もんむす・くえすと!の世界に降り立った1人のヒーローアバターの話   作:ジョーカー:ゼノ

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初めての魔物撃退。そして……

 スライム娘と戦う中、ヴィクトリーは過去に戦った似たタイプの敵を思い出した。

 魔人ブウ。無限の再生と変幻自在の体でこちら側を苦しめてきたのを濃厚に覚えている。

「ちっくしょ〜……!」

 その事を思い出し、思わず歯ぎしりしてしまう。いくら物理で攻撃しても、新品に戻ってしまうとなるとどうしようもない。こうなれば細胞一つ残さず消滅させるべきなのだが、今はかめはめ波どころか気合砲すら使えないのだ。

「ど、どうする……?大ピンチっぽいぜ……?」

 頼りになるのは、ルカなのだが……

「ぅ……」

 再生するだなんて、最初の敵にしてはずるくないか?あぁ、イリアス様……僕はどうしたらいいのでしょう……

「どうやら、打つ手無しみてぇだな……」

 神頼みしてる彼の様子を見て、ヴィクトリーはそんな事を言う。スライム娘は依然として、くすくす笑いながら二人を見ていた。

「やっ!」

 ルカが飛び出し、小振りの斬撃を放つ。だがスライム娘は再生し、二人を嘲笑った。

「こ、こんなのずるいよ……!」

「殴っても切ってもダメなら、どうすりゃいいんだ……!!」

 たじろぐ二人を見ながら、彼女は妖しげな笑みを浮かべる。

「もう諦めて私に包まれちゃえば……?このスライムの中でおちんちんいっぱい可愛がって……たくさんぴゅっぴゅさせちゃうからね……」

「ちっくしょう……!!」

 相性が最悪すぎる相手に、ヴィクトリーは身構えることしかできなかった。しかし、ここでルカの目が光った。

「……ヴィクトリー、再生するといっても多少の時間はかかるみたいだよ。」

「……んぇ?」

 魔人ブウの事ばかり思い出していて、再生する事にしか目をつけていなかった。しかし……

「だけどそんな事を今教えられた所で俺にはどうしようもなんねぇよ……」

「……ふっふっふっふ……」

 ルカは、不敵な笑みを浮かべる。

「……秘策があんのか!?だったらとっととやろうぜ!」

「……うん……」

 その笑みは、策が出来たというより、やけくそで笑うしかなくなったといった方が適当かも知れない。

 ……と、次の瞬間だった。

「てりゃああああ!!」

 ルカは剣をめちゃくちゃに振り回し、スライム娘に突進した。

「!?」

 その場にいたルカ以外の一人と一匹は、驚いて硬直した。

 やたらめったらな斬撃(というよりは剣を棒みたいに扱う打撃)が、スライム娘に全部命中した。当たる度にスライムが飛び散り、彼女の体が欠ける。

「ひ、ひどいよぉ〜……」

 彼女は必死に再生している……が、再生速度が追いついていないようだ。

「お、おおぉ!き、効いてるっちゃ効いてる!」

「はぁっ……はぁっ……!」

 ルカは距離をとり、ヴィクトリーの隣に来てから、ぽんと背中を叩く。

「え…お、俺も…?」

 ルカは頷き、「さっさと行け」という視線を向ける。

「……えぇい!こうなったらやぶれかぶれだーっ!!」

 ヴィクトリーはスライム娘に走り寄り、無数の打拳を浴びせた。

 ……それは武闘家が使うものとは程遠く、まるで子供の喧嘩みたいなパンチだった。しかし、これも全て命中。拳が、スライムを次々に削ぎ落とした、

「ふえーん!もうやだー!」

 二人のやけくそ技をくらったスライム娘は、ずるずると身体を引きずり、泣きながら帰ってしまった。戦士達は、スライム娘を追い払ったのであった……

 ルカは剣を取り落とし、その場に膝をつく。ヴィクトリーは倒れ、なってしまった。

 どう考えてもむちゃくちゃ疲れる戦いだった。ヴィクトリーがいなきゃ、危なかったかも知れない。それでも勝利である事は変わりはない。

「や、やった……」

「へっへへへ……」

 ヴィクトリーは、こっちに手の平を向ける。ハイタッチをしてようやく、勝利を噛みしめる。

「お、俺達……村を守ったぞ……」

「そ、そうだね……それに……魔物……殺さずに済んだし…」

 僕は決して魔物が憎い訳ではない。むしろ人と魔物は、仲良くやるべきだと考えている。だからこそ、勇者になる事を決意したのだ。

「……村に戻るか……今日は旅立ちの日だもんな……」

「おっ……そうだな……」

 今日は女神イリアスの洗礼が受けられる。ようやく一人前の勇者として旅立てるのだ。

 二人は立ち上がり、服の汚れを落としてから深呼吸をして村の方に戻って行った。

 

「魔王退治……かぁ。」

 ふとルカは立ち止まり、空を見上げる。ヴィクトリーも彼の真似をして空を見た。

「どうしたんだ?」

「……今よりそう遠くない昔の話……人間と魔物は共存していたんだ。魔物の一部は人間の町や村で暮らし、それを人間も受け入れてくれた。まぁ、種族の違いだってあるから時には諍いもあったけど……それでも決定的な対立には至ってなかったよ。」

「じゃあ何で今はこんな魔物がいねぇんだ?」

「……三十年前のとある大事件が原因だよ。」

「大事件……?」

「魔王城に一番近い人間の町……レミナで魔物による大量虐殺が起きたんだよ。」

「そ、それはおっかねぇな……」

 魔物の群れが突如レミナを襲い、市内は惨劇が繰り広げられた。その結果、レミナは壊滅。今も廃墟になっているとのこと。以上の事件は、『レミナの虐殺』と言われ伝わっている。

「……うーん……その『レミナの虐殺』以後、人間と魔物はこんなピリピリしてる関係になっちまったのか……」

「全ての魔物を統べる魔王は人間との全面戦争を宣言。人と魔物は完全に決裂し、両者は憎み合うようになってしまった……って訳だよ。」

「全然ピリピリどころじゃなかった……」

「……あっ、でも地方によって温度差もあるらしいよ。」

 魔物全体を深く憎む人も居れば、受け入れてる人も居るということらしい。

「それでも、人間と魔物の仲が悪くなった事には変わりねぇだろ?」

「その為に僕が……!」

 魔物に悪い事をさせてる魔王を倒せば全ては元通りになる筈。昔のように魔物と人間が仲良く暮らせる筈なんだ。その為に魔王を倒さないといけない。この僕と刺し違えたとしても……

 そう思っていると何処からか凄まじい衝撃と轟音が鳴り響いた。

「何……!?」

「何だってんだよ……!!」

 この付近で爆発でもあったか……?

「近いな……」

「面白そうだ、行ってみようぜ!」

 二人は走り、音の響いた方向に向かった……

 

「ここか……?」

「らしいぜ……」

 木々の間を抜けて、森の奥に入る。そこには、綺麗な女性が地面にめり込んで倒れていた。

「いや……あれは……」

「どう妥協しても人間じゃないみたいだぜ……」

 上半身は人間、下半身は大蛇、それに肌の色……ヴィクトリーの言う通り、人間では無いみたいだ。

 魔物……それもかなり上位の妖魔のようだ。

 いったい何が起きたのかは分からないが、そんな妖魔が倒れていた。

「死んでるのかな……」

 なぎ倒された木、へこんだ地面、どうやら、この妖魔は空から落ちてきたようだ。

「何だか最近よく空から人が落ちてくるなぁ……」

「こいつはモンスターだけどさ……どうする?」

「ど、どうしよう……生きてるなら助けないと……」

 僕は魔物を敵視している訳では無い、むしろ人と魔物が共存する世界を望んでいるのだ。魔物とはいえ放置しておけないのだが、今の僕には時間がなかった。

「ど、どうしよう……イリアス様の洗礼が……」

「焦んなって、時間はまだ余裕あんだろ。」

 確かに、正午まではまだ時間がある。だが、ゴタゴタに巻き込まれて遅刻してしまう可能性もある。しかも、目の前の状況を見るにトラブルの匂いは濃厚。

「ううぅ……どうしよう……」

「じれってぇなぁ……手短に終わらせりゃいいだろ。」

 そう言うとヴィクトリーは、妖魔の所にしゃがみ込み、その頬を思いっきり往復ビンタした。

「おーい!生きてるか〜?」

 僕はずっこけ、頭を木にぶつけてしまった。

「あ、あのさぁ!起こし方ってあると思うんだけどぉ!」

 頭を撫でながら、呆れながら大声を出してしまう。

 すると突如妖魔が起き上がり、ヴィクトリーの頬をぶん殴った。

「痛いわドアホ!」

「うわぁあああああ!!」

 ヴィクトリーはぶっ飛び、木に激突して、地面に倒れてしまった。

 ……凄い力だ。

「……ここは?」

 ルカの顔をじっと睨み、妖魔は口を開いた。

「……えっ?」

「ここは何処かと聞いている。」

 空から落ちてくる人ってみんな無礼なのかな。そう思ったが、口には出さずに我慢する。

「えっと……ここはイリアスヴィルの近くだよ……」

 とりあえず質問に答えてみる。

「そんな所まで飛ばされたのか……あの女、なんて馬鹿力なんだ……」

「女……?」

 妖魔は少し黙った後、こちらに向き、僕の疑問を無視してまた質問した。

「……で、貴様らは何者なのだ?」

「えっと……僕は勇者見習いのルカ……今君がぶっ飛ばしたのは……」

 ヴィクトリーは起き上がり、走ってから元気よく挨拶する。

「おっす!俺ヴィクトリー!」

 ……何で空から落ちてきた人って初対面の相手にこんな馴れ馴れしくできるんだろう。

「勇者見習い……ということは洗礼を受けていない身か……道理で美味そうな匂いがぷんぷんしている訳だ……」

 妖魔がじゅるりと舌なめずりをする。何故だか知らないけど僕の背中に悪寒が走った。

「ルカ〜洗礼はいいのか〜?」

 ヴィクトリーの言葉ではっと我に帰る。

「そ、そうだ!洗礼だ!そろそろ村に戻らないと!」

 妖魔の方も特に深刻な問題は起きて無さそうだし、もう放っておいても大丈夫そうだ。

「そ、それじゃ僕達はこれで…」

 立ち去ろうとした、その時だった。

 妖魔の下半身の大蛇部分が、いきなりルカの胴を巻き上げる。ヴィクトリーは腕を組んだまんま、その様子を見るだけで、助けようとしない。

 巻き上げた僕を、無理矢理自分の方に向ける。

「成程、事情は分かった。今日はイリアスの降臨日、だから洗礼を受けようとしてたのか……」

「わ、分かったから離してよ……ちょっ……ヴィクトリー、何で君は腕組んで棒立ちしてんの……」

「冗談じゃねぇやい。こんなんに今の俺が挑んだらあっという間に消し炭にされちまうよ。」

 まぁごもっともかも知れない。先程のパワーを見るに、力の差は歴然。勝負を挑もうなんてしたら、それこそバカなのか危機認識能力が無いだけなのか疑おうとしてたところだ。

「イリアスの洗礼など受けるな、下らん。」

「く、くだらん……!?」

 僕の生き方を一言で否定されてしまった。腹が立つより先にがっくりくる。

 何で会ったばかりの妖魔に、僕の生き方を否定されなきゃならないんだ。

「……もう、何だっていいよ。とにかく離してくれないかな?」

「……」

 しかし妖魔は離す気配すら見せない。ヴィクトリーは遂に、そこら辺のアリがカナブン運んでる所をしゃがみながら観察してしまってる。

「……なぜ余に止めを刺そうとしなかった?」

「え……?とどめ……?」

「人間が余を討つ千載一遇のチャンスだったはず。仮にも勇者を目指すはずのお前らがなぜそれをしなかったのだ?」

 そんな事言われても……返答に困ってしまう。第一起こしたのはヴィクトリーなんだけど……

「俺は殺すとかそんなのキライだからだ。後はルカの意向に沿ったぐらいだ。」

 アリを観察しながら、彼が言う。さり気なく、回答権をこっちに投げて。

「ま、まぁ、いい奴か悪い奴か分からないのにいきなりトドメを刺したりするような事はしたくないから……かな?」

「……ほう、人間と魔物は敵同士じゃなかったのか?」

「確かにそういう考えの人もいるけど……」

 だが、僕は違う。魔物を魔物という理由だけで、憎むような人間ではない。

「ましてや貴様らは勇者志望なのだろう?魔物を敵だと思っていない者が、いかなる理由で魔王を倒そうとする?それは英雄志望か?功名心か?それとも──」

 ルカは妖魔の言葉を遮って、口を開く。

「……僕は英雄になりたい訳じゃない。ましてや魔王を憎んでいる訳でもない。ただ悪い事をやめさせたいんだよ。」

 魔物を率いて人間を襲うなんて、絶対に間違っている。そんな事をしているから、人間も魔物もいい迷惑してるんだから……

「……はぁ?」

 寝言は寝て言えと言わんばかりの妖魔の表情を見て、僕は言葉を続けた。

「僕は魔王や魔物を倒したい訳じゃない。人間と魔物が手を取り合って暮らす世の中を作りたいんだ!」

 ヴィクトリーは、「おぉっ……」と唸ってくれた。だが妖魔の方は違った。

「ドアホだろう。貴様。」

「うぐっ……」

 胸にグサッとくる冷たい一言。ヴィクトリーと僕の抗議の声が重なる

「何でドアホなんだ!僕は、人と魔物が──」

「何でドアホなんだよ!こいつはちゃんと──」

 魔物はそんな僕達の抗議を遮り、言い放つ。

「幼稚な善悪の二輪元を土台に、歯が浮くようなお花畑の世迷い事……ドアホと言わずに何と言うか。」

「う……ぐ……」

 二人とも何も言い返せなくなってしまった。

「世の中というのを知らん年齢でもあるまい。人間と魔物が手を取り合って暮らす?人間はいつから、起きたまんま寝言を言うようになったのだ。」

「ぐ……確かに寝言かも知んねぇけんど、それを寝言と一蹴すんのは誰だって出来んだ!おめぇはどう……」

 妖魔はヴィクトリーを睨み、そして「黙れ」と言わんばかりの眼光で眼を光らせた。

「んっ!?んんん〜!!」

 彼の口が無理矢理閉じられて、何も話せなくなってしまった。

「なるほど、理解した。未熟がゆえの幼稚な使命感といったところか…」

 妖魔は少し黙り、ルカを開放する。

「もう行っていいぞ……未熟者の坊や達……」

 そしてルカとヴィクトリーの肩を、ぽんと叩く。

「お、お前なんかに何が分かる!このバーカ!」

 喋れないままのヴィクトリーとダッシュでその場を離れながら、僕は叫んだのであった。

 これじゃあ子供じゃないか……

流血表現

  • もっとする
  • このままでいい
  • しなくていい
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