もんむす・くえすと!の世界に降り立った1人のヒーローアバターの話   作:ジョーカー:ゼノ

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邪悪な求道者

 魔女狩りの村の領主、リリィ・メーストルと勇者一行がぶつかり合おうとしていた。凄まじい気がぶつかり合い、広い研究室にビリビリという音が鳴る。

「……」

「……」

「……」

 しばらくの間、静寂がこの場を支配した。

「……だっ!!」

 ヴィクトリーがその静寂を破り、リリィに突進した。

「ふんっ!」

「3倍だっ!!」

 リリィの搾精触手がヴィクトリーに迫ったが、彼の急激なスピードアップに触手が追いつかず、すぐさま眼前に迫られてしまう。

「っ……!?」

「こっちだっ!!」

 ヴィクトリーはリリィの背後に回り込み、その背中を蹴り飛ばした。

「ぐっ……!?」

「雷鳴突きっ!!」

 蹴り飛ばされたリリィに、雷鳴突きが炸裂する。

「へぇ……!」

 リリィはそれをくらいながら一回転して、床に着地する。そして、大きく跳び上がった。

「逃がすかっ!」

「ぐっ!!」

「ふふん……」

 リリィは、搾精触手をさっと二人に向けた。

「ワームブラスト!!」

「なにっ!?」

「まずいっ!!」

 リリィの無数の搾精触手から、ビームが迸る。二人はその場で防御行動をとった。

 ズドドドドドドッと二人に降り注ぐビーム。それは爆発を起こしながら館を揺るがした。

「この……!」

「なにっ!?」

 ここで、ヴィクトリーが瞬間移動でリリィの背後に回り込んだ。そしてリリィをぶん殴り、床に落とした。

「ふんっ!」

「はぁっ!」

 リリィは着地したが、そこにルカが踏み込んだ。

「なにっ!?」

「魔剣・首刈りっ!!」

 ドスッとリリィの喉元に剣が鋭打する。

「ぐっ!!」

 リリィは踏ん張り、ルカを触手で地面に叩き伏せた。

「ぐぁっ!」

「予想以上にやるようね……!貴方の力の全てを見せてもらうわ!」

 そう言ってリリィは叩き伏せたルカを触手で絡めとる。

「ぐっ……!!」

「さぁ、嫐らせてもらうわ……」

「そうはいくかなっ!」

 ヴィクトリーがルカのリリィの目の前に高速移動し、連続で顔面を蹴りつけた。

「ぐぐぐ……!!」

 リリィはそれでもなおルカを離さず、ヴィクトリーの足に触手を巻き付かせた。

「うわっ!?」

「邪魔よ!」

 そして、思いっきり壁に投げつけた。ヴィクトリーは壁に足の裏をつけて、リリィを見る。

「何度も使っていい技じゃねぇんだぞ……!」

 そして、瞬間移動でリリィの眼前に迫った。

「なにっ!?」

「だりゃっ!!」

 そしてリリィの顔面に頭突きをかまし、ぶっ飛ばし、本棚に叩きつけた。その衝撃で本棚は倒れ、彼女は本に埋もれてしまった。

 ルカは解放されたらしく、剣を構え直してる。

「……」

 リリィは気を解放して本の山を吹っ飛ばし、そこから出てきた。そして、苛立ちを込めた目でヴィクトリーを見ている。

「……さっきからの、見えない移動……何なのかしら……」

「へっへへ……瞬間移動っていうんだ……」

 リリィはそれを聞いて意外そうな顔をした。

「瞬間移動……?あなたも……?」

「ふぇ……?ぶっ!?」

 次の瞬間、リリィの姿が消えると同時にヴィクトリーがぶっ飛ばされた。

「ヴィクトリーっ!!」

「奇遇ね……あなたもそんな高等魔法を使えるなんて……」

 リリィは、さっきヴィクトリーが立っていた所に居た。

「ぐっ!うわっ!?」

 ヴィクトリーは吹っ飛んでいる途中で体制を整えた……が、その背後からリリィに蹴り飛ばされた。

「ふふふ……」

「あ、あいつ……瞬間移動を使えるのか……!?」

 間違いない、リリィのあれは瞬間移動だ。

「このっ!」

「ふふふ……」

 二人は瞬間移動を繰り返し、ぶつかり合った。先に現れたのは……ヴィクトリーだった。

 彼はリリィの足を掴んで、地面に叩きつけた。

「ぐあぁっ!」

「俺の方が一枚上手だったな!」

「よしっ!いいぞ!」

 リリィは立ち上がり、服のホコリを払った。

「……」

「気をつけろ……!あいつは、こんなもんじゃねぇぞ……!」

「わ、分かってる……!」

「……」

 リリィはニヤッと笑ってから、高速移動で二人の背後に回り、二人に一撃食らわせた。

「ぐあっ!?」

「ぎゃっ!」

「ふんっ!」

 リリィは二人を触手で鞭打しながら、一気に壁際まで追い込んだ。

「このっ!!」

「っ!」

 ヴィクトリーが目を見開き、気合砲でリリィを僅かに後退させた。

「よし……!」

「来るぞ……!」

「はあぁぁぁーっ!!」

 リリィは、無数の搾精触手をヴィクトリー達に伸ばした。

「うおおぉっ!!」

「てやああああっ!!」

 二人はそれに対応しながら、リリィに接近する。

「な……!!」

「おらぁあああっ!!」

 二人の咆哮が重なり、リリィに強烈な一撃を与えた。

「ぐはぁああっ!!」

 リリィは何とか床に踏ん張りながらズサササッと後退し、正面を見定めた。

「ふんっ……!!」

 ヴィクトリーは懐からナイフを取り出し、リリィに突っ込む。

「ナイフ……!?」

 ナイフの軌道を見た所、脇腹を狙っているようだ。リリィはその脇腹に触手を回した。

「そいっ!」

 ヴィクトリーはナイフをリリィの脇腹に突き刺す……と思いきや、刃は柄の中に引っ込んだ。

「……なっ!?」

「フェイクだバカ!!」

 そう、ヴィクトリーが使ったのはこの町の見張りの兵士が使ったあのおもちゃナイフ。何かに使えそうと思っていた矢先、こんな所で使う機会が来たのだ。

 彼は驚く彼女の頬をぶん殴り、ぶっ飛ばした。

「が……!」

「死剣・乱れ星っ!!」

 ぶっ飛ぶリリィに、追い討ちの乱撃技が炸裂する。

「きゃああああっ!!」

 リリィは壁に叩きつけられ、その壁も崩壊し、彼女の体は瓦礫に埋もれた。

「いえーい!」

「……」

 ルカは無言で、ヴィクトリーとハイタッチを交わす。どうやら、気を抜く気はないようだ。

 リリィはまだ倒れちゃいない。二人はそう確信していたが、心持ちは異なっていたのだ。

「がぁっ!!」

 リリィが瓦礫を吹っ飛ばし、立ち上がる。二人は冷静に吹っ飛んできた瓦礫を弾き飛ばす。

「フルパワーよ……!!まとめて消えなさい!!」

 リリィの搾精触手が、一斉にこちらへ向く。

「まずいっ!!」

「何だっ!?」

「ギガンティックワームブラスターーーッ!!!」

 リリィはその無数の触手から、一本の極太レーザーを出したのだ。

 

「そんなモン、弾き返してやるッ!!3倍界王拳かめはめ波ーーーっ!!!」

 迫り来る極太レーザーを、ヴィクトリーは3倍界王拳のかめはめ波で受け止めた。

「おぉっ!」

「な、なに……!?」

「うぉおおおお……!!」

 だが、ヴィクトリーが僅かに押されている。ずりずりと後退しているのだ。

「うぐぐぐぐ……!!」

「はぁあああ……!!」

「ちっ、4倍だぁあああああ!!」

「!?」

 ヴィクトリーが、界王拳を4倍に引き上げた。凄まじいエネルギーが吹き出し、リリィの極太レーザーを押し返した。

「そ、そんな……!!押し返され……!!きゃああああぁーーーっ!!!」

 ヴィクトリーの限界を超えた奥義が炸裂し、リリィはそれに直撃する。そして、凄まじい大爆発を起こした。

「ぐっ……!!」

「や、やったか……!?」

 ……いやっ!まだだっ!まだリリィは倒れちゃいない!

「ハァーッ……ハァーッ……!!」

 リリィはボロボロになりながら、立っていた。

「ま、まさか……この私が押されているの……!?この私の研究成果が……そんな……!!」

 リリィはわなわなと震え、二人を睨みつける。

「お、おめぇ、まぁ〜だやるつもりかよ……!」

「往生際の悪い奴……!!」

「黙れっ!!」

 リリィは、二人に正面から突っ込んだ。

「この私が負ける訳が無いっ!!この私がっ!あなた達なんかにっ!!」

 触手の一撃が、ヴィクトリーとルカの頬に直撃した。

「……」

 二人はその一撃を受けながら、ギロッと彼女を睨みつけた。

「な……!?」

「……」

 ヴィクトリーが、リリィの胸を二本指で刺す。そして、超龍閃撃を放った。

「がああぁっ!!!?」

「ふんっ!!」

 悶絶するリリィのこめかみに蹴りを入れてぶっ飛ばす。そこにルカが凄まじい力をもって剣を振り上げ──

「天魔頭蓋斬っ!!」

 まさに、会心の一撃。見事にそれは、彼女の脳天に炸裂した。

「きゃあああああっ!!」

 そして、その一撃でダウンした。

「ま、まさかこの私がここまで追い詰められるなんて……!!」

 そう言いながら、起き上がろうとする。震える腕で、四つん這いから立ち上がろうとするが、立ち上がれないようだ。

「……もう分かっただろ。これ以上やっても時間の無駄だ。」

「大人しく縄につくんだ。お前は、この村にひどい事をしたんだぞ!」

 リリィは、二人をキッと睨みつける。

「ひどい事……?私が、この村に……?逆よ!私が、この村にひどい事をされたのよ!」

 リリィは声を昂らせた。その声が、消え入りそうな程小さくなっていく。

「……私の母は、サバサ生まれの踊り子だったの。それを、この村の領主……父に囲われて、私が生まれたのよ。当然、私は邪魔な子供。ヨソ者の娘、淫売の娘……村人から、ずっとそう蔑まれたわ。」

「そうなのか……」

「ほう……」

 ルカとヴィクトリーも構えを解き、リリィの話を聞く体制になった。彼女は説明を続けた。

「その挙句に、母は若くして病気で死んでしまった。私を育てるために身を削って働き、そしてあっけなく死んだのよ。村八分にされ、嫌がらせを受け続けた心労だって大きかったわ。でも……この村の教会は、葬式を出す事さえ許可しなかったの。」

 リリィは唇を噛み締め、視線を落とす。

「それから私は、父の元へ引き取られたのだけど……そこから先も、地獄の日々だったわ。あんた達も分かるでしょう?囲い女の娘が、父の家でどんな目に合わされるか……!!」

「……あぁ、分かるよ。」

「……まぁ、想像はつく。」

「……私は、ずっと村の連中を見返したかったのよ!だから、村の禁書にも手を出し、知識と魔導を身につけたの!その力で、父も兄も弟も搾り殺してやったわ!領主の座を、私が乗っ取ってやったのよ!淫売と蔑まれた、この私が!!」

「……」

「……」

 ルカは表情を変えずにリリィを見ていた。

 それに対して、ヴィクトリーは目を伏せていた。目の前の可哀想な悲劇のヒロインに同情を抱いていたのだ。

「私は、村の連中が許せなかったのよ……蔑まれ、嘲笑され、石を投げられ……母は、村の連中に殺されたも同然なのよ……私と母がどれだけ辛く惨めな思いをしたか、あなた達に分かる……?」

「……」

「リリィ……」

 ヴィクトリーは目線を下げているが、ルカはリリィを見据えていた。

「不幸自慢は、それで終わりか!?」

 ルカが気を解放し、リリィに一撃食らわせた。

「あぐっ……!!」

「なっ……!?ルカっ!?」

「迫害される苦しみを知ってるお前が、何故それを他人に振りまいた!お前自身が、その辛さを一番知ってたはずだろ!!」

 ルカはもう一発、リリィに攻撃した。剣技というより、怒りに任せた攻撃だ。

「そ、そんな綺麗事を……!この村の連中なんて、報いを受けて当然よ!母を殺し、私にも苦痛を与え続けたのだから!全員モルモットにしてやらないと、私の気は済まないわ!あんたに分かる!?私が味わってきた苦しみが!?」

「あぁ、分かるさ……!分からないはずがないだろう!」

「……」

 ヴィクトリーはふと、今朝の夢……ルカの過去を思い出していた。ルカも、ルカの母ちゃんも、村で迫害されていたんだ。母ちゃんか病で倒れた時にも、村の人は手を貸そうとしなかった畜生ばかりだった。ルカ達が、ヨソ者というだけで……

「ぬくぬく生きてきて、勇者なんかを気取るお前に分かるもんか!ヨソ者と蔑まれる辛さが!家族さえ迫害される苦しみが!!」

 ……母さんは、僕に言った。立派な勇者になれ、と……そう言い残して死んでいった。

「お前はいいよなぁ……!!恨むことも、報復する事も出来たんだから……!!でも、僕は違ったんだ!村の連中を恨むことさえ許されなかったんだ……!僕は、立派な勇者にならなきゃいけなかったんだから……!母さんが、そう願ったんだから……!」

 ルカは、リリィに怒りの一撃を食らわせた。

「お前なんかに分かるもんか!勇者になるしかなかった僕の気持ちがぁッ!!」

「やめろルカっ!!」

 突然、ヴィクトリーが両手を広げてリリィの前に立った。

「どけぇっ!!ヴィクトリーっ!!そこをどくんだっ!!」

「どかねぇっ!!目を覚ませルカぁあっ!!」

 ヴィクトリーの一喝で、僕の頭の熱が徐々に引いていく。

「……っ!?」

 ヴィクトリーはルカが止まったのを確認した後、リリィを抱きしめた。

「……な、何のつもり……?」

「……そうだよな……独りの辛さって……半端じゃねぇよな……」

「……!」

 リリィはその言葉で脱力してしまった。気が沈み、腕の変異が解け、元の腕に戻る。

「俺はさ……両親の顔も見た事無くてさ、ず〜っと独りぼっちだったんだ……神龍からサイヤ人としての力を授かってから、本能のまま修行して……今に至るんだ。」

「……なにそれ……私とは関係が……」

「あるんだよ。」

 ヴィクトリーは彼女の言葉を遮り、続ける。

「おめぇの側には……誰か、支えとなる奴が必要だったんだ……おめぇは、独りで生きていくには弱すぎたんだよ……だから、自分の苦しみを他人に振りまいちまったんだよな……自分の気持ちが分かって欲しくて……」

「……」

「おめぇは結局のところ、誰かに認めて欲しかったんだろ……?強くなって、村の皆を見返したかったから修行したんだろ……?分かるよ……俺なら分かる……だって、俺がそうだったから……」

 次の瞬間、リリィの腹に鈍痛が響いた。

「がっ……!?」

「だから……もう、寝ていてくれ……これ以上は、俺が耐えられねぇ……」

 ヴィクトリーの超龍閃撃が、リリィの腹に炸裂していた。彼女はそのまま、気絶してしまった。

 これで、リリィはもう何も出来ない。後は、村人達に引き渡すのみだ。今の僕達に出来る事は、正当な裁きがなされる事を祈るのみだった……

流血表現

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  • しなくていい
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