もんむす・くえすと!の世界に降り立った1人のヒーローアバターの話   作:ジョーカー:ゼノ

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秘宝の洞窟

 そして翌日、僕達は秘宝の洞窟に到着し、その中に足を踏み入れたのだった。

 

「……む、やけに狐の匂いがするな……」

 洞窟に踏み込むなり、アリスは鼻を鳴らしそう言った。

「狐……?」

「狐の匂いってどんな匂いだ……?」

「あぶらあげの匂い……」

 ……よく分からない。とりあえず、先に進もう。

 

「床とか壁とか、けっこう整っているんだな……」

「手入れされてあんのか……?」

「ここを秘宝の隠し場所とした海賊達が、改修したのだろうな。罠が多く仕掛けられてる可能性が高いぞ。」

 その言葉を聞き、ヴィクトリーがピクッとする。

「トラップダンジョンか……」

「あぁ、注意しないとな……」

「……多分、ここから帰ってこなかったやつの中にはトラップにやられたやつもいるだろうよ……」

 ヴィクトリーはにひひ……と楽しそうに笑い、つかつかと歩く。

 楽しんでいるのか……?この状況を……

「生存者はいない訳だから、死体がゴロゴロ転がっているって訳か……幽霊とか居そうだな……」

 アリスがビクッとする。

「ゆ、幽霊……!?」

「ん?どうしたんだ?」

「……何でもない。」

 アリスの態度が僅かにおかしくなった気がする。

 すると、アリスは僕とヴィクトリーの間に入り込んで、そのままフィットした。

「わっ……な、なんだよ……」

「何だか、近いぞ……何でそんなに近いんだ……」

「そ、それは相対的に貴様らが余に近づいているとも言える。」

 ……訳が分からない。

「だいたい、これぐらいで余が怯えてると思わん事だドアホ共め!!」

 逆ギレされたし……

「いいか、そもそも幽霊などとは非科学的──」

 ここでヴィクトリーが意地悪な顔をして、その顔を驚きに染めた。

「あーっ!!あそこに血塗れの女の人が立ってるぞーっ!!」

「ひやぁあああっ!?」

 彼はそんなことを言いながら、通路の奥に指を指す。するとアリスは驚き、ルカに抱きついて怯えきってしまった。

「ちょ……」

 豊満な胸が当たり、少し心地いい感触が体につく。少し動揺はしたが、すぐさま通路の奥に視線を戻す。だが、血塗れの女なんか居なく、今度はヴィクトリーの方を見た。

「ひゃっひゃっひゃっひゃっひゃっ!あー面白ぇ!まさかアリスにこんな弱点があったなんてよ!」

 ヴィクトリーは腹を抱えて笑ってる。どうやら、さっきのはウソだったようだ。

「き、貴様ぁーっ!!」

 アリスはヴィクトリーの胸ぐらを掴み、ぶん殴った。

「うわぁあああああ!!!」

 彼は、洞窟の奥深くに吹っ飛んでしまった。

「ヴィクトリーーーーーっ!!!」

 ……心強い(?)仲間が居なくなってしまった。すると、その時だった。

「……!おい、今何か横切らなかったか!?」

「ひゃっ……!」

 今度は巻きついてきた。

「ちょ……巻き付くなよ……」

 更にボリュームのある感覚が体に触れ、思わずよろけてしまう。だがそんな事より、何かが目の前を横切ったのだ。

「やっぱり何かいるぞ……」

 僕はすかさず剣を抜き、構えた。

「む……これは……幽霊ではないようだな。」

「幽霊……?」

「な、何でもない!とっとと片付けるがいい!」

 するとアリスはふっと姿を消してしまった。

 という事は……

「魔物か……!姿を現せ!」

 ルカがそう言うと、一匹の魔物が姿を現した。

「わわっ、人間が現れた!」

 どうやら向こうも驚いているようだ。妖狐……その名の通り、狐の魔物である。低級なものから高位なものまでピンキリ。尻尾の数が多いほど、高位だという。この妖狐の尻尾は二本。見るところそんな高位な魔物には見えないが……

「ど、どうしよう……たまも様とはぐれちゃうし、人間まで来ちゃってるし……」

「何だか分からないけど、人間に迷惑をかける魔物なら容赦はしないぞ!」

「に、人間に『海神の鈴』は渡すなって言われてるんだから、ここは通さないよ!」

「言われてるって、誰に……?」

「ひ、ひみつ!」

「さっき言ってた、たまもってやつ……?」

「あうぅ……」

 どうやら図星らしい。

「とにかく、僕は仲間の為にも一刻も早く先に進まなきゃいけないんだ。邪魔するなら容赦しないぞ!」

「じゃあ、あたしと勝負だぁ!」

 そう言い、いきなり股間に手を伸ばした。ルカはそれをガードし、背後に回ってカウンターする。

「いだぁっ!?」

「い、いきなり快楽攻撃とは……」

 やはり魔物、油断はできない。

「お、おつきさまふたつ!」

 妖狐はそう言い、尻尾を揺らつかせる。

「な、なんだ……?」

「ひとつ!」

 一本の尻尾が迫る。

「うっ!?」

 それを避け、また妖狐を見る。

「ふたつ!」

 するともう既にもう一方の尻尾がルカに迫っていた。

「ひゃっ……」

 その尻尾はルカの股間に巻き付き、愛撫する。少し気持ちよくなってしまったが、すぐに妖狐を睨む。

「ふんっ……!」

 距離が少しばかり離れている。この状況に合う技は、これしかない。

「んっ?」

「雷鳴突き!!」

 ルカは妖狐の所に一瞬で接近し、鋭い突きを放った。

「ごふっ!?」

 その突きをモロにくらい、揺らぐ妖狐。だが、容赦はせずズバズバと切りつける。

「たっ!」

 妖狐はルカの猛攻から脱出し、距離をとる。

「く、くそ〜!こうなったら、分身の術だぁ!」

 ドロンと煙が巻き上がり、煙が晴れた時には妖狐が三体いた。

「何だって……!?」

「ふっふっふ、凄いだろう!どれが本物か分かるかなっ!?」

 そう言い、一体の妖狐がニヤッと笑った。

「お前かぁっ!」

 ルカはその妖狐をズバッと切りつける。

「ふぎゃっ!」

 本体がダメージを受け、分身が消える。

「や、やるなぁ〜!」

「……」

 黙っていれば凄い技だったのに……

「こ、こうなったら……くらえーっ!」

 妖狐はまたおつきさまふたつを放ち、尻尾をルカに迫らせる。

「二度も同じ攻撃にかかるかっ!」

 その尻尾を切り弾き、妖狐に接近する。

「なっ……!」

「魔剣・首刈りぃ!」

 ルカの魔剣・首刈りが見事命中する。

「ぐぇっ……ひゃああぁ……」

 その技をくらった妖狐は、可愛い子狐の姿になった。

「……!?」

「ふぅ、これで悪さできないな……」

 剣を納め、子狐の頭を撫でようとした時だった。

「ふーっ!」

「あいたっ!?」

 なんと、子狐は僕の手にガブリと噛み付いてきた。そして、そのまま洞窟の奥へ逃げ出してしまったのだ。なんて負けず嫌いの狐なんだ。

「……ようやく終わったか。」

 アリスがいつの間にか背後に現れた。

「それにしても妖狐がいるとはな。本来ならばこんな所にいる種族じゃないのだが……」

「……とすると、あいつはヨソからやってきたのか?」

 たしか、たまもというやつからはぐれたとか言ってたが……

 あいつらも海神の鈴を探しているのか……?

「……何のつもりかは知らんが、余計な事を……」

「とにかく、先に急ごう。」

 狐たちに海神の鈴を横取りされるのもあるし、吹っ飛ばされたヴィクトリーの事もある。

 こうして僕達は先に急いだのだった……

 

 進んでいる途中で、いきなり轟音が響いた。

「っ!!?」

 いきなりメーダ娘がこっちに吹っ飛んできたのだ。僕はすぐさま剣を抜き、すれ違い際に切りつけた。すると、彼女はその一撃で封印され、フナムシのような姿になった。

「あーっ!おめぇがトドメ刺しちまったのかよぉ!」

 奥から、ヴィクトリーが走り寄る。

「お、お前……」

「いや……いきなり現れたと思ったら、俺を獲物とかいって襲ってきたんだよ。おっかねぇ魔物だったけど、何とかなりそうな所におめぇが……」

「そうか……」

 どうやら、戦っていたのは僕だけじゃないようだ。

「……それにしてもルカ、見たか?」

 そう言い、ヴィクトリーは来た道を見る。

「大岩、粉砕された鉄球、穴の空いた落とし穴……ここが秘宝のありかって事は正しいらしいぜ。」

 道中、数々のトラップが破壊されているのを見たのだ。

「もう他の誰かがここに入って、トラップを破壊しながら進んでいるらしいね……」

「……やべぇんじゃねぇか?海神の鈴が先に奪取されちまうぞ。」

「あぁ、急がないと。」

 何とか先にこっちが追いついて、海神の鈴を手に入れなければならないのである。ヴィクトリーを迎えた所で、僕達は更に奥へと進んだ……

 

「でも、何で魔物が海神の鈴を欲しがっているんだ?」

 ルカが突如疑問を口にする。

「少し考えれば分かるだろう、ドアホが。人間に渡さないようにするために決まっているだろう。」

「そうか、風を起こしてジャマしてもそんなアイテムがありゃ意味もない……」

「それなら人間の手に渡る前に奪っておこう……という訳だ。」

 ちょっと待て、と二人は疑問を頭に浮かべる。

「いくら何でもタイミングが良過ぎないか?」

「船が通れなくなったのが去年ぐれぇだろ?海神の鈴なんか、厄介なアイテムなハズだ。何故俺達がこの洞窟に入ると同時に……?単にその魔物がバカなのか遊んでんのか……」

 ヴィクトリーの言葉に、ルカもコクコクと頷く。

「ふむ、貴様らも頭を使えるようだな……おおかた、この洞窟を攻略できる人間はいない……そう高をくくって放置していたのであろう。」

「でも、洞窟の奥まで行けそうな人間が現れた……」

「しかも、そいつはたかがニセ勇者一行だった……」

 ヴィクトリーに言葉を殺され、ルカは固まり、アリスはふふっと笑う。

「その通りだ。全く、ルカは本当にドアホだな。ニセ勇者のくせに自分を何様だと思っているんだ。」

「あ、あうぅ……」

 二人の酷い言われように困惑する。

「ヴィクトリー、貴様の言う事もちょっと違うな……貴様は察しがついているから、すぐに分かると思うが……」

「……」

 ヴィクトリーは少し驚いた顔をした後、すぐに納得の顔をした。

「……あぁ、なるほど。ここにもう一人いたな……俺達より遥かに強いヤツが……」

「え……!?」

「……連中は、余を気にしているのだ。たまもかアルマエルマかは知らんが、余計な事をしおって……」

「た、たまも……?アルマ……エルマ……?」

「知っているのか?たまもってやつを……」

 二人が目を瞬かせたその時だった。通路の真ん中に、なんと妖狐だった子狐が浮遊していた。いや、あれは……巨大な蜘蛛の巣にかかり、もがいているようだ。

「な、何だありゃ……」

「あれ、魔物の罠だろ……何で魔物同士が……?」

「……魔物が皆、仲間同士という訳ではない……お前達人間同士のようにな……特に特に昆虫系の魔物は、同族といえども関係なく餌にする連中が多い。あの妖狐がマヌケだったと言う事だ。」

 アリスはそう言い残し、消えてしまう。

 その一方で、蜘蛛の巣の主……クモ娘が現れたのだった。

「ふふっ……美味しそうな獲物が今度は二人……二人とも精液を搾り取って、じっくりいたぶってあげるわ……」

 その言葉が終えた瞬間にヴィクトリーが行動を起こす。

「技を借りるぜクリリンさんっ!!」

 そう言うと、手からソーサー状の気の刃を放つ。

「っ!?」

 その気の刃はクモ娘の頬にかすらせ、子狐を捕らえていた蜘蛛の巣を切り裂く。

「お、おぉっ!」

「……ふん、いいわ。こんなご馳走を貰えるのなら小動物の一匹のぐらい……それより……」

 クモ娘は自分の頬に親指を這わせ、血を拭い、その血をグシグシと潰す。

「君から捕食することに決めたわ……武闘家の君からね……」

 怒りの矛先が、ヴィクトリーに向いた。どうやら、さっきの頬をかすらせた技が頭にきたらしい。

「下がってろルカ、こいつは俺を指名した。」

 ヴィクトリーはそう言うと、もうクモ娘に向かって走っていった。

「ふんっ!!」

 走り出した彼には、既に無数の粘糸が迫った。

「はっ、よっ、やっ、せいっ!」

 それを器用に避けながら、一気に懐に入った。

「俺はヴィクトリー!宜しくな!」

「じゃあ、捕食されなさいっ!」

 彼女が攻撃を仕掛けようとしたが、攻撃は向こうの方が速かった。

「があぁっ!!」

 全身に気合を込め、彼女の脇腹を殴る。

「ぐっ……!?」

 そのまま猛烈なラッシュを決め、壁に蹴り飛ばした。

「……やるわね。ただ腕力が強いだけの武闘家とは大違い……」

「だろぉ〜……?」

 彼は笑みを浮かべ、挑発的な態度をとる。

「だけどっ!!」

 急にその体が、蜘蛛の糸に縛られてしまった。

「なにっ!?」

「ヴィクトリーっ!」

「私の粘糸はそこら辺の手綱より強力よ……素手で振り払えた人間は一人もいないわ……」

 ヴィクトリーは驚いたが、にひひと笑い、未だに挑発的な態度をとる。

「じゃ、俺がその最初の一人になってやる!」

「ふふ……」

 ヴィクトリーの挑発の最中、だんだんと彼を縛っていた粘糸が増えて、繭状になり……最終的に完全な繭になってしまった。

「終わりね……こうなってしまったら、もう抜け出すことは出来ないわ……精液を搾り取って欲しい?それとも、ひと思いにぺろりと食べて欲しい……?」

 クモ娘が繭に近付き、繭を撫でようとした瞬間、繭の中から拳が飛んできて、その拳が彼女の頬を打ち抜いた。

「……!?」

 拳で突き破れた所からバリバリと繭を引き裂き、ヴィクトリーは生還した。

「なっ……!ば、馬鹿な……!?」

「終わりだっ!!」

 そう言い、手にエネルギーを込めてから、渾身のかめはめ波を放つ。

「きゃあああああっ!!」

 かめはめ波が彼女に直撃し、爆発を起こした。彼女は、黒焦げになりながら、彼を睨む。

「ぐ……こ、この……!」

 その言葉を最後に彼女は倒れた。黒焦げではあるが、気絶しているだけ。命に別状は無さそうだ……多分。

「相手が悪かったな……俺はただの人間じゃねぇんだ。」

 にひひと笑い、勝利のポーズをとる。そして、縮こまっていた子狐に近寄った。

「もう大丈夫だぞ!あいつは俺が退治したからな!」

 ヴィクトリーは、子狐を撫でようとしたが……

「フーッ!」

「いでぇっ!?」

 ……案の定、噛まれてしまった。それから子狐は更に奥へと逃げ去ってしまった。

「お〜いてぇ……なんだあのきつね……」

「あはは……」

 手をぶんぶんさせながら、子狐が去っていった方向を見る。

「終わったか……余計な事が好きなのだな、貴様らは……」

 アリスが、いつの間にかヴィクトリーの背後に居た。

「あいつは、俺にケンカ売ってきた。」

「ドアホめ。クモ娘も食事をしなければ生きられんのだぞ。弱肉強食の掟を、ただ遂行しているだけ過ぎんのだ。それを悪と断じては、生きることそのものが悪事となりかねん。……分かるな?」

 ヴィクトリーは、ルカの方をチラッと見てから、アリスに向かう。

「……でもよ、ルカ一人だったってぜってぇ同じ事したと思うぜ?確かにつえぇ奴が生きるには時には弱ぇ奴をぶっ殺さなきゃならねぇ時が来るだろうよ。だけど、目の前で困ってる奴見てそれを放置すんのは正義か?」

「……もし食われかけている獲物を助けた結果、捕食者が餓死したら……それは善行か?そうなれば草食動物は善、肉食動物は悪か?」

「そう言い切る奴がホンモノの悪だと思うぜ。」

「……」

 ルカは、二人の会話に全く入り込めなかった。

「……まぁ、ルカも貴様も単純な善悪で計れる人間じゃないことぐらい分かっている。こんな事ぐらい理解しているハズだな。」

「……」

 二人は黙り、アリスの言葉を待った。

「その矛盾に理解しつつも、目の前で虐げられる弱者を救う……それこそが人間なのかも知れん。」

「それを偽善って喚くのもあんま頭のいい話じゃねぇからな……自分の独善振りかざして悪びれもしねぇやつよりマシさ。」

 ここで初めてルカが、頷いた。

「詳しいことは分からないけど……もし同じような状況になったら、僕は迷わず弱者を助けるよ。」

「俺も強いヤツと戦いたいし、弱者を救えるもんなら救いたいんだ。ルカについていくぜ。」

 ルカに続き、ヴィクトリーが便乗する。どちらかと言うとヴィクトリーは、正義だの悪だのはあまり気にしてないように見えるのだが。

「ならばその信念、貫いて見せるがいい。せいぜい化けの皮が剥がれんようにな。」

「あぁ、僕は自分自身を信じるよ……」

 人と魔物が共存する世界を築きたい。この信念は、決して化けの皮では無いはずだ!

「さぁ、先に進もう!」

 この洞窟も、かなり奥まで進んで来たはずだ。宝物庫まであと少しのはず……

 

 そしてしばらく進むと、道中の小部屋にぽつんと宝箱があった。

「あっ、宝箱だ。」

「ラッキー!」

 僕達は立ち止まり、それを眺めた……なんか、怪しい感じがする。それとも、ただの思い過ごしだろうか。

「どう思う?アリス。開けない方がいいかな……」

「知るか、好きにしろ。ただ……何かあった場合は迷わず見捨てるぞ。」

 アリスがそう言い終えた瞬間、消えてしまった。

「……えっ?」

「うわぁああああ!!」

 見ると、ヴィクトリーが宝箱に下半身を飲み込まれていた。やはりモンスターだったんだ!

「こ、この……!!」

 ヴィクトリーは気合砲を放ち、宝箱を壁に吹っ飛ばす。

 下半身がぬるんっと抜けて、何とか脱出し、ルカの横についた。

「ちくしょう……ミミックってやつか……!!」

「お前は、ちょっと警戒するって事をした方がいいんじゃないか……?」

 二人は構え、臨戦態勢に入る。だが、ミミックは箱の中に入ったまんまだ。

「……」

「……」

 さて、どうしたものか。このままでも逃げられそうだが……

「……背中を見せたら食べちゃうからね……」

 箱の中から女の声が聞こえた。

「ミミック娘か……この世界は広いな……」

 ヴィクトリーは指をボキボキ鳴らしてから、拳を握った。

「来ねぇんなら、こっちからいかしてもらうぜっ!!」

 ギュンッと接近し、一気にミミック娘の所に来る。

「でぇりゃあっ!!」

 そして、宝箱にパンチを放つが……

「か、かってぇええええ!!!」

 手首を握りながら、手をぶんぶんさせて跳び退く。

 どうやら箱は頑丈で、ヴィクトリーの拳ではどうにもならないようだ。

「……どうしたもんか……」

「……」

 二人とも硬直する。

 しばらくして、ミミック娘が初めて姿を見せた。

「来ないの……?じゃあ、こっちからいくから……」

 そう言い、今度はルカを引きずり込もうとしてきた。

「わっ……!?」

 このままでは、あの箱の中に引きずり込まれてしまう。

「かめはめ波ぁっ!!」

 ヴィクトリーは小さいかめはめ波を放ち、ミミック娘の顔面に当てる。

「ふぎゃっ!?」

 爆発はせずに、ガンッとミミックの顔に当たる。ルカは、その隙にもがいて脱出した。

「やぁあああっ!!」

「でりゃああああっ!!」

 そのまま猛烈なラッシュを仕掛け、一気にミミック娘を境地に追いやる。

「うぐっ……」

 すると、ミミック娘は箱の中に引きこもってしまった。だが、閉まる寸前にヴィクトリーがその箱をガッと掴む。

「これで終わるかてめぇ……!!」

「な……なっ……!!」

 ギギギと無理矢理箱が持ち上げられ、ミミック娘の本体が露出した。そこにルカが素早く踏み込み、喉元を突き刺した。

「魔剣・首刈り……」

「ぅぐぇ……ひ、ひどい……」

 ミミック娘は消散し、小さなおもちゃ箱のような姿に封印された。

「……ミミック娘を倒したか。ほぼ100パーセント勝ち目はないと思っていたがな。」

「おいおい……そう思うんなら止めてくれればよかったのに……」

「余は貴様らの仲間ではない。だいたいこんな小部屋に宝箱が一個ぽつんとあるのも怪しすぎるだろうが。そんな宝箱を開けてしまう愚か者なんぞ、知ったことか。」

「……」

 確かにそうだけど、冷たいやつだ。

「あいつミミックって言ってた割には痛恨の一撃とか即死魔法とか使ってこなかったな。」

「それは先入観だ。この世界で前の世界の常識は通用せんぞ。」

「そ、そうか……」

「とにかく、先に進もう。のんびりはしていられないからね。」

 こうしてミミック娘を撃退した僕達は、先へと進むのであった。

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