もんむす・くえすと!の世界に降り立った1人のヒーローアバターの話   作:ジョーカー:ゼノ

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砂の都

 そして翌朝、僕達な今日も広大な砂漠を進む。

「サバサ城は……サバサ城はどこなんだ……」

 うわごとのように呟きながら、ふらふらと太陽の下を歩く僕。しかし行けども行けども、城の影など見えては来ない。

「やれやれ、情けないことだな……」

 アリスが、そう呟いた。

「お前、飛べるんだろ?空から見て、サバサ城を探してくれよ……」

「勇者が魔王を頼るのか?」

「うぐ……!」

 僕は懇願の言葉を、噛み殺した。僕は勇者、魔王の力はあてにしない!……本当にヤバくなるまでは。

「しょうがねぇな……」

 ヴィクトリーがそう言って、いきなり空高く浮遊した。

「わっ!?」

「そう言えば、貴様は飛べるんだったな。舞空術とやらで……便利な奴め……」

 ヴィクトリーは出来るだけ高く飛び、砂漠を見下ろした。

「……えっと……あそこに村がある……あれは……ピラミッドか……城は砂漠の中心にあるから……あそこか!」

 ヴィクトリーは、ルカ達の下へ降りる。

「あっちだ。」

 そう言いながらヴィクトリーが指さした方向には、僅かにだが城影が見えた。

「ほ、本当だ……!」

「ふむ、蜃気楼では無さそうだな。あれがサバサ城か。」

 この状況、ヴィクトリーが居なければヤバかったんじゃないか……?流石はイリアス様が連れていた異世界の戦士だ。ちゃんと僕達の役に立ってくれたではないか!

「ありがとう!ヴィクトリー!」

 こうして僕達は、サバサ城に到着したのだった……

 

「流石に行商人が多いな……」

 流石は砂漠の商業都市、サバサの城下町。あちこちでバザーが行われているようだ。

「ぬぅ、サバサフィッシュ料理だと……?」

 アリスのその言葉を聞いてヴィクトリーもアリスの方を向いた。

「新鮮なサバサフィッシュに、あつあつの野菜を詰め込み、特製スパイスでピリリと味付け……」

「何だそれ!?すっげぇうまそうじゃねぇか!」

「……食べたいのか?二人とも。」

 二人は、小さな子供のようにこくこくと頷く。

「……でも、高いな。今の所持金じゃ、ちょっと無理みたい。」

 ここで、店員が話しかけてきた。

「そこの冒険者の方、洗礼を受けた勇者様なら特別料金になりますよ?」

「あ〜!悪ぃ!俺達勇者じゃねぇんだ!」

 洗礼を受けてない以上、勇者としての待遇は受けられないはずだ。

「くっ、なんということだ……この半人前め!今ほど、貴様らが勇者ではないことを口惜しく思った時はない……!」

「ご、ごめん……」

「わりぃ……」

 何で謝るのかは分からないが、とりあえず謝ってしまう僕達だった。

 と……そこに、一人の兵士が通りかかる。

「むっ……?」

 兵士は僕達の横で立ち止まり、何やらじろじろと舐め回すように眺めてきた。

「……?」

「何だおっさん。」

 ヴィクトリーが、遠慮なくそう言う。

 おいお前、威風堂々すぎるだろ。確かに何も悪いことはしてないので、おどおどする必要は無いが……

「むぅっ!?何だ、その気味悪い剣は……!!」

 ルカの荷物に突っ込んである剣を見て、兵士は驚きの声を漏らした。

「むむむ……」

 今度は、ヴィクトリーの体をまさぐっている。

「武器と言える武器は持ってねぇぞ。武闘家だからな。」

「ほう、何処から来たんだ?」

「イリアスヴィルから……」

「なんと……!そんな遠い所から丸腰で……!」

 兵士は離れ、あらためて僕達の顔を見回し、そしてこくりと頷いた。

「すまないが君たち、サバサ城まで来てくれないかね?」

「えっ……!?」

「お、俺達、まだここに来たばっかで連行されるような事は……!」

「いや、そういう事では無いのだ。とにかく、城まで来てくれないだろうか?手間は取らせない。話を聞いてくれるだけでもいいのだ。」

「え……!?どうしよう、二人とも……!」

「いちいち余を頼るな。自分で決めろ。」

 ……まぁ、アリスはそう言うと思っていた。

「行ってみようぜルカ、何だか面白そうだ!」

「そ、そうか……?」

 ヴィクトリーの言う「面白そうな事」はだいたい「ただ事ではない事件」なのだ。

「じゃあ、話を伺いましょう……」

 真の勇者なら、そんな事を放っておくわけにはいかない!

 そういうわけで僕達は、サバサ城に招き入れられたのだった。

 

 せいぜい、兵士の控え室に招かれるのだと思っていたが……あれよあれよという間に、なんと王の間まで導かれてしまった。

 サバサの王様は、腕の立ちそうな冒険者に頼みがあるのだという。そして、そこには先客の戦士の姿があった。鍛え抜かれた体躯、並々ならぬ眼光……その一挙一動からは、歴戦の戦士である事が伺える。

「おめぇがこのサバサの代表みてぇだな……」

 ヴィクトリーが、その戦士に声をかけた。

「いかにも。私がサバサ王だ。」

「な……!?」

「うえぇ!?」

「私がサバサ国王、サバサ9世である。」

 ……王様?この豪傑が?

「お、俺はてっきりこのサバサで一番つえぇ奴かとおもったんだけど……お、王様かよ……し、失礼しました!」

「いや、構わん。私は王である前に、まず一人の戦士であるつもりだ。」

 サバサ王は、その鋭い目でじっと僕達の顔を睨む。なんだか、心の奥底まで見透かされているような気分だ。

「ふむ、いい目をしているな。少々若すぎる事もないが、実力は確かと見た。」

「は、はぁ……」

 いかにも豪壮そうな王を前に、僕達は恐縮するのみ。早速王は、本題を切り出した。

「旅の者よ、くれぐれも内密に願いたい。事は重大であり、民に不必要な動揺をもたらす恐れがあるのだ。」

「わ、分かりました……」

「あぁ、分かった!」

 僕は唾を飲み込んだが、ヴィクトリーはリラックスしていた。何はともあれ、王様自らが頼み事など、ただ事ではない。

「実は我が娘……つまりはサバサ王女が、魔物にさらわれてしまったのだ。」

「な……!?」

「お姫様が……!?」

 とうとう来たか、さらわれた姫……!!これはもう、勇者として黙っていられない!

「……ニセ勇者だがな。」

「そうだよ。」

「詳しい話を伺いましょう、サバサ王。」

 アリスとヴィクトリーの突っ込みなんて、もはや耳に届かない。早速話を聞いて、お姫様救出だ!

「あれは、三日前の深夜の事だった。突然に、娘の部屋から窓の割れる音が響いたのだ。慌てて衛兵と共に駆けつけると……部屋はもぬけの殻で、娘の姿はない。そして……一枚の手紙が、部屋に落ちていたのだ。」

「手紙……?」

「どんな内容だ?」

「……なんともおぞましい、血の凍るような筆跡で、「ピラミッド」とのみ書かれていたのだ……」

「ピラミッド……!」

 そういや、空を見渡した時にそんなのあったな。例によって、中はダンジョンにでもなってんのか。どうやら、姫様はそこに捕らえられてるらしい……

「姫が誘拐されるなど、国の一大事。民の動揺を避ける為にも、今は事を公にできん。そういうわけで、姫を救い出せる強者を極秘裏に探し求めているのだ。」

「なるほど……」

「俺達以外の冒険者には頼まなかったんか?」

「いや……何人かと面談したが……勇者を名乗る連中は、格好ばかりで腕が全く伴わん。お主達はまだ若いが、何か輝きのようなものを感じるのだ。旅の少年達よ、どうか王女を救い出してはくれんだろうか……?」

「分かりました!行きましょう!」

「俺も行くぜ!」

 真の勇者と、さらわれた姫はもはやセット。これを断るなんてとんでもない!

「おぉ、行ってくれるか!もし王女を救ってくれた暁には、お主達のどちらかを夫として迎えようぞ!」

「えぇっ!?」

「そんなもの、別にどうでもいい。ところで余は、サバサフィッシュ料理が腹いっぱい食べたいのだが。」

「あ、俺もそっちの方がいいぞ。」

 アリスのその提案に、ヴィクトリーも便乗する。

「……なんと、そんな報酬でいいのか?」

「おいおい、二人とも……」

「文句があるのか?」

「それともルカ〜、おめぇここの王女様とケッコンしてエッチな事してぇのか?」

「いやいや、そんなんじゃないよ!」

 サバサ王は、そんな僕達を見渡した。

「ともかく……任せたぞ、勇気ある若者達よ。この国の王として、そして父親としてお頼み申し上げる!」

 こうしてサバサ王は、一介の旅人にすぎない僕達に深々と頭を下げたのである。

 

「……とはいえ、サバサ王とやら、なかなかの人物と見た。王という肩書きに見劣りする男ではなさそうだな。」

「何様だお前は。」

「何様だおめぇは。」

 僕とヴィクトリーの突っ込みがハモってしまった。

 ……そう言えば、魔王様だったか。

 そこに、兵士が声をかけてきた。

「……勇者一行様、このサバサで最も高級な宿をとってあります。お休みの際は、そちらで……」

「あ、はい。」

 サバサ王内密の頼みを引き受けたので、待遇は非常に良いようだ。

「今日はこのままそこで一泊か?」

「ううん、情報を集めないと。ピラミッドに関する情報も欲しいし、本来の目的もあるし……」

「……ノームの事か。」

 今の所、ノームの詳しい場所は分かっていない。砂漠にいる、という曖昧な情報しか無いのである。

 その会話を聞いた兵士が僕達の方を向いた。

「情報と言えば……この城の牢に、情報屋とやらが捕まっているそうです。せっかくですので、会っていかれますか?」

「はい、お願いします。」

「あぁ、頼んだ!」

 情報屋とやらが、どれほどのものかは分からない。だが、会っておいて損は無いだろう。

 こうして僕達は、城の地下牢まで導かれたのだった。

 

 薄暗い牢屋の一番奥。そこにいたのは……アミラだった。

「あら、ダーリン。わざわざ会いに来てくれるなんて、果報は寝て待て。」

 ……おいおい、こいつかよ。

「随分久しぶりだなぁ〜!おめぇ何やってんだ?」

「サバサで何かやらかしたのか……?」

「私には、投獄される理由なんてない。強いて言えば……この姿の醜さが、牢に入れられる理由。」

「アミラ……」

「おめぇ……」

 ここで、牢番が困った顔でアミラの方に向いた。

「おい、ヘビっ子。いい加減、帰ってくれよ……この牢、あんたの家じゃないんだよ……」

 ……強引に居座ってるんじゃないか。

「本当の理由は、ここにいると三食が出てくるから。」

「なんと、それは興味深い。二人とも、我々も少し入ってみないか?」

「一生入ってろよ、自分一人でな。」

「おめぇ、たまに辛辣だな……」

 まぁ、それはどうでもいいとして……

「アミラ、今回の情報は何だ?」

「今日は、とってもすごいネタがあるわ。この城のお姫様、なんと魔物にさらわれたらしいの。」

「いや、そいつはもうとっくに王様から聞いてるぜ。」

「なんと……流石ダーリン、お耳が早い。」

 ヴィクトリーが下がり、ルカがアミラに歩み寄った。

「ノームについて、何か知らないか?」

「ノームって……土の精霊ノームの事かしら?一応、少しくらい情報はあるわ。」

 アミラはコホンと息をつき、話し始めた……

「このサバサ城から少し北に、サファルという町があったらしいの。もう今は人も住んでなくて、遺跡になっている場所なんだけど……そこにいた住人達は、土の精霊ノームを信仰してたそうよ。」

「精霊信仰っちゅうやつか……」

「でも、例によって廃れちゃって。サファルの民もサバサや他の町に移住して、今はサファル遺跡を遺すのみ。……でも、その遺跡で変な目撃情報があるのよ。小さな泥人形のみたいなのが、ちょこちょこ歩いてたって……」

「泥の人形……?」

「そいつがノームってやつか?」

「そこまではわからないけど……この辺に出てくる魔物とは別物のようね。その泥人形が、かつて信仰の対象とされていたノームなのかも。」

「それ、ノームちゃんじゃないよ。たぶん、ノームちゃんの使い魔の泥人形だよ。」

 ルカの中にいたシルフが、突然出てきた。

「シルフか。」

「まぁ、おいしそう。この子、勇者様の仲間なのかしら?」

「まぁ、そんなとこだよ。それよりシルフ、使い魔ってのはどういう事だ?」

「ノームちゃんがね、泥んこ遊びして作った人形なの。ノームちゃんの魔力で動いて、言う事を聞くんだよ。」

「へぇ〜……」

「なるほど……その泥人形が目撃されたってことは、ノームもそこにいるのか?」

「うん!久しぶりにノームちゃんといっぱい遊びたいの!」

 そう言い残して、シルフは引っ込んでしまった。

「どうやら、ノームがサファル砂漠に居ることは間違いなさそうだぜ。」

「そうだな……」

 ルカはアミラの方に向き直した。

「ありがとう、アミラ。とっても役に立つ情報だったぞ。」

 ここでふと、ヴィクトリーが口を開いた。

「残りの精霊の事は知らねぇんか?」

「私にだって、知らない事ぐらい……ある。次に会うまでに、色々調べておくわ。」

「そうか、お疲れさん。」

「じゃあ、また何処かの町で……」

 そう言い残して、アミラは牢から去ってしまった。

「何だかんだ言って、役に立つ奴だなあいつ……」

「何だか悪いな……あいつには色々お世話になって……」

「しかし、よく分からん魔物だ。あれはあれで、人間達の間でたくましく生きているようだな。」

「たくましくっつーか……」

「マイペースっていうか……」

「……ともかく、余は疲れた。貴様らも砂漠越えの疲れが溜まっているのだろう。今日は宿に泊まって休むぞ……」

「うん、そうだね……」

「おっ、そうだな。」

 確かに過酷な旅路のせいで体が重い。この体で動き回っても、どうせ何も出来ないだろう。

 姫の救出やらノーム探索やらは、明日からだ。

 とっとと、用意された宿に向かうとしよう……

流血表現

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