もんむす・くえすと!の世界に降り立った1人のヒーローアバターの話 作:ジョーカー:ゼノ
「……」
仁王立ちする、アルカンシエル。その足には、戦闘不能に陥ったグランべリアが踏まれていた。
「同胞三体、既にやられたようだな……しかし、これで作戦は失敗だ。」
アルカンシエルはグランべリアから足を離し、蹴り飛ばした。
「命までは取らん。ここで見ているがいい……我らが野望が成就する瞬間をな……」
アルカンシエルはそう言いながら、塔の外を見る。
「……これで、私に挑む者は居なくなった……か……これで……」
悲哀を込めた声で、そう言いかけた時だった。凄まじいエネルギーの持ち主が天井をぶち破り、着地してきた。
「っ!!?」
その方向に振り向くアルカンシエル。その視線の先には、サイヤ人が居た。
「ここにもうひとりいるぜ……」
血の色をした赤いハチマキ、サイヤ人と暗黒魔界の文化が混ざった独特の戦闘装備……そう、バーダック:ゼノが降り立ってきたのだ。
「むぅ……!?」
「安心しな、増援は俺が最初で最後だ。」
バーダック:ゼノは指をボキボキと鳴らしながら、アルカンシエルに歩み寄る。
「……そうか、おめぇがアルカンシエルって奴か……よくもヴィクトリーを殺しやがったな。」
「命令でなければ、殺すのが惜しかったがな。」
「あいつは俺達の仲間だったんだ。仲間の仇、取らせてもらうぜ……!!」
バーダック:ゼノはそう言って構え、アルカンシエルに向く。
「ふん……はぁあっ!!」
彼女は気を全開放し、構えた。
「さぁ、来い!全力で相手をしてやる!」
「ほざいてろっ!!」
バーダック:ゼノは、渾身のパンチをアルカンシエルの顔面に放った。
「っ!!?」
パンチが直撃し、揺らぐアルカンシエル。しかしすぐにその腕を掴んで、床に背負い投げた。
「ぐぅうっ……!!」
「ふんっ!!」
倒れたバーダック:ゼノを大きな足で踏み潰しにかかるが、彼はすぐさまそれを避ける。
「だぁっ!!」
そして、思いっきり足払いした。
「っ!」
アルカンシエルは転びそうになり、揺らぐ。その顔面に肘打ちが決まった。
「ぐっ!!」
彼女はそれで悶えながらも、顔面に殴りかかってくる。その拳は見事に彼の頬を捉え、打ち抜いた。
「っぐぁっ……っ!!」
バーダック:ゼノはカウンターに、彼女の脇腹をぶん殴った。
「うぉおっ!!」
彼女は歯を食いしばり、反撃に頭突きをしてぶっ飛ばした。
「ぐぁあっ……!!」
バーダック:ゼノは体制を整え、気弾を連射した。彼女はそれに被弾しながら突進し、拳に爆炎を纏う。
「はぁあっ!!」
彼はそれを見て気弾の連射を止め、拳にエネルギーを纏い、振りかぶる。
そうして爆炎の拳と気合の拳がぶつかり合い、大爆発のような衝撃が巻き起こった。二人の拳の威力は互角だった。
「ぐっ!!」
「ふっ!」
アルカンシエルはパンチを放つが、バーダック:ゼノはそれを掴み、蹴りを放とうとする。しかし彼女の蹴り足が、彼の足を止めた。
「だぁあっ!!」
「ふんっ!!」
ゼロ距離で足技がぶつかり合ってから、二人はバチッと離れた。
「はぁあっ!!」
バーダック:ゼノはフルパワーのエネルギー波を放った。
「ふんっ!」
アルカンシエルはそれを弾き飛ばし、両手を合わせる。
「か……め……は……め……」
「な……!?」
それは、確かヴィクトリーの技──
「波ーーーっ!!」
アルカンシエルはなんと、かめはめ波を放った。
「ちぃっ!!」
バーダック:ゼノは腰を落として踏ん張り、腕をクロスする。かめはめ波は彼に直撃し、大爆発を起こした。
「ぐっ……!!」
何とかガード出来たが、決して軽いダメージではない。
「……なるほど、やるじゃねぇか。」
バーダック:ゼノは口から出た血を拭いながら、そう笑った。
「貴様こそ、超サイヤ人でもないのによくやるものだ……もしかして、ヴィクトリーより出来るのではないか……?」
「勘違いすんな。ヴィクトリーは全盛期に戻る前に死んじまったんだ。あいつが全力になりゃ、お前程度捻り潰すのは、どうってことはねぇ。」
「なに……?」
バーダック:ゼノは首を鳴らしてから、息を吐いた。
「さぁて、準備運動はここまでだ。こっからは、本気でやるぜ……」
「……私もだ。」
「それじゃあ、俺の憂さ晴らしに付き合ってもらうぜ!」
そう言って気を解放し、高めていく。高まった気が最高潮に達し、超サイヤ人にチェンジした。
「ほう……!」
アルカンシエルは構え、バーダック:ゼノに向く。
「行くぜっ!!」
反逆の超サイヤ人、バーダック:ゼノ。その反逆の引き金が今、引かれた……
「うぉおおっ!!」
「がぁああっ!!」
二人は超スピードで攻防し、一撃がクロスする。ぶっ飛んだのは、バーダック:ゼノだった。彼女の一撃の威力に負け、吹っ飛んでしまった。
「見よ、この力を!!」
アルカンシエルはそう言いながら拳を握り、そこに爆炎を纏う。そして、バーダック:ゼノの腹を真っ直ぐに打ち抜いた。
「ぐぁあっ……!!」
彼は更にぶっ飛んで、柱に叩きつけられる。
「最新鋭の生体工学が可能にした、限界以上の筋力!」
次に彼女は回転しながら跳躍し、その顔面に飛び蹴りした。
「生体カーボン製のシナプスによる、極限の運動性!」
「ッッ……!!」
「そして限界以上のサイヤパワーにより、破壊力は数倍にも増した!」
アルカンシエルはそう言いながら、両手に黒炎を纏う。
「!!」
「その全てが、私を完全なものにしたのだぁあああっ!!」
そして、バーダック:ゼノに黒炎を纏った拳の連打──黒炎十六掌が叩き込まれた。
「ぐぁああああっ……!!」
バーダック:ゼノは、アルカンシエルの足元にダウンしてしまう。
「ふん、ふふふ……はっはっはっは!」
彼女はそんな彼の頭を踏みつけ、高笑いした。
「……」
これが、ヴィクトリーを仕留めた技。黒炎を纏った拳は打ったところを容赦なく焼き焦がし、相手に強烈なダメージを与える。それを全力で連打するものだから、威力は凄まじい。
しかし──
バーダック:ゼノはその足を掴み、立ち上がると同時に無理矢理持ち上げる。
「っ!?」
そこそこ巨体の自分が持ち上げられ、驚くアルカンシエル。しかし、次の瞬間、無理矢理床に叩きつけられた。
「ぐぁあっ……!?」
「そんな、モンかよぉおおお!!!」
彼はなんと、力任せに彼女を人形か何かのように足を持ち上げ、何度も床に叩きつけたのだった。
「ぐうぅっ!!」
アルカンシエルはバーダック:ゼノのこめかみを蹴り、離れる。彼は少し揺らいだが、すぐに彼女に向いた。その目は、怒りに染まっていた。
「作り物のカラダが、そんなに誇らしいかよ。自分で強くなったわけでもねぇ、そのカラダが……」
「……ああ、誇らしいなぁ!戦うためだけに、私は生み出されたのだから!これこそが、私の生存目的!ただ戦い、ただ勝つためだけに私は造られたのだ!」
「……本当にそうか?」
「……どういう意味だ?」
バーダック:ゼノは構え、気を解放した。
「今から、教えてやる。おめぇがその身に宿した、本場のサイヤ人の力を底力をな……!!」
次の瞬間、肘打ちがアルカンシエルの顔面に炸裂した。
「ごっ……っ!!」
踏ん張り、殴り返す彼女。しかし彼はそれをガードし、腹にパンチした。
「おぐっ……!?」
「だらぁあっ!!」
更に顎に膝蹴りしてから、顔面に蹴りを連打した。
「っぐぁあっ!」
「うぉおおおっ!!」
接近して、腹にパンチを連打して、胸を真っ直ぐに拳で打つ。
「っぐぁあっ……!!」
「はぁあっ!!」
そして回転しながら勢いよくスレッジハンマーし、アルカンシエルの顔面を打ち下ろした。彼女は床に叩きつけられてからバウンドし、うつ伏せに倒れ伏す。
「ぐぬぅうっ!!」
しかし立ち上がり、気を解放した。バーダック:ゼノは冷静を保ったまんま、それを見ていた。
「パワーが飛躍したか……だが、そんなパワーじゃ俺には勝てねぇ。」
「何をぉおっ!!」
アルカンシエルがバーダック:ゼノの懐に潜り込み、パンチを連打する。しかし彼は全てガードし、顔面に足刀した。
「っぐぁっ……!!」
彼女は揺らぐが、拳に爆炎を纏い、殴りかかる。しかし彼は、それを素手で受け止めた。
「くっ……!?」
「お前は戦うためだけに生み出されたって言ったな……」
「はぁ……はぁ……それがどうした!!」
「同じだよ……俺達サイヤ人も、戦うために生まれた種族だ。だけど、お前とは決定的に違う所がある……」
バーダック:ゼノは拳を握り、アルカンシエルをキッと睨む。彼女もまた、目を鋭くして彼を睨めつける。
「何だと……!?では、何が違う!?何処が異なる!!」
「俺達サイヤ人は戦闘民族……ただ戦うために生まれた訳じゃねぇ!戦い抜いて、強くなり続ける為に戦うんだ!!」
バーダック:ゼノはアルカンシエルの拳を自分の方へ引っ張って、顔面をぶん殴った。
「っ!!!」
彼女は揺らぐが、踏ん張ってバーダック:ゼノを見る。彼は、ぶん殴ったままのポーズで、嗤っていた。
「羨ましいだろ……?無限に成長の可能性を秘めた俺達が……いや、俺達サイヤ人だけじゃなく、強くなる可能性を持ち合わせた雑魚共がよ……」
「う、羨ましくなどあるものかっ!!だいいち、私にだってサイヤ人の力が……!」
「……その力はッ!!」
バーダック:ゼノの拳が、アルカンシエルの胸を打ち抜く。超スピードで叩き込まれたその拳は見事に命中し、彼女を揺るがした。
「所詮は、与えられた力だろうがぁっ!!」
揺らいでる彼女の胸ぐらを掴み、少しばかり浮いてから、勢いよく床に叩きつけた。あまりの威力に、床から生じた亀裂が、壁にまで走る。
「ぐっはぁあああ……!!?」
予想外の力による大ダメージで、大きく揺らぐアルカンシエル。しかし彼の猛攻は、まだまだ止まらない。
「サイヤ人の力だけじゃねぇ!!お前を形作るあらゆるモンスターだって、所詮は組み込まれてるだけだぁあああっ!!」
彼はそう言いながら、気を解放する。ただでさえ大きかった気が、倍近くに膨れ上がり、まだまだ勢いを増していく。
「お前の力は借り物に過ぎねぇっ!!」
そう言いながら、顔面に重い一撃を叩き込んだ。それで遂に床が崩落し、アルカンシエルは一階下のフロアに勢いよく叩きつけられた。
「うぐぁあぁああっ!!?」
間髪入れずにバーダック:ゼノは彼女の前に飛来し、一発一発に渾身の力を込めた、猛烈な拳の連打を叩き込んだ。
「純粋で、強く、誇り高き戦士の力が、
そう言いながら、渾身の拳を彼女の腹に叩き込んだ。それは壊滅的な威力を誇っており、この塔全体を大きく揺るがした。
「っ……っ……!!」
彼女はボロボロになって倒れながら、バーダック:ゼノを見つめる。
「……皮肉だなぁ、アルカンシエル。一切の成長の可能性を閉じて最強のカラダを得たおめぇが、戦士の魂と誇りを持っちまったんだから……しかもそいつの中には、サイヤ人の魂が混ざってるのもとんだ悲劇だ。そうは思わねぇか……?」
「うっ……!!だ、黙れっ!!」
彼女は立ち上がってから構え、超スピードで猛攻した。
「見せてやる……俺の力を、サイヤ人の力をな!!」
バーダック:ゼノもそれに対応し、超スピードでの攻防する。
「うぉおっ!!」
「はぁあっ!!」
疾風の如くぶつかり合う攻撃が加速し、二人の姿が消えた。この空間に、不気味に戦闘音が響き渡る。
「あだだだだだだだっ!!」
「うぉおおおおおおっ!!」
互いの拳がノーガードでぶつかり合い、血が舞う。
「どうしたサイヤ人!!あれだけの大口を叩いておいて、その程度か!!」
「なめんなよぉおっ!!」
バーダック:ゼノの拳が、彼女の腹に叩き込まれた。
「っぐぅうっ!!」
アルカンシエルの拳が、彼の顔面を打ち抜く。
「はぁあっ!!」
バーダック:ゼノは、彼女の顎を蹴り上げた。
「ぐぁあっ……!!」
「はぁあああっ!!」
更に彼女の顔面をぶん殴り、腹に蹴りを入れ、胸に拳を連打する。
「うぐぅううっ……!!」
アルカンシエルは拳に爆炎を纏い、殴りかかった。しかし彼はそれを避け、彼女の懐に踏み込む。
「し、しまっ……!!」
「どぉあああっ!!」
バーダック:ゼノの本気の拳が、アルカンシエルの腹筋を打ち抜いた。その際に腹部の装甲を貫き、その背を盛り上がらせた。
「うぐぅぉおええっ……っ!!」
「だだだだだだだぁっ!!」
更に体に拳を連打して、顔面をぶん殴った。
「がっ……はっ……!!」
アルカンシエルは吐血し、足がガクガク震える。
次の一撃で、決めるしかない。
「これでトドメだ……!!」
バーダック:ゼノは回転しながら距離を取り、腕にエネルギーを込める。
「ぁあ……あが……!!」
「くらえぇっ!!」
そして、貫通力に長けたエネルギー波──リベリオントリガーを撃ち放ち、彼女の胸を貫通させた。
「!!!」
その胸に、大きな風穴が開いた。彼女はそれを確認し、笑う。
「……ぐ……見事……がはッッ!!」
彼女はそう言って倒れ、戦闘不能になった……
「残念だったな。」
バーダック:ゼノはそう言いながら超サイヤ人を解き、倒れたアルカンシエルを見た。
「……全て、貴様の指摘した通りだ。私は、この可能性の閉ざされた肉体が疎ましかった……いっそハイヌウェレやラプンツェルのように、精神が破綻した方が楽だったのだがな。この肉体の一部になった戦士型妖魔達の、そしてサイヤ人の力の影響か……我ながら、実に難儀な性分だ……」
「……でも、もっと早く出会っていたら別の道が……」
「いいや……私の稼働時間は、五年に満たない……どちらにしろ、私には五年程度の寿命しかなかったのだ……極端に短い命が、この究極の肉体の代償……」
「そうか……」
「心身を鍛え、強者に打ち勝つという醍醐味……一度でいいから、味わってみたかったのだがな。それを認める気になった時には、もう叶う術もない……つくづく、私は恵まれんな。」
「……」
アルカンシエルは笑いながら、バーダック:ゼノを見る。
「だが……最後の勝負にだけは恵まれた。見事だ………」
「バーダックだ。」
「そうか……バーダック……欲を言うなら、勇者ルカとも戦ってみたかった……」
「……」
「……もう私は、何も羨まずに……済む……」
アルカンシエルはそう言い残して、目を閉じ……力尽きた。
「アルカンシエルか……」
自分の仲間を殺した、怨敵……そんな事を忘れてしまうぐらい、彼女は強く、誇り高く、そして悲しかった。せめて、違った境遇で出会えたのなら……たとえ寿命が五年だとしても、いい関係になれただろうに。
「お前の事は大嫌いだが……安らかに眠ってくれるのを祈るぜ。」
彼はそう言いながら、もう動かないアルカンシエルの髪を撫でた。
「……」
次に、天井を見る。と言っても、ぶち破ってしまったものだから、ここからでも青空が確認できる。装置があるのは、今自分がいるフロアの一個上だったか。
「……アルカンシエルを作った奴は……サイヤ人だけじゃなく、この星の戦士の誇りも踏みにじった……絶対、許せねぇ……!!」
バーダック:ゼノはそう言いながら塔に登り、時を待った……