もんむす・くえすと!の世界に降り立った1人のヒーローアバターの話 作:ジョーカー:ゼノ
……何だかんだでサン・イリア城の城下町。
僕とヴィクトリーの後ろを、アリスがとぼとぼとついていく。
「正直、今回は反省している。火の不始末とは恐ろしいものだ。魔王城でも注意しなければ……」
「おめぇ、この服けっこう気に入ってたんだぞ……」
ヴィクトリーは、道着の背中が焼けて露出している。
「うむ……本当にすまなかった……」
「まぁ、貴重な書物はだいたい運び出せたみたいでよかったけど……」
アリスにしては随分としおらしく、流石に反省しているようだ。
「でも、俺も許しちゃう。」
そう言うヴィクトリーの手には、かじられた焼き芋が握られていた。
「あっ……余の焼き芋……」
「ほれ。」
彼は焼き芋も半分こし、アリスに渡す。
「す、すまぬ……ありがとう……」
アリスも、焼き芋を齧りながら歩く。
「それにしても、精霊の本は置いてきちまったな。」
「そうだね……もしかしたらもう燃えちゃったんじゃ……」
「……ほれ。」
アリスが二人に差し出したのは『精霊信仰とその源流』だった。
「あの騒ぎの中でくすねてきたのだ。」
「おぉっ!」
「ありがっ……いや、褒めないぞ。あの騒ぎはお前が元凶なんだからな。」
「すまぬ……」
流石に、これ以上責めるのも気の毒か。僕達も、アリスには随分お世話になっているんだし。
「まぁ、反省しているんだったらいいよ。それより、今度こそちゃんと読めるんだろうな……」
「魔物の気はしねぇけどな。」
魔物が出てきたり、火事になったり、もう沢山だ。僕達は広場のベンチに腰を下ろし、ようやく書物を読み始めたのだ。
「ふむふむ……」
精霊のだいたいの場所は、この本に記されていた。
サラマンダーは、セントラ大陸の北部、ゴルド地方の火山洞窟。
ウンディーネは、セントラ大陸の北部、ノア地方にある神聖な泉。
ノームは、セントラ大陸の西、サフィーナ地方に広がる砂漠のどこか。
そしてシルフは、ナタリア地方北西にある、精霊の森に居るという。
「こっからだとシルフが近ぇな……」
「みたいだね……」
地図を見ると、このサン・イリア城からそう離れていない。だいたい三日ほど歩けばたどり着ける筈だ。
「精霊の森というのは、フェアリーやエルフが静かに暮らしている森。魔王たる余としては、あまり人間に踏み込んで欲しくはない地なのだ。」
「分かってるって。」
「向こうから攻撃してこない限り、彼女達をそっとしておくよ。」
フェアリーやエルフの邪魔をするのは僕達の本意でもない。
「……それでいい。貴様らが信頼できん人間ならば、精霊の事など教えておらん。」
「……信頼してくれるのか?」
「……ふん!」
「素直じゃねぇんだから〜!」
「やかましいわドアホ!」
そんな会話を交わしていた時だった……
「ここで会ったか百年目。恋してダーリン愛百年。」
「げげっ……」
「まさか……!!」
そう、例の如く残念なラミア……アミラが現れたのだ。
「おめぇちょっとしつけぇぞ……」
「私はアミラ、残念なラミア。不滅の恋に燃える、はかないフェニックス。」
はかないフェニックスって……語義が矛盾してるぞ……ともかく、こいつセントラ地方まで渡ってきたのか。
「航路は封鎖されていたのに、どうやってここまで来たんだ?」
「そこの武道家に投げ飛ばされたのよ。覚えていない?」
「あっ……」
確かに、そう言えばそんな事もあったなぁ……
「と、とにかくあんまり僕達につきまとわないでくれないか……?」
「私はアミラ、残念なラミア。どこへ行っても排撃される孤独な蛇。」
「アミラ……」
「でもおめぇ、子供懐いてっぞ。」
アミラに、子供たちがたかる。
「わーい!蛇のお姉ちゃんだー!」
「蛇お姉ちゃんあそんでー!」
子供たちは、面白そうに彼女の足を引っ張ってる。
「蛇お姉ちゃんつよいー?」
「北のお化け屋敷の魔物倒せるー?」
「私はインパクト重視のへなちょこラミア。腕っぷしには自信が無いの。」
「北のお化け屋敷……?」
「何だそりゃ?」
不穏な感じがする単語が出てきて、僕達は食いついた。
「北の大きなお化け屋敷にはねぇ、おばけがいっぱい出るんだよ。」
「ゆーれいが出てきて、遊べないの。」
「ふん、幽霊なんて存在せんわ!」
不意に、アリスが大声を上げる。
「うっせぇなぁ……」
「おいおい、アリス……子供が怖がるだろ。」
「わーい!へびー!」
「へびー!」
子供は驚いた様子もなく、アミラと遊んでいるようだ。
「ふん、馬鹿な人間め……幽霊など迷信、恐怖心が生み出した幻想に過ぎん。そんなものを怖がるとは、馬鹿も大馬鹿、ドアホの極みよ。」
「おめぇが幽霊こえぇだけだろ。」
「こわくないっ!」
不審な態度のアリスはヴィクトリーに任せるとして……
北にはお化け屋敷なるものがあるらしい。所詮は子供の言う事、大した事は無いだろうが。
すると、そこに二人の兵士が通りかかった。
「むっ!街の中に魔物が!」
「城内に侵入した魔王と関連があるかもしれん。捕らえろっ!」
彼らは血相を変え、こちらに走ってきた!
「まずい、逃げろ……!」
「わわわ……!」
僕やアミラは、慌ててその場から駆け出した……
「流石サン・イリア……魔物がこんな堂々と出歩いてるとまずいらしいな……」
「……よく考えたら俺達は逃げる必要ねぇだろ。」
「はぁ、はぁ……そ、そうだね……」
町をぐるりと一周し、元の広場へ。アミラは果たして逃げきれただろうか。
「やれやれ、この町では魔物は歓迎されんようだな。やはり、イリアスの汚れた思想に染まっているか。」
アリスは町を見回し、不意に視線を止める。
「む?あれは何だ?」
目をつけたのは広場の掲示板だった。何枚もの紙片が画鋲で止められている。
「何だこりゃ?」
ヴィクトリーも、興味ありげに掲示板を見る。
「これは、不特定多数に色々と依頼するための掲示板だよ。特に、冒険者なら必見……って事でチェックしておくか。」
警備の依頼、鍛冶の依頼、薬草収集の依頼……
「う〜ん、手を付けられそうな依頼は特に無いかな。」
僕達は旅の身、時間がかかりそうな依頼には手が出せないのだ。そのまま広場を後にしようとしたら、一羽の鳩がぱたぱたと飛んできた。その鳩は足に紙を括りつけており、掲示板の上に止まる。
「む、この鳩は何なのだ?」
「アリス、この鳩は大事な仕事をしているんだ。だから、食べちゃダメだよ。」
「食うかっ!」
その鳩はクチバシで足にくくられた紙を外し、掲示板に貼り付けた。そして、次の町へと飛んでいく。
「ひゃ〜!あいつ頭いいんだなぁ〜!」
「あれは掲示鳩だよ。あんな風に世界中の町や村にメッセージを貼るのが仕事なんだ。」
「なるほど、訓練された鳩を伝達手段として用いるとはな。人間も面白い事を考えつくものよ。」
そして、掲示板に貼られた依頼というのは……「魔物に偏見を持たない冒険者の方へ。依頼がありますのでどうかお話を聞いてください。ナタリアポート南区6番街3-29 依頼主 メイア」との事。
「おいルカ、面白そうな依頼だぞ。」
「魔物に偏見を持ってない人……?」
わざわざそこを強調している以上、魔物に偏見を持っている者にはできない依頼なのだろう。
「気になるな……ちょっと行ってみようかな?」
「行ってみようぜ。まさに俺達の為にあるかのような依頼じゃねぇか。」
「まさか貴様ら、ナタリアポートまで戻るつもりか……?」
面倒事が嫌いなアリスは、反対のようだ。確かにナタリアポートまで引き返すのは大変だが……
「それでも、僕達が行かないと。」
「人間と魔物の共存のためにも、こういう依頼は受けるべきだ。」
「本当に、貴様らは人助けとやらが好きなのだな。放っておけばいいのに、全く……」
「僕達は勇者、困っている人を助けるのが仕事さ。」
「ニセ勇者のくせにか……」
「ニセ勇者だからこそ、心は勇者でありたいんだ。」
「ふん、一丁前の口答えを習得しおって……」
不満そうなアリスはまぁ、放っておこう。
「ここを出る前に、ちーっと情報収集しようぜ。」
「あぁ、そうだね。」
僕達は解散し、町で情報収集にかかった……
一通り情報を集め終え、僕達は町の外で合流した。
「あの北のお化け屋敷、処刑場だったらしいな。」
「えっ、僕は墓場だって聞いてるけど……」
「えっ……」
早速、情報が噛み合った。
「……じゃ、こんな話は知ってるか?そこに怪しげな実験してる魔導師がいるらしい。」
「いや、僕が聞いたのはそこには少女の幽霊が出るって噂……」
………………???
処刑場、墓場、少女、魔導師……いったいどれが本当なんだ?
「……何にしても幽霊が絡んでるってのは確実らしいぜ。」
「らしいね……不思議な事もあるものだね?アリス。」
ルカはアリスに話を振ってみる。
「ない!貴様ら無知蒙昧な人間には分からんだろうが、幽霊なと魔導科学的に存在せんのだ!」
「でも、モンスターにはゾンビ娘とかゴースト娘とかがいるじゃないか。」
アリスはいきり立ち、言い放つ。
「あれは幽霊ではない、れっきとしたモンスターだ!死体を媒介に、高濃度の魔素が集まって生まれたモンスターに過ぎん!非科学的な幽霊などと一緒にするな!」
「似たようなモンじゃねぇか。」
「違うのだ!!」
……何故か、アリスはひたすらに幽霊を否定する。
「だが、その幽霊屋敷には行く必要があるな……人間達に悪ぃ事する奴が居るんならぶっ飛ばしに行かねぇと。」
「あぁ、そうだね。」
またも、アリスは激昂しながら声を上げる。
「そんな必要はない!貴様らはとっとと精霊の森に行って、シルフの力を借りるのだ!下らん寄り道をしている暇ではない!」
「俺、界王拳があるから精霊の力は借りねぇよ……」
「アリス、何をムキになっているんだ……?」
アリスという魔物は相変わらず分からない……
「ルカ、そいやメイアさんの件なんだけど……」
「あぁ、そう言えばそれもあったね。」
「魔物に偏見を持っていない冒険者」……まるで僕達を指すようなものだ。
「勇者ってのは、やる事がいっぱいあって大変だね……」
「そうだなぁ……」
「貴様らがドアホなだけだろう。他人の事など放っておけばいいものを……」
僕は地図を開き、例の如くヴィクトリーがそれを覗き込む。メイアとやらの依頼を受けるか、それとも北のお化け屋敷に行くか……または、アリスの言う通り精霊の森へ直行するか……
戦士達は地図を見て考えるのであった……
流血表現
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もっとする
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このままでいい
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しなくていい