もんむす・くえすと!の世界に降り立った1人のヒーローアバターの話 作:ジョーカー:ゼノ
ルカとヴィクトリーが修行に行って、24時間丁度……
「……む。」
書類にハンコを押し続けてるたまもに、不意に思念が届いた。ヴィクトリーの思念だ。
「はいはい、待っていろ。」
たまもはそう言って、魔法陣を展開する。そこに、ボロボロの妖狐胴着姿のヴィクトリーとルカが出現した。
「おっす!」
「まさか、本当に一年間も修行するとはな……ヴィクトリー、ひょっとして暇なのか?」
そう。あの修行空間で一年間、みっちりと修行してきたのだ。たまもの言う通り、無駄な歳はとっていない。
「まぁ、サンキューな!」
「ありがとう、たまも。」
ヴィクトリーとルカは元の格好に着替え、たまもにお礼をした。
「……」
たまもは、ルカをじろじろと見ていた。
「ルカ、お主……少し雰囲気が変わったか?」
「えっ、いや……」
「いやぁ、そんなモンだろ。何たって、一年間も修行したんだから……」
「ウチの目は誤魔化せんぞ。」
ヴィクトリーの声を遮り、そう言うたまも。その声には、ドスが宿っていた。
「だいいち、ルカは今魔王様と旅をしている……ここにルカが居るってことは、魔王様も帰っている筈じゃ。なのに、帰ってこない……」
「……」
「……ヴィクトリー、こいつは誰なのじゃ?いったい、何を隠している?」
「……しょうがねぇな……」
ヴィクトリーは頭を掻き、たまもに今までのことを説明した。
奴のことだけは、うまく隠して……
「なんと……にわかには信じられんが、そんなことが……」
「ああ。放っておけなくてよ……」
「むむ……気の毒じゃったな。まさか向こうではヴィクトリーが死んでしまうとは……」
たまもはそう言いながら、息を吐いた。
「それで、これからどうする?もう過去に帰るのか?」
「いや、その前にここの重力に慣れねぇとな。だから、魔王城の特訓場借りるつもりだけど……」
「特訓場か……今は、アルマエルマ辺りが使っているのではないか?」
「はぇ?」
「アルマエルマが……?」
「ああ。あの一騎打ち以来、イメージトレーニングだけではなく、本格的に体を動かすようになってのう。」
「アルマの武術か……」
「……?」
ルカは、首を傾げていた。このルカは、本当のアルマエルマの戦いを知らなかったのだ。
「ああ、このルカは知らねぇんだったっけ。じゃあ行ってみようぜ!」
「ああ……」
戦士達は、特訓場に向かった……
そこそこ広い特訓場の中心……そこでは、アルマエルマが修行していた。
「オッス!」
「あら?」
ヴィクトリーの挨拶に応じ、修行を中断するアルマエルマ。その肢体は汗で濡れており、セクシーな感じになっていた。
「ヴィクトリーちゃんに、ルカちゃんじゃない!あの一騎打ち以来かしら?」
「だな!おめぇ、修行始めたんか?」
「ええ……あの戦いを見ていたら、体が疼いちゃって……」
「……おめぇが言うと、変な意味に聞こえるな……」
ヴィクトリーは咳をついて、アルマエルマに向かい直した。
「丁度いいや……アルマ、ちょっとルカと手合わせしてくんねぇか?」
「え……?」
「ルカちゃんと……?別にいいけど……」
アルマエルマは、そう言いながら笑う。
「私、あの時よりも更に更に強くなってるのよ……?自信ならあるわ……」
「だってよ、行ってこい!」
「う、うん……」
何が何だか、分からない。僕のアルマエルマの戦闘イメージは、魔王城で戦った時のアレしか浮かばない。この世界だと、どう戦うんだ……?
「……」
ルカは剣を取り、構える。
「よろしくね、ルカちゃん!」
アルマエルマは半身になり、ずっしりと構えた。
「……」
ヴィクトリーは腕を組んで、離れる。
「……まだならねぇつもりか。アレに……」
ルカを見ながらそう呟き、壁に寄りかかった。
「……だっ!!」
ルカはアルマエルマに突っ込み、一撃を放った。
「ふんっ!!」
しかし、彼女は剣の刃を素手で掴む。
「なにっ!?」
「はぁあっ!!」
そして、ルカの脇腹にエネルギーを込めた掌底を叩き込んだ。イリアスと戦っていた時によく使っていた技だ。
「っがはぁあっ!!?」
ルカはそれでぶっ飛び、倒れてしまった。
「ぐっ……!?」
何だ、今のは。あんな技、僕は知らない……!!
「あらぁ、ルカちゃん……もしかして、油断してた?」
「……みたいだね……」
ルカは立ち上がり、首を鳴らし、構え直した。
「だけど、今ので目が覚めた……本気でやるぞ!!」
ルカはそう言って突撃し、シルフの力を全開放して疾風怒涛の攻撃を仕掛けた。超スピードで繰り出される、無数の斬撃。
「はぁああっ!!」
「ふっ……!」
アルマエルマはそれに対応し、拳を握り込んだ。その拳がエネルギーを纏い、金剛のようになる。
「なにっ!?」
ルカ、精霊を咄嗟にノームにシフト。
次の瞬間、アルマエルマの拳が彼の腹に埋まっていた。
「ぐっはぁあっ!!?」
ルカはまたしてもぶっ飛んで、壁に叩きつけられた。
「んふふ……」
「くっ……くっそ……!!」
ダメージに悶えながらも、何とか立ち上がるルカ。しかし、既にアルマエルマのかかと落としが迫っていた。
「くっ!!」
その踵を、腕をクロスして受け止める。しかし、あまりの威力に跪いてしまった。
「ぐっ……がぁああ……!!」
「あはっ!」
「こ……の……!!」
ルカはエネルギーを溜め、アルマエルマの顔面に放った。
「きゃあっ!?」
彼女は顔面を爆撃され、よろめき、三歩ばかり下がる。
「……」
なるほど、どうやらアルマエルマも更に強くなっているらしい。魔王城で戦った時とは、次元も違う。ちょっと、甘く見すぎていたな……
「……よし。」
ルカは気を溜める体制になり、静止した。
「……ルカちゃん?」
「はぁあああっ!!」
そして気を爆発させ、全ての力を開放した。ルカのエネルギーで、周囲が揺らぐ。
「……なる気か、アレに!!」
「はぁああああ……!!!」
「っ……!!」
ルカの気が爆発し、凄まじいエネルギーが魔王城に轟いた!
「こ、これは……!?」
ルカの背中から光の翼が発生し、聖なるオーラがその身を包む。更に筋肉も張り、額には青筋が浮かんでいた。
「はあああああ……!!」
光の翼が消散し、ルカのエネルギーが圧縮される。その体の気が増幅し、充実していく。そして、見たことも無い新たな力の形を、彼女の前でさらけ出してみせた。
「え……!?」
次の瞬間だった。ルカの拳が、アルマエルマの腹を打ち抜いた。
「っ!!」
彼女は揺らぎ、よろめく。
「はぁあっ!!」
ルカはそこに、剣で強烈な斬撃を放った。
「きゃああっ!!」
彼女はそれに直撃し、吹っ飛んで、尻もちをついてしまった。
「くっ……!!」
「……今から見せるのが、本当の力だ!!」
「へぇ……!」
アルマエルマは立ち上がり、構え直した。
「なるほどね……ルカちゃんも、強くなっていたのね……」
「そういう事だ……いくぞっ!!」
ルカとアルマエルマは、再びぶつかり合う。ようやく、互角の激突だ。
「……」
ヴィクトリーは、思い出していた……
「天使状態?」
「ああ。」
休憩時間、二人は話し合っていた。
「おめぇ、俺がぶっ殺された時に形見の指輪が割れて、めちゃくちゃなパワーを出しただろ?」
「あ、ああ……あんまり、記憶にはないけど……」
「その力は、天使の力だ。」
聞いてみれば、ルカは自分が天使のハーフだとは知っていたが、ヴィクトリーが死ぬまで天使の力を使っていなかったという。
「……アリスからも、ミカエラさんからも聞いてるよ。僕のお母さんは、天使だったって……」
「何で今の今まで、天使の力を制御してたんだ?」
「その……あの力は、体に負担をかけすぎるんだ。その事を、アリスに心配させたくなくて……それに、あの指輪は母さんの形見だ。手放すわけにはいかないよ。」
ルカはそう言って、ずた袋を握った。中身は、指輪の破片だ。
「……でも、こうなってしまった以上は無理をしてまで勝つしかない。やるしかないんだ、僕が……!」
「……」
「……」
そうやって、見せた力……
確かに凄まじい力ではあったが、何か物足りない感じがした。なので、修行を続けた結果……ああなった。とてつもない天使の気が人の体に圧縮されており、キラキラと輝く気を噴き上げている。筋肉量も増加し、格闘の威力も跳ね上がっている。まさに、
「きゃああーーっ!!」
アルマエルマはぶっ飛んで、壁に叩きつけられた。思いっきり拳でぶっ飛ばされたのだろう。
「はぁああああ!!」
ルカは気を開放し、腕を突き出す。そして、呪文を詠唱する……
「我が母は明けの明星、曙の子……地に投げ堕ちた星、勝利を得る者……明けの明星ーーーっ!!!」
「な……!!」
ルカの明けの明星がアルマエルマに直撃し、大爆発を巻き起こした。
「はぁっ……はぁっ……手応えあったぞ……!!」
「……ぐっ!」
アルマエルマは、跪いていた。
「今回も、私の負けみたいね……もう戦えないわ……」
跪きながら、アルマエルマは降参を宣言する。どうやら、これで手合わせは終了のようだ。
「お疲れ、二人共!すげぇぶつかり合いだったじゃねぇか!」
「うふふ……私も、まだまだ修行が足りないみたいね……」
「いや、僕もこんなんじゃまだまだ未熟者だよ……」
とりあえずは、これで修行も終了だ。ルカも、もうだいぶ強くなったはずだ。後は、なるべく誰にもバレないようにルカをとっとと過去に……
「それで、ヴィクトリーちゃん?この子、何者なの?」
アルマエルマは笑顔のまんま、そう聞いてきた。
「……やっぱり、バレてた……?」
「あ、あららら……」
ルカもヴィクトリーも、苦笑いで顔を見合わせる。
「戦ってる最中に、思ったの。ルカちゃんにしては明らかに格闘技が多いって……ルカちゃんは、剣技が主流の筈よ……」
「そうか……バレちゃ、しょうがねぇな……」
ヴィクトリーは、アルマエルマに全てを話した……
「えっ、過去のルカちゃん!?」
「ああ……」
アルマエルマはルカを撫で回し、彼は苦笑いと生返事でそう応える。
「ちょうど、元の重力に慣れようって所でおめぇが居るって情報を聞いてさ。助かったぞ。」
「いや、私もいい修行になったわ……それで、もう帰っちゃうの?」
「ああ……ここまで強くなれば、誰にも負けねぇはずだ!」
「そうね……それで、ルカちゃん。」
アルマエルマは、ルカの方に向いた。
「あ、アルマエルマ……?」
「いい?ここから先、辛い戦いになるわ。でも、何があっても絶対に諦めちゃダメよ?ヴィクトリーの居ないあの世界では、ルカちゃんだけが最後の希望なんだから……」
「……」
アルマエルマはルカに顔を近づけ、そっとキスした。
「……!」
「頑張ってね!ルカちゃん!」
「……はいっ!」
ルカも気合が入ったらしく、いい顔でそう応えた。
「すまねぇな、ルカ……俺は行きたくてもムリなんだろ?」
「ああ……」
ヴィクトリーは、少し名残惜しそうな顔をした。
「これでもう、おめぇに会うことはねぇ……アイツがもう一回、おめぇをここに連れてこねぇ限りはな。」
しかし、その表情はすぐに笑顔で塗り替えられた。
「がんばれ!!イリアスをぶっ飛ばしてこい!!」
「ああっ!!」
二人は、グッとハグした。そして、ヴィクトリーがルカの背中を叩く。
「よし、行ってこい!」
「ああ……さようなら、ヴィクトリー!!」
ルカはそう言って、走っていった……ヴィクトリーはその背中にグーサインをして、ウィンクした。
「うまくいくといいわね。」
「きっと、うまくいくさ!」
アルマエルマとヴィクトリーはそう言って、ルカの無事を祈った……
「……」
ルカは、地図にも載らないような小さな孤島に降りた。そこは派手に破壊されており、まるで戦争が起きたかのようだ。それもそのはず……ここで、ルカとヴィクトリーは一騎打ちをしたのだった。それ以来、生物と呼べる生物はここにはいない。
だからここは人目に付かず、安全なのだ……と、ヤツは言っていた。
「……遅かったじゃないか。」
ルカの背後から、声がかけられた。
「……」
振り向くと、ヤツがいた。赤い髪、青い服装……そして放たれる、凶悪な気。ルカは思わず、後ずさってしまった。
「何度でも聞くぞ……お前は、いったい何者なんだ……!!」
「貴様には関係ない……と、何度も言ったはずだ……」
そう言って、ヤツはルカに歩み寄った。
「ほう……かなりの戦闘力の飛躍だな……くっくっく……」
不敵な笑みを浮かべてはいるが、敵になる気は無いようだ。むしろ、僕の味方をしてくれているが……なのに、何でこんなに凶悪な気を……!?
「……」
「さぁ、余計な詮索はするな。貴様に選択肢は無いはずだ。」
ヤツはそう言って、ルカに手を差し伸べた。
「さぁ。」
「……」
その通りだ。今の僕に、選択肢は無い。
ルカはそう思いながら、その手を取った。
「そうだ、それでいい……」
次の瞬間、暗黒の魔力が二人を包んだ。
「戻るぞ……貴様の世界に……!!」
「ああ……」
そして、この世界から消え失せた……
激突の時まで、11時間……
ルカは余裕を持って、天界と対決出来る事になる。果たして……