もんむす・くえすと!の世界に降り立った1人のヒーローアバターの話   作:ジョーカー:ゼノ

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地下図書館にて

 僕達は、サン・イリア城の地下図書館に入った。

「うわぁ、広いな……」

 見渡す限り、本、本、本。そんな広大な図書館には人っ子一人見当たらなかった。例のグランべリアの襲撃で学者達はみんな避難してしまったらしい。

「何か不気味だなぁ……人っ子一人いない図書館って……」

「そうだね……」

「静かでいいではないか。」

 本の山に腰をかけ、不意にアリスはくんくんと鼻を鳴らした。ヴィクトリーも目を鋭くしている。

「……気付いたか?ヴィクトリー。」

「あぁ、魔物の気がする……しかも三体……」

「えっ……?魔物がいるのか……?」

 ルカは剣の柄に手をかけ、ヴィクトリーは構えながら辺りをきょろきょろと周囲を見渡した。

「うろたえるなドアホ共め。書庫内を魔物が徘徊している訳ではない。おそらくどれかの本に取り憑いているのだろうな。」

「本に取り憑く……?」

 そんな魔物も居るなんて、初めて聞いた。

「どうでもいいが、早く調べるがいい。こんな鬱陶しい場所に長居はしたくない。本は食べられんから、好きではないのだ。」

「わ、分かったよ……えっと、四精霊だったな?」

「こん中から一冊って、結構キツくねぇか……?」

「ヴィクトリー、こういう図書館には目録っていうものがあるんだ。片端から探すわけじゃないよ。」

「あれ?そうなのか?」

 ヴィクトリーとルカが目録を丹念に見てみると……『四精霊信仰とその源流』という本を発見した。

「取ってくるぜ。何処にあんだ?」

「えっと……三十五番本棚の上から二番目の段……」

「じゃこいつか。」

 ヴィクトリーは、本棚から一冊の本を持ってきた。

「かなり古ぃな……誰も読んでねぇんじゃねぇか?」

「イリアス信仰が盛んなここでは、精霊信仰なんて異教だからね。四精霊の場所、載ってるといいんだけどなぁ……」

 そんな事を言いながら、本を開いた時だった。なんと、その本から魔物が現れたのだ。

「うわっ!?」

「ま、魔物……!?まさか、本当に魔物が現れるなんて……!」

 紙に女体が埋め込まれたかのようなモンスターが現れたのだ。

 二人は慌てて本を放り出し、構えた。

「……17ページ?」

 ヴィクトリーが不意に呟いた。

「何で分かるんだ?」

「ほら、あそこのページの端っこ。17って書いてある。」

「あ、ほんとだ……」

 その二人の会話が終わったのを確認し、17ページは口を開いた。

「この本を読むことを禁ずる……」

「どういう事だ……?魔物が、何で本を読ませたくないんだ……?」

「それが、魔王様の意思……」

 そう言いながら、17ページは襲ってきた。

「だぁっ!」

 ヴィクトリーが蹴りを放つ……が、17ページは紙のように舞い、攻撃を避けてしまう。

「ありゃっ……?」

「それっ……」

 17ページは動揺するヴィクトリーの腹に突進した。

「がっ……!!」

 床に手をつき、膝をつく。

「……どうやらただの攻撃は当たらねぇみてぇだな……」

「じゃあ、これはどうだっ!?」

 ルカは17ページに雷鳴突きを放つ。

「うぐっ!」

 それは見事命中し、ダメージが入った。

「よし、これなら当たるぞ!」

「なるほど、スピード重視の技なら当たんのか……」

 だが、ヴィクトリーはスピード重視の技なんて持っていない……だったら、カウンターとかどうだ?

「……」

 今度はルカに突進してきた。

「そいっ!!」

 ヴィクトリーは突進する17ページの顔面を横から蹴り飛ばした。

「ぶっ!?」

 その蹴りは直撃し、彼女は壁に叩きつけられる。

「そこだっ!」

 壁に叩きつけられた彼女目掛け、ルカは雷鳴突きを放った。

「……申し訳ありません……魔王様……」

 それがトドメで、彼女の体が消散し、一枚の紙片になった。

「え……?何だこれ……もしかして封印されたのか……?それとも、死んだ……?」

 17ページが封印された姿は、一枚の紙片。どうやら、本の一ページみたいだ。

「そいつは本に宿ったモンスター。それで死んだ訳では無い。そこら辺にでも挟んでおけ。」

 アリスは書庫の本を積み、火で焚き火をしていた。

「っておめぇ、何やってんだ!!」

「なんて事をするんだ!!」

 どうやら、本を燃やしてイモを焼いてる様子だ。

「問題ない。イリアスに関する下らん書物だ。」

「な、なんて罰当たりな……」

「ルカ、アリスの奇行に構ってる場合じゃねぇ。多分残りの二体もここにいるぞ。」

「あ、うん……」

 ヴィクトリーは『四精霊信仰とその源流』を拾い上げ、ぽんぽんとホコリを払ってからまた机に置く。

「全く、おっかねぇな……何で本からモンスターが……」

「普段は本に取り憑き、開いた者に襲いかかるタイプの魔物だな。まぁ、普通は寂れた物置の本などに憑くものだが。」

「でも、さっきあいつ魔王の命令とか言ってたぞ。」

「余は知らん。魔王の名を出して悪事を働く魔物など、数知れんのだ。奴もその類だろう。」

「……そうなのかなぁ。どうも、そういう奴じゃなかったような……」

「しかし心当たりは……あっ。」

 不意にアリスが硬直し、食べかけの焼き芋をぽろりと落とす。

「どうしたんだ?アリス……」

「まさか、心当たりあんのか?」

「………………」

 

 数年前……

「四精霊について記された本がサン・イリア城に現存するという。お前達はその本に取り憑き、人間達にその内容が伝わるのを防ぐのだ。」

 アリスが三体の魔物に命令する。

「了解致しました……」

「お任せ下さい、魔王様……」

「しかし魔王様、その本を奪うなり破棄するなりすれば良いのでは?」

 三体の魔物の中の最高格の魔物が言う。そして、アリスもそれに答える。

「余は焚書(ふんしょ)のような真似は好かんのだ。しかし、精霊の力を悪用しようとする人間が現れんとも限らん。それゆえ、お前達にはあの本を守ってもらいたい。」

「はっ!」

 三体の魔物達は返事をし、飛んでいった。魔王からの命令を遂行するために……

 

 そして今。

「………………」

 事を思い出したアリスは震え声で口を開いた。

「……知らんな。」

「ウソつけ。」

 しかし、今は追及しても無駄そうだ。

「……魔物の気は後二体。気をつけろよ。」

「あぁ……」

 ヴィクトリーがそう言いながら、本を開いた。すると、またもや本から魔物が飛び出してきた。

「おらぁっ!」

「いっ!?」

 ヴィクトリーはその魔物を見るなり、いきなり頭突きを食らわせた。

「先制攻撃成功!」

「い、いたた……」

 魔物は下がり、頭を押さえながら二人を見る。巨大な本から内気な女の子の上半身が生えてて、その背後には巨大な手が生えてる。

「257……257ページか。」

「ゆ、許しませんよ……貴方から倒します……」

「ルカ、下がってな。」

「お、おう。」

 257ページはヴィクトリーを指名した。なので、ここは一旦下がる。

「いいのか?俺で……実力差が圧倒的すぎて途中からやる気無くしても知らねぇぞ……」

「うふふ……よく見るとなかなか可愛い男の子……私、男の子のおちんちんに興味あるのです……あなたのおちんちん、いじらせてもらえませんか?」

「会話をしろこのやろー」

 どうやら、聞く耳もないらしい。じゃあ、全力で叩きのめすまでだ!!

「行くぞっ!!」

 いきなり界王拳を使い、辺りを揺るがす。体から凄まじい気が吹きすさび、嵐のように荒れ狂った。

「……男の人って、そんな事もできるんですか?」

「この世界では俺だけだ。」

 ヴィクトリーはふっと消え、257ページを殴り飛ばす。

「っ!?」

「ふんっ!」

 殴り飛ばした先に高速移動し、今度は蹴り飛ばす。

「だりゃあああっ!!」

 そしてスレッジハンマーで、それを脳天を叩き下ろした

 。

「きゃあっ!?」

「ドゴォン」という派手な音が響き、地下図書館を揺らす。

「あ……が……」

「な?言っただろ?痛い目見ねぇ内に帰れ。」

 ヴィクトリーは界王拳を解き、地に伏せた257ページを見下ろす。

「このっ……!!」

 それでもなお、彼女は巨大な手で彼を掴みに掛かった。グッと巨大な手が握られる。

「……?」

 手の中にヴィクトリーは居なかった。

「ば、ばかな……!一体どこへ……!?」

 彼女は、辺りを見渡す。すると、次の瞬間──

「がっ……!?」

 いきなり、昏倒してしまった。彼女が倒れると、その背後にヴィクトリーが立っていた。

「ルカ、封印を。」

「あ、あぁ……!」

 ルカは昏倒した257ページをエンジェルハイロウで切りつける。すると、彼女は一枚の紙片となった。

「よし、後一体だ!」

「ま、まだ一体もいるのか……」

 ヴィクトリー達は、本に手をかけようとした。

「……あくまで余の勘だが、そいつはかなりの実力者だ。心しておけよ。」

「わ、分かったよ……」

 絶対こいつ、何か知っている。

「今度はルカがオープンしてくれ。」

「あ、うん……それじゃ、気合いを入れて……えいっ!」

 僕は呼吸を整えたあと、本を開いた。すると、かなり大きい魔物が本から這い出してきた。無数の触手に、眼鏡をかけた女の上半身。

「65537……な、なげぇな……65537ページ?」

「魔王様の命により、この本を人間に読ませるわけにはいきません。特に勇者なる下劣な連中には……」

「じゃあ、無理矢理読ましてもらうまでだ……!」

「その通りっ!力尽くで読ませてもらう!」

 ……その魔王様、そこの本棚の後ろで焼き芋焼いてるんだけどな。いっそそれを教えた方がいいと思ったが……

「私は静寂を愛します……ゆえに、貴方のような乱暴な……」

 彼女の言葉が終わる前に、ヴィクトリーがその顔面にパンチを放つ。

「ぎゃっ!?」

「どうでもいいけどさ、あんたら油断しすぎじゃない?」

 彼女は踏ん張り、二人を見る。どうやら、大したダメージにはなってないようだ。

「そうですか……確かに油断してましたね……では、最初から全力でいきますよ!」

 やはり、戦闘は避けられないようだ。

「かめはめ波っ!!」

 ヴィクトリーが、いきなりかめはめ波を放つ。

「ふんっ!」

 それは片手で弾き飛ばされ、あらぬ方向に飛んでいった。

「やぁっ!」

 間髪入れずにルカが雷鳴突きを放った。

「ぐっ……!」

 これは命中し、ダメージになる。

「だぁあっ!!」

 続けざまにヴィクトリーが高速移動で接近し、パンチを放った。

「ぶっ!?」

 これも命中した。しかし、拳を受けたまんま、彼女は笑ってみせた。

「……さて、軽く触ってあげましょうか……」

 メガネ越しに、二人を睨む。すると、触手が二人の体を愛撫してきた。

「ひゃう……」

「くすぐってぇ!」

「ほら、ほら、ほら……」

 65537ページは苦悶する二人を容赦なく触手で嫐る。敏感な乳首をコリコリ弄ったり、性器に触手を巻き付けて扱いたりする。

「はぅう……」

「こ、このッ!」

 だが、顔を赤らめたヴィクトリーが彼女の顔面に気合砲を放った所で、攻撃が終わった。

「界王拳ーっ!!」

 彼は界王拳を使い、彼女の顔面に蹴りを放つ。が、それはかわされてしまった。

「なっ!?」

「ヴィクトリーの界王拳がっ!?」

「……見えなくはないスピードですよ。」

 彼女は本を見ながら、挑発気味に言う。

「余裕かましやがって……!!」

 足を天に向けてから、床を踏ん張り、またも突進する。

「だぁりゃあっ!!」

 そして、凄まじい一撃を放つが、触手によって遮られた。しかし、彼には好都合だった。

「つかまえた……!」

 その触手をぎゅっと握り、腰を落とす。

「な、何を……」

 戸惑う彼女の頭上から、ルカが降ってきた。

「天魔頭蓋斬ーっ!!」

「うぐぅっ!?」

 天魔頭蓋斬をくらい、よろける65537ページ。だが、ダウンまではしなかった。

「それなら、あなた達を四方から拘束させていただきます……!」

 そう言うと、ルカ達の四方から触手が迫ってきた。

「ちっ……!」

 ヴィクトリーは肘打ちや蹴りで対応するが、ルカは捕らえられてしまった。

「まずいっ!」

「は、離せ……!」

 ルカはもがくが、逃れられそうにない。そうこうしている間に全身に触手が這う。

「ひゃうぅ……」

「くそ……!」

 ヴィクトリーは65537ページを睨み、界王拳を発動する。

「界王拳……2倍っ!!」

 ボォッと気が更に膨れ上がり、熱風が吹き荒ぶ。

「な、なに……!?」

「でりゃああああっ!!」

 そのまま彼女の顔面を蹴り、壁に吹っ飛ばした。

「うおおっ!!」

 ルカも、なんとか脱出したようだ。

「2倍……結構きついな……!」

 ヴィクトリーは界王拳を解除し、65537ページを見る。彼女の眼鏡は粉砕したようで、それを投げ捨てていた。

「……なるほど、確かに強いですね……!」

 そう言いながら、麻痺の書と書かれた本を読み始めた。その間にも触手による攻撃は続く。

「ちっ……!」

 そうしている間に65537ページは麻痺の書を読み終え、ルカを見た。

「ほらっ!」

「あ、あぁぁ……!」

 射すくめられた彼の体は、麻痺してしまった。

「それでは……じっくりといたぶって差し上げましょうか……」

 ルカに触手が迫った。が、ヴィクトリーが彼を抱え、高速移動する。

「ほう……人一人を抱えながらそんなスピードが……」

「ぐっ……!!」

 触手を必死で避けていたら、背中に壁がぶつかる。どうやら、壁際に追い込まれてしまったらしい。

「王手ですっ!」

 しかし、65537ページの伸ばした触手は二人をすり抜けた。

「!?残像拳……!?」

「こっちだーっ!!」

 見ると、ヴィクトリーが65537ページの頭上に居た。そして、ルカがおもむろにそこから跳び降りた。

「天魔頭蓋斬っ!!」

 今戦二回目の天魔頭蓋も、見事ヒットした。

「うぐ……ぐぅっ!?」

 65537ページはよろめくが、まだダウンにまでは追い込めない。そして、二人を見た。

「ここまでの猛者だったとは……!!あなた達を逃してはなりません!ここで排除します!」

 そう言い、今度は服従の書という本を読み始める。

「……魔眼の弱点を発見しちまった。」

「えっ?」

「俺が変なポーズとったら目を閉じろ。わかったな?」

 触手での猛攻を避けながら、ヴィクトリーは言う。

「へぇ……それは面白いですね……」

 彼女はそう言い、服従の書をパァンっと閉じ、ヴィクトリーを睨んだ。

「これで終わりです!」

「技を借りますよ!天津飯さん!!」

 彼は視線を落とし、両手の甲を相手に見せるようなポーズをとる。

「太陽拳!!」

 すると、彼の体から眩い閃光が放たれた。

「うっ!?ぎゃああああっ!!」

 その閃光を直視した彼女は、目を押さえながら悶絶する。

「魔眼ってのは、相手を直視する必要があるんだ。だからこういう技にはぜってぇ弱いと思ってさ……」

「こ、この……!」

 彼女は目を押さえながら触手をめちゃくちゃに振り回す。そして、勝利を確信したヴィクトリーは界王拳を発動する……しかも2倍。

「行くぞっ!!」

 まずその顔面をぶん殴り、顎から脳天めがけるようにアッパーカットする。

「ぐっぁ……!?」

 そして体中に拳を乱打させ、思い切り蹴り上げた。

「きゃあああっ!」

「終わるかっ!!」

 既に蹴り上げた先に高速移動し、拳に全身全霊を込めて顔面を打ち抜いた。

「あがっ……」

 吹っ飛んだ先にはルカがいた。

「魔剣・首刈りっ!!」

「ぐぅえっ!!……この私が……人間に……」

 ルカのエンジェルハイロウが65537ページの喉元を貫く。すると、彼女の体が消散し、一冊の本になった。

「おっしゃー!」

「や、やった!……あれ?」

 なんと、封印された筈の65537ページが元の姿で再構築されたのだった。

「ど、どういう事だ……!?」

「お、おめぇちょっとしつけぇぞ……!」

 彼女の体は新品に戻っており、ダメージが消えている。

「私は聖素の影響が薄い、極めて特殊な体質の魔物……魔素封印の力は、私に通用しないのです。とんだ徒労でしたね……ふふふ……」

「そ、そんな……!」

「くそったれめ……!」

「私は炎が弱点なのですが、剣士と武闘家のあなた達には使えないでしょう。つまり、あなた達は永遠に私を倒せない……」

「ぐっ……どうしたらいいんだ……!?」

 敵の言う通り、僕達は炎の技や魔法は使えない。これでは、65537ページを倒す事ができないじゃないか……

「……じゃあ、細胞一つ残らず消してやるさ……界王拳を3倍に引き上げてな……!!」

「な、なに……!?」

「私を細胞一つ残らずに……!?」

 ヴィクトリーが構えた瞬間だった。何の前触れもなく周囲に炎が広がり始めたのだ。

「なっ!?」

「な、何事です……!?まさか、その界王拳3倍という奴ですか……!?」

「違う!界王拳を3倍に引き上げてもこんな事にはならねぇっ!!」

 まさか、アリスが助けてくれたのか……?

「わわわ……余とした事が、イモの焼き加減を失敗するとは……まずい、辺りに延焼しているではないか……!」

 ルカとヴィクトリーはずっこける。ただの失火かよ……

「この火では、体の維持が不可能に……!魔王様、申し訳ありません!」

 今度こそ65537ページの体が消散する。

 ……その魔王様こそこの火災の元凶なんだけどな……

「やった……!ってこの状況は……!」

 辺りはみるみるうちに炎に包まれて、僕達まで危ない状況だ!

「うわっちゃちゃちゃちゃ!服が燃え移った!あちゃちゃちゃちゃ!」

「むむむ、どんどん燃え広がっていくそ……」

「何がむむむだ、どうにかしろよ!」

「おめぇら、横山三国志のやりとりしてる場合か!アリス、おめぇ水の魔法とか、使えねぇのか!?」

「余は魔王!この城を水没させるほどの大洪水を起こすのはたやすい!……だが、威力を絞るとなると逆に困難でな……制御には正直自信が無いぞ。」

 二人はまたずっこけ、アリスを見る。

「なんなんだよそれ!」

「おめぇ、ちょっと無責任すぎんぞ!」

「余は水系の魔術は得意ではないのだ……!」

 城が水没するのは流石にまずい。僕達が何も出来ずにあわあわしていると……

「何の騒ぎなのです?ルカ殿……うわっ!これは何事だ!?」

 衛兵隊長が入ってきて、驚愕する。戸惑うルカが答えた。

「えっと、これは……グランべリアです!さっき追っ払ったグランべリアが腹いせに放火したみたいです!!」

 思わず嘘をついてしまった。ごめんなさい、グランべリア。絶対にそんな事しなさそうなキャラにも関わらず、罪をなすってしまいました。でも、貴方の主君(魔王)がやらかした事なので、我慢してください。以上、懺悔終わり。

「……魔王城着いたら今日の事言っちまおうかな……」

「そ、それはやめて……!」

 衛兵隊長は歯ぎしりをして、拳を握る。

「グランべリアめ、なんという姑息な真似を……!騎士道精神に篤いというのは嘘だったのか!?とにかく、本の救出を急げ!一冊でも多くの本を持ち出すのだ!消火も急げ!これ以上燃え広がるのを防ぐのだ!」

 衛兵隊長の指示で衛兵達が駆けつけてくる。そのどさくさにまぎれて、僕とアリスとヴィクトリーは地下図書館を後にしたのだった……




グランべリア「誠に遺憾である。」

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