もんむす・くえすと!の世界に降り立った1人のヒーローアバターの話   作:ジョーカー:ゼノ

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出航

 海神の鈴を手に入れ、イリアスポートに戻ってきた勇者一行達は、早速港に行って、船を出してもらおうとしていた。

「僕、イリアス大陸から出るのは初めてなんだよな。」

 港への道を行きながら、二人に告げる。

「当然、俺もだ。」

「余もセントラ大陸の地を踏むのは初めてだ。上空を通過したことなら、何度かあるのだがな。」

「アリス、お前旅に出たのはつい先日、って言ってたよな……」

 ルカがアリスに質問した。

「その通り。魔王城を出てから、まず最初にイリアス神殿へと飛び……その後不慮の事故があって貴様らに出会ったという訳だ。」

「不慮の事故……か。」

 あの突然の墜落。何があったのかは未だに教えてくれない。まさか、飛んでる最中に居眠りして、落ちたんじゃないだろうな……それはともかく、港へついた。

 暇そうな船乗り達が、生活の糧とするべく魚釣りをしているようだ。交渉するならなるべく偉そうな人がいい……そう思い、船長らしき人に声をかけようとした。

「誰が行く?」

「俺に鈴が渡ったんだ。当然俺だな。」

「貴様に交渉というものができるとは思えんがな。」

「うっせぇ!」

 という訳でヴィクトリーは、船長らしき人に声をかけた。

「オッス!」

「あん?何だお前……」

「船出して欲しいんだけどさ、出来る?」

「あぁ?冗談言うな若いの。ここを出た船がどうなるか知ってるだろ。」

 ヴィクトリーはポケットから海神の鈴を取り出し、見せる。

「それがよ、この鈴がありゃ沈まねぇようになるんだよ。」

「……寝言は寝て言え。そんな汚ぇ鈴で、嵐が避けられたら苦労はねぇぜ。」

 どうやら、取り合ってくれないようだ。

「いや〜!頼むよ〜!いっぺん騙されたと思って……」

「おととい来な。ガキの戯言に付き合ってる暇はねぇんだ……暇だけど。」

 全く耳を貸してくれないようだ。

「やはり貴様には無理だったな。」

「む〜……」

 アリスがヴィクトリーの隣に出て、ヴィクトリーは頬を膨らませながら僕の隣についた。

「おっ、いい女……あんたなら特別に乗せてやっても……」

 言葉が終わる前に、アリスの目が光った。

「……余の意に従え。」

 すると、船長はぴたりと気をつけをする。

「はい!何なりとご命令を!」

「我々をセントラ大陸に乗せていけ。すぐに準備をしろ。終わり次第、出港だ。」

「了解しました!ただちに!おい、てめぇら!魚釣ってる場合じゃねぇ、出港の準備だ!」

「えぇ……あ、はい!」

 船乗り達は困惑しつつも、出港の準備を始めた。

「魔眼っちゅう奴か……」

 今まで遭遇してきたモンスターにも、こういう技を使う奴はいた。

 魔王であるアリスなら、使えるのも当然だろう。

「くくく……これこそ、高位妖魔に備わった魔力よ。余ほどになれば、魅了、石化、混乱、気絶、沈黙……何でも思いのままだ。」

「そりゃ、便利だな……」

 まさに、歩くステータス異常。

「ともかく、助かったよ。ありがとう。」

「ふん、勘違いするな。ヴィクトリーがうだうだやってるのが面倒だっただけだ。」

「悪かったな……」

 僕達の手助けはしないと言いつつ、結構色々手助けしてくれる気がする。何だかんだ言いつつ、タダ飯食らいでは無いようだ。

「準備が整いました!乗ってください!」

 船長が僕達の所に走り、言った。

「船長、この連中をどっかに送るんすか?こいつら、誰なんです……?」

「バカヤロウ!この方々はなぁ……どなただろう?」

「何でもいいから乗るぞ。」

「……お世話になります。」

「サンキュー!」

 こうして僕達は、見ず知らずの船に乗り込んだのだった。

 いよいよ船旅の始まり……と言ってもセントラ大陸にはわずか一日ほどで着くのだが。だいたい明日の正午には、ナタリアポートに着くはずだ。

 

 こうして船上で過ごす夜。こういう時も僕達は修行を欠かせない。今日も僕はアリスの特訓を受け、ヴィクトリーも自分の修行をする。

「そろそろ界王拳に手を出すか……流石にこのまんまじゃまずい……」

 界王拳。それは界王様秘伝の超術で、その気になれば自分のパワー、スピード、ガードが何倍にもなる技。その分、体に負担はかかるが、恩恵は大きい。以前に、悟空さんが界王拳状態になった所を見た事がある。気の持ち方や扱い方を心得れば、おそらく俺にも使える筈。

 ……ここでは、『ヒーローアバターは界王拳なんて使えねーよ』という先入観を捨てよう。

 そう思い、深呼吸をする。

「……いくぞ……!!」

 体中に気合いを込める。

 まずは素の界王拳から始める。

 いきなり2倍は多分死ぬ。

「かぁああ……!!」

「わあぁあっ!!避けろーっ!!」

 突如として、上空からルカの声が響く。

「何だっ!?」

 凄まじく重い兜割りをヴィクトリーが白刃取りで受け止める。その瞬間、彼の体から赤いオーラが吹き出し、その兜割りを押し止めてしまった。

「おぉっ!?」

「わっ!?」

 ヴィクトリーはびっくりして、剣を弾く。ルカは何とか踏ん張り、とどまった。

「……おめぇ、今の新技か?」

「お前だって新技を開発してたじゃないか……」

「今のは偶然だ。」

 赤いオーラが消え、ヴィクトリーの気が鎮まる。

「……ふむ、ルカは天魔頭蓋斬を、ヴィクトリーは肉体強化魔法を覚えたようだな。」

 そこにアリスが入り、二人を見る。

「いや、俺のはたまたま……」

 何だか知らないがあっさり界王拳を発動してしまった。界王様、俺はこれでいいのか。

 アリスは突然、ルカの指輪に目を向けた。

「ルカ、その指輪……」

「アリス、これは食べちゃいけないよ。」

「食えるか。」

 ヴィクトリーが、ルカの頭をペシッと叩く。

「貴様が余の事をどう思っているか、よく伺える言葉だな。食ったり奪ったりはせん、少し気になる事があるのだ。」

「じゃあ、指に付けたままでいいかい?肌身離さず付けているよう、死んだ母さんと約束したんだ。」

「あぁ、それで問題ない。」

 アリスは僕の手を取り、形見の指輪をまじまじと眺めた。

 そこにヴィクトリーも覗き込む。しばらく見た後、アリスは首を横に振った。

「この指輪から感じる残留思念も、特別なものではなかったか。貴様の秘めた力は、この指輪とは関係ないようだな。」

「それ、七尾を倒した時のか……?眠りながら戦ったって……」

 その時の事は全く覚えていない。ぐっすり眠っていたのだから、当然と言っちゃ当然だが……

「あの力、こんな指輪一つで手に入れられるんなら苦労ねーぞ。」

「ふむ、そのようだな。」

「そんな凄かったのか?僕の眠っている時って……」

 ヴィクトリーが、目をきらきらと輝かせながら言った。

「あぁ!すっげぇ強かったぞ!今度寝ながら戦ってくんねぇか!?」

「む、無茶言うなよ……」

「もしかしたら……貴様の祖先に高位の魔族が居たのかも知れんな。」

 二人はアリスの方に顔を向ける。アリスは続けて説明した。

「基本的に魔物は、その種族のメスしか産まんが……まれに例外がある。突然変異的に人間のオスが産まれる事もあるのだ。そうした男は、原則的には普通の人間とは変わらんが、また例外的に何らかの魔力が遺伝しているケースもあるという……魔王である余すら、数件しか聞いたことのないレアケースだな。」

「ぼ、僕の祖先に魔族が……?」

 僕の祖先に魔姦の禁をやぶった者がいるという事になるが……

「ふむ、あくまで類推に過ぎん。それだけ貴様の潜在能力は尋常では無いということだ……あれ程の力を持っているならとっとと発揮せぬか、ドアホめ。」

「そ、そう言われても……」

 僕は全く覚えていないんだから、しょうがないじゃないか。

「貴様にそれ程の潜在能力がある以上、叩けばまだまだ伸びるはずだ。これからの特訓はビシバシ行くぞ。ヴィクトリーも遅れをとるなよ。」

「わ、分かったよ……」

「分かってるってぇ〜!」

 二人はうんうんと返事をする。

「ところでアリス、この指輪から思念が感じるって言ったよね?」

「だが、特殊なものでは無い。貴様に何らかの効力を及ぼすものではないようだ。母が子を思い、案じる思念が少しこもっている……間違いなく、貴様の母のものだな。」

「そうか、母さんが……」

 ルカはぎゅっと指輪を握りしめていた。

「もしかしたら、ルカの母親が魔族だったりしてな……」

「それは無い。この指輪からは魔素は感じられんからな。」

「あ、当たり前だろ!だいたい僕の母さんは流行り病で死んだんだから!」

 村に肺病が流行った時、母さんも感染したのだ。流行り病にかかる魔物なんて聞いたことがない。

「肺病か……俺の世界だったら簡単に治せる病気なのに……」

「そうなのか……?」

「……見た所、この世界は俺達がいた世界より遥か昔の世界らしい……この世界で治せない病気も俺の世界ではパパパーッて治せちまうんだぞ。」

「そうか……残念だったね……」

「……悪ぃなぁ。辛いこと思い出させちまったな。」

「ううん、気にしてないよ。所で、二人の両親は……?」

 二人は考え込み、先に答えたのはアリスだった。

「……父は知らん。余の種族は、完全なる母系だからな。おそらく、母上がどこぞで襲った男の精だろう。その男が搾死されたのか、食われたかは興味が無い。……まぁ母上の性格上、その男が死んだとは思えないがな。」

「……何だか、すごくドライだな……」

 多くの魔物にとって、父の存在などそんなに重要じゃないみたいだ。

「母上は……アリスフィーズ15世……だが、もういない……」

「そうか……」

 確かアリスは、アリスフィーズ16世。

 つまり母親の先代魔王はもうこの世にいないのだろう。

「俺は……そもそも両親の顔を見た事がねぇ……」

「えっ……」

 ヴィクトリーの言葉に衝撃を受ける。

 両親の顔を見た事が無い……?

「いるんだろうけど、もう故人なんだろ……バーダックみたいな父親だったらいいな……」

「バーダック……?」

「いや、何でもねぇ。」

 相変わらず、変な所で話を隠すやつだ。

「……湿っぽい話になってしまったな。さて、修行を再開するぞ。」

 アリスがそういった時だった。不意に、海が狂い始めたのだ。先程まで静かだったのが嘘のように、辺りに暴風が吹き荒れる。

「これが、問題の暴風か……」

「普通の船だったらあっという間に沈んじまうな……」

 しかし、この船はビクともしない。

 舳先にぶら下げている『海神の鈴』が光を放っているのが見える。

「やった!流石キャプテン・セレーネの秘宝だ!」

「ふむ、人間の残した秘宝にしてはたいしたものよ。しかし……」

 アリスが不穏な表情をする。

「……!!!」

 ヴィクトリーがキッと上空を見つめた。

 その次の瞬間、一筋のつむじ風が船上を吹き荒らした。

「ぐっ……!!」

「うわっ!何だっ!?」

 その風が過ぎた後、舳先に一人の美しい妖魔が立っていたのだ。

「お、おめぇは……!!」

「アルマエルマ……!?」

 こいつがアルマエルマ……四天王の一人。

「なるほど、あなた達が例の人間ね……」

 次の瞬間、アルマエルマの姿が消え、二人の腰や股間に柔らかな手のひらが這う。

「アリスフィーズ様が気に入られるだけあって、美味しそうね……」

「……!?」

「なに……!?」

 速すぎて背後に回られたのに気付かなかった。

「だっ!!」

「てやぁっ!」

 ヴィクトリーが廻し蹴り、ルカが回転切りを放ったが、そのアルマエルマは既に残像だった。

「なっ……!!」

 ヴィクトリーはまた正面を見た。

「あら……イキがいいのね……うふふ……」

 ぺろり……とアルマエルマは舌なめずりをする。そして、アリスの方を見た。

「アリスフィーズ様、魔物を傷つける勇者は退治してもいいという御命令でしたが……その御命令、確かに遂行してよろしいのでしょうか。」

「……例外は無い。余はあくまでこの人間達を観察しているだけ。特に肩入れもしなければ、特別扱いしている訳でもない。」

「くすっ……そうは思えませんが、分かりました。」

 そして、アルマエルマは僕達の方を向く。

「そういう事よ……ルカちゃん、ヴィクトリーちゃん。この海域は通してあげないわ。」

「ルカ……ちゃん……」

「ヴィクトリーちゃんなんて呼ばれたの初めてだぞ……」

 何だか拍子抜けしてしまうが……それでも敵であることに変わりは無い。しかも四天王の一人、あのグランべリアと同格の相手なのだ。

「じゃあ、お前を倒して無理にでも通る!」

「そういう事だ……」

 二人は力を開放し、構える。

「ふふっ……勇気溢れる、若い冒険家……いいわぁ……二人とも、どんな風に犯してほしい?」

 アルマエルマは自分の体を妖艶にくねらせ、指を這わせる。

「手でシゴき抜いてあげようか?お口で吸い尽くすのもいいわねぇ。それもいいけど、おっぱいで挟まれて搾り取られたい……?それとも、お尻の穴を試してみる?やっぱり、あそこで吸い尽くされたい……?この尻尾も、とってもいいわよぉ……」

「ぐっ……!」

「……昔、宇宙を旅したけどこんな奴は初めてだ……」

 アルマエルマは自分の尻尾を掴み、振る。

「き〜めたっ!尻尾で遊んであげる……特別に、手も足も魔法も使わずに相手してあげるわ。」

 アルマエルマの挑発的な態度にヴィクトリーも挑発的な態度で返す。

「尻尾だけで?随分気前がいいんだな。余裕って奴か?」

「そうよ……今の君たちなんて尻尾だけで充分……文句あるかしら?」

「言うじゃねぇか……どうなっても知らねぇ〜ぞ〜?」

 そのヴィクトリーの挑発の言葉に、アルマエルマは笑いながら青筋を浮かべる。

「ヴィクトリーちゃん……言葉には気をつけようよ……私は怒るととっても怖いのよ……?」

「……そりゃ怖い。」

 ギロッとヴィクトリーはアルマエルマを睨み、全身に力を込める。

「やるしかないか……!!」

 ルカも剣の持ち手に握力を込め、しっかりとアルマエルマを見定める。

「せいぜいもがき抜いて、私を愉しませてね……遊び終えたら、涸れ果てるまで吸ってあげるから……」

 アルマエルマの気が開放され、オーラを放つ。グランべリアのような肌がビリビリするような闘気ではなく、全身をねっとり舐め回されるかのような淫気が放たれてた。

「それじゃあ、行くわよぉ!」

 戦士達は突如強襲した四天王、アルマエルマと激突するのであった。

流血表現

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