もんむす・くえすと!の世界に降り立った1人のヒーローアバターの話   作:ジョーカー:ゼノ

27 / 227
城へ……

「ルカ……ヴィクトリー……」

 またあの、夢の世界。そこから聞こえる、いつものイリアス様の声。

「イリアス様……?」

 ルカがそう言うと、いつものように女神はその姿を顕した。そして、優しい声で二人に語りかける。

「二人とも……貴方達は、祝福されざる勇者です。」

 イリアス様がそう言うが、珍しくルカは微妙な顔をしていた。

「本当に……僕は、勇者なんですよね?ニセ勇者なんかじゃないんですよね……?」

「ええ……貴方は勇者です。ですから、勇者としての責務を忘れてはいけません。」

 それを聞いた途端、ルカの顔が明るくなった。

「ええ、もちろんです!僕は勇者として、人間に迷惑を掛ける魔物を退治しますから!それに、弱い者の為に剣を振るいます!」

「……調子の良い奴……」

 ヴィクトリーは、はしゃぐルカを見てそんな事を呟く。

「それにそれに──」

「魔王を討つのです、勇者ルカ、武道家ヴィクトリー。それこそが、勇者としての責務なのです。」

 ルカが言いかけた言葉を横切るように、イリアス様はそう言う。

「……」

「そ、それは──」

 戸惑う二人は、そのまま眠りの闇へと戻されてしまった……

 

「……朝か……」

「オッス。」

「ふむ、ようやく起きたか。」

 ヴィクトリーとアリスの二人は、既に起きていた。なんだか、アリスの顔は普段よりツヤツヤしてる。昨夜、僕から散々に精を吸い取ったからだろうか。

「なぁ、二人とも……やっぱり、魔王は退治するべきなのかな?」

 それを聞いたアリスは、少しイラッとした表情をした。

「……それを、余に聞くのか?貴様、割ととんでもないな。」

「ぁ……ごめん、つい、思わず。」

 たまに、アリスが魔王だということを失念してしまう。ならば──

「ヴィクトリーは、どう思う?」

 こっちに、聞いてみる。

「秘宝の洞窟で言ったことと同じさ。まだまだ知らねぇ事だらけだから、断定は出来ねぇって。」

 ここでアリスが、溜息を吐いた。

「だが……勇者とは、そもそも魔王を倒すために存在するものだろう?貴様らが──」

「それは違ぇさ、アリス。」

 ヴィクトリーが、横から割ってくる。

「?」

「勇者ってのは、何かを守るためにあるモンだ。その守り方がたまたま、『魔王を倒す』って形に定着されてっから、そう思えてくるんだ。」

「ほほう……?」

 あの孫悟空だって、根底にあるものは戦闘本能だが、その動機は「地球を守りたい」という理由で戦ったのだ。この人を勇者(ヒーロー)と呼ばず、何と呼ぼうか。

「だけど……イリアス様の望みが、おめぇの打倒だからな……」

「でも、正義のためにアリスを倒すのは、違うよ……」

 ルカはそう言って、溜息を吐いた。

「勇者、か……僕達は、勇者としてどうするべきなんだろうな……」

「……己のあるべき立場と、己の向かいたい道。それが、時にズレてしまう事もある。ままならないものだ、世の中とはな……」

 アリスは、突然そんな事を言う。ヴィクトリーにはそれが、彼女自身が自分に言い聞かせているように思えた。

「アリス……おめぇ……」

「いつもみたいに、「ドアホめ」って言わないのか?」

「……ふん。余にも色々あるのだ。食べ物の事しか考えていないと思っていたのか?」

「思ってた……」

「思ってたぞ……」

 それはともかく、勇者としてのあり方に少しだけ悩む二人であった。

 しかし、のんびり悩んでいる暇もない。この街でとっとと準備を済ませ、サン・イリア城へ向かうというのだ。そこの王様は、勇者に道を示してくれるという。その王様なら、悩める俺達に道を示してくれるかもしれないというのだ。まぁ正直、この道に関しては自分で悩むべき事だと思うのだが……

 

 ナタリアポートを出た一行は、砂浜沿いを歩きながら西へ向かう。

「サン・イリア城とやらに向かうと言っていたな?」

 アリスは、ルカにそんな事を聞いた。

「ああ。ナタリアポートから西、歩いて三日って所かな。」

「三日もかかんのか……」

「そうだね。でも、サン・イリアの王様に、勇者としての道を示してもらうんだよ。」

「ふん、馬鹿馬鹿しい……」

「道なんか、自分で決めりゃいいじゃねーかー。」

「うるさいなぁ……」

 うんざりした様子の二人と一緒に、砂浜沿いを進んでいると──

「きゃああああーっ!!」

 不意に、若い女性の悲鳴が響き渡った。見れば──か弱い女性が、魔物に襲われていた。

「こ、来ないでくださいっ!」

「私、お腹が減ってるの……あなたでもいいわ、精気を吸わせて……」

「や、やめて……!」

 どう聞いても事案発生のそれだが、この世界では違う。

「ルカっ!!」

「ああっ!!」

 二人は走り、女性を襲うモンスターの前に立った。

 人間の女の上半身に、ナマコの下半身……ナマコ娘だった。

「やめろっ!!」

 ルカはそう言いながら、剣を抜く。

「あ、貴方たちは……?」

「ここは俺達に任せて、とっとと逃げろ!!」

「は、はい……!」

 女性はその場から離れるが、ナマコ娘は二人を前に嫌らしく笑った。その興味は、二人に移ったらしい。

「美味しそうな人間ね。私のお口で咥えこんで、精液じゅるじゅる搾ってあげる……」

「ふざけるな……!」

「この大陸の魔物との初戦闘……わくわくすんなぁ!」

 ルカが先に踏み込み、ナマコ娘に雷鳴突きをする。

「っ!?」

「そりゃあっ!」

 揺らいだ彼女に気合砲を放ち、ぶっ飛ばした。

「っぐ……!」

 しかしナマコ娘は着地し、ナマコ部分の口を大きく開けた。

「うふふ、この中に取り込んであげる……」

 内部は、よく分からない肉器が嫌らしい音を立てながら蠢いている。ヴィクトリーはそれを見て、生理的嫌悪を抱いた。

「かぁっ、気持ち悪ぃ……やだおめぇ……」

 しかしその横で、ルカはそれに釘付けになる。

「ゴクッ……」

「ルカッ!?」

「あ、ああっ!平気だ!」

「あははっ!!」

 ナマコ娘は高速で突進してきて、どちらかを取り込もうとする。しかしルカは跳び避け、ヴィクトリーは高速移動で彼女の背後に来た。

「なっ!?」

「どりゃあっ!!」

 その頬を拳で打ち抜き、ナマコ娘を揺るがせる。

「きゃ……!」

「どりゃあっ!!」

 そこにルカが、強力な一撃を振り下ろした。天魔頭蓋斬ほどの威力ではないが、会心の一撃。

「こんな人間が、まさか……!」

 それによってナマコ娘は封印され、小さなナマコの姿になった。

「ふぅ……」

「咥えこまれたら、その時点で終わりだったかも知れねぇな……」

 そう言い合う二人の背後に、誰かの気配。

「アリス、僕達も──」

「違ぇよルカ。」

 ヴィクトリーにつられて振り向くと、そこにはさっきの女性が立っていた。

「あの、ありがとうございます。」

「い、いえ……」

「当然の事をしただけさ。」

 二人の前で、女性は人差し指を合わせて顔を赤くする。

「……嬉しかったです。あなたのような方に出会えて……」

「そ、そりゃどうも……」

「あはは……」

「あの……私のお婿さんになって下さい。私、あなた達と子作りがしたいです……」

「え、えええ……!?」

「い、いきなりそんな事……!ルカ、してやれよ。」

「な、何でだよ!」

 綺麗な女性とはいえ、いきなりそれは不味い。こういうのは、文通でもしてから仲を深めて──

「私じゃダメですか、旦那様……」

 女性は、しゅんと肩を落とす。

「誰が旦那様だ。」

「その、いきなり結婚とかは、流石に……」

「じゃあ、しばらく一緒に暮らしましょう──」

 女性がそう言った、次の瞬間だった。

「波ーっ!!」

 ヴィクトリーが、いきなりかめはめ波を女性に放った。

「!!」

 それは直撃し、爆発する。

「いきなり何をするんだ、ヴィクトリー!!いくらしつこいからって──」

「馬鹿野郎!とっとと剣を抜け!奴の気は、これっぽっちも減っちゃいねぇぞ!」

「え……?」

 もくもくと、爆煙が晴れる。そこには、巨大な貝殻があった。

「な……!?」

「何で、バレちゃったんですかねぇ……?」

 貝殻が開き、先程の女性が姿を見せる。そう、彼女は貝のモンスター……貝娘だった。

「魔物だって事は勘づいてたけど、その邪悪な気は見過ごせねぇ。」

「……」

 ヴィクトリーのかめはめ波を食らっても、無傷の貝殻。なるほど、防御力は高そうだ。ならば、チャンスは中身が出てる今っ!

「はぁあっ!!」

 ルカは、雷鳴突きを放つ。それは直撃し、重い一撃を与えた。

「うふふ……悪い旦那様には、こうです。」

 しかし貝娘は貝殻の中から触手を出現させ、ルカを叩いた。

「くっ!」

 その触手を、剣で切り払いながら後退する。

「よっしゃあっ!!」

 ヴィクトリーは両手にエネルギーを溜め、貝娘に連射した。しかし彼女は殻に籠った。頑丈な殻に、エネルギー弾が叩きつけられるも、無意味だった。

「ち……!」

 エネルギーの連射を止めると同時に、その殻が開く。

「こんな事にも使えるんですよ。」

 そして触手をヴィクトリーに伸ばし、彼女の元へ引き込みに引っ張った。

「ぐぅうううっ!!?」

「ヴィクトリーっ!」

 何とか踏ん張るも、向こうの方が僅かに力が強い……ここは──

「界王拳っ!!」

 界王拳を使い、力を上昇させる。そして腰を落とし、引き込みに耐えてみせた。

「な……!?」

「でりゃああっ!!」

 その触手を引っ張り回し、思いっきり振りかぶってから地面に叩きつけた。

「きゃあああっ……!?」

「今だルカぁっ!!」

「ああっ!!」

 ルカは跳び出し、その状態で剣を彼女の喉元に突き刺した。

「魔剣・首刈り……!」

「あぁぁ……!」

 それによって貝娘は封印され、小さな貝の姿となった。

「はぁっ……!」

「ふぅ……」

 これで、ひと段落ついた訳だが……

「どうする、こいつら?」

 封印された貝とナマコをしゃがみ見て、ヴィクトリーは言う。

「良かったのかな、こんなに容赦なく叩きのめしちゃって……」

 思い込みが激しくて、強引だったとはいえ、悪い魔物じゃなかった気が──

「いでぇえっ!?目に水かけられたぁあっ!!」

 ヴィクトリーはいきなり、目を押さえて転げ回る。どうやら貝の方が、貝殻の間から水を吹いたらしい。

「ヴィクトリーっ!平気っ!?」

「全く、迷惑で厚かましい上に往生際も悪いとはな。」

 アリスは突然ルカの背後に現れ、そんな事を言う。

「こういう奴が、魔物の評判を(おとし)めるのだ。少しばかり痛い目を見て、反省するがいいわ。」

 そう言って、尻尾でざくざくと穴を掘る。そして、貝とナマコを放り込み、埋めてしまった。

「おいおい、ナマコまで……」

「死にはせん、少し反省しろ。」

 ……魔王の懲罰、恐るべし。

「とにかく、先を急ごう。早くサン・イリア城に行って、道を示してもらわないとね。」

「自分の行く道を、どこの馬の骨かも分からん奴に示してもらうとは……つくづく、貴様はドアホだな。」

「馬の骨って……サン・イリア王はとっても凄い人なんだぞ。本当なら僕達なんか、口も聞けないくらい偉い賢者様なんだ。」

「でも、先に魔王様に会っちまったらからな。」

「そうだぞ。余は魔王だぞ。そんな馬の骨より、数億倍は偉いわ。」

 そんな事を言い合いながら、僕達は西へと進んだのだった……

流血表現

  • もっとする
  • このままでいい
  • しなくていい
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。