もんむす・くえすと!の世界に降り立った1人のヒーローアバターの話   作:ジョーカー:ゼノ

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ナタリアポート到着

 一行の乗っていた船は無事ナタリアポートに到着した。

「ここがナタリア地方……どんな所なんだ?」

「セントラ大陸の南西部……伝統と自然が深く残る所だよ。」

 二人は船から降りて、深呼吸をした。

「ここが、セントラ大陸なんだな……」

 生まれて初めてイリアス大陸以外の大地を踏み、僕は感慨に襲われていた。

「……こっからが、本番になるのか……俺わくわくしてきたぜ!」

 アリスもルカの後ろにつき、港町を見る。

「ふむ、ここはイリアスポートとは違い、活気があるな。」

「セントラ大陸の沿岸都市を繋ぐ港町だからかな。」

「イリアス大陸との貿易が止まってもこっちに特に影響はないってことか……」

 そう歩きながら話していたら大通りに出た。大通りには商人や出店が並び……

「おい、ルカ……あれって……」

「……マーメイド?」

 金髪でボロボロの服を着たマーメイドが出店を開いていた。

「マーメイド手作り、焼きヒトデはいかがですか〜?」

 どう見てもまずそうな食べ物を売っている彼女は、マーメイド。いや、彼女だけではない。そこら中にマーメイドが沢山いる。

 人魚たちは地上での生活にも慣れており、尾びれをひょこひょこと動かして歩いている……

「ど、どういう事なんだ……?」

「に、人魚がそこら中に……」

 アリスが旅の書物を見ながら口を開いた。

「旅の書物によれば、ナタリアポートは人魚に馴染んだ港町。この町では人魚も住民として受け入れられているとか。」

「でも……あの人魚、服がボロボロじゃないか。もしかして悪い人に奴隷にされているとか……」

 ルカが、例の金髪マーメイドを指さす。

「服がボロボロなのは、単に儲かってないからよ……可哀想に思うなら、買っていきなさいよ!」

「えぇ……」

 焼きヒトデを買わされてしまった……

「まずい。」

 早速ヴィクトリーが食った。何だかんだで、煎餅感覚で完食した。

「……ともかく、ここはいい町だね。人間と魔物が、仲良く暮らしているなんて……」

 僕が目指しているのは人と魔物の共存する世界。ここは人魚に限定されてるとはいえ、とても素晴らしい光景だ。

「ルカ、こっからどうすんだ?」

「目的地などのあてはあるのか?」

「とりあえず、ここから西にあるサン・イリア城に向かうよ。そこのお城もイリアス信仰が非常に盛んで、旅の勇者を歓迎してくれるらしいんだ。」

 アリスがヴィクトリーとルカを交互に見る。

「……ニセ勇者と脳みそ筋肉もか?」

「脳みそ筋肉……」

「ぼ、僕達は心は勇者なんだよ!」

 サン・イリア城は協会都市であり、王様もえらい大神官様。勇者に道を示してくれる賢者であり、ぜひ訪れておきたい所なのだ。

「ふむ……あまり行きなくない所だな。料理もマズそうだ。」

 ……相変わらずアリスは食べ物の事か……などと呆れているところだった。

 一人の美しいマーメイドが僕に声をかけてきたのだ。

「あの……すみません。そこの旅のお方、ちょっと宜しいでしょうか……」

「は、はい……何でしょうか……」

「そのような剣をお持ちしていたり、派手な格好した仲間を連れている事からして、ただものでは無いとお見受けしたのですが……」

「ええ、確かにただものではありません。」

 僕は視線をエンジェルハイロウに向ける……こんな剣を持ち歩いている奴がただものだったら、その方がびっくりだ。

「派手な格好だとよ!はははっ!」

「貴様の事だろうが、ドアホめ。」

 ヴィクトリーとアリスがそんなやりとりをした後、マーメイドに向き直る。

「腕に覚えのある冒険者とお見受けし、お願いがあるのです……どうか、話を聞いてもらえないでしょうか……?」

 マーメイドがそう切り出した時だった。

「……火薬の匂いがする……」

「……えっ?」

 ヴィクトリーがそう言った瞬間、凄まじい轟音が響いた。

「な、何だっ!?爆発!?」

「きゃあぁっ!?」

 凄まじい衝撃が周囲を揺るがし、あたりは騒然となる。広場の向こうにあった建物が、何の前触れもなく爆発したのだ。

「な、何だ……!?」

「一体、何が起こったんだ……!?」

「あの建物は……人魚の学校!?た、たいへん!」

 血相を変え、マーメイドは爆発のあった建物へと駆けていく。

「何だ!?何が起きたんだ!」

「あれは……人魚の学校じゃない!どうしたのよ……!」

 ナタリアポートの住民も爆発した建物に集まる。

「これは……爆弾によるものだな。」

「ば、爆弾だって……!?」

 倒壊した建物から、大勢のマーメイドが這い出してきた。

 駆けつけて来た兵士達が瓦礫を押しのけ、負傷者の救出が始まる。僕達は人波に紛れながら、救出作業を見守るのみだった。

「良かった……みんな、大した怪我はないわね……」

「おしっぽ、焦げちゃった……」

 溢れ聞こえる声からして、幸いにも死者は出なかったようだ。

「消えた気もねぇようだ。やっぱ魔物だから俺達とは体の丈夫さが違うんだろ……」

「そ、そうか……良かった……」

 僕がほっと胸をなで下ろした瞬間……見慣れた顔が、その群衆の中に混じっていたのだ。

「……あいつは!!」

「!?」

 ルカの声に釣られて、ヴィクトリーもその男を見る。

「ただのニヒルな感じのおっさんじゃねぇか……」

「どうした?ルカ……」

「……」

 その男は、そのまま雑踏に紛れてしまった。間違いない、あいつがさっきの……!!

「ルカ、汗まみれだぞ。」

「さっきの薄汚く下品そうな男、お前の知り合いか……?」

「知り合い……いや、違うよ。向こうは多分僕の事を知らないはずさ……親父の……その、親友だった男だよ……」

 あの学校の爆発事件……その犯人は間違いなく、あいつだ。ラザロ……まだこんな事を……

「……旅を続けよう、二人とも。僕達にのんびりしている暇なんてないはずだ。」

 あんな奴を野放しにしないためにも、この世界を変えなければ……

「ルカ、今日はこの町で休んだ方がいいぞ。」

「で、でも……!」

「ヴィクトリーの言う通りだ。貴様、自分がどんな顔色をしているか分かっているのか……?」

「え……?」

 そう指摘されて改めて、自分の状態に気付く。

 顔は汗だらけで、息も乱れ、手はぷるぷると震えていた。

「だ、大丈夫だよ……」

「ドアホめ。そういう強がりは大丈夫そうな顔をしてから言え。あの安宿で我慢してやる。しばらく休むぞ……」

「でも……」

「おめぇは今、精神的に動揺している。このまんまじゃ、まともな旅は出来ねぇ。ここはアリスに甘えようぜ。」

 ぐずる僕を、二人は半ば引き摺るように宿まで連れて行ったのである。

 

「ありがとう二人とも、だいぶ良くなったよ。」

 安宿でルカはベッドから起き上がり、そう言った。

「……あのおっさん、何者なんだ?」

「貴様、あいつを見てから様子がおかしくなったのだぞ。」

 ルカは少し黙り、また口を開く。

「あいつは……イリアスクロイツっていう狂信組織の幹部だよ。……多分今はあいつがトップのはずだ。」

「イリアスクロイツ……?」

「名前からして、いけ好ん組織だな。」

「最低最悪の連中さ。イリアス様の教えを変な風に解釈して、魔物の根絶を唱えているんだ。『魔と交わることなかれ』……この戒律を、魔物との接触はいっさいダメって解釈してね。」

「それは悪ぃ奴らだな……」

「魔物と喋ってはいけない、見ることさえいけない……魔物が人間の目に触れることのないように、根絶してしまえ……そんな事を言い出したロクでもない連中だよ。」

「ふむ……貴様からしてみれば、目の仇だな。」

「共存じゃなくて廃絶派か……」

 そう、人間の中にもこういうロクでもない連中がいるのだ……

「さっきの爆発事件と言い、その組織、どうやら、口だけでもねぇみてぇだな。魔物をマジで廃絶しにかかってる……」

「なるほど、だから人魚の学校が狙われたということか……」

 アリスはフゥー、と息をついた。

「やれやれ……ロクでもない人間の中の、更にロクでもない連中というわけか。」

「でもね、殆どの人達はあんな連中の話に耳を傾けていないよ。魔物排斥の思想が強いイリアスヴィルでさえ、急進的すぎるイリアスクロイツの主張は受け入れられていないんだ。実際の所、あいつらは無差別の破壊魔に成り下がっている訳だし。」

「人間の中にも、異端的な排斥思想を掲げた奴らという訳か。その孤立が、更に連中を狂気へと駆り立てるわけだな……」

「ロクでもねぇな……いつかぶっ飛ばさねぇとな……」

 ヴィクトリーも、ため息をついた。

「人間と魔物の共存は厳しいよ……人間にも、あんな連中がいる訳なんだからね……」

「なるほど……それにしても、意外だったな……」

 二人はアリスの方を見る。

「アホそうな貴様が、ちゃんと世界の現実を把握していたとは。エセ平和思想にかぶれたお花畑の頭だと思っていたぞ。」

「し、失礼な……僕だって無知じゃないよ……」

「あははは……」

 そう呟いた直後に、僕はふと思い立った。『レミナの虐殺』は、もしかして……

「まさか……『レミナの虐殺』にイリアスクロイツが関わっているとか……?」

「冗談を言うな。レミナに何万人の人間と魔物が住んでいたと思う?」

「ルカの話を聞くところ、イリアスクロイツはチンピラ程度の組織だろ?そんな大規模な破壊ができるとは思えねぇ。」

「……確かにそうだね。」

 イリアスクロイツは決して大きな組織ではない。人間と魔物が険悪な関係の現在でさえ、決して民衆の支持を得ていないのだ。一つの町をまるごと破壊なんて、出来る訳もないか。

「……ルカ、俺はちょっと外を散歩してくる。」

 ヴィクトリーが立ち上がり、そう言った。

「あぁ、行ってらっしゃい。」

「迷子になるなよ。」

「ならねぇよ……子供じゃあるめぇし……」

 そう言い、ヴィクトリーは宿から出ていってしまった。

「……所でルカ、余は腹が減った。」

「……えっ?」

 

「……」

 ヴィクトリーは夜道を一人で歩いていた。誰もいない閑静な町を堪能していたのだ。

 俺の世界だとこんな時間に出歩いてたら補導されちまう。

 そんな感じの事を思いながら静寂に包まれたこの空間を楽しんでいた。騒がしくてドキドキもワクワクも止まらないのもいいが、こんな静かで落ち着ける空間もいいなと思っていた。

「……第二の人生か……」

 思えば、俺は一度死んだ身。もうあの世界に戻ることは出来ないだろうけど、それでもいい。別に自分の世界が恋しくない訳じゃない。ライバルだって居たし、何より一緒に戦ってくれた仲間だって居た。あいつらの事を思い出すと何だか寂しいが、それも辛い思いではなかった。だって、こうしてルカという仲間と一緒に旅をしているのだから……

「やっぱり、平和になって、トシとったら俺もエッチとかすんのかな……魔物と。」

 ルカの理想には賛成している。それはちゃんと認めていて、俺もそれに尽くそうとしている。

 だけど、流石に魔物相手に行為をするのは抵抗がある。

 殆ど人間と変わらないアルマエルマやたまも、少しモンスターらしくなるハーピーやエルフなどは普通に可愛いと思うが、時として異形の塊みたいな魔物だっているのだ。特にミミズ娘や、ヒル娘……まぁ、虫系の魔物なんかは俺の感覚ではお世辞にもえろいとは言えない。むしろキモい。

 元々俺が虫が苦手なのもあるから、これはもうしょうがないものとして片付けるしかない。

 ルカは何であんな気持ち悪い生物に発情できるのか……もしかしたらあいつ、超が付く上級者なんじゃあ……とにかく、魔物とのエッチは出来れば断りたいものだ。

 でも、魔物だからという偏見で、そういうのを断るのもルカの理想に反する事になるんじゃないかと心配になる……あいつ、男側も「NO!」と言える時代にできるのかな……

 

「……」

 気付いたら港で水平線を見ていた。ここからギリギリ、イリアス大陸が見える。

 俺がこの世界に来たのはほんの一週間近く前。俺達はもうあんな所からこんな所に来たんだなと思った。

「……」

 ここに来るまでの道中を思い出し、思う。

 俺はあのイリアス大陸を網羅し、完全に強くなってた気がした。だが、それはアルマエルマの登場という形であっけなく砕かれた。俺達は、まだまだ弱い。ぜってぇ負けねぇ為にも、ルカの足を引っ張らねぇ為にも、俺が強くならなきゃ……

「……似合わんな。貴様が海を眺めながら感傷に浸るというのは。」

「アリス……」

 何だかつやつやしたアリスが、背後から話しかけてきた。

「どうだ?この世界は。」

「すっごく楽しいさ。」

「前の世界とどっちが楽しい?」

 すげぇ難しい質問をされて、俺は頭を抱える。

「う〜ん……ムズイなぁ……」

「何も振り返らずに直感だけで動く脳みそ筋肉には難しい質問だったか?」

「うっせぇな……」

 俺は、ジト目でアリスを見た。

「……いや、貴様は言うほど脳みそまで筋肉では無いようだ。色々な世界を見た男の目をしている。」

「……」

 確かに色々な事情で、過去と未来へレディゴーしたのはよく覚えてる。

「人間っちゅうのはドコ行っても変わんねぇものだな。」

「そうだな……貴様の世界にも、愚かな人間はいたのか……いや、人間だけではないようだな。」

「あぁ、自分の願い叶える為に無差別テロ起こしたり、宇宙を独裁的に支配したり、自分の楽しみのためだけに多くの人間ぶっ殺したり……」

 レッドリボン軍、フリーザ、セル……その他にもどうしようもない奴は居た。

「場数は相当に踏んでいるようだな。じゃあ、何故そんなへっぽこなのだ。」

「知らねぇよ……クラスアップする時はレベルが1に戻っちまうんだからしょうがねぇだろ……」

 今まで二回クラスアップをしてきたが、レベル1に戻る感覚というのはどうも慣れない。だがそれも、コツコツと修行すれば、いずれ元の強さに戻る。今は我慢するしかない。

「……まぁ、何でもいい。」

「丸投げかよ……」

 アリスは俺から背を向けて、顔だけこっちに向ける。

「戻るぞ。ルカが待っている。」

「……あぁ。」

 こうして、俺達はまた宿に帰る。この地を冒険するのは明日からになるだろう。

 何だか俺、ワクワクしてきたぞ!

流血表現

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