もんむす・くえすと!の世界に降り立った1人のヒーローアバターの話   作:ジョーカー:ゼノ

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見習い勇者と素人武闘家とスライムと

 ……ここはどこだろう。

 俺達……ルカの家で寝てた筈じゃ……

 気が付いたら、妙な所に立っていた。周囲は柔らかな光が溢れ、荘厳な雰囲気が満ちている。

「……これは……夢……?」

「いや……」

「勇者ルカ……武闘家ヴィクトリー……」

 何処からか、二人を呼ぶ声が聞こえる。とても穏やかで、慈愛に満ちた声だ。

 そんな二人の前に現れたのは──あの創世の女神、イリアス様だった。

「二人とも……私の声が聞こえますか……?」

「あぁ、聞こえてるさ!何の用だ!」

 ルカは思わず、ずっこけてしまった。

 相手は女神イリアス。こんな無礼な態度をとったら雷が落っこちてもおかしくないのに。

「……君って結構礼儀知らずだね……」

「良いのですよ。彼はまだ、この世界に慣れていないのですから。」

 イリアス様が、優しい声でそう言う。しかし、ヴィクトリーは遠慮しなかった。

「いや、充分順応できたと思うぞー!何の用だー!」

「お前もう黙ってろ!」

 これ以上無礼な態度をとったら、イリアス様が何をされるか分からないので、とりあえず彼を黙らせておく。そして、事が落ち着いた時を見て、その口が開かれた。

「今から何十億年も昔……貴方たち人間の時間感覚では、計り知れない程昔の事……私はこの世界を創世しました。まず大地を、そして空を、海を、緑を、動物を、鳥を、虫をつくり……そして最後に貴方たち人間を造り出したのです。しかし、私とて全知全能ではありません。人間を造り出す為に幾多もの失敗作を生んでしまいました……それが魔物……醜く、そして忌まわしい存在です。」

「……俺、この世界の魔物なんて一回も見た事無いんだけどさぁ……」

 この後に及んで喋ろうとするヴィクトリーを、シッと黙らせ話に耳を傾ける。

「魔物とは、即ち、悪……時に暴力で、時に淫らな手段で貴方たち人間を苦しめるのです。私は、か弱き人間達を深く愛しています。そして人間を苦しめる忌まわしい存在……」

「魔物を憎んでるっちゅう訳か……」

 やはりこの後に及んで喋ろうとしてる……と思ったら発した言葉はそれだけだった。

 そしてその言葉を聞いたイリアス様は静かにうなずき、僕達を見る。

「時として二人とも……貴方たちは明日で旅立ちの年齢を迎えますね……」

「えっ!?」

 二人は顔を見合わせる。

「お、おめぇ……誕生日と年齢はいくつだ……?」

「……〇月〇日……年齢は〇歳……」

 それを聞いたヴィクトリーが、衝撃波か何かを受けたかのように飛び跳ねる。

「どっひゃー!!た、たまげたぞ……!年齢も誕生日も一緒だ!」

「そう、だから救世の戦士として貴方が選ばれたのです。」

 二人は改めて、イリアス様の方に顔を向ける。

「貴方たちは明日で旅立ちの年齢を迎えます……私は今まで、何人もの少年に勇者の洗礼を施してきました……ですが未だに魔王を討伐できる者は出てきません……今より五百年前、当時の魔王を討ち滅ぼした勇者ハインリヒのような若者が現れないのです。」

「勇者ハインリヒ?」

 ヴィクトリーは、何故か僕の方に顔を向ける。そうか、こいつはこの世界を何も知らないのか。

「五百年前、悪虐非道を尽くした魔王を討ち滅ぼした伝説の勇者……その剣技は大地を割り、強大な邪悪にも屈さず、正義を貫き通す……勇者の中の勇者だよ。僕にとっても憧れの勇者さ。」

「まさに伝説の勇者っちゅう訳か……」

「ルカ、ヴィクトリー……貴方たちこそが魔王を討つ勇者となるのかも知れませんよ……」

「ぼ、僕達が……?」

「あったりめぇだ!」

 僕は、無言でヴィクトリーをぼかっと殴った。

「……行きなさい二人とも……私は何時でも貴方たちを見守っています……」

 イリアス様がそう言うと、視界が段々と暗くなり、また眠りへと落ちていったのだった……

 

 柔らかな朝の日差しを浴びながら僕は目覚めの時を迎えていた。

 さっきのあれは夢だったのか……いや、決して夢では無い筈。イリアス様が夢の中から語りかけて下さったのだ!

「イリアス様、ありがとうございます。どうかこの僕を見守っていて下さい……」

 いつもの様にまず起床後のお祈り、そして次に母の形見である指輪へと語りかける。

「おはよう、母さん。いよいよ今日、僕は勇者として旅立つよ…」

 身体を起こし、居間へと向かう。

 そこにはオレンジ色の道着と青いアンダーシャツを着たヴィクトリーが、立ちながら窓の外を見ていた。

「おはよう。ヴィクトリー。」

「おう、ようやく起きたか。おはようさん。」

 挨拶を交わし、互いに朝の支度をする。

 天気も良く、いつも以上に清々しい朝だ。

「いや〜三日ってはえぇな〜……もう俺がこの世界来て三日経ったんだぞ……」

「そうだね……」

 会話を交わしながら改めて、今日という日を確認する。

 今日の午前、イリアス神殿に行き、勇者の洗礼を受ける。そして、いよいよ魔王退治の旅に出るのだ……異世界から来た、この心強い(?)仲間と共に。

 もうこの家にはしばらく戻ってこない……そう思うと感慨もひとしおだ。

「魔王を退治するまでここには戻ってこないんだからな。もしもの事があっても良いように綺麗にしておかないと……」

「ん、掃除か?手伝うぞ。」

「あぁ、ありがとう。」

 朝食を終えた僕達はいそいそと掃除を始めた。立つ鳥跡を濁さず、とはよく言ったものだ。

 正直な所旅立ちを前に居ても立ってもいられないだけなのだが──

「た、大変だぁ!!」

 突如、外から声が響く。

 僕はベッドを整える手が止まり、ヴィクトリーは窓の外を覗く。騒いでるのは木こりのハンスさんらしい。こんな朝に騒がしい……

「ま、魔物が……近くの森に魔物が出たぞー!!」

 その言葉を聞き、僕達は仰天する。

「なっ……!?」

「何だとっ!?」

 ヴィクトリーがこちらに振り向き、口を開いた。

「ここってさ!イリアス様の加護があるから魔物は近づかねぇんじゃねぇのか!?」

「そ、そんな馬鹿な……」

 確かにこの村は小さなものだが、世界に誇る大きなイリアス神殿が佇んでいる。そのイリアス様の御力に守られ、魔物は近づきもしない筈だが……

 そうこう考えている内に村中がパニックに陥ってしまった。

「よ、よりによって今日とはな……行けるか?ルカ……」

 ど、どうしよう……

 僕もヴィクトリーも、魔物を見た事が無ければ戦ったこともない。だけど、これから魔王退治の旅に出ようと言う身。こんな田舎に現れるモンスターに尻込みをしようなんて勇者失格だ!

「よし、行くぞ!」

「待ってましたぁ!」

 ヴィクトリーは青いリストバンドを手首にはめながら、ルカは剣を持ち、家を飛び出した。

 

 村の混乱をかき分けながら進んでいく。そんな僕達を見て、隣家のおばさんが咎めた。

「おやめよ!二人とも!ここはイリアス神殿の兵隊さんに任せておくんだ!」

「大丈夫だよ、ペティおばさん!僕は勇者なんだ!」

「勇者ってあんた……まだ洗礼を受けてないだろう!?こら、行くんじゃないよ!」

「任せとけって〜!俺達以外とつえぇんだからさ〜!」

 確かに。まだ洗礼は受けてはいないが、それでも雑魚モンスターに負けたりはしない!……はず。

 おばさんの静止を振り切り、僕達は村の通りを駆け抜け、村の外に飛び出した。

 

 外に続く一本道を走り、森に入る。

 ふと足を止め、ヴィクトリーと互いに背中を預けるようにして周囲を見渡した。

「魔物……魔物はどこにいるんだ!?」

「気ぃつけろ……突然不意打ちかましてくるかも知れねぇぞ……」

 二人で周囲を宛もなく見渡していた、その時だった。脇道から、そのモンスターが姿を見せた。

 青く、スライム状で女体を形成してるモンスターが現れた。スライム娘とでも言っておこうか。

「あはは〜!美味しそうな男の子〜!」

 スライム娘は呆気にとられる僕達を前にして、くすくす笑う。その粘体状のボディをぷにぷにと揺らしながら……

「ファンタジーの定番だよな……『一番最初の敵はスライム』って……」

 ヴィクトリーは、緊張で意味不明な事を口に漏らした。でも既に構え、臨戦態勢になったようだ。

「これが……魔物……」

 僕も剣を構える……だが緊張で硬直してしまった。

 魔物をこの目で見るのは初めてである。思ったより迫力があって、可愛くて……そして異様。波打つスライム状のボディは人間とは程遠く、尻込みしてしまいそうだった……

「あれれ〜?もしかして魔物を見るのは初めてなの〜?」

 スライム娘から図星を突かれる……が返事はしなかった。

「びびってんのか?」

 ヴィクトリーが挑発的な態度で、僕に語りかけてきた。その顔色からは緊張が三割、わくわくが七割といったところか。

「……びびってなんかいないっ!」

 僕は相手を見据え、剣を構え直す。

「そう来なくっちゃ。」

 ヴィクトリーもニッと笑い、スライム娘の方を向く。

「あ、あの……ここは人間の村の近くなんだ……だから大人しく引き返してくれないかな……?」

 剣を構えたまんま説得を試みてみる。断じて怖い訳ではない……多分。相手は魔物とはいえ、無駄な戦いは避けたいのだ。

「村の人たち、皆怖がっているんだ……もし君に悪気が無いのならば──」

「あははっ!」

 スライム娘の笑いによって、その言葉は遮られた。

「キミ達平和主義者ってやつ?そんなお願い聞けないよ〜。私だってお腹ぺこぺこなんだから……それとも、キミ達が私にセーエキごちそうしてくれるの?」

「ブッ!?」

 ヴィクトリーが、吹き出しながら僕の方に向く。

「せ、精液……?何で……?」

「……モンスターの多くは精液を糧とするんだけど……」

「じゃ、エロいやつ集めてそいつに任せりゃいいんじゃねぇの?」

「いや……人間にとってモンスターに精液を与える事は大いなるタブーなんだ……」

 イリアス五戒の一つ、魔姦の禁によってきつく戒められている。ヴィクトリーはそれをしっかりと理解し、スライム娘の方に向く。

「……そういう訳だ!セーエキは出せねぇ!ぶっ飛ばされねぇ内にとっとと帰れ!」

「じゃあムリヤリ搾っちゃうもんね〜!」

 スライム娘がヴィクトリーの言葉を一蹴しながら、じゅるじゅると地面に粘液を広げてきた。

 ルカ達は回避が遅れ、足をスライムに絡めとられてしまう。

「このまんま二人ともじわじわ包んであげる……」

 彼女の妖しい笑顔が、二人に向けられる。

「う、うわぁ……!離れろ……!」

「かぁっ……気持ち悪ぃ……!」

 二人はすぐさま足に着いたスライムを引っぺがし、攻撃体制に入る。先に動いたのは、ルカだった。

 できれば乱暴な事はしたくはない。だけど……

「行くぞっ!」

 モンスターとの実戦は初めてだが、ヴィクトリーとの実戦で戦いは心得てる……はず。

 それに何十本もマキを割ったりしてきたのだ。そんな僕の一撃をくらえば……

「ええいっ!」

「おっとぉ!」

 攻撃が思わず大振りになってしまった。そのせいで、彼女にはあっさりかわされてしまった。標的を逃した剣が、空を切る。

「そんな大振りの攻撃当たらないよ〜だ!」

 あっかんべーをしながら、彼女はルカを挑発する。

「じゃあ小振りならどうなんだ?」

 ルカと入れ替わるように、ヴィクトリーはスライム娘の懐に入る。そして、最低限の動作で顔面にパンチをかました。彼女はそのパンチを受け、スライムの一部が地面に落ちてしまう。

「き……効いた……のか?」

 ルカが、言葉を漏らす。しかし、ヴィクトリーは舌打ちをした

「くそっ!」

 手応えが、全くない。

 予想通り彼女はみるみる内に再生してしまい、新品に戻ってしまった。

「私はスライムなんだから剣も拳も効かないもんね〜!」

 二人は動揺しながら、距離をとった。

「ど……どうすりゃいいんだ!?」

 最初のモンスター、スライム娘。その体は、僅かな傷ならば再生してしまう厄介なモンスターであった。

 さて、どうなる……!?

流血表現

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