もんむす・くえすと!の世界に降り立った1人のヒーローアバターの話   作:ジョーカー:ゼノ

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導きの道

 突如戦士達の前に立ちはだかった一体のモンスター。それはカニのモンスターで、大きなハサミが特徴的で、複腕を持ったカニ娘だった。

「ねぇ、あんた達。ちょっとザーメン出してよ。あたし、お腹減っているの。」

「な、なんなんだいきなり……」

「丁重にお断りする。」

 二人は構え、臨戦態勢をとる。見境無しに人を襲うモンスターなんて、放ってはおけない!

「ふぅん、戦う気?じゃあ、あんた達の汚そうな体、徹底的に洗ってあげるわ。泣きわめいてザーメンもらしても……」

「かめはめ波ーっ!!」

「きゃああっ!?」

 ヴィクトリーはいきなり踏み込み、カニ娘にかめはめ波を放った。

「わ、わりぃ……あんまりにもスキだらけだったもんで……」

「……許さないっ!!」

 カニ娘の怒りの矛先がヴィクトリーに向かい、カニの口部分から泡をぶくぶくと出す。

「雷鳴突き!」

「ぎゃんっ!?」

 ルカの雷鳴突きがカニ娘に炸裂し、カニ娘に大ダメージを与える。

「ぐ、ぐぬぬ……!」

「流石に二対一は可哀想な気がしてきたぞ……」

「そ、そうだね……」

 僕達は戦いの手を止め、二人で話し合う。

「……?」

 カニ娘は戸惑い、硬直する。

 しばらくして、ヴィクトリーが前に進み出た。

「待たせたな……先に攻撃当てたのは俺なんで、俺一人で相手することにした。よろしくな。」

「……へぇ、勇者一行の武道家一人で私を倒すつもりなんだ……」

「へへへ……俺はちょっと強いぞ……」

 シュインッとヴィクトリーが消え、カニ娘の胸の間に肘打ちを入れる。

「うぐっ……!」

 カニ娘も負けじとハサミをヴィクトリーに振り下ろすが、避けられてしまう。

「まずい……当たったら首ごと持ってかれんじゃねぇの……?」

「安心しなさい。そこまではしないわ。」

 カニ娘はそう言い、ヴィクトリーにラッシュを放つ。それをひょいひょいと避けて、反撃の機会を伺うが……

「……!」

 背中にドンッと壁が当たる。壁際に追い込まれてしまったようだ。

「そいっ!」

「わっ!?」

 ヴィクトリーの両腕が、巨大なハサミで抑え込まれ、押し倒されてしまう。

「はい、捕まえちゃった……あんたのきったない体、たっぷり洗ってあげるからね……」

「なっ……!!」

 カニ娘の分泌した液と、それを擦り付ける彼女の手によって、ヴィクトリーの体が泡にまみれてくる。

「は、離せっ!」

「暴れたって離さないからね……!!」

 彼は必死にもがくが、拘束からは抜け出せなかった。

「意地でも離さねぇ気か……じゃあ、いいよ。ぜってぇ離すなよ?」

「なっ……!?」

 ヴィクトリーのその言葉、それは考えようによっては降参として解釈できた。

「あら……?意外とあっさり観念するのね……」

 彼は誘惑に屈して、無抵抗になったかに思われた。

「ぐぶっ!!?」

 突如、カニ娘の腹に鈍痛が響いた。見ると、ヴィクトリーの膝が彼女の腹にめり込んでいた。

「もういっちょ!」

「ぅぶっ!!」

 もう一発、叩き込む。

 その一撃でカニ娘はたまらずヴィクトリーを解放して、距離を置く。解放された彼は立ち上がり、反撃の体制に入っている。

「界王拳!!」

 そして界王拳を発動して、カニ娘を見据えた。

「なっ……!?赤い……!?」

「だああぁぁーーーっ!!!」

 ヴィクトリーはそのまま突進し、カニ娘を殴り飛ばした。

「あぶっ……!?」

「ふんっ!」

 そして、殴り飛ばした方向に高速移動し、蹴り飛ばす。

「だあっ!!」

 更に飛び蹴りで壁の方に吹っ飛ばした。

「きゃああぁーっ!!!」

 その断末魔と共にカニ娘は岩壁に叩きつけられた。彼女を叩きつけられた岩壁は粉砕した。

「あ、あが……武道家……ごときに……」

 カニ娘は瓦礫に埋もれながら、ばたりと気絶した……

「おっしゃー!」

「やれやれ、相変わらず手こずっていたな。」

 喜ぶヴィクトリーの隣に、アリスが居た。

「しょうがねぇだろ……中々強かったんだしさ……」

「あんな程度のモンスター、鼻息だけで吹き飛ばせるようにならねば、魔王には太刀打ちできんぞ。」

「魔王はおめぇだろうが。だいたい、どんな修行したら鼻息だけで魔物吹き飛ばせるようになるんだ。」

 そう呟きながら、ヴィクトリーは『導きの玉』を取り出す。

「それ、どう使うんだ?」

「ここらの砂浜で掲げろって話だったな……こうか?」

 そう言いながら、その玉を頭上に掲げる。すると、『導きの玉』はまばゆく輝き、海面に一筋の光を放射した。その光は、海の奥深くまで差し込んでいるようだ。

「ほう……導きの道を作るアイテムだったか……」

「導きの道……?」

「なんだそりゃ。」

 アリスは、光に視線をやる。

「この一筋の光が、言わば海底へのトンネル。ここを降りて、海底神殿を徒歩で行くことが出来るのだ。」

「ここを降りるのか……?」

 ルカは恐る恐るそこに入ってみる。そこは明らかに異質な空間だった。

 その中は泳げるのに、普通に息ができる。おまけに服も濡れない。なんとも不思議な空間だ。

「この中を潜っていけばいいんだな……」

 これなら、泳ぎのできない僕も安心して潜れる。

「ヴィクトリー、いつまで玉を掲げてる?」

「え……?」

「その玉は一度掲げるだけでいいんだ。」

「そうか……あ、ほんとだ。」

 ヴィクトリーが玉を下げても、光は残っていた。

「よし、いざ海底神殿へ!」

 こうして僕とアリスとヴィクトリーはその通路に身を投じ、ゆっくりと潜っていくのだった。

 

 海中に開いた不思議な通路を僕達は下へ下へと降りていく。

「……所で貴様ら、さっきカニ娘と戦っている際に話をしていたな。何を話してた?」

「あぁ、実はこれから魔物と戦うにはどうするべきか話していたんだよ。」

 流石に一体の魔物を僕達二人がよってたかってボコボコにするには違う気がする。

 なので戦う際は僕、ヴィクトリー、僕、ヴィクトリーと、ローテーションする事にしたのだ。ヴィクトリーも一対一で戦う方が好きだと言っていたし、いい案だと思った。

 だけど、ボスクラスの敵、集団の敵、悪意がありすぎる敵相手には共闘するつもりでいる。絶対に勝たなきゃならない場合は共闘しようと提案し、ヴィクトリーも飲んでくれた。

「まとめると、「基本は一対一で戦うけど、ボスや集団、絶対に勝たなきゃならない敵の場合は共闘しよう」ってわけだよ。」

「ふん、ドアホめ。貴様ら二人が共闘すれば一瞬でカタがつくものを……」

「へへへ……」

 ヴィクトリーは手を後頭部に回して笑う。

「……それにしても、この道、いきなり消えたりとかしないだろうな……」

 ルカは泳ぎながら心配を口にした。

「ヴィクトリーが『導きの玉』を所持している間は問題ない。持ち主が海から出ると、この光も消えるがな。」

「俺はちゃんと持ってるから安心しろ。」

 ……落としたらどうなるんだろう。流石に、「ヴィクトリー、試しに落としてみてよ。」とは言えないけど……怖くて。

「この道を通って海底神殿にたどり着くのも、夫婦となる為の試練……襲い来る魔物を打ち倒し、勇気を示せ……と言った所だな。」

「ひゃ〜……ケッコンすんのにそんな事するのかよ……」

「海の掟って面倒だな……」

 その試練も代理人が受けるのだから、なんの意味も無い。

「なぁアリス、他の魔物とかもケッコンする時はこんな事すんのか?」

 僕も気になっている質問をヴィクトリーがする。

「それは、魔物の種類にもよるな。そんな制約は全くない種族もいれば、細かく決まっている種族もいるのだ。かく言う余の家系にも、婚姻を結ぶ相手に関する取り決めがあるしな。」

「アリスの家系にも……?」

「魔王にもあんのか……?」

 アリスは少し黙ってから、二人を見た。

「強いこと……男に求めるのは、それだけだ。自分より強い男にのみ、嫁ぐことを認める……それが我が一族の掟よ。」

「……そりゃ大変だ……」

 現役魔王のアリスより強い男なんかこの世界にいるのか……?

「それはともかく、結構深いんだな……」

「海ん中だからな……」

 こうして潜りながら周囲を見回すと、まさに幻想世界。色とりどりの魚が群れをなし、周りをひらひらと舞っている。

「綺麗だなぁ……」

「日和っている場合か。海は魔物の生息域、出くわしたら容赦なく襲ってくるぞ。」

「そりゃおっかねぇ……」

「ここも油断はできないという事か……」

 泳ぎながらヴィクトリーが、突然口を開いた。

「なぁ、泳がなくても舞空術の容量で行けんじゃねぇかな……」

「ブクージュツ?」

「何だそれは。」

 舞空術。気の力を用いて自分の体を宙に浮かせる術。自分の世界では使えて当たり前な技なのだが、俺は何故か未だに使えない。だけど、この宙に浮いているような感覚は懐かしいものがある。

「……何だか知らんが、やってみるが良い。どうせ貴様の事なのだから、おかしな事が起こるのだろう。」

「不安だなぁ……」

 二人の言葉が終わるのを確認してから、ヴィクトリーは海の奥深くを見つめた。

「舞空術ーっ!」

「わっ!?」

 ギュンッとヴィクトリーの体が加速し、どんどん奥へと行ってしまう。その姿は、すぐに見えなくなった。

「ちょっ、ヴィクトリー!?」

「安心しろ、あの脳みそ筋肉の事だ。きっとすぐ帰ってくる。」

 アリスは呆れ気味にそう言った。そして、不意に眉を寄せた。

「……さて、丁度良い時間に魔物の登場だ。」

「え……?」

 アリスも消え、この場が僕一人になる。見れば、透き通ったようなモンスターがふわふわと接近してくる。

 巨大なカサ、大量の触手が特徴のクラゲ型のモンスター、クラゲ娘が現れた。

「海の中を歩く人間……?ふしぎ……」

「君達に迷惑はかけないよ。だから、通してほしいんだけど……」

 海で暮らしている魔物達の平穏を乱したくはない。ここは、平穏に事を進めたい所だが……

「おいしそう……精液を搾り取って、食べてあげる……」

 しかし、向こうはそう思っていないようだ。気は進まないが、やるしかない!

 ルカは剣を構える。

 思えば水中戦は初めてだ。慣れない感覚で何処までやれるか……

「ほら……いたぶってあげる……」

 クラゲ娘は触手をルカの方に伸ばし、襲いかかった。ルカはその触手を切り弾いてから、剣を寝かせる。

「雷鳴突きっ!!」

 ルカの雷鳴のような鋭い突きがクラゲ娘に炸裂した。

「うぐ……」

 クラゲ娘は揺らいだが、まだ戦う気だ。

「まだまだ行くぞっ!」

 僕はクラゲ娘を、ズバズバ切りつける。

「……」

 斬撃を受けながら、不意にクラゲ娘がニヤリと笑った。

「あう……!?」

 急に体が麻痺し、動けなくなってしまった。

「特別な触手……刺したの……」

 クラゲ娘は一本の触手を見せつける。そこから、怪しげな液体が出た。彼女の麻痺触手がいつの間にかルカの体に刺さっていたのだ。相手のラッシュに漬け込む潜ませた罠。彼が見破れる筈も無かった。

「しゅるしゅるしゅる……」

「あうぅ……」

 僕の体は触手に巻き付かれ、捕縛されてしまった。そして、触手で全身を嫐られる。

「ああぁ……」

 優しく体中を撫でられ、快感が体を駆け巡る。麻痺しているから、抵抗もできない。

「うふ……このままカサの中に引き込んで、じゅるじゅるに弄びながら食べてあげる……怖がらなくてもいいよ、とっても気持ちいいから……」

 そう言い、クラゲ娘はルカの体をこちらに寄せる。もう打つ手なしかと思われていたが、ここで体が動くようになった。

「ううぐ……!!」

 それでも、目の前の危機は変わらない。今もがいた所で、解けるような拘束ではない。

「観念しなさい……」

 クラゲ娘は顔を近づけてきた。そして、唇を近づけてくる……

「えいっ!!」

「ぶっ!?」

 ルカはそのクラゲ娘の顔面に頭突きをかまし、脱出した。

「や、やった!」

「逃げないでよ……」

 クラゲ娘は、鼻を押さえながらルカを見る。

「よしっ!反撃開始!」

 ルカは剣を構え、再びクラゲ娘に向かう。彼女も弾力に満ちた触手を彼に伸ばす。

「……そこかっ!!」

「はぅっ!」

 ルカが切りつけたのは……潜ませた罠、麻痺触手だった。この触手さえ切り弾けばセオリー通りに勝てる。

「ちょ……待っ……」

「であぁっ!」

 ルカの一撃が一閃した。

「……力が……抜けるの……」

 クラゲ娘はルカの背後で消散し、クラゲの姿となった。そのままクラゲは、どこかへ流されていく……

「ふぅ、今日も僕の剣に曇りは無いな……」

 そう言った瞬間に、背後からアリスの声がした。

「何を抜かしておるか、このドアホめ。ドアホめ。」

「二回も言わないでくれよ……」

 先に進もうとした所で、僕はある事に気が付いた。

「……ヴィクトリーは?」

 舞空術とやらで先に進んでしまったヴィクトリー。すぐ戻ってくるとアリスは言っていたが……

「む……すぐ帰ってくると思っていたが……もしや魔物に襲われてるのか……?」

「そ、それは大変だ!急がないと!」

 あのヴィクトリーだから、心配は無用だと思うが……不安は拭いきれない。僕達は仲間の為に急いで海の奥深くに進んだのだった……

流血表現

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