もんむす・くえすと!の世界に降り立った1人のヒーローアバターの話   作:ジョーカー:ゼノ

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北のお化け屋敷

 ナタリアポートを出て、旅路を進む勇者一行達。その勇者、ルカが地図から目を上げ、言った。

「よし、北のお化け屋敷とやらに行ってみよう!」

「よしきた!」

 もし、悪い魔物が居たら、退治しなければならない。

「……」

 アリスは何も言わずに非常に恨めしそうな視線で僕達を睨むのだった……僕達、何か悪いことをしたのか?

 

 しばらく歩き、時間は夜。僕達は、問題の屋敷の前へと立っていた。

「思ったより、大きいな……それに、何か嫌な雰囲気だ……」

「不気味だな……魔物の気がする……ちゃんと魔物もウロついてるみてぇだ。」

「……」

 アリスは平静を装ってはいるが、どこか怯えているような気がしてならない。魔王を怯えさせるほどの脅威が、この中にあるというのか?

「見ろよ二人とも、あっちには墓があるぜ。」

 屋敷の脇には、小規模の墓地のようなものがあった。そう広くない敷地に、無数の墓石が並んでいるのだ。

「そんな事、気付いておったわ!気付いてはいたが、あえて見なかったフリをして黙っておったのだ!それを、わざわざ言うドアホがいるか!貴様は、女心のまるで分からんドアホだ!」

「そ、そこまで言う事ねぇだろ……」

 何だか知らないが、ヴィクトリーは怒られてしまった。ともかく、ここは墓地だったようだ。確かそんな情報もあった。

 少女の幽霊や、悪い魔導師などの噂は、単に尾びれがついただけなのだろうか……

「……」

「ん……?」

 ヴィクトリーの視線が上に向く。見ると、二階の窓から小柄な少女が、こちらを見下ろしていた。

「ルカ、今の見たか!?」

 驚いたヴィクトリーが、ルカの方へ向く。

「ひぃっ!?」

 次の瞬間、何も関係ないアリスがルカの背中にさっと隠れてしまった。さっきからの不審な態度は……まさか……

「アリス、ひょっとして幽霊が怖いのか?」

「そ、そんなわけなかろう!余が怖いのは空腹のみだ!」

「……」

 ルカとアリスが言い合ってる横で、ヴィクトリーがもう一回、二階の窓を見る。しかし、少女の姿など影も形もなかった。

「さっきの女の子は幽霊なんかじゃない……現に俺は気を感じてあいつを見たんだ……」

「そうなのか……?」

 ヴィクトリーはまた屋敷を見て、目を鋭くする。

「あいつがここの家主とは考えにくい……こん中から感じられる気はもっとある……流石に怪しすぎるぜ、この屋敷……」

「そうだな……よし、入ろう!」

「ああ、面白そうだ。さっさとあの女の子の正体を暴こうぜ。」

「ならん!」

 僕達が屋敷に入ろうとした瞬間、アリスが毅然と言い放った。

「貴様らは勇者なのだぞ、己の使命を忘れたのか?こんな所で遊んでいる場合ではあるまい!」

「……」

「そ、そんな事言われたって……」

 魔王に勇者の何たるかを説教されても困る。しかもアリスの上半身は毅然とした態度だが、下半身の蛇はぷるぷると震えていた。そんなに幽霊が怖いのか……

「サン・イリアの人達がこの屋敷を恐れているんだ。その悩みを取り除くのも、れっきとした勇者の使命だよ。」

「まさかアリス、魔王ともあろう御方が幽霊が怖くて中に入れないんじゃねぇかぁ?」

「そ、そんな訳あるか!へっちゃらだぞ!ちゃらへっちゃらだぞ!何が起きても気分はへのへのカッパだぞ!」

 アリスは遂に、意味不明な事を口にし始めた。そんなに怖いんならここで待ってればいいのに……

「じゃ、そういう訳だ。とっとと入ろうぜ。ぐだぐだ話してたら日が暮れちまうよ。」

「もう日は暮れてるんだよなぁ……ほらアリス、行くよ。」

「あ、あぁ……」

 こうして僕とヴィクトリーとアリスは、屋敷の中へと入ったのだった……

 さっき見た少女は、何者なのだろうか……

 

「中はそれなりに広いんだな。」

「だけど、随分と荒れ果ててるね……」

「……」

 アリスは僕の背中に隠れ、めっきり無言になってしまった。そして、玄関を進むと……ふと、前方に人影が見えた。

「あれは……?」

「ひぃっ!!幽霊!?」

 ヴィクトリーはというと、その人影に向かい、元気よく挨拶した。

「おっす!ここの住人か?」

 僕達二人は、思わずずっこけてしまう。あいつは何で誰に対してもアクティブなんだ。

「……」

 その人影は、無言でヴィクトリーの方を向く。そして、いきなり彼に襲いかかってきた。

「何だてめぇっ!!」

 ヴィクトリーはその人影のアゴに蹴りをかました。人影はその蹴りで揺らぎ、引き下がる。

「……何だ、あいつはただのゴースト娘か、驚かせおって。幽霊かと思ってしまったぞ。」

「その、違いが分からないんだけど……」

 アリスが怯えている幽霊と、ヴィクトリーが戦ってるゴースト娘とはいったいどう違うんだ?

「ゴースト娘は、人の魂を媒介として魔素が集まって生まれた魔物だ。非科学的な幽霊とは、全く異なる存在。さっさとケリをつけるんだな。」

 アリスはそう言って、姿を消してしまった。ゴースト娘の周囲に手が現れる。

「人間の精気……私に吸わせて……」

「やだ!」

 先に仕掛けられたのはヴィクトリーなので、この場は彼に任せることにした。

「よーい……どんっ!!」

 ヴィクトリーはクラウチングスタートで走り、ゴースト娘の顔面に肘打ちする。

「なんで……触れるの……」

「気っちゅうのは相手の本質を見抜くのにも、相手を捉えるのにも使うんだ。それを自在に使えれば、実体のない相手にも触れるハズだと俺は考えた……」

 ヴィクトリーの技は幽霊にも当たるらしい。何から何まで不思議な奴だ……

 ……そう言えばこのエンジェルハイロウも、実体の無いものを切れるらしい……やはり、天使様が溶かされてるだけあって、ありがたい剣……

「んな訳あるか!やっぱり気持ち悪いよ!」

 ルカがエンジェルハイロウを握ると、エンジェルハイロウは「ぉぉおお……」と呻いた。

「ひぃっ!何か喋った!」

「おめぇ、一人で何やってんだ……?」

 ヴィクトリーはゴースト娘の猛攻を避けながらルカの方を見た。

「スキあり……」

 ゴースト娘の手が一斉にヴィクトリーに迫った。しかし、その手は彼をすり抜けた。

「な……!?」

「ここだーっ!!」

 ヴィクトリーはゴースト娘の背中に両足蹴りをくらわせた。

「っ……!?」

「だりゃあああっ!!」

 そして、ゴースト娘の吹っ飛んだ先に回り込み、思い切り床に殴り伏せた。

「あぐ……が……」

 ゴースト娘の頬に拳の痕がくっきり残る。そして、そのまま気絶してしまった。

「終わったぜ〜ルカ〜」

「あ、あぁ……」

 ヴィクトリーは道着の帯を締めて、ルカの横につく。

「……アリスは?」

「あ……確かに、いつもならこのタイミングで現れるのに……どうしたんだ?あいつ……」

 まぁ、魔王である以上、モンスターに襲われる事は無いと思うが……

「待っていても仕方ねぇよ。この屋敷調べようぜ。」

「あぁ、そうだね……」

 幽霊がいるのかどうかもまだ分からない。とりあえず、まだ魔物はいるらしい。

 勇者として、人々に害をもたらすモンスターは退治しなければならない。僕達は、屋敷の中を歩き始めたのだった……

 

「……ん?」

 階段を上がろうとすると、その脇に人形が落ちているのが目に付いた。かなり大きく、そしてこの屋敷には似合わない東洋風の人形だ。

「どうしたんだ?」

「いや、これ……」

「ただの人形じゃねぇか。ほっとけよ。」

「だけど……」

 僕がその人形に手をかけようとした時だった。その人形はゆらりと動き、起き上がったのだ。

「うわっ!?」

「の、呪いの人形っちゅうやつか!」

 呪いの人形娘は、ルカに目をつけた。

「おにいちゃん……あたしと……あそぼうよ……」

 そして、ルカに襲いかかってきた。

「こいつもモンスターなのか!?」

 得体の知れない人形モンスターを前に、僕は剣を抜いた。

「行くぞっ!」

 ルカは先制攻撃に雷鳴のように踏み込み、鋭い突きを放った。

「わっ……!?」

 呪いの人形娘はその一撃で壁際に吹っ飛び、バウンドする。

「行くぞっ!」

 そしてズバズバ切りつけ、相手の体力をゴリゴリ削った。

「いたい……」

 呪いの人形娘の髪が伸び、ルカに迫った。

「ここだっ!」

 ルカはそれを高速移動で避けた。

「あれ……どこ……?」

 消えたルカを探しに、周りをきょろきょろする呪いの人形娘。だが、そのスキが決め手となった。

 ルカは天井によじ登り、呪いの人形娘に渾身の兜割りを放った。

「あ……!?」

 その一撃で呪いの人形娘は真っ二つに割れてしまう。

「天魔頭蓋斬……」

 ルカの天魔頭蓋斬が呪いの人形娘に炸裂し、見事に一刀両断したのだ。

「あぅ……あそびたい……もっと……」

 真っ二つになった呪いの人形娘の姿が薄れ、消えていく……と思ったら、何も変わらずそこに転がっていた。しかし、指一本動かず、本物の人形に戻ってしまったかのようだ。

「あ……まさか……死んだのか……!?」

 慌てるルカを見て、ヴィクトリーが人形を拾い上げる。

「……これは、多分人形に魔素が集まって出来るタイプのモンスターだ……こいつが真っ二つになっても、また別の人形に魔素が宿って同じモンスターになるだろ……」

 そして、真っ二つになった人形を、もとの所へ戻した。

「ま、ほっときゃなんとかなるだろ。」

「だといいんだけど……」

 こんなモンスターもいるのか、などと思いながら僕達は階段を上がったのだった……

 

 そして、最初に入った二階の部屋で僕達を迎えたのは……

「……」

 壁際に縮こまり、震えているアリスだった。

「あ、アリス……」

「何をしているんだ?」

「……」

 どうやら、恐怖のあまり動けなくなってしまったらしい。

「おいアリス、何かあったのか?」

 ルカが、アリスにそう呼びかけた時だった。

「ううぅ……」

 廊下の方から、妙な呻き声が聞こえてきた。

「ひゃあああぁ……」

 アリスは腰を上げ、よたよたとその場から逃げ出そうとする。次の瞬間、尻尾が絡んでつまずいてしまった。そのまま彼女は棚に突っ込み、ランプや書物を床にぶちまけてしまう。

「おいおい……」

「なぁ〜にやってんだ……」

 二人は苦笑いをしながらアリスを見る。床に撒き散らされたものの中に、少女の肖像画があった。

「ひゃあっ!こ、この子!この子が……!」

 アリスはそれを見るなり、血相を変えた。

「この子がどうかしたのか……?」

 ルカは、それをのぞき込む。そこに描かれていたのは、いかにも品の良さそうなお嬢様。この屋敷に入る前、二階から覗いていた少女とは明らかに別人である。この肖像画の少女は、いったい何者なのだろう。もしかしてこの少女こそが、病気で死んだっていう娘なのか……?

「ひぁぁぁ……」

 アリスは掠れた悲鳴をあげ、ふらふらとその場から逃げようとするが……次の瞬間、部屋の入口から現れた人影とぶつかってしまった。

 ぶつかったのは耳の尖ったゾンビ娘。これはいよいよアリスもおしまいか……?

「ひゃああああ!」

「おおぉおお……」

「ってただのゾンビか!!」

 アリスの拳がゾンビ娘にヒットし、一撃でぶっ飛ばしてしまった。

「おいおい……」

「す、すげぇ……」

「全く、驚かせおって……」

 ……ゾンビなら平気なのか。アリスが恐れている幽霊と、いったいどこがどう違うんだ。

「おい……アリス……床、ピシピシいってんぞ……」

「む……?」

 思いっきり力を振るった衝撃で、アリスの足元の床に亀裂が入る。そのまま床が抜けてしまい……

「うわあぁぁ……!」

 そのまま階下へと落下してしまった。

「あららら……」

「……」

 怯えたり逃げたり暴れたり落ちたり忙しい奴だ。まぁ、魔王なんだから一人で放っておいても大丈夫だろう。

「……」

「ん?」

 ヴィクトリーが目を鋭くして扉を見る。廊下を進む、ひたひたという足音。そして、さっき聞いたのと似た呻き声。また別のアンデッドモンスターが、この部屋に姿を見せた。

「ま〜たゾンビか……!」

 現れたのは、女剣士のアンデッドだった。

「も、もう一体居たのか……!」

 どうやら、道半ばで倒れたゾンビ娘らしい。そう言えばアリスがぶっ飛ばしたゾンビ娘は、耳が尖っていたことからしてエルフだと思われる。そんなにいろいろなゾンビがこんな所で発生するものなのか……?

「ぁ……ぅ……」

 ゾンビ娘はヴィクトリーに目をつけ、フラフラと近寄ってくる。

「どうやら、指名は俺みてぇだな……」

 ヴィクトリーも構え、ゾンビ娘を見据える。

「だっ!」

 ヴィクトリーは床を蹴り、ゾンビ娘の腹に膝蹴りを打ち込み、壁に吹っ飛ばした。

「が……!?」

「おらおらおらおらおら!!」

 そして、壁に叩きつけられたゾンビ娘に何度も拳を連打する。すると、彼女はその場に倒れてしまった。

「よわっ……」

 ヴィクトリーがゾンビ娘に背を向け、ルカの所に戻ろうとした時だった。

「ヴィクトリーっ!後ろっ!!」

「なにっ!?」

 振り返ると、ゾンビ娘が自分に刃を振りかざしていた。その刃をガードし、彼女と目を合わせる。

「ぁ……ぅあ……」

「このっ!」

 ヴィクトリーはゾンビ娘の腹に拳を叩き込み、よろけさせる。

「ふっ!!」

 そして、片足を軸に回り、また腹に蹴りを入れた。

「げふっ……おえぇ……」

 ゾンビ娘は腹を押さえ、その場に倒れ込む。そして、動かなくなってしまった。

「や、やったか……!?」

「いや……」

 動かなくなった筈のゾンビ娘の手がピクッと動き、また立ち上がる。

「ぁぁぁ……」

「……不死身かおめぇは……!!」

 動きが鈍ければ、力も無い。それなのに、ヴィクトリーの攻撃を食らってもビクともせず、立ち上がる。

「どうやら完全に消し飛ばすしか、方法はねぇみてぇだな……」

 ヴィクトリーは構え、もう一度ゾンビ娘と対峙する。

「ぁぁぁ……!」

 ゾンビ娘はブンッと刃を横一文字に振るった。ヴィクトリーはそれをしゃがんで避ける。

「ちゃっ!!」

 そして膝のバネを使って伸長し、ドカッとゾンビ娘の顔面に頭突きをした。

「が……ぁ……!」

「ふんっ!!」

 そして腰を落として脇腹に拳を叩きつける。これが結構効いたらしく、ゾンビ娘はよろよろとふらついてしまう。

「たぁあっ!」

 更に頬をぶん殴り、後方へとよろめかせた。

「かめはめ波ーっ!!」

 そして、容赦なくかめはめ波を放った。

「ぁ……あぁ……!!」

 かめはめ波はゾンビ娘に直撃し、大爆発する。その爆発の中から彼女の持っていた刃が飛んできた。ヴィクトリーは難なく、その刃を掴む。

「これで楽になっただろう……安らかに眠ってくれよ……」

 爆発が晴れた場所にゾンビ娘はいなかった。どうやら、本当に消し飛ばしたらしい。

「……ルカ、俺は残酷か?」

「いや……その人、元々死んでた人だし……これでいいんじゃないかな……むしろ、無理矢理生かされていた苦しみから開放されたんじゃないかって思ってるよ……」

「……そうか。ありがとよ。」

 二人が息を吐いた時だった。

「うぅ……」

「男の……精……」

 突如、ゾンビ娘の声が聞こえた。

「お、おい……まさか……!」

「いち、に……三体か!?」

 ずるずると足を引きずるような音と、呻き声。それも、今度は一体では無いようだ。そいつらは、この部屋になだれ込んできた。

 襲いかかってきたのは三体のゾンビ娘。

「ど、どれだけゾンビがいるんだ……!?どうなってるんだ、この屋敷……!!」

「ば、バイオハザードでも起きてんのか……!?」

 これじゃ幽霊屋敷じゃなくて、ゾンビ屋敷じゃないか。こんなにたくさんのゾンビが発生するというのは、どう考えてもおかしい。

「考えてる場合じゃねぇ!」

「あぁ、そうだな!」

 二人は構え、三体のゾンビ娘と対峙した。一体一体は大したこと無いだろうが、今度は集団ときた。心してかからなければ……!

 強襲した三体の不死身の怪物。果たして、戦士達に勝ち目はあるのか……

流血表現

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