もんむす・くえすと!の世界に降り立った1人のヒーローアバターの話 作:ジョーカー:ゼノ
「……ん?何だこりゃ……?」
ヴィクトリーが目を開けると、モノクロの世界が広がっていた。
……いやいや、道中でキャンプ張って寝てた筈なんだけど……
「……何だぁ……?うわっ!?」
壁に手をつこうとしたら、なんとすり抜けてしまった。
「わわわっ……!い、一体何なんだ……!?」
地面に足はつくのに、壁はすり抜けるとはなんとも……それに、人は沢山いるのに、気は全く感じられない。
落ち着いて見回してみると……ここは……イリアスヴィルか……?
「……む、あれは……!」
ふと、道具屋に走る子供の姿が見えた。その子供はルカにそっくり……というより、完全にルカだった。
「あっ!おい!待てよ!」
俺の声なんか聞こえるわけもなく、子供ルカは道具屋に入る。それを追いかけて道具屋の扉を開けようとした……が、すり抜けた。
「……そうか、すり抜けんのか……」
道具屋に入ってみると、子供ルカが道具屋に何か頼み込んでいるようだ。
「お願いです、薬を売ってください……!このままじゃ、母さんが……!」
「ヨソ者の子に売る薬なんてねぇよ!とっとと村から消えちまいな!」
「なっ……!!おめぇ、その言い方はねぇだろ!!」
ヴィクトリーは道具屋の胸ぐらを掴もうとしたが、案の定すり抜けてしまった。
「お願いです、どうか薬を……」
「こ、こっちに来るんじゃねぇ!このガキ!俺にまで病気が伝染るじゃねぇか!」
道具屋は、ルカを蹴っ飛ばした。
「ルカっ!!」
「う、うう……薬を……母さんが……死んじゃう……」
「今度来やがったら、ぶっ殺すぞ!!」
「おめぇっ……!!」
店主を睨んでいたら、子供ルカが消えてしまった。どうやら、道具屋から出ていったらしい。
「あっ!ま、待てって!」
ヴィクトリーも道具屋から出て、子供ルカを追いかけた。
次は……イリアス神殿か……!?
「神官様、どうか母さんを助けて下さい……!」
「よいか、君は今すぐ家に戻るのじゃ。そして、何があっても家から出てはならん。」
「で、でも、母さんが……」
「早く神殿から失せろと言っておる!神殿に顔を見せるな、ヨソ者め!」
「ぐっ……!!」
ヴィクトリーは、目の前の事を黙って見ているしか無かった。ここでようやく察しがついたのだ……これは、ルカの過去だと。
「か、母さんを……!お願いです、どうか……!」
「いいか、絶対に家から出るな!村に病気が広がる前に、母子揃って死ね!そうイリアス様も仰せなのだ!!」
「そ、そんな……母さん……」
「ぐぐぐ……!!ぐぅううっ……!!」
ヴィクトリーは、怒りに打ち震えた。握り拳からは、自身の握力で血が垂れている。
「腐ってやがる……!!どいつもこいつも……!!」
子供ルカはというと、走って自宅に帰る模様だ。それを、すぐさま追いかけた。
「……おじゃましま〜す……」
ヴィクトリーは律儀に挨拶をしながら扉をすり抜け、子供ルカを追った。
着いたのは……寝室だった。そこのベッドには、ルカの母親と思わしき女性が寝込んでいる。
「ごめんね、母さん……薬はもう売り切れたんだって……だから、神殿に行ってイリアス様にお祈りしてきたよ。」
「……ルカ、辛い思いをさせてしまいましたね。私は、もうイリアス様の元に行かなければいけません。」
「……!!」
ヴィクトリーは察した。もうこの女性の命は長くないこと……もって後一分で力尽き果てるだろうと……
「そんなの、やだよ……母さん……」
「ルカ……あなたは勇者になりなさい。村の人達を恨んではいけません。父さんを恨んではいけません。どうか、立派な勇者になりなさい……」
その言葉を最期に、ルカの母親は死んだ。子供ルカは、その顔をのぞき込む。
「母さん……!?母さーーーんっ!!」
子供ルカは泣きながら、死んだ母親にすがりついた。
「……」
ヴィクトリーは黙って目を背けていた……
ルカ……おめぇは……
……気付くと、朝だった。
珍しく、ルカとヴィクトリーが一緒に起きた。
「……久々に、母さんが死んじゃった時の夢を見ちゃったな……」
「……奇遇だな、余も同じだ。久々に、母上を亡くした時の夢を見た。」
二人が自分の母について話してる間、ヴィクトリーは暇だった。
「……」
ヴィクトリーはふと自分の手を見た。そこには血がべっとりとついていたのだ。
「うわっ!?何だそれ!?」
「……やっぱり、あの夢はルカの過去だったのか……」
「へ……?」
ヴィクトリーは自分の見た夢の全貌をルカに説明した……
「か、完全に僕の過去だ……」
「……俺に母親はいねぇが、母親の慈しみは分からなくはねぇ。苦労したんだなぁ……おめぇも……」
「あぁ……」
二人は、空を見上げた。
「僕は、母さんに立派な勇者なれって言われたんだ。でも、今の僕はニセ勇者だからなぁ……母さん、天国で悲しんでるかなぁ……」
「さぁなぁ……俺には分かんねぇ。」
「余達は死者の代弁者では無いからな……」
「そうだね……二人に聞いても、仕方なかったか。」
そんな会話を交わしながら準備を終え、旅を続ける僕達だった。『魔女狩りの村』まで、もう少しだ。
そして、僕達は『魔女狩りの村』と呼ばれる小さな村に到着していた。どこか活気のない、どんよりとした雰囲気の町。なんだか、入口に立っているだけで息が詰まりそうだ。
「ここが、魔女狩りの村か……」
ここの女領主は『魔女』として村人や旅人を捕らえ、拷問や処刑を行っているという。おそらく、普通の人間を魔女として裁いているのだ。
「ぜってぇ許せねぇ……!」
「……さて、どうするつもりなのだ?そもそも、貴様らにこんな厄介そうな問題が解決できるのか?」
「とりあえず、まずは女領主の所に行って、やめるように言うよ。」
「……お前はドアホか。やめるように言って、やめると思うのか?」
「思うわけないだろ。それぐらい分かってるよ。」
「どうせ言っても聞かねぇ奴なんだ。全力でぶっ飛ばす!」
「確信犯的行動ではないか、野蛮人め。そう言えば、貴様らは、意外に暴力的なのだったな。」
……なんとでも言うがいい。魔女狩りなんて、絶対に間違ってる……
そう思いながら、一歩を踏み出した時だった。
「あんた、旅の人かい……?この村に入っちゃいけないよ。すぐ引き返しな。」
声を潜めて忠告してきたのは、農婦のおばさんだった。
「そこの銀髪のお姉さんなんか、すぐ捕まっちまうよ。それに魔女容疑で捕まるのは、女ばかりじゃないんだ。あんた達みたいに若く元気そうな男が、真っ先に捕まってるんだよ……!」
「ありがとよ、おばさん。」
「でも、僕達は……」
そう言いかけた時だった。いかにもガラの悪そうな二人の兵士が、向こうから近づいてきたのだ。
「そこの旅人!そこから動くな、少しばかり調べさせてもらう!」
「おい、そこの農婦!旅人に何を吹き込んでいる!?貴様も魔女か!?」
「道を聞かれただけですよ、兵隊さん……」
慌てた様子で、農婦は僕達から離れていく。
「すぐ逃げるんだよ……」
小さな声でそっと忠告し、農婦は逃げ去ったのだった。
「ヨソ者が、この村に何をしに来た!?」
「そこの女、その髪の色はなんだ!?貴様、魔女の疑いがあるな……!」
二人の兵士は、まずアリスに目をつけたようだ。兵士の一人が、ナイフのようなものを取り出す。
「魔女は、傷つけても血が出ないという。よってこのナイフを軽く手の甲に刺し、魔女かどうかを判別するのだ。」
「当然の事ながら、魔女でなければ血が出てくるはず……分かったな?」
「あぁ、面白そうではないか。」
意外にも、アリスは素直に手を出した。兵士の一人がアリスの細い手を掴み、その手の甲にナイフを軽く刺す……
「痛っ……」
すると……刺された部分から、血がぽたぽたと滴り始めたのだ。
「え……!?」
「そんな、馬鹿な……!」
すると、たちまち二人は目を丸くした。
「こ、こんな馬鹿な事はない……!!このナイフは……!!」
「このナイフは……どうかしたか?ナイフそのものに仕掛けがあるような言い方だな?」
手の甲の血を舐めながらアリスは不敵に笑う。
「さて、ちゃんと血が出たぞ。これで余は魔女ではないと実証された……違うか?」
「ま、まさか……!そんな……!」
「お、おまえ……ほんもの……!!」
兵士二人は、わなわなと震え始め……そして、ナイフを放り出して逃げ去ってしまった。
「……」
放り出されたナイフを、ヴィクトリーがキャッチする。
「……おい見ろよ二人とも。これ、おもちゃナイフだぜ。」
ナイフを手に押し当てると、刃が柄の中に引っ込む仕組み。100G道具屋のおもちゃセンターにあるような、おもちゃナイフなのだ。
「こいつで無実の人間を魔女に仕立てあげたって訳か……」
ヴィクトリーはそのナイフをビュンビュン振り回してから、懐にしまった。
「ふん、少し驚かしてやっただけで逃げおって。兵士どもは、領主の権力を笠に着てやりたい放題のようだな。」
「許せないな……あんな道具まで使って、無実の人を拷問して、殺して……」
怒りの炎が、めらめらと湧いてくる。だが……その前に、いちおう情報を集めなければ……見張りの兵士達がいなくなった今、色々と話が聞けるに違いない。
最終的に領主の館に乗り込む事になるだろうが、まず下準備だ。
三人は解散し、自由行動をとった……
ある程度の情報を集め終えた戦士達は集合し、領主の館を見た。
「もう許せない……!領主の館ってのは、あそこだな……!?」
「あそこの人質、もう生きてねぇ奴が大半だと思う……だけど、俺達が行かなきゃなんねぇみてぇだな……」
閑散とした村に建つ、ひときわ豪華な館。そこが領主の住処だと言う事は、誰が見てもひと目でわかる。
「やれやれ、本当に乗り込む気か……?」
そんな僕達の背中から、アリスは話し掛けてくる。
「おめぇは来なくていい。」
「これは、人間同士の問題だからね。」
「確かに、美味そうなものは無さそうだな。……だが二人とも、油断するなよ。あの屋敷、どうも普通ではないぞ。」
「普通じゃない……?」
振り向いた時には、アリスは既に消えていた。相変わらず、肝心な所は言おうとしない……が、そんなものか。勇者が魔王の助言を受けて行動するというのは、立場的にも問題がある。
「……えっと、家主の名前は……」
「リリィだよ……僕達は絶対勝たなきゃならない……!!」
戦士達は深い怒りを込め、領主リリィの屋敷へと向かったのである。
門の前で、二人の兵士が立ちふさがっていた。
「あの……ここの領主に会いたいんだけど……」
「何だ貴様!?リリィ様はお前らなどにお会いにならん!」
「貴様ら、怪しいな……もしかして魔女か?調べさせてもらうぞ!」
「……」
「……」
魔女だのなんだの、もううんざりだ。こういう奴らが、人と魔物の絆を引き裂いた。こんな連中のせいで、いくつもの悲劇が生まれるんだ……!
「……シルフっ!」
「……かぁっ!」
僕はシルフを、ヴィクトリーは気を解放した。凄まじい突風と気の嵐により、衛兵の兜が地面に転がる。
「な、なんだ……!?これ……!」
「まさか……本物の魔女……!?」
「なんだ、本物も見た事無かったのか?」
「言っておくが、まだまだこんなもんじゃねぇぞ……」
「ま、魔女だ……!ほんものだぁ……!!」
「ひぃぃ、逃げろぉ……!」
門番二人は僕達を捕らえるどころか、たちまち逃げてしまう。
「……」
「けっ、おととい来やがれ……」
罪のない人々を魔女扱いして、本物の魔女相手だと逃げる……結局、連中は自覚していた。自分が捕らえている者達が、本当は魔女では無いと分かっていたのだ。
「……ぜってぇ許せねぇ!」
「こんな事、早く終わらせないと……!」
こうして僕達は、開け放たれた門をくぐり、屋敷に殴り込んだ……
「……何なんだ……?ここ……」
領主の館の中は……まさに魔女の館そのものだった。あれだけ魔女狩りを行っておいて、これは何の冗談なのだろうか。
「ふふっ、驚いたようね……」
「っ!!」
「お前は……!」
そこに立っていたのは、若い女性だった。
「私がこの村の領主、リリィ・メーストル。森羅万象の理を追求し、さらなる高みを目指す求道の魔導師よ。」
「おいおい、こりゃ何の冗談だ……?」
「まさか、領主が魔女だったなんてな……!」
本物の魔女が、罪のない人達を魔女の疑いで捕らえていたのだ。こんな皮肉な話があるだろうか。
「聞きたい事は山ほどあるけど、まず聞かせてもらうぜ……今まで捕らえてきた奴をどうした?」
まず最初にヴィクトリーが質問した。僕が聞きたかったことと同じ事だ。
「女は、実験材料に使わせてもらったわ。男は……種汁を搾れるだけ搾り取って、残りカスは廃棄よ。」
「お前……なんて事を……!何でこんな事をしたんだ!」
「ここは、昔から『知識』や『魔導』を排斥してきた旧弊的な村なの。でも……五年前に領主の座に就いた私は、魔導の力に魅せられていたわ。だから、魔女狩りをして効率よく実験材料を集めていたのよ。」
「実験材料……?それだけで何人もぶっ殺してきたって訳か!?」
リリィはふっと笑い、二人を見た。
「見たところ、あなた達も魔導の力を持っているみたいね。ぜひ、私に見せてくれないかしら……お仲間さん。」
「僕は、お前なんかの仲間じゃない!」
「わりぃけど、俺もだ。」
「あら、そう……じゃあ、捕まえてじっくり研究させてもらうわ。まずは……あなた達の子種を採取して、分析してみないと。」
クスクスと笑いながら、リリィは言葉を続けた。
「ふふっ、生殖実験も行いたいわねぇ……あなた達のような上質素材はそう手に入らないから、壊れないようにしないと。」
「ふざけるな!今捕らえられている人だけでも、解放させてもらうぞ!」
「そんでもっておめぇはぶっ飛ばす!」
リリィは二人をじっくり見てから、背を向けた。
「ふふっ……こっちにいらっしゃい。私の研究結果を見せてあげるわ……」
そう言い残して、扉の奥へと消えた。
「あっ、おい!待てっ!」
「逃がすかよっ!!」
僕達はリリィの後を追って、奥の扉に飛び込んだのだった……
流血表現
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もっとする
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このままでいい
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しなくていい