もんむす・くえすと!の世界に降り立った1人のヒーローアバターの話 作:ジョーカー:ゼノ
「ルカ……ヴィクトリー……」
またあの、夢の世界。そこから聞こえる、いつものイリアス様の声。
「イリアス様……?」
ルカがそう言うと、いつものように女神はその姿を顕した。そして、優しい声で二人に語りかける。
「二人とも……貴方達は、祝福されざる勇者です。」
イリアス様がそう言うが、珍しくルカは微妙な顔をしていた。
「本当に……僕は、勇者なんですよね?ニセ勇者なんかじゃないんですよね……?」
「ええ……貴方は勇者です。ですから、勇者としての責務を忘れてはいけません。」
それを聞いた途端、ルカの顔が明るくなった。
「ええ、もちろんです!僕は勇者として、人間に迷惑を掛ける魔物を退治しますから!それに、弱い者の為に剣を振るいます!」
「……調子の良い奴……」
ヴィクトリーは、はしゃぐルカを見てそんな事を呟く。
「それにそれに──」
「魔王を討つのです、勇者ルカ、武道家ヴィクトリー。それこそが、勇者としての責務なのです。」
ルカが言いかけた言葉を横切るように、イリアス様はそう言う。
「……」
「そ、それは──」
戸惑う二人は、そのまま眠りの闇へと戻されてしまった……
「……朝か……」
「オッス。」
「ふむ、ようやく起きたか。」
ヴィクトリーとアリスの二人は、既に起きていた。なんだか、アリスの顔は普段よりツヤツヤしてる。昨夜、僕から散々に精を吸い取ったからだろうか。
「なぁ、二人とも……やっぱり、魔王は退治するべきなのかな?」
それを聞いたアリスは、少しイラッとした表情をした。
「……それを、余に聞くのか?貴様、割ととんでもないな。」
「ぁ……ごめん、つい、思わず。」
たまに、アリスが魔王だということを失念してしまう。ならば──
「ヴィクトリーは、どう思う?」
こっちに、聞いてみる。
「秘宝の洞窟で言ったことと同じさ。まだまだ知らねぇ事だらけだから、断定は出来ねぇって。」
ここでアリスが、溜息を吐いた。
「だが……勇者とは、そもそも魔王を倒すために存在するものだろう?貴様らが──」
「それは違ぇさ、アリス。」
ヴィクトリーが、横から割ってくる。
「?」
「勇者ってのは、何かを守るためにあるモンだ。その守り方がたまたま、『魔王を倒す』って形に定着されてっから、そう思えてくるんだ。」
「ほほう……?」
あの孫悟空だって、根底にあるものは戦闘本能だが、その動機は「地球を守りたい」という理由で戦ったのだ。この人を
「だけど……イリアス様の望みが、おめぇの打倒だからな……」
「でも、正義のためにアリスを倒すのは、違うよ……」
ルカはそう言って、溜息を吐いた。
「勇者、か……僕達は、勇者としてどうするべきなんだろうな……」
「……己のあるべき立場と、己の向かいたい道。それが、時にズレてしまう事もある。ままならないものだ、世の中とはな……」
アリスは、突然そんな事を言う。ヴィクトリーにはそれが、彼女自身が自分に言い聞かせているように思えた。
「アリス……おめぇ……」
「いつもみたいに、「ドアホめ」って言わないのか?」
「……ふん。余にも色々あるのだ。食べ物の事しか考えていないと思っていたのか?」
「思ってた……」
「思ってたぞ……」
それはともかく、勇者としてのあり方に少しだけ悩む二人であった。
しかし、のんびり悩んでいる暇もない。この街でとっとと準備を済ませ、サン・イリア城へ向かうというのだ。そこの王様は、勇者に道を示してくれるという。その王様なら、悩める俺達に道を示してくれるかもしれないというのだ。まぁ正直、この道に関しては自分で悩むべき事だと思うのだが……
ナタリアポートを出た一行は、砂浜沿いを歩きながら西へ向かう。
「サン・イリア城とやらに向かうと言っていたな?」
アリスは、ルカにそんな事を聞いた。
「ああ。ナタリアポートから西、歩いて三日って所かな。」
「三日もかかんのか……」
「そうだね。でも、サン・イリアの王様に、勇者としての道を示してもらうんだよ。」
「ふん、馬鹿馬鹿しい……」
「道なんか、自分で決めりゃいいじゃねーかー。」
「うるさいなぁ……」
うんざりした様子の二人と一緒に、砂浜沿いを進んでいると──
「きゃああああーっ!!」
不意に、若い女性の悲鳴が響き渡った。見れば──か弱い女性が、魔物に襲われていた。
「こ、来ないでくださいっ!」
「私、お腹が減ってるの……あなたでもいいわ、精気を吸わせて……」
「や、やめて……!」
どう聞いても事案発生のそれだが、この世界では違う。
「ルカっ!!」
「ああっ!!」
二人は走り、女性を襲うモンスターの前に立った。
人間の女の上半身に、ナマコの下半身……ナマコ娘だった。
「やめろっ!!」
ルカはそう言いながら、剣を抜く。
「あ、貴方たちは……?」
「ここは俺達に任せて、とっとと逃げろ!!」
「は、はい……!」
女性はその場から離れるが、ナマコ娘は二人を前に嫌らしく笑った。その興味は、二人に移ったらしい。
「美味しそうな人間ね。私のお口で咥えこんで、精液じゅるじゅる搾ってあげる……」
「ふざけるな……!」
「この大陸の魔物との初戦闘……わくわくすんなぁ!」
ルカが先に踏み込み、ナマコ娘に雷鳴突きをする。
「っ!?」
「そりゃあっ!」
揺らいだ彼女に気合砲を放ち、ぶっ飛ばした。
「っぐ……!」
しかしナマコ娘は着地し、ナマコ部分の口を大きく開けた。
「うふふ、この中に取り込んであげる……」
内部は、よく分からない肉器が嫌らしい音を立てながら蠢いている。ヴィクトリーはそれを見て、生理的嫌悪を抱いた。
「かぁっ、気持ち悪ぃ……やだおめぇ……」
しかしその横で、ルカはそれに釘付けになる。
「ゴクッ……」
「ルカッ!?」
「あ、ああっ!平気だ!」
「あははっ!!」
ナマコ娘は高速で突進してきて、どちらかを取り込もうとする。しかしルカは跳び避け、ヴィクトリーは高速移動で彼女の背後に来た。
「なっ!?」
「どりゃあっ!!」
その頬を拳で打ち抜き、ナマコ娘を揺るがせる。
「きゃ……!」
「どりゃあっ!!」
そこにルカが、強力な一撃を振り下ろした。天魔頭蓋斬ほどの威力ではないが、会心の一撃。
「こんな人間が、まさか……!」
それによってナマコ娘は封印され、小さなナマコの姿になった。
「ふぅ……」
「咥えこまれたら、その時点で終わりだったかも知れねぇな……」
そう言い合う二人の背後に、誰かの気配。
「アリス、僕達も──」
「違ぇよルカ。」
ヴィクトリーにつられて振り向くと、そこにはさっきの女性が立っていた。
「あの、ありがとうございます。」
「い、いえ……」
「当然の事をしただけさ。」
二人の前で、女性は人差し指を合わせて顔を赤くする。
「……嬉しかったです。あなたのような方に出会えて……」
「そ、そりゃどうも……」
「あはは……」
「あの……私のお婿さんになって下さい。私、あなた達と子作りがしたいです……」
「え、えええ……!?」
「い、いきなりそんな事……!ルカ、してやれよ。」
「な、何でだよ!」
綺麗な女性とはいえ、いきなりそれは不味い。こういうのは、文通でもしてから仲を深めて──
「私じゃダメですか、旦那様……」
女性は、しゅんと肩を落とす。
「誰が旦那様だ。」
「その、いきなり結婚とかは、流石に……」
「じゃあ、しばらく一緒に暮らしましょう──」
女性がそう言った、次の瞬間だった。
「波ーっ!!」
ヴィクトリーが、いきなりかめはめ波を女性に放った。
「!!」
それは直撃し、爆発する。
「いきなり何をするんだ、ヴィクトリー!!いくらしつこいからって──」
「馬鹿野郎!とっとと剣を抜け!奴の気は、これっぽっちも減っちゃいねぇぞ!」
「え……?」
もくもくと、爆煙が晴れる。そこには、巨大な貝殻があった。
「な……!?」
「何で、バレちゃったんですかねぇ……?」
貝殻が開き、先程の女性が姿を見せる。そう、彼女は貝のモンスター……貝娘だった。
「魔物だって事は勘づいてたけど、その邪悪な気は見過ごせねぇ。」
「……」
ヴィクトリーのかめはめ波を食らっても、無傷の貝殻。なるほど、防御力は高そうだ。ならば、チャンスは中身が出てる今っ!
「はぁあっ!!」
ルカは、雷鳴突きを放つ。それは直撃し、重い一撃を与えた。
「うふふ……悪い旦那様には、こうです。」
しかし貝娘は貝殻の中から触手を出現させ、ルカを叩いた。
「くっ!」
その触手を、剣で切り払いながら後退する。
「よっしゃあっ!!」
ヴィクトリーは両手にエネルギーを溜め、貝娘に連射した。しかし彼女は殻に籠った。頑丈な殻に、エネルギー弾が叩きつけられるも、無意味だった。
「ち……!」
エネルギーの連射を止めると同時に、その殻が開く。
「こんな事にも使えるんですよ。」
そして触手をヴィクトリーに伸ばし、彼女の元へ引き込みに引っ張った。
「ぐぅうううっ!!?」
「ヴィクトリーっ!」
何とか踏ん張るも、向こうの方が僅かに力が強い……ここは──
「界王拳っ!!」
界王拳を使い、力を上昇させる。そして腰を落とし、引き込みに耐えてみせた。
「な……!?」
「でりゃああっ!!」
その触手を引っ張り回し、思いっきり振りかぶってから地面に叩きつけた。
「きゃあああっ……!?」
「今だルカぁっ!!」
「ああっ!!」
ルカは跳び出し、その状態で剣を彼女の喉元に突き刺した。
「魔剣・首刈り……!」
「あぁぁ……!」
それによって貝娘は封印され、小さな貝の姿となった。
「はぁっ……!」
「ふぅ……」
これで、ひと段落ついた訳だが……
「どうする、こいつら?」
封印された貝とナマコをしゃがみ見て、ヴィクトリーは言う。
「良かったのかな、こんなに容赦なく叩きのめしちゃって……」
思い込みが激しくて、強引だったとはいえ、悪い魔物じゃなかった気が──
「いでぇえっ!?目に水かけられたぁあっ!!」
ヴィクトリーはいきなり、目を押さえて転げ回る。どうやら貝の方が、貝殻の間から水を吹いたらしい。
「ヴィクトリーっ!平気っ!?」
「全く、迷惑で厚かましい上に往生際も悪いとはな。」
アリスは突然ルカの背後に現れ、そんな事を言う。
「こういう奴が、魔物の評判を
そう言って、尻尾でざくざくと穴を掘る。そして、貝とナマコを放り込み、埋めてしまった。
「おいおい、ナマコまで……」
「死にはせん、少し反省しろ。」
……魔王の懲罰、恐るべし。
「とにかく、先を急ごう。早くサン・イリア城に行って、道を示してもらわないとね。」
「自分の行く道を、どこの馬の骨かも分からん奴に示してもらうとは……つくづく、貴様はドアホだな。」
「馬の骨って……サン・イリア王はとっても凄い人なんだぞ。本当なら僕達なんか、口も聞けないくらい偉い賢者様なんだ。」
「でも、先に魔王様に会っちまったらからな。」
「そうだぞ。余は魔王だぞ。そんな馬の骨より、数億倍は偉いわ。」
そんな事を言い合いながら、僕達は西へと進んだのだった……
流血表現
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もっとする
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このままでいい
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しなくていい