もんむす・くえすと!の世界に降り立った1人のヒーローアバターの話 作:ジョーカー:ゼノ
ルカは、夢を見ていた。走馬灯のように、産まれるまでの今までの記憶が甦る。母さんの笑顔、村のみんな……ヴィクトリーと笑いあった記憶も、アリスに搾られた記憶も……そして全ての記憶を見終わった後に、人影が見えた。
「……」
目の前には、イリアスが背中を向けて居た。
「……イリアス。」
僕の声で、イリアスは振り向く。振り向いたその顔……哀しそうな目で、ルカを映していた。
「……」
「……」
ルカは、イリアスに手を伸ばす。しかし、ここで異変に気付いた。彼の手は、聖素に侵されていた。
「……」
このまんまでは全身が聖素の凝縮体になり、ハインリヒと同じ末路を辿るだろう。しかし……こうなる事は、分かりきっていた。
「……」
イリアスは、僕の手に手を伸ばす。そして指を絡ませて、優しく握った。
「イリ……アス……?」
「……」
イリアスは優しく微笑み、ルカの体に光を纏わせた。そして、彼の体は元通りになった。
「……!」
「……」
イリアスは微笑みながら、光の粒子となって消散し始めた。
「では行きなさい、真の勇者ルカ……戦いは終わりました、あなたを待つ人々の元に帰るのです……」
イリアスはそう言いながら、散っていく。微笑みながら、ルカに手を伸ばしながら……
「……イリアスっ!!」
ルカはそのイリアスに、手を伸ばす。しかしその手が触れる寸前に、彼女は完全に消散してしまった。そして彼の視界は暗闇に包まれ、眠りの世界に落ちていった……
「……」
目が覚めた。真夜中だ。
「……」
自分の手を見てみると、元通りの手に戻っていた。もう、聖素は感じない。
ここは、魔王城のベッドルームだ。近くで、アリスが座りながら寝ていた。
「……」
気を感じてみると、四天王達の気が感じられた。全員、ぐっすりと寝ているようだ……
「……そうか、僕は勝ったのか。」
そう言って、拳を握った。
「……!ルカっ!目が覚めたのか!?」
「アリスっ!?」
僕の呟きで、目が覚めてしまったらしい。
「あ、あの戦いからずっと寝っぱなしだったのだぞ!」
「ず、ずっと……?僕は、いったいどれぐらい寝てたんだ……」
「一か月だ!一か月も寝ていたのだぞ!」
「一か月……!!?そんなに寝てたのか!?」
僕は体を起こして、跳躍する。確かに寝っぱなしだったこともあり、少しダルい。
「……」
部屋の額縁……そこには、カードが三枚飾られていた。
「アリス、このカードは……」
「ああ……たまもの提案だ。この世界を救ってくれた異世界の戦士に感謝を込めて……との事だ。」
「そうか……」
アリスは、ルカをベッドに押し倒した。
「うわっ!?な、なにを……!?」
「心配……したのだぞ……ずっと、寝ていて……」
体に蛇体を巻き付け、ぎゅうっと抱きついてくる。声も体も、震えていた。僕はそのアリスの体を、そっと抱き返した。
「ありがとう、アリス……」
「……貴様が寝ていたせいで、色々な行事が先延ばしになっている。明日、一緒に世界を回ろう。そして、世界の各地で凱旋パレードだ!」
「ああ……!」
こんな深夜では、誰も起きてはいないだろう。
僕達は、二人で眠る事にした。アリスはずっと僕の事を見ていたから疲れていたのか、何をするでもなく、すぐに眠ってしまった。
「……」
僕は、アリスに抱きつきながら目を閉じた……
「……」
バーダック:ゼノは、魔王城のベランダで魔の大陸を見渡していた。あれほど瓦礫の山だったここも、一か月も経てば戦闘の跡もほとんど消えている。そして、夜行性の魔物達が歩き回っていたり飛び回っていたりしていた。
「バーダック殿。」
「ん?」
バーダック:ゼノは、振り向く。声の主は、八尾だった。
「くたばってなかったのか。」
「お主こそ、胸を貫かれたというのに。」
「お互い様だろうが。」
八尾は、バーダック:ゼノの隣に並んだ。彼は腕を組みながら、地平線の向こうを見ている。
「平和が、戻ったのじゃな……ヴィクトリー殿は犠牲になってしまったが。」
「……ああ。」
「どんな人間だったのだ……?」
「よく分かんねぇ奴だ……ただ、オレの息子に似ている。」
「む、息子……!!?」
「ああ……そして、大事な仲間であった事は確かだ。どうか、この世界のあの世では楽しくやってくれよ……」
バーダック:ゼノはそう言いながら、空を見上げた……
「やっていると思うぞ……多分。」
「間違いねぇな。」
八尾とバーダック:ゼノはそう言いながら、笑った。二人は、しばらくの間談笑する。
そして……
「……ふぅ、話し疲れた。」
「妾も、人間とここまで話に花を咲かせたのは初めてじゃ……」
二人は息を吐いて、魔王城の中に戻った。
「……それでは、おやすっ……!?」
バーダック:ゼノの姿が無い。そして、懐に違和感がある。
「……?」
取り出してみると、それはバーダック:ゼノのカードだった。
「……ふふん。」
八尾はそれを大事にしまい、寝床についた……
翌日……
ルカ達は世界中を回って、各地の人に挨拶しに行った。その過程で色々な誘惑を受けたり、不意打ちされたりしたが無事に帰還。
アリスとルカは愛し合う事になり、三日三晩の子作りに及んだ。彼は、それで数週間寝込む事になった……
その三日後の昼……雲ひとつない、気持ちのいい快晴の日。
「……」
ルカは、レミナに向かった。
レミナの中心には、ぽつんと墓が立っている。言わずもがな、ヴィクトリーの墓だ。
「……」
この世界の希望を背負った、異世界の戦士……僕達を守るために散ったヴィクトリーは、生きてる内に最期に戦った場所であるここに葬ろうという話になったのだ。そして今、彼の体はこの土の下に埋まっているというわけだ。
僕は、空を見上げた。
「……ヴィクトリー……お前は今、どこで何をしているんだろうな……お前の居る場所は、この空に続いているのか?」
この旅で得た、力……会った日から毎日、笑顔を交わしていた。いつの間にかその強さに憧れて、いつもその背中を見ていた。そして、安心して背中を預けられる何よりの相棒になっていた。
「ヴィクトリー……僕は、やったぞ。この手で、平和を……」
震えながら、ルカはそう言う。胸の奥から湧き上がる衝動が、目から流れた。
「僕は……お前の……!!」
「おーい、何辛気臭ぇ顔してんだ!」
不意に、そんな声が頭の中に響いた。ヴィクトリーの声だった。
「な……!!?」
「へへへへ、びっくりしたか?丁度ヒマになった所におめぇが俺の墓の前に居たからさ、死神さんに手伝ってもらってんだ。」
「……」
そう言えば、最終戦の時もそんな事してたような……
「やったじゃねぇかルカ!おめぇは平和は掴んだんだ!だから、そんな顔すんな!これからはアリス達と一緒に胸を張って生きるんだ!」
「で、でも……お前は……」
「いや、俺は犠牲になったつもりはねぇさ。あの世でそこそこ楽しくやってるしよ!死神さんは特別製がどうのこうの言ってて、俺の魂だけはこのまま残してくれるみてぇだ。おまけにカラダも付けてくれるってさ!しかも死んでっからこのまんまトシくわないんだぜ!冥府には、過去の達人とかも居るからなかなか面白い所だから、けっこう楽しめてるぞ!」
「……イリアスは、冥府に来たのか?」
「一応、来てはいたらしいぜ。俺は会えなかったけどな。」
「そうか……」
「だから、俺の事は心配すんな!おめぇは既に俺よりしっかりしてるしな。」
「分かった……僕、これからも頑張るよ!」
ルカは、笑顔で空を見上げた。ヴィクトリーも、笑顔を返した。
「そうだ、おめぇにはその笑顔が一番似合ってるぞ!」
「ヴィクトリー。」
僕とヴィクトリーと会話の中に、死神が入ってきた。
「そろそろ、仕事の時間だ。終わらせろ。」
「ええ、もうかよ……」
名残惜しそうにするヴィクトリー。だが、すぐに笑った。
「……そういう訳だ。そんじゃあ、いつかおめぇたちが死んじまったら、また会おうな!」
「ああ……待っていてくれよ……!その時にも僕は、もっともっと強くなるから……!」
「ああ、待ってるぜ!バイバーイ!」
ここで、ヴィクトリーとの会話は途切れた。これで今度こそ、生きている限りはもう二度と彼と会うことはなくなったのだ。
「……」
なんかあいつ、死人の癖に明るいからあんまり悲しくなかったな……いや、僕達に心配をかけさせたく無いのだろう。これも、あいつなりの優しさなのかな。
「……」
この戦士のお陰で、この世界は救われた。
かくして、人と魔物の共存も成されたのだ。いや……人と魔物だけではなく、天使まで共存するようになった。
しかし、まだまだ小さなトラブルが起きているようだ。これからはそういうトラブルを無くすために、アリスと一緒に世界を回ろうと思う。
そして、まだ見ぬ世界を……更に、ヴィクトリーの分までもっともっと強く……!
「よし、行こう!」
僕はそう言いながら、レミナから走り出していた。まるで、光さす未来のその先を目指すように……
つらい今を生きてきたルカ……
そして、この世界のみんなにやっと真の平和が訪れた。その平和は、今後も大切にされていくだろう。
そう、ルカがいる限り……
ルカが走り去った後のレミナに、突如として次元の穴が空いた。
「……」
そして、そこから邪悪な存在が現れた。赤い髪、白い肌、青を基調にした服装、禍々しい杖……そいつは気を消しながら、この地に降り立ったのだった。
「……ふん。」
ヴィクトリーの墓の下に手を向け、その地面を吹き飛ばした。指を上げ、彼の死体が入った棺桶を浮かばせる。そして、それをその手に引き寄せた。
「これで、全ての世界は私のものに……」
そう言いながら吹き飛んだ地面に杖を向け、土を元に戻す。
「ふっふっふ……はっはっはっはっは!」
そいつは笑いながら棺桶を浮かばせ、また次元の穴に消えた……
外伝ラストです