もんむす・くえすと!の世界に降り立った1人のヒーローアバターの話   作:ジョーカー:ゼノ

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風の精霊・シルフ

「……かなり進んだんじゃねぇのか?」

「あぁ……」

 フェアリー達と別れた後、僕達は森の奥深くまで踏み込んでいた。

 そろそろ、シルフが居るという最奥にたどり着くハスだが……

「あれれ……?人間がここに何の用……?」

「え……?」

 僕達の前に姿を現したのは……いかにも風の精霊って感じの妖精だった。

「おめぇがシルフか……」

「そうだよ、あたしがシルフだよ。用があるのはキミかな?」

「俺じゃねぇ。俺はただの付き添いだ……」

 そう言い、ルカの方に視線をやった。

「えっと……僕は勇者なんだけど、魔王を倒すために……いや、別にアリスを倒したい訳じゃないんだけどね。あっ、アリスから君の事を聞いて……その……」

「何を言ってるのか、ぜんぜん分からないよう……」

「……俺が説明してやろうか?」

 シルフはふるふると首を振り、目を閉じた。

「いや、風に直接聞いてみるね……」

「え……?」

「なに……?」

 シルフはしばらく黙り込み、風の音に耳を傾ける。

「うんうん……なるほど、そうなんだ……」

 しばらくしてから、シルフは目を開けた。

「人間と魔物が共存する世界のために、人間に迷惑を掛けている四天王をやっつけたいんだね。」

「そんな事まで分かるのか……」

「すげぇな……」

「うん、分かった。あたしの力、悪い事には使わないみたいだね。でも……精霊の力は、弱い人間には貸せないの。……っていうより、弱い人間には力が使いこなせないの。だから、キミがあたしの力をつかいこなせるかどうか、確かめてあげるね。」

「確かめるって……?」

「決まってるでしょ、戦うの。一対一で、あたしに一発でも攻撃を当てることができたら、力を貸してあげるね。」

 ヴィクトリーは下がり、腕を組んで木に寄りかかった。どうやら、精霊の試練を受けるつもりは微塵も無いようだ。

 そして、この場はシルフと僕の一騎打ちとなったのだ。

「分かった……一発でいいんだな?」

「えへへっ……たぶん、キミには無理だけどね。じゃあ、いっくよ〜!」

 涼やかな風が、シルフの周囲を取り巻いた。

「雷鳴突き!」

 ルカは率先をかけず、雷鳴突きを放った。だが、剣先は風の防護壁によって受け止められてしまった。

「な……!?」

「それ〜!」

 シルフは剣を弾き飛ばし、ルカに真空波を飛ばした。

「うわっ!?」

 ルカはガードし、飛び退いた。剣で受けたにも関わらず、エネルギーでビリビリする。

「えへへ〜!効かないよ〜だ!」

「な、なに……!?」

 風の防壁に守られてて、剣が通らない。しかも、カウンターのおまけ付きときた。

 さぁ、どうしたものか……

「どう?風の力って凄いでしょ……?諦めて、あたしのオモチャになっちゃえ!」

「それは嫌だ!」

 ルカは諦めずにシルフに突進し、剣技をズバズバ放つ……が、全部風に防がれてしまい、攻撃が通らなかった。

「く、くそ……!」

「ほらほらぁっ!」

 シルフはまた真空波を放つ。ルカはそれを避け、また距離をとった。

「えへへっ、無駄な事が分かった?この技、けっこう疲れるんだから……早く諦めちゃえ!」

「何でおめぇは技の弱点を自分からバラすんだ……」

 ヴィクトリーが背後でボソッと呟いた。

 なるほど、けっこう疲れるのか……

 ルカは防御体制をとり、その場から動くのをやめた。

「えへへっ、まだ続けるの……?キミの攻撃、あたしには通じないんだから!」

 ルカは依然、防御行動をとっている。

「ねぇ、そろそろ諦めようよ……」

 ルカはシルフの声を聞き流し、その場から動かない。

「まだ諦めないの……?」

 それでもなお、動こうとはしなかった。

「何してるの……?ねぇねぇ、ちゃんと戦おうよぉ……」

 ルカは動かざること山の如しだ。

「ねぇ、早く戦ってよ……」

 動いてたまるか。

「ふにゃぁぁ……そろそろ、疲れてきたよぉ……」

 シルフの顔に疲労が見えてきた。あともう少しか……?

「もう、限界だよぉ……」

 あと少し……あと少しであの風の防壁が解ける……!

「もうだめだよぉ……」

 シルフは、風の防壁を解除した。

 ここだ!

「てやぁっ!」

 ルカは、ぐったりしたシルフを容赦なく切りつけた。

「よし、攻撃を当てたぞ!」

「………………」

 シルフの目に涙が浮かびあがり、顔が赤くなる。

「……ふぇぇぇぇん!ひどいよぉぉぉ!ズルいよぉ……!ヒキョーだよぉぉ!」

 シルフを泣かせてしまった。

「わわわ……ご、ごめん!」

 そしてヴィクトリーが案の定、茶化しに僕の隣に来た。

「わー!ルカがシルフを泣かせたぞー!いーけないんだー!いけないんだー!アーリスに言っちゃーおー!」

「子供かお前は!」

 まぁそれはともかく、シルフに一発浴びせた。これで試練は完了した筈だ……

「ぐすっ……ふぇぇぇぇん……」

「ご、ごめん……」

「女の子を泣かすなんてひどいぞー!おめぇそれでも勇者かー!」

「うっさい!」

「うわぁあああ!!」

 ルカはヴィクトリーを岩盤へ殴り飛ばした。彼が激突した岩盤には、ブロリーがベジータを叩きつけたかのような巨大なクレーターが刻まれる。

 ……さて、どうしたものか。力を借りなきゃいけないというのに、泣かせてしまった……

「ぐすっ……あたしね、本当は戦いなんて苦手なの……風を戦いに使ったことなんてなかったの……」

 まぁ、それはさっきの戦闘でも分かった。風の精霊だからといって、戦闘でも風を使いこなせるとは限らないらしい。

「……キミならあたしの力をちゃんと使ってくれる?」

「あぁ、できる限り努力してみるよ。」

「それなら、これからずっと一緒だよ。あたしに攻撃を当てたら、力を貸してあげるって約束したもんね……」

 不意にシルフの体が発光し、消えてしまった。

「え……!?なんだ、これ……?」

「おぉ、どんな感じだ?」

 その途端、全身に不思議な感覚が広がっていく。自分の体が、周囲の風に混じってしまったかのような一体感。己の中に、風の息吹がはっきりと感じ取れるのだ。

「……なるほど、おめぇの中からシルフの気を感じる……」

「これが……四精霊に力を借りるという事なのか……」

 ふと、風の声に耳をすませば……周囲全体の様子が、まるで目で見ているかのようにはっきりと感知できる。虫が何匹飛んでいるか、鳥が何羽、どこで何をしているか……風の声で、全て分かるのだ。

「これが、新しい力……」

 シルフ一人の力を得ただけでも、これだけ凄いのだ。残り三精霊の力を得れば、四天王でさえ怖くない!……かも知れない。

「なぁヴィクトリー、本当にいいのか?この力、相当すごいぞ……」

「いや、俺は自分で強くなりてぇからいい。」

「そうか……」

 それに、似たような事ならヴィクトリーにもできるんだったか……

「見ていて下さい、イリアス様。この僕が、きっと平和な世界を導いてみせますから……!」

 僕は新たな力を得て、ヴィクトリーはそれを見届けた所で、この地を後にしたのだった……

 

 森の入口では、アリスが退屈そうに待っていた。

「ふむ、無事にシルフの力を得たようだな。貴様の中に新たな力が満ちているのが、はっきりと分かるぞ。」

 ルカはその言葉を聞き、顔をにやけさせながら言う。

「分かる?やっぱり分かる?うふふ、えへへへへっ……」

「……ウ、ウザっ!!」

「……キモッ!」

 アリスとヴィクトリーの声が被った。

「……ありがとう、アリス。こんな凄いことを教えてくれるなんて……」

「……ふん。勇者を名乗る者が弱々しくては、話にならんからな。」

 どこか照れたようにアリスは目を閉じた。ここでヴィクトリーが、僕に言った。

「それで、力は使いこなせんのか?」

「とりあえず、風の息吹が僕の中で根付いたのは分かるけど……正直、戦いに役に立つのかはさっぱりだよ。」

「シルフがやってたみてぇに、自在に風を巻き起こしたりは出来ねぇんか?」

 想像すると、ちょっとカッコいい。

「そうだと、決めゼリフみたいなのがいるな。「吹き荒れろ!正義の風!」みたいな……どう思う?アリス。」

「……ドアホめ。」

 アリスが、そう呟いた時だった。

 今まで穏やかだった周囲の風が、不意に激しく乱れたのだ。

「な、なんだ……モンスターか……!?」

「らしいぜ……!!」

 風の流れを乱す不穏な気配が、森の奥から近づいてくるようだ。

「魔物のようだが……妙だな。この森には、エルフやフェアリー、アルラウネ以外は生息していないはず。」

「なんだろう、これ……背筋の辺あたりが、ぞわぞわするんだけど……」

「す、すげぇ嫌な気だ……!」

 なんだか、この感じ方は普通ではない。今まで出会ってきたモンスターとは、全く異質の感じがするのだ。まだシルフの力を得たばかりで、慣れていないだけなのかも……

「すぐ近くだ、僕達の方に接近してくるぞ……!」

「分かってる……!!」

「……この禍々しさ、一体何者だ……?」

 がさがさと草を踏み荒らしながら、その魔物はこちらへ近づいてくる。そして、僕達の前へとその姿を現した。

「な、なんだこいつ……」

「き、気持ち悪ぃ……」

 目の前に現れたのは、実に異様な魔物だった。まるで、女性の全身を植物に寄生されたかのようなモンスター。 その人間部分は、全く感情の覗えない虚ろな目をこちらへ向けている。

「やっぱり嗅ぎつけてきやがったか……!!」

「こいつが……エルフの言っていた怪物か……!?」

 この森に異様な怪物が出没する……二人は、エルフから聞いた話を思い出していた。

「おいアリス、この魔物はなんだ!?」

「知らん。」

 ヴィクトリーの問いに、アリスは突き放すかのように冷たく告げる。

「し、知らんって……」

「お前、魔王だろ!?何で知らないんだ!?」

 ……いや、アリスは突き放したわけでも、冷たかったわけでも無かったようだ。彼女は、これまでに見た事の無いほど真剣な表情を浮かべていた。

「……本当に、知らんのだ。こんな魔物、余には全く覚えがない。魔王である余が知らん魔物など、この世に存在する筈もないのに……」

 真剣な面持ちでアリスがそう言った時だった。モンスターの全身に取り付いている植物……ツタや花が一斉に伸び、僕とヴィクトリーとアリスに襲いかかってきたのだ。

「くっ!」

「ちぃっ!」

 僕とヴィクトリーはとっさに飛び退き、その攻撃を避ける。アリスも、尻尾の一撃で花やツタを吹き飛ばしてしまった。

「おい、ルカ!あいつ……!」

「あぁ……!」

「どういう事だ……?余に対して攻撃してくるなど……」

 なんと、そのモンスターはアリスに対しても攻撃をしてきたのだ。

 アリスは目を鋭くし、モンスターを睨んだ。

「魔王に挑む事の意味、知らんわけではあるまい!」

 アリスの気がボウッと膨張し、気の嵐が吹きすさんだ。

「ふ、ふせろルカーっ!!」

「なっ……!?」

 アリスがクンッと指を上げると、そのモンスターを中心に炎の嵐を巻き起こした。灼熱の渦がモンスターを焦がし、辺りをも獄炎で包み込んだ。

「な、なんて技だ……!」

「や……やったのか……!?」

「ふん……」

 アリスは煙幕を見て一笑する。だが、ヴィクトリーが顔色を変えた。

「奴の気がする……!!まだ生きてやがるぞ!!」

「え……!?」

「なんだと……!?」

 見ると、モンスターはまだ余力を残しながら立っていた。大ダメージを負ったことには変わりないだろうけど、それでも尚、虚ろな目を僕達に向けていたのだ。

「余の一撃を食らってまだ生きているだと……!?」

 再び攻撃しようとしたアリスを二人は制止した。

 まずルカが口を開いた。

「アリス、お前は魔王だろ!魔物と戦うのは、勇者一行である僕達の役目だ!」

 全ての魔物は自分の部下……そう、アリスは言っていたはずだ。その部下に攻撃を仕掛けるなんて、間違っている!

「ニセ勇者のくせに、こんな時に馬鹿を言うな!あいつは、明らかに普通ではない……」

「引っ込めよ、アリス……魔物退治は俺達の役目の筈だぜ……」

 今度はヴィクトリーが口を挟んできた。

「しかし……」

「俺達はエルフと約束したんだよ……こいつをぶっ飛ばして、森の平穏を取り戻すってな!」

「……」

 二人の制止にアリスは少し黙り、身を引いた。

「……分かった、余は退こう。気をつけろ、こいつは得体が知れんぞ……」

「あぁ、分かっている……!」

「そう来なくっちゃあ!」

 アリスが消え、僕達二人はそのモンスターと対峙した。全身を焦がしていた炎も消え、ただ無感情な瞳を僕達に向けている。

 この森の平穏を乱す怪物……僕達が、退治してみせる!

「よし!行くぞルカっ!」

「遅れをとるんじゃないぞ!ヴィクトリーっ!」

「……」

 構える戦士達を前に無表情を貫く謎のモンスター。強襲した謎に包まれしこの怪物を、戦士達は倒すことが出来るのだろうか……

流血表現

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