もんむす・くえすと!の世界に降り立った1人のヒーローアバターの話   作:ジョーカー:ゼノ

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邪な魔導師、クロム

 数分前……

「あ〜忙しい……今度はアレとアレをゾンビに適応させ、フレデリカに適応させねばならんのに……ついでに、アレも試してみる……いや、アレも良いかも……」

 クロムがあれこれ言いながら研究室に戻ろうと、廊下を歩く。その背後から走ってくる足音が聞こえた。

「む……?」

「待てーっ!!」

「わっ!?」

 振り返ると、ルカと呼ばれてた少年が走ってきたのだ。

「わわわっ!お前っ!フレデリカと戦っていた筈じゃ……!!」

「仲間が任されてくれと言ってくれたんだ!」

 そんな事を言い合いながら、ルカとクロムの鬼ごっこが始まった。

「待てー!」

「待てと言われて待つ奴がいるかーっ!」

 クロムがびゅーんと逃げ、ルカがそれを追いかけ回す。彼女は意外と速く、追いつけそうな所また離されてしまう。こうして、勇者と邪な魔導師の鬼ごっこが始まったのだった……

 

 屋敷をグルグルしていたら、轟音が響いてきた。何かを思い切り叩きつけたかのような音。それに続き、何かが激突するかのような音が響いた。

「なっ……!?」

「ふっふっふ……フレデリカが本気を出し始めたかの……」

 二人は立ち止まり、相対した。今思えば、ヴィクトリーは一対一の状況。

 まずいぞ、押されてるのか……!?

「くっくくく……あの武闘家も馬鹿な奴じゃ……フレデリカと素手で真正面から殴り合おうとするとは……」

「な、なに……!?」

「あのフレデリカにはかつて天才武闘家だった女の筋肉から、天才ピアニストだった女の指まで様々なものを移植してある……更に体躯を大きくするために、本来ならば激痛を伴う骨延長も行ったのじゃ。その為に痛みや恐怖という感情も消し去り、凄まじいタフネスも得た……まさに究極のゾンビ!儂の技術を最大限まで解放した、儂の最高傑作なのじゃ!」

 狂気を孕んだ笑みでクロムは言い放つ。命を終えたいたいけな少女に、無理矢理戦闘機能を取り付け、恐怖や痛みさえ消し去って……

「この外道……!!」

「ふんっ!お前ごときには分からんだろう!儂のネクロマンサー技術の素晴らしさが!あのフレデリカがどれだけ強いのか!!」

「お前のような悪い魔導師は……僕がこの手でやっつけてやる!!」

 ルカは剣を抜き、クロムに突進した。その時、脇道から数体のゾンビ娘が現れた。

「うわっ!?」

「ぅうう……」

「ふふふ……儂が何の考えもなく逃げていると思ったか!?ここは儂の実験体置き場……せいぜいあがく事じゃな!」

 クロムはそう言い、逃走してしまった。

「ま、待て……!!」

「あうぅう……」

 ゾンビ娘がルカの目の前に現れる。

「男……」

「寒い……うぅ……」

「くっ!!」

 ここは……やるしかない!

「てりゃあっ!!」

 まず剣を薙ぎ払い、数体まとめて切り倒す。そして、一体に目をつけ、そこに踏み込んだ。

「魔剣・首刈り!!」

 その一体に首刈りが決まると、そいつの体から何かが消散し、死体に還る。

「ぅうあ……」

「ちっ……!」

 背後から迫ったゾンビ娘を撫で切り、封印する。

「きりが無いぞ……!!」

 切っても切っても、また新入りが登場する。これじゃ、僕がスタミナ切れになってしまう……そう思っていた時だった。

「……!?何だ!?地震か……!?」

 不意にゴゴゴと屋敷が揺れたのだ。そして次の瞬間、気の嵐のようなものが舞い上がり、窓ガラスやら何やらが全部割れた。

「うわっ!?……ま、まさか……!?」

 ヴィクトリー……お前なのか……!?

 床に巻き散ったガラス片は撒きビシとなり、素足のゾンビ娘の歩行を邪魔した。

「……後でお礼を言わなくちゃ!」

 僕はそんなゾンビ娘達に背を向け、クロムが走っていった方向へとダッシュしたのだった……

 

 しばらく進んでから謎の階段を見つけ、降りてみると、そこは広大な地下墓地だった。どういうわけか、屋敷の地下には無数の棺が並んでいたのだ。そして、その奥にクロムは居た。

「むむむ……!まさか、こんな所まで追いかけてくるとは……!」

「さぁ、追い詰めたぞ!クロムとやら!覚悟しろ!」

 ルカが剣を構えると、クロムも臨戦態勢に入った。

 その時だった。突然ゴゴゴという音がしてから、何かが回転しながら天井をブチ破った。

「わっ!?何じゃっ!?」

「あれは……フレデリカとヴィクトリーっ!?」

「あああああああああああああーっ!!!」

 フレデリカの頭が石床に叩きつけられると、彼女の体中がボキボキと鳴り響いた。おそらく、全身の骨という骨が折れたに違いない。

「な、何じゃと……!?フレデリカが……!?」

 フレデリカがクッションになり、落下のダメージは免れたヴィクトリー。だが体は転がり、壁に追突してからその場に倒れ込んでしまった。

「はぁっ……はぁっ……!!ルカっ!あいつを切りつけろ!!」

「あ……うん!」

 驚き立ちぼうけていたルカがヴィクトリーの声ではっとして、フレデリカに向かう。

「ふ、フレデリカ!立てっ!立つんじゃ!お主の痛みという感覚はほぼ無い筈じゃ!」

「な……!?」

 ルカは立ち止まる。そう言えば、そんな事も言っていたな……痛みが無いんなら、まだ立ち上がれるんじゃ……

「……最高傑作を人間のゾンビでやったのは失敗だったな……」

「何じゃと!?」

 フレデリカはクロムの方を向き、口を開く。

「体が……動きません……」

「〜!!」

 慌てるクロムを見て、ヴィクトリーが笑った。

「痛みを感じねぇのは薄々気付いてはいた……だけど、全身の骨を折ってやった……そいつはもう二度と立ち上がれねぇ筈だ。」

「そ、そんな……!」

「……よくやった!」

 少々やりすぎな所も否めないが、それでもヴィクトリーはフレデリカを倒したのだ。

 ルカはフレデリカをエンジェルハイロウで切りつけた。

「ありがとう……」

 フレデリカはその一撃で体が粒子に包まれ、消えてしまった。これで彼女の魂も解放されたのだろうか……そんな事を思っていたら、不意に地下がクロムの怒気に包まれた。

「ぐ、ぐぬぬぬ……!お前ら……!!なんて事をしてくれたのじゃ……!!儂の最高傑作であるフレデリカを壊すとは……!!」

「人間の死体はおめぇの実験道具なんかじゃねぇんだ!!」

「死者の安らかな眠りを妨げ、苦しませるなんて許せない!!」

「ええい!非科学的な!死体など、ただのモノに過ぎん!こうなれば、儂自らが相手してくれるわ!」

 クロムは気を解放し、臨戦態勢に入った。

「お、おめぇ……!!」

「戦えるのか……!?」

「ふん、儂が戦闘タイプでは無いと思っていたのか!?そこらのゾンビよりは出来るぞ!ネクロマンサーの妙技、その体に受けてみるがいい!」

 僕は剣を構えた。本来ならばヴィクトリーも僕の横につく筈だが、何故か参戦しなかった。

「わ、わりぃ……3倍の界王拳は体に負担がかかりすぎた……体がガタガタになって動けねぇんだ……後は何とかしてくれ!」

「……分かった!」

「どうやら、一人で戦うつもりじゃな……?安心せい、儂は動けぬ男に追い打ちをかけるほど腐ってはおらん。ただ……お主が負けたら別の話じゃがな……」

 ルカは目を鋭くして、クロムを見据えた。

 この戦い、絶対に勝たなくちゃ!

「うおぉっ!!」

 雷鳴突きが炸裂し、ファーストヒットはルカのものになった。

「おぐっ!?」

「はぁあああ!!」

 よろめいたクロムをズバズバと切り、一気に壁に追いやった。

「やるのう……!だがっ!」

 クロムはゾンビの腕を召喚し、それでルカを殴りつけた。

「ぶっ……!?」

 その一撃で体が引き下がり、倒れかけるが、歯を食いしばって耐えて見せた。

「もっと行くぞ……!ほれほれほれ!」

 クロムがその場でパンチやキックを繰り出すと、女ゾンビの拳や足刀がルカの体に迫った。

「うぐぐ……!」

 それらを何とかガードし、反撃の機会を伺う。

「これならどうじゃ!」

 クロムは両手にエネルギーボールを作り、それをルカに投げつけた。

「うわ……!?」

 そのエネルギーボールはルカに直撃し、大爆発を起こした。

「そ、それは……確かスラッグの技……!!」

「すらっぐ……?誰じゃそれは……?」

 ダークネスツインスター。ピッコロと同じナメック星人であるスラッグが使った技だ。両手にエネルギーボールを作り、それを放つという技なのだが、クロムの技はそれに酷似していた。

「これは高尚なネクロマンサーに伝わる技……ネクロダブルキャノンじゃ。ネクロパワーを両手にためて放つ技なんじゃが……」

「くそ……!」

 その時、爆煙の中からルカが現れ、クロムに兜割りを放った。彼女は驚きながらも、何とかそれを避けた。

「ぐっ!?」

「あの程度で僕がやられるか!」

 そう言いながら、そのまんま回転切りをクロムに放った。

「ぐぁ……!」

 ズバッと体に横一文字の斬撃が入り、よろめく。

「このっ!!」

 クロムはゾンビの腕を召喚し、ルカに振り下ろしたが、彼はそれを避けて彼女の懐に踏み込んだ。

「な……!」

「魔剣・首刈りっ!!」

 クロムの喉に鋭い突きが炸裂し、その体が上方向に打ち上げられた。

「ぐぇ……!」

「はああっ!!」

 ルカは思い切り飛び上がり、クロムの体に剣を振り下ろし、床に叩きつけた。叩きつけられた彼女は床でバウンドし、ごろんと倒れる。

「ぐっ……!」

 クロムは立ち上がり、ルカの方へと視線を戻した。

「うぉおおおっ!!」

 既にルカはクロムの方へ向かい、剣を振りかぶっている。

「そこじゃ!」

「なにっ!?」

 クロムはルカの脇腹に注射器を刺し、何かを注入した。

「あぅ……」

 すると、ルカの体は麻痺して動かなくなってしまった。

「ふふふ……このまま料理してやるのじゃ!」

 クロムはそう言うとルカをぶっ飛ばし、その足を掴んでから床に叩きつけ、胸板を踏んで力を込める……

「うりうりうり……!」

「ぐぅああぁ……!!」

 体がメキメキと軋み、激痛が走る。そんなルカの胸板から足を離し、今度は腹を何度も蹴りつけた。

「ぐっ……!?」

「ほれっ!ほれほれっ!どうじゃっ!」

 麻痺さえ解ければ……こんな奴……!!

「ぐぐぐ……!!」

 気合で剣に握力を込め、クロムに振るった。

「おっと!」

 クロムはそれを避けてから、ルカを思い切り蹴飛ばした。

「うわぁああっ!!」

 床に倒れ、体を転がすルカ。そして、倒れる彼をクロムは嘲笑った。

「やはり、お前では儂には敵わんようじゃな……よくやったと褒めてやりたい所じゃ……」

「……勝ったつもりか?僕に……」

「そうじゃ!現に儂はお前を見下し、お前は儂を見上げている!これはお前の敗北と言わずに何と言う!?」

「そうじゃない……僕は……ひとりじゃない!」

「なに……!?」

 クロムが振り返ると、倒れていた筈のヴィクトリーが拳を振りかぶっていた。

「な……!?」

 そして、クロムの頬に拳が打ちつけられた。

「ぶっ!!」

 クロムは吹っ飛び、壁に激突してしまう。

「はーっ……はーっ……!!」

 ヴィクトリーは、ルカに手を差しのべる。彼はその手を掴んで立ち上がった。

「……3倍の界王拳はどのぐらい使える?」

「上手く事が運んで……あいつに大きなスキを作るぐれぇだ……」

「そうか、無理はするなよ……」

 クロムは頬を擦りながらヴィクトリーの前に飛んできた。

「……ふん、今更立ち上がるのか、武道家よ……フレデリカとの戦いのダメージが残っていて、立ち上がるのがやっと、といった所じゃな……」

「……正解……」

 ヴィクトリーはニッと笑って強がってみせた。クロムも卑しい笑みを浮かべる。

「……どうやら、どうあってもこの儂と決着をつけたい様じゃな!良いじゃろう!儂も戦士として、貴様ら二人を完膚無きまでに叩き潰してくれるわ!」

 クロムは気を解放し、ヴィクトリーと対峙する。

「界王拳っ……!!3倍だぁああああ!!」

 ヴィクトリーも限界を超えた奥義を使い、クロムを見据えた。

「それがフレデリカを倒した3倍界王拳とやらか……!」

「行くぞぉっ!!」

 クロムが亜空間からゾンビの腕を多数召喚し、ヴィクトリーはそれに対応しながら手足を振るう。

「うぉおおおおっ!!」

 迫り来るゾンビの手足をビシビシと弾きながらヴィクトリーがクロムの方へ突っ込む。

「はやい……!?」

「でゃりゃああああ!!」

 ヴィクトリーのパンチを掌で受ける。しかし勢いは殺せず、足が地に擦れながら壁に追いやられた。

「だぁああああ!!」

 クロムの顔面にもう一発パンチを放つ。だが彼女はそれを高速移動で避け、ヴィクトリーの背後に立つ。

「終わりじゃ……!武道家……!」

「な……!?」

 クロムはまた、クロダブルキャノンをヴィクトリーに放つ。彼は咄嗟の事態に避ける事ができなかった。

「ぎゃあああああああ!!!」

 直撃し、大爆発を起こす。その爆煙の中、ヴィクトリーは立ち尽くしていた。

「ヒュー……ヒュー……」

 だが、もう限界だった。体中がボロボロになり、立ってるのがやっとの状態に陥ってしまったのだった。

「……おしまい、じゃな。」

「……」

 ヴィクトリーはクロムの言葉を聞き、ニッと笑う。

「どうした?遂に頭がおかしくなったか……?」

「……クロム……」

 ヴィクトリーがクロムの名を呟いたその時だった。彼女の背後から凄まじいプレッシャーが降り掛かったのだ。

「……!?」

 クロムが振り返ると、ルカの天魔頭蓋斬が今まさにクロムに炸裂する寸前だった。

「お前の……負けだぁあああああああ!!!!」

 ルカの渾身の天魔頭蓋斬は、クロムに直撃した。

「そんな……この儂が……!!?」

 クロムは戦闘不能の大ダメージを負い、倒れた。

 やったか……!?いや、少しばかりダメージが浅く、封印には至らなかったようだ。

「うぐぐ……今日はこの辺で勘弁してやる!」

 クロムはそう言うと立ち上がり、逃走してしまった。

 二人の戦士はギリギリの所でクロムを追い払ったのであった……

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