もんむす・くえすと!の世界に降り立った1人のヒーローアバターの話   作:ジョーカー:ゼノ

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不気味な怪物

 精霊の森の入口付近。戦士達は、異形のモンスターと対峙していた。

「……こいつ、なんて言う名前だ……?」

「さぁ……?でも……ドリアードに似てるものを感じるな……」

「でも人間が寄生されてる……じゃ、キメラドリアードって所か……」

 戦士達はモンスターを勝手に「キメラドリアード」と名付け、構えた。

「雷鳴突き!!」

 まずルカが雷鳴突きを炸裂させ、先手をとった。ぐらりと体を揺らすキメラドリアードの懐に飛び込んだのはヴィクトリーだった。

「いきなり3倍界王拳!!」

 そして3倍界王拳を使い、キメラドリアードの腹に拳を埋めた。

「……」

 ニッと笑い、ヴィクトリーはキメラドリアードの顔色を伺った……

「……」

 だが、キメラドリアードは顔色一つ変えず無表情で立っていた。

「な、なに……!?」

「効いてない……!?ヴィクトリーの3倍界王拳が……!?」

 そこで、キメラドリアードが粘液滴る百合の花をヴィクトリーに迫らせた。

「ふんっ!!」

 ヴィクトリーは百合の花を全て弾き落とし、キメラドリアードの顎を蹴り上げた。そして彼は距離をとり、そこに間髪入れずにルカが彼女に一撃食らわせた。

「行くぞヴィクトリー!」

「おう!」

 ヴィクトリーとルカは拳と剣技を乱打し、猛烈なラッシュをキメラドリアードに叩き込んだ。

「でぇええりゃあああ!!」

「やぁああああああっ!!」

 そして二人は強烈な一撃を放ち、キメラドリアードを木に叩きつけた。

「……どうだ……!?」

「……」

 キメラドリアードは何事も無かったかのように立ち上がり、再び僕達へと近づいてきた。

「お、おい……ウソだろ……」

「あんまり効いてない……?」

 猛烈なダメージを与えたにも関わらず、ほとんど手応えがない。アリスの強力な攻撃をくらってもなお、この生命力……こいつはとんでもない敵だ……!

「避けろルカっ!」

「はっ!?」

 考えていたら、粘液まみれのツタが迫っていた。僕はそのツタをとっさに回避し、事なきを得た。

「ちっ……!」

 今度はヴィクトリーに無数のツタが迫っていた。彼は瞬間移動し、キメラドリアードの背後に立った。

「……」

「ぶっ!?」

 だがキメラドリアードが、振り向きざまにツタを振る。ヴィクトリーはそれに命中し、吹っ飛んだ。

「あ、あいつ……気を感じる事が出来んのか……!?」

 そして、キメラドリアードは無数のツタや花を揺らめかせ……ヴィクトリーに猛突進させた。

「うわぁあああ……!!」

 ズドドドドドド……と続く凄まじいツタでのラッシュ。木は砕け、砂ぼこりが舞い、衝撃が響き渡る。

「やめろぉおおお!!」

 ルカは跳び上がり、新技を放った。

「死剣・乱れ星ぃいいいい!!!」

 一撃一撃に隙は無く、重く速い一撃を何発も放つ。ただラッシュしている時と比べ、威力も段違いだ。

「……」

 攻撃を受けながら、キメラドリアードは妙な芳香を放った。すると、だんだん力が抜け、気持ちがよくなってきた。

「ふぁ……」

 ルカの体から力が抜けた事により、一撃が軽くなってしまった。そして、キメラドリアードが彼を縛り上げようとした時だった……

 ヴィクトリーが瓦礫の中から跳ね上がり、手を合わせた。

「こっちだーーーっ!!!」

「……」

 キメラドリアードはヴィクトリーの方を向き、ツタを伸ばした。

「波ああぁーーーっ!!」

 ヴィクトリーは3倍界王拳のかめはめ波を放った。そのかめはめ波はツタを消し飛ばしながらキメラドリアードに迫り、直撃し、大爆発を巻き起こした。その大爆発で芳香も吹き飛び、ルカの状態もだんだんよくなってきた。

「はぁっ……!はぁっ……!」

「や……やったのか……!?」

 ルカは距離をとってから爆煙を見る……すると、キメラドリアードはまだ立っていた。

「な……!?」

「ち、ちくしょう……4倍で消し飛ばすべきだったか……!?」

 ヴィクトリーはルカの横に降りて、構え直した。

「……!!おいルカ……!やべぇぞあいつ……!気が膨れ上がって増長してやがる……!」

「え……!?」

 見ると、キメラドリアードの体が震えており、女体部分の全身は血管が浮かんでいた。

「……」

 その血管が消えた瞬間、キメラドリアードの肩がボンッと膨れ上がり、真っ赤な薔薇が出現した。その薔薇は、ねっとりと粘液が滴り、にゅるにゅると蠢いていた。その淫らな薔薇は、異様なまでに禍々しい雰囲気を漂わせていた……

「な、何だあれ……!?」

「分からねぇ……けど、次の攻撃は当たっちゃいけねぇことは確かだ!!」

 次の瞬間、キメラドリアードは真っ赤な薔薇をしゅるしゅると伸ばしてきた。

「わ……!?」

「くっ!!」

 ヴィクトリーはルカの手を掴み、瞬間移動で避けた。

「あ、ありがとう……!」

「お安い御用だ……!」

 ヴィクトリーの瞬間移動が無ければ、とっくにあの一撃でやられていただろう。

「やああぁっ!!」

 ルカがキメラドリアードに切りかかる……が、ツタの一撃で叩き伏せられてしまった。

「がっ……!?」

 そして、キメラドリアードのツタがルカに迫った。

「させるかよっ!」

 ルカとキメラドリアードの間にヴィクトリーが乱入し、ツタをガードした。そして、脇腹に拳を叩きつけた。

「ち……!!」

 キメラドリアードは、ヴィクトリーとルカをツタで弾き飛ばした。

「ぐわぁっ!」

「ぐぁっ!」

「……」

 そして跳びあがり、二人を踏みつけた。

「ぐああぁっ!!」

「が、がふっ……!」

 ヴィクトリーは歯を食いしばってからキメラドリアードの足を掴み、そのままぶん投げた。

「立てるかルカ!?」

「も、勿論……!!」

 二人は立ち上がり、キメラドリアードに突進する。

「死剣・乱れ星!!」

「超龍撃拳!!」

 二人のラッシュ技が重なり、剣と拳の超絶的なラッシュがキメラドリアードに叩きつけられた。

「どうだ……!?」

「……」

 キメラドリアードは空中で体制を整え、ダァンッと着地した。

「お、おい……!!そりゃねぇだろ……!!」

「そんな……!全く効いてないなんて……!!」

 とてつもない生命力と、強力かつ厄介な攻撃。このままでは、僕達に勝ち目はない……

「ルカ……あたしの力を使って……」

「え……!?」

 不意に、僕の中から囁いてくる声。

 これは……シルフの声だ!

「忘れたの?あたしは、ルカの中にいるんだよ。だから、あたしの力を使って……」

「わ、分かった……!シルフ、僕に力を貸してくれ!」

 ルカがそう言って力を解放すると、周囲に力強い風が吹き荒れた。

「うぉ……!?」

「こ、これは……!」

 まるで、僕を中心に小さな竜巻が吹き荒れているような感じだ。

「あの相手は、風の力ととっても相性がいいみたい。あいつの攻撃は、私の風で防いであげる!」

「……」

 粘液まみれのツタが迫る……が、ツタは風の刃で切り裂かれた。

「おぉっ!」

「す、すごい……!」

「えへへ……風の使い方、分かった?植物系の敵とは相性がいいから、あいつの技はほとんど無効化できるよ!しばらくすると風は収まるから、その時は私を呼んでね!」

 ここでヴィクトリーが、ルカの肩をぽんと叩いた。

「……一分稼げるか?」

「一分……?何でそんな……」

 ヴィクトリーはニッと笑い、キメラドリアードを見る。

「俺、実はあいつを一発で消せる技を持ってんだけどよ……それを放つのにちょっと時間かかるんだ……」

「……」

 そうか、防御面をシルフで上げても、こっちの不利には変わりないのか。それにこの風の防壁も、しばらくしたら止むそうだし……

「……分かった!信頼するよ!」

 ルカがキメラドリアードの前に躍り出るのを確認した後、ヴィクトリーはその場で両手を上げた……

「空よ、大地よ、そして精霊の森のみんな……!俺に元気を分けてくれ!!」

 そう、ヴィクトリーは元気玉を放とうとしていた。元気玉とは、草や木、人間や動物、果ては物や大気に至るまでのあらゆるエネルギーをほんの少しずつ分けてもらい、それを集合して放つ技である。多少の時間はかかるが、威力はとんでもないパワーを誇る。だがそのとんでもないパワーで、自分達が守るこのこの森……いや、ヘタをすればこの星を破壊してしまいかねない。出来れば使いたくなかったが……今はそうこう言ってられない状況だ。あんな奴がいたら、この森が破壊し尽くされちまう!

「うおおぉ……!」

 ルカは、風の防壁を駆使しながら上手く立ち回っていた。

「……」

 キメラドリアードのツタや花が風の刃で切り裂かれ、攻撃はほとんど通らなくなっている。

「そこだっ!!」

 タイミングを見ては攻撃し、また避けて、風の効果が切れればまたシルフを呼んで……を繰り返していた。

「……」

 しばらくすると、キメラドリアードの肩に赤い薔薇が現れた。

「ま、またか……!?」

 赤い薔薇はルカのところに猛スピードで接近してきた。

「やぁあああっ!!」

 しかし、ルカはそれを跳んで避け、木によじ登ってから身を投げ出した。

「天魔頭蓋斬ーーーっ!!!」

 そして、強烈な一撃がキメラドリアードの脳天に叩きつけられた。

「ルカーっ!!下がれーっ!!」

「分かったーっ!!」

 見ると、ヴィクトリーの手から青白い閃光が放たれていた。その閃光は光りながら、膨大なエネルギーを感じさせていた。

「い……行っけぇええええええ!!!」

「元気玉ぁああああああああ!!!」

 ヴィクトリーが腕を振ると、そこから凄まじいエネルギーがこもった玉が放たれた。

「……!!」

 それはキメラドリアードに直撃し、凄まじい大爆発を引き起こした。爆発の衝撃が精霊の森に響き渡り、この地を揺るがす。

「うわわわ……!!」

「ぐ……!」

「───……!!」

 キメラドリアードの体が消えていく……そして、舞い散らばった花弁すらも消滅していった……

「はぁ……はぁ……!」

「や、やった……!」

 キメラドリアードは細胞一つ残らずこの世から消えたらしい。

「終わったか……いったい何だったのだ、あいつは……」

 いつの間にか戻ってきたアリスが、口を開いた。

「どうやら、あいつは寄生型のモンスターだったようだな。あの女の部分は、宿主とされた人間。寄生植物に浸食された、生ける屍といったところか……」

「人間……!?じゃあ、僕達は人間をこの手で……!」

 ヴィクトリーが、ルカの肩を叩く。

「……あいつは、既に人間なんかじゃなかった……体のほとんどが植物に浸食されたバケモンだ……」

「うむ、その通りだ。だから、貴様が気に病む必要はない。むしろ、あの寄生植物の呪縛から解放してやったのだ。」

「そうなのかな……うん、そうかもね……」

 今は、そう思う事にしよう。僕達は、勇者としてやれることをやったのだ。

「でもよ……結局、何だったんだあいつ……」

「おそらくは、突然変異した個体だったのだろうな。」

 人に寄生し、浸食する魔の植物……あくまで、突然変異の産物だったということか。

「……そうかな……」

 ヴィクトリーは疑問を口にしていた。

「あいつ、自然に湧いて出たものの気をしていなかった……人為的に造られたんか……?」

「人為的に……!?」

 誰かが、あのモンスターを作ったとでも言うのか。

「いや、この世界の技術はそんなに進んでねぇんだ……この世界の技術の遥か先をいく俺の世界でもあんなのは生み出せねぇ……じゃあ、何だ……?」

 謎が謎を呼ぶ展開。戦士達は黙りこくってしまった。

 ……しばらくして、ヴィクトリーが表情を柔らかくした。

「それにしても、シルフの力ってすげぇんだな〜!あの力が無けりゃ、俺達今頃あの世行きだぜ!」

「そ、そうだな……」

 何で自分達の破滅の未来を笑顔で語るんだよ……

「確かに強力な力ではあるが、それを使いこなすにも力量が必要だ。半端な実力の人間なら、力そのものに振り回されていただろう。」

「じゃあ、いきなり使いこなした僕はすごいってことか!?」

「馬鹿を言うな、ドアホが……と言いたいところだが……正直、いきなりそこまで使えるとは思えなかった。自分の起こした風に吹き飛ばされたりする、貴様の愉快な姿を楽しもうと思っていたのだがな。」

「おいおい……」

「ギャグじゃあるめぇしよ……」

「だが、まだ慢心するには早いぞ。力を使いこなすほど、シルフはより強大な力で応えてくれる。最初にしては上出来だが、まだ風の一部だという事を忘れるな。」

「あぁ、分かった!」

 シルフの力をもっと使いこなすべく、修行しなければ……そう誓ったとき、木陰がざわざわとざわめいた。

「魔物の強襲……じゃねぇな。」

「あぁ、この風からは悪意も敵意も感じない……」

 茂みからおずおずと顔を出したのは、どんぐりをくれたあのフェアリーだった。いや……一体ではないようだ。

「あのこわいの、やっつけてくれたの……?」

「あのお花のおばけ、とってもこわいんだよ。みつかったら、たべられちゃうの……」

「でも、もうやっつけたんだね!」

 大勢のフェアリーが、木陰や草陰からわさわさと集まってきたのだ。みんな、あのモンスターを恐れて隠れていたのだろう。

「ありがとう、おにいちゃん!」

「こわそうなおねえちゃんも、ありがとう!」

「はでな服のおにいちゃんも、ありがとう!」

 アリスとヴィクトリーは、苦笑いした。

「こ、こわそう……」

「は、ハデな服……」

 僕達に礼を言った後、フェアリー達は輪になって相談を始める。

「ねぇねぇ、さっそく遊びに行こうよ!」

「近くにねぇ、おっきなお城があるんだって!」

「わーい!いたずらしにいこー!」

 大勢のフェアリー達が、次々と森を飛び立っていく。あの怪物のせいで今まで窮屈だった分、開放的になったのだろうか……

「近くの城って……サン・イリア城だよな……?」

「あぁ……確かにサン・イリアの人達の気に向かって飛んでる……」

「ふむ……」

 大丈夫なのか……?少し、様子を見に行ってみるか……?

 こうして、僕達はサン・イリアへと向かったのであった……

流血表現

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