらルカをヘッドロックした。
「ぐえっ!ちょ、ちょっ……!」
「にひひっ!」
こうして、ヴィクトリーの言われるがままに休憩時間に入った。戦士達の修行は、良好のようだった……