もんむす・くえすと!の世界に降り立った1人のヒーローアバターの話   作:ジョーカー:ゼノ

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精霊の森

 精霊の森へと向かっていたら、夜になってしまった。

 そして、戦士達の野営のキャンプ……

「そういう訳で……イリアス様に反逆したその堕天使が、魔王と呼ばれることになったんだよ。」

「……ドアホか、貴様は。魔王である余に、魔王の成り立ちなど語ってどうするつもりなのだ?」

「そうか、そうだよね……」

 以前は勇者の話をして怒られたから、今度は魔王の話を聞かせたのだが……現役の魔王に聞かせるのも、失敗だったようだ。

「だいたい、そのような伝説は魔族を貶めたものにすぎん。初代魔王は、もともとイリアスの配下だったなど、デタラメをいいところだ。」

 ヴィクトリーは、アリスの方に向く。

「なぁアリス、初代様ってどんな奴だったんだ?」

「初代様は、イリアスと同格の神だったのだ。それを人間共が、勝手にイリアスの下へと格付けしたのだろうな。」

「初代魔王が……」

「神……!?」

 そんな話は僕も初めて聞いた。僕からすればそっちの方がよほどデタラメに聞こえるが……

「ルカ、どうせ貴様は疑っているのだろう……」

 アリスは二人を見ながら説明を始めた。

「いいか、世界には元々、闇と光が混ざっていた。しかし闇と光がそれぞれ寄せ集まり、初代様とイリアスが誕生したのだ。つまり、初代様とイリアスは裏と表。同格であり、コインの表裏のような存在なのだ。」

「それで……イリアス様と同格の神が、何で魔王になったんだ?そのまま天上世界で暮らさず、地上に降りてきたんだろ?」

「そ、それは……知らん。初代様にも、何かお考えがあったんだろう。」

「それで、その初代魔王はどうしているんだ?イリアス様と同格なら、寿命で死んだりしないよね?」

「……二代目アリスフィーズ様に魔王の座を託し、姿を消したと伝わっている。再び天に還られたとか、我々をそっと見守って下さるとか……」

「説得力ないなぁ……」

「疑っているのか、貴様!」

 ここで突然ヴィクトリーが手を挙げ、アリスに質問する。

「その初代魔王様ってのは……つえぇのか?」

「初代魔王様は、イリアスと同格の力を持ち、威厳に満ちたお方だ……自分の血を引く娘達には深い情を抱くとするが、仇なす者には一片の慈悲も持たない……」

「そ、そうなんか……!?た、戦ってみてぇな〜……!」

「ふふん、貴様なんぞ初代様の手にかかれば、あっという間に……いや、有無も言わせずに消し炭に出来るだろう……」

「そうか……修行しなきゃな〜……!」

 アリスはその言葉を聞き、ルカに向かい直る。

「そうだ、修行だ!今の貴様らは魔王の足元にも及ばないのだぞ!」

「わ、分かったよ……」

 こうして、話もうやむやの内に僕達の修行が始まったのだった。

 

「か……め……は……め……波あぁーっ!!」

 ヴィクトリーはまず最初にかめはめ波を何発も放った。そのかめはめ波の軌道が湾曲し、やがてヴィクトリーに迫ってくる。そのかめはめ波を確認し、両腕を上げる。そして、その体にドドドッとかめはめ波を食らわせた。

「あ、あがが……」

 これには流石のヴィクトリーも応え、半死に状態でドサッと倒れ伏す。そして、命からがら仙豆を食べた。

「……っふぅっ!!」

 回復した状態で、拳をガチンと合わせる。そして、いつもの基礎体力作りに励んだ。

 筋肉トレーニングだけではなく、ひたすらに木を殴ったり蹴ったりもして、完全に体を武器に仕立て上げる感じだ。拳とスネから血が吹き出してもやめようとはしなかった。このように、カラダを死の直前まで追い込もうとする修行を開始したのだ。

 とんでもない修行であるが、自分はサイヤ人。死を乗り越えれば、更に強くなる筈だと信じて、自分の限界を攻めていたのだった……

 

 翌日、戦士達は精霊の森へと到着した。

「ここが精霊の森か……」

 まだ入り口だというのに、うっそうと木が生い茂っていて先が見えない。

「何か感じるか?ヴィクトリー。」

「……ちいせぇ気がチラチラとあって……奥にでけぇ気を感じる……多分こいつがシルフだろ。」

「シルフのみならず、この森にはフェアリーやエルフが多く隠れ住んでいる。基本的に、人間に危害を加える連中はいるまい。……フェアリー共は少々いたずら好きだがな……」

「じゃあ、ほとんど戦いにはならないって訳か。じゃあ、行こう!」

 ほっと息を吐きながら、精霊の森に一歩を踏み出そうとした時だった。アリスが動かないのだ。

「ありゃ?アリス……?」

「どうした?来ないのか?」

 アリスは精霊の森の入り口にたったまま、動こうとはしなかった。

「……魔王たる余が森を練り歩き、フェアリー達を驚かせる訳にもいかん。今回はここで待っているとしよう。」

「分かった、なるべく早く戻ってくるよ。」

 そう告げ、僕達二人で精霊の森へと踏み込んだのであった。

 

「かなり広いんだな……ここを真っ直ぐでいいのか……?」

「あぁ、シルフはこの先みてぇだぜ。」

 二人は汗を拭いながら、進んでいた時だった……フェアリーが二人の前に現れたのだ。

「お花〜!お花にお水〜!」

 フェアリーは歌を口ずさみながら、花畑に水をやっている。手に持った別の花から滴る、白濁色の水を与えているのだ。

「なんだ、噂通りの妖精じゃねぇか、行こうぜ。」

「そうだね……」

 向こうも気付いていない様だし怖がらせるのも良くない。このまま立ち去るか……

「あ、人間だ……」

 しかし予想に反して、僕達を見つけたフェアリーはふよふよと近付いてきた。

「おっす!」

「こ、こんにちは……」

 妖精に会うのは初めてなので、僕は戸惑ってしまう。ヴィクトリーはそうでも無いようだが……

「ねぇお兄ちゃん達、私とあそぼ?」

「え……?」

「あそぶ……?」

「このサキュバスフラワーでね、お兄ちゃん達のおちんちんにいたずら……」

「ちょいっ!!」

 ヴィクトリーはフェアリーの言葉が終わる前に蹴り飛ばし、木に叩きつけた。

「ふぎゃっ!?……きゅう……」

 フェアリーはその一撃で頭に星を浮かべ、気絶してしまった。

「ヴィクトリー、なんて事を……!」

「わ、わりぃ……ああいう奴はたぶん言っても聞かねぇ……だから先に攻撃させてもらった……」

「……」

 確かに、あの手のモンスターは説得するだけ無駄だろう。まぁ、殺していないだけよしとしよう……だが、それをよしとしないものも居たようだ。

「なんて事を……!妖精に暴力を振るうなんて……!」

 ヴィクトリーの前に、エルフが走り寄ってきた。

「私はこの森の守り手。あなたのような狼藉者は、絶対に許さないわ!罪無きフェアリーに暴力を振るうなんて……恥を知りなさい!」

「先に危害加えようとしたのはあっちだ。」

「問答無用!この森の平穏を乱す者は排除するわ!」

 エルフは素早く距離をとり、弓を構えた。

「手ぇ出すなよルカ。こいつは俺に喧嘩売ってきたんだ……」

「あ、あぁ……」

 ルカは下がり、ヴィクトリーに任せることにした。

「よし、来い!」

「いかせてもらうわ!」

 エルフはヴィクトリーに狙いを定め、矢を放った。彼はその一矢を当たる寸前で受け止め、矢の先に注目した。

「な、なんだこれ……?」

 矢の先は、先端部分から何か垂れていた。

「安心なさい、その矢に殺傷能力は無いわ……麻痺はするけどね……」

 エルフは続いて矢を放つ。ヴィクトリーはその矢を見切り、ひょいと避けた。

「当たんなきゃ意味ねぇさ……」

「この……!」

 エルフはシュパパパパッと連続で矢を放った。矢の嵐がヴィクトリーに迫る。

「……」

 ヴィクトリーはそれをシャシャシャッと避け、額に指を当てた。次の瞬間、エルフの背後に瞬間移動し、背中を蹴りつけた。

「が……!?」

「うおぉっ!!」

 そして、猛烈な拳の乱打でエルフをタコ殴りにする。

「この……!!」

 エルフは剣を抜き、ヴィクトリーをなぎ払った。だが、彼はそれをしゃがんで避け、アッパーを食らわせた。それは見事に直撃し、衝撃は脳天まで貫いた。

「ぐ……!?」

「だりゃあああっ!!」

 そして、顔面をぶん殴って、岩場に叩きつけた。

「あが……か、怪物のみならず……人間まで侵入してくるなんて……この森に……平穏は来ないの……?」

 ヴィクトリーはエルフの前に立つ。

「……なによ……殺しなさいよ!あのフェアリーのように虫けらのようにあっさりと!」

「あのフェアリーは殺しちゃいねぇよ。ただ気絶してるだけだ。……俺達はこの森を荒らしに来た訳じゃねぇんだ。」

「え……?」

 視線をフェアリーに戻すと、ただ頭に星を浮かべて気絶しているだけで、命に別状はなかった。

「……どうやら、あなた達は誰彼構わず襲いかかる戦闘狂ではないみたいね……」

「ようやく分かってくれたんか!」

 ヴィクトリーはニッと笑い、エルフに手を差し伸べた。彼女はその手を掴み、立ち上がる。

「でも、何のためにここへ来たというの……?」

「俺はただの付き添いだ。」

 ヴィクトリーはそう言って、ルカの方を向いた。

「僕は、シルフに会いに来たんだ。」

「そうだったの……人間がシルフに会いに来るのは、数百年ぶりね。」

 エルフは再び、こちらに向かい直った。

「話も聞かずに襲いかかったりしてごめんなさい……得体の知れない怪物がよく出没するから、気が立ってたみたい。」

 ルカはヴィクトリーの隣に立って、エルフに質問した。

「……その得体の知れない怪物ってのは、何なんだい?」

 エルフ……すなわち魔物の一種である彼女達でさえ、「怪物」と呼ぶ存在。いったい、それは何者なのだろうか……

「……あれが何なのか、全然分からないわ……確かなのは、植物型の魔物ってだけよ……」

「植物型……アルラウネみたいな?」

「そんな可愛いものじゃないわ……アルラウネならこの森にも住んでいるけど……あいつは、もっともっと別の生物よ……魔物かどうか、正直怪しいぐらい……」

 彼女の口ぶりからして、相手はとんでもないバケモノのようだ。

「そうか……もし見かけたら僕達が退治してあげるよ。」

 困っている者を放置するなど、真の勇者のやるべき事ではない。相手が人間だろうが魔物だろうが、同じ事だ。

「冗談言わないでよ、相手はとんでもない怪物なのよ。あいつは、人間も魔物も関係なく取り込んでしまうの。私達の言葉も全く通じないし、そもそも知性があるのかどうかも怪しいくらい。私達じゃどうにもならないから、魔王様に直訴しようと思ってたのよ。あんた達なんかじゃ太刀打ち出来ないわ。」

 ヴィクトリーは不意に口を開いた。

「そういや、俺もここら辺で嫌な気を感じてるんだ……そいつか……?」

「……すぐ近くに居るのか!?」

「いや、俺らより遠くをウロウロしてる……馬鹿にでけぇ嫌な気だ……多分今の俺達二人じゃ勝ち目はねぇぞ……多分。」

「そ、そんなに厄介なのか……?」

 エルフは頷き、僕達に忠告した。

「そうよ、出会ったら逃げなさい……逃がしてくれるかどうかは怪しいけど。」

 ヴィクトリーは、目を鋭くしてから僕を見た。

「エルフの言う通りだ。急ごうぜ、ルカ。あいつが俺達を嗅ぎつけられないとも限らねぇ。」

「わ、分かった……」

 ここへ来た本来の目的は、シルフに力を借りることなのだ。その怪物も放っておけないが、今はシルフに会いに行こう。

 そんな事を考えていたら、木陰から二体のフェアリーが現れた。

「わぁ、にんげんだ〜。」

「にんげんだ〜。」

 そのフェアリーを見て、エルフは怒鳴った。

「コラッ!あなた達!またふらふらと出歩いて!怖い怪物がいるから、外に出ちゃダメだって言ってるでしょう!」

 フェアリー達はくすくす笑いながらエルフに言う。

「ねぇ、エルフおねえちゃん。まえにいっぽ、あるいてみて?」

「あるいてみて?」

「え……?」

 エルフが、前に一歩踏み出した時だった。突然地面に穴が空き、彼女はその中へ落ちていってしまった。

「きゃっ!何よこれ!」

「おとしあな〜!」

「出しなさいあなた達!もう許さないわよ!」

 どうやら穴は相当深く、エルフ一人では出れないようだ。

「フェアリー達はガミガミおねえちゃんをやっつけた!」

「ぱぱぱぱぱぱぱーん!」

 ……おいおい……こいつら、本当にタチが悪いな……

「にんげんだ〜!」

「にんげんだ〜!」

 そして、タチの悪いいたずら姉妹は僕達に目をつけた。手に持っているのは、さっきのフェアリーが持ってた花。

「どっちが白いオシッコいっぱいすえるかしょうぶだ〜!」

「しょうぶだ〜!」

 そして、二体のフェアリーは襲いかかってきた……が、ヴィクトリーに掴まれてしまった。

「おぉーーりゃあぁーーっ!!」

「あーーーれーーー!」

「うーーーわーーー!」

 そして、二体とも空の彼方へぶん投げてしまった。

「ふぅ〜……」

「おいおい……」

 ……でも、相手はフェアリー。腐っても魔物だ。多分、この程度では死にはしないだろう……

「……進むぞ、ルカ。さっきも言ったけど、怪物とやらが俺達を嗅ぎつけて来るかも知んねぇ。」

「あ、あぁ……そうだな……」

 ともかく僕達は、森の奥へと足を進めたのである。しばらく進んでいると……

「いたっ!?」

 突如、そんな声が背後からした。

「うわっ!?」

 ヴィクトリーが踏んだ花の中に妖精が隠れていたようだ。

「いったいなぁ〜もう……」

「わ、わりぃ……す、すまんかった……で、でも何で花の中に……?」

「フェアリーはね、こわくなるとお花の中に隠れるんだよ……」

 やはり、例の怪物の脅威があるのだろうか。フェアリー達も怯えながら暮らしているようだ。

「そ、そりゃすまなかった……ホントにゴメンな?」

「こんどから、きをつけてね……」

「あぁ、分かった。」

 どうやらこの森を歩く時には、足元にも注意する必要があるようだ。僕も気をつけなければ……

「じゃあ、これあげる!」

 フェアリーがヴィクトリーに手渡したのは、小さく可愛らしいどんぐりだ。

「あ、ありがとう……何だこりゃ?」

 そのどんぐりを受け取った瞬間、掌の中でほのかな光を放った。そして、暖かな光が二人を包んだ。

「……これは……?」

「……何だか、不思議な感じだな……」

「それはね、おともだちのしるし。だから、きみたちにあげる!」

 ヴィクトリーは妖精のどんぐりを握りしめ、礼を言う。

「そうか、ありがとよ!」

 妖精から貰った、友達のしるし……この小さなどんぐりは、俺達の宝物となるだろう。

「そんじゃ、俺は先に進まねぇと!」

「ばいばい!」

「ばいば〜い!」

 他の妖精達もひょこひょこと顔を出しながら、手を振る。ルカは手を振り返し、ヴィクトリーは親指を上げてニッと笑ってから、足元に気をつけながら先へと進んだのだった……

流血表現

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