もんむす・くえすと!の世界に降り立った1人のヒーローアバターの話 作:ジョーカー:ゼノ
領主の館に捕らえられていた者達は、みな解放された。リリィの魔力の消失とともに、女性達も我に返ったのだ。
「おぉ……メアリ、無事だったか……」
「エリカ……もう帰ってこないと思っていたわ……!」
村内では、再会の光景をあちこちで見る事ができる。しかし、その一方では……
「姉さん……!ルシア姉さんは、いないの……!?」
「エ、エリィ……!いないのか、エリィ……!!」
戻って来ない者を呼ぶ声が、あちこちで悲痛に響く。実験台として命を落としたり、吸い殺された犠牲者も多いのだ……
「……」
その様子を見てる戦士達に、一人の村人が声をかけた。
「勇者様には、どれだけ感謝してもし足りないぐらいだよ。歓迎の準備はできてるから、どうぞこちらに……」
「いや……いらねぇよ……」
「どうかリリィに、正当かつ厳正な裁きを。」
村人にそう言い、僕達は足早にその場を離れる。正直な所、宴に参加するような気分ではないのだ。
そして村の外れまで来た時……アリスが、僕達の後ろに立った。
「……貴様らにしては、ずいぶんとテンションが低いな。」
「……犠牲の大きさを考えるとね。」
「ぶっ殺されちまった人も、何人も居るんだ……目の前で死んだ奴もいたし……これじゃあ、喜ぶに喜べねぇや。」
「……貴様らが沈んでいるのは、それだけではあるまい。」
アリスは、ルカの方に視線をやった。
「ところで良かったのか?リリィの処遇を村人達に委ねても?」
「これ以上はヨソ者の関わる話じゃないよ。本来は、この村の人達で解決しなきゃいけない問題なんだ。」
「あぁ……せめて、自分のケツぐらい自分で拭かせるべきかな……って。」
アリスは、目を瞑って考える。
「しかし、これだけの犠牲を出した事件の主犯だ。死をもってしか償えまい。」
「死をもってさえ、償い切れないよ。いったい、どれだけの人間が犠牲になったと思ってるんだ……?」
「……」
しょぼんとする二人に、アリスはほほ笑みかけた。
「……それでも、貴様らはよくやったさ。ここの村人達は、みな貴様らのおかげで救われたのだ。なかなかの勇者ぶりではないか。ニセ勇者一行のくせに。」
「う、うっせぇ……」
ルカは、ふと空を見上げた。
「勇者か……なんだか、昔の事を思い出しちゃったな……母さんの事とか、イリアスヴィルの事とか……」
「……それは、辛い記憶か?」
「……どうだろうね。色々と辛かった事もあるけど、今はイリアスヴィルの村も好きだよ。あの村だって、母さんが死んでからずいぶんと変わったんだ。」
「そっか……ルカの母ちゃんが死んでから……か。」
「ほう……そうなのか。貴様の母を見殺しにした事を悔いて、みな心を入れ替えたのか?」
ルカは、アリスの方を見る。
「ははは……アリス、夢見すぎだよ。あれから村中に伝染病が蔓延して、村全体がひどい事になったのさ。」
「み、みーんな死んじまったんか……?その、伝染病で……」
「うん。保守的な年寄りはまとめて死ぬし、村人もガンガン減ったし……働き手も商人も不足して、移民を頼るしかなくなったんだ。そういうわけで、今のイリアスヴィル民の大半は、ここ十年以内の移住者さ。」
「ヨソ者扱いされてたおめぇも、今じゃすっかり古参の住民だしな。」
アリスは、変な目でルカを見た。
「貴様、わりとブラックだな……性根がねじれにねじれて、結果的に真っ直ぐを向いてしまった感じだぞ。」
「それでも……一歩間違えれば、僕もリリィみたいになってたかもしれないな……」
「……いや、多分そんな事ねぇと思うぞ。」
「ふむ、人にも魔物にも、二種類の者が存在するのだ。」
「二種類?」
ヴィクトリーが、アリスの方を向いた。
「苦しみを受けたがゆえに、それを他人にも与えようとする者。苦しみを受けたからこそ、決して他人にそれを与えまいとする者。リリィは前者で、貴様は後者だ。」
「へぇ〜……」
「そう、なのかな……?」
「余は死者の代弁者ではないが……貴様の母は、今の貴様を誇りに思っているはずだ。……余は、そう思う。」
「アリス……」
「……だから、勇者になるしかなかった等と悲しい事は言うな。貴様の剣は、弱い者のために振るうと自分の意思で決めたのだろう?」
「……そうだね。勇者という言葉に縛られて、剣を振るう理由まで見失っちゃってたよ。ありがとう、アリス。」
「ふ、ふん……」
「……にひひっ!」
そんなやり取りを交わしていると……村娘の一人が、こちらへと歩み寄ってきた。
「あの……ありがとうございました、勇者一行様……お陰様で、元の姿に戻ることが出来ました。」
「あっ、おめぇは……」
リリィによって、魔物に変えられていた村娘一人だ。腕の触手も消え、すっかり正気を取り戻したようだ。
「胸、大丈夫か?」
「胸……確かに、ズキズキします……あと、全身が痛いような気も……」
「あ、あはは……す、すまねぇ……」
……そういえば、超龍閃撃とかいう技をこいつに叩き込んだんだっけ。どうやら、見た目によらず凄まじい破壊力の技らしい。
村娘は、こほんと咳をしてから口を開く。
「助けていただいた者達一同、全員で感謝の言葉を述べたいのですが……みな衰弱が激しく、私が代表する事になりました。本当にありがとうございました、勇者一行様。このご恩、決して忘れはしません。」
「いや、礼には及ばねぇさ。」
「君達を助けられて良かったよ。これからも色々と大変だと思うけど、頑張ってね。」
村娘は、急に重い口調で語り出す。
「……リリィがこうなった憎悪を振りまいた理由を、私達は知っています。魔物と化したこの体に、深い憎しみが呪詛のように伝わってきたのです。我々は、ただの被害者ではすまされません。二度と同じような悲劇を生み出さないよう、私達も努力していきます。」
「そうだな……応援してるぜ!」
「じゃあ、僕達は旅を続けないと……」
「本当に、ありがとうございました。」
村娘が、僕達に手を振ろうとした時だった。なんと、その右腕が触手状になってしまった。
「わーっ!!?」
「あっ……し、失礼しました。まだ、腕の形を保つのに慣れてなくて……」
その触手は、みるみる内に直っていく。
「……な、治ってなかったんですか?もしかして、他の娘さんたちも……?」
村娘は、おずおずと頷いた。
「えぇ……この肉体は、もはや私達の魔力の一部なのです。おそらく、元に戻る事はないでしょう。」
「……って事は、サックボアも?」
「……はい。」
「そ、そんな……」
「しかし、リリィの魔力が失われた今、理性まで奪われる事はありません。普通の姿にも変えられますので、問題は無いと思います。一応、ほとぼりが冷めるまでは隠しておくつもりですが……」
「そ、そうですか……」
「な、なんか新たな問題のような気もするけどなぁ……」
特にサックボアになっちまった奴なんか、これからどう生きろっていうんだ。まぁ、本人がいいって言ってんだから、いいという事にしとくか。
「色々と大変だと思うけど、がんばれよ!」
「それじゃあっ!」
「また来てくださいね、勇者一行様。私達は、いつでもお待ちしております。」
村娘の見送りを背に受けながら、僕達は村を出ようとした。
「あーっ!!」
ヴィクトリーが変な声を上げて館の方を見る。びっくりして、僕達はヴィクトリーに注目を集めた。
「脱いじまった服回収すんの忘れてたーっ!!」
「えぇ……」
僕は思わず困惑してしまう。
……そういえば、アイアンメイデンを倒した後、上半身裸で戦ってたっけ……
「取りに戻っていいか!?あれ、同じのは何着もねぇんだよ!」
「行ってこいよ……」
「面倒な奴め……」
「サンキュー!」
ヴィクトリーは館の方へと走り出した……
「武空術ーっ!」
と思ったら、館の方へと飛び去ってしまった。
「わ……あの人……空を……!」
村娘は驚いて、目をぱちくりしてる……まぁ、確かに人間がそのまま空を飛んだら驚くよね。僕達がおかしいだけなんだ。
「この館は、現在立ち入り禁止となっております。怪しげな魔導具の類が、まだそのままになっているのですよ。」
「そ、そんなぁ……そ、そこを何とか頼むよ……」
どうやら、領主の館の中には入れないようだ。これでは、服の回収も出来ないではないか。
「ダメと言ったらダメです。」
「そこを何とかっ!頼むっ!一生のお願いだからさ!」
「むぅ……しかし、危険物が……」
「は、はぁ……」
ヴィクトリーは、館を見上げる。
「……この館、どうなるんだ?取り壊しちまうのか?」
「それはまだ分かりませんが……とりあえず、専門の魔導師たちに来てもらって、危険物を処理してもらう予定です。」
「そっか……大変だな……」
半ば諦めかけ、きょろきょろと辺りを見回した時だった。
「……あいつはっ!」
リリィの館の前に、赤髪で白衣を着た女性が立っていた。ナタリアのお化け屋敷にもいた、あの藻の匂いがする女性だ。
「おい、てめぇっ!こんな所まで何しに……!」
「……」
謎の女性は俺を見た後、そのまま歩み去ろうとした。だが俺は跳び上がって、彼女の前に立った。
「無視すんじゃねぇよ……」
「……」
女性は少し静止してから、口を開いた。
「どけ。」
「やだね。」
女性は、ヴィクトリーの答えにイラッとした表情を見せた後、その姿を消した……と思ったら、彼の腹に一撃をくらわせていた。
「がっ……!?ごふっ……!?」
俺は腹を押さえながら倒れる。なんと、ヴィクトリーは一撃で戦闘不能に追い込まれてしまったのだ。
何だ……!?リリィとは比べ物にならないぐらい強いぞ……!!
「貴様と話す事はない……今はな。」
そう言って、ポッケに手を突っ込んで歩いた……が、三歩程度歩いた後、振り返り、俺に近づいた。
「げ、ゲホッ……!うぐぐ……!!がはっ……!!」
「……今、この場で消してやろうか。」
「……!!」
俺は謎の女性の凍てつく殺気に恐怖を覚え、動けなくなってしまった。
まずい、殺され……っ!!
「……というのは冗談だ。」
女性は表情を緩め、また俺から離れる。
「これは、貴様のだろう。」
女性は山吹色の胴着と青いシャツをヴィクトリーに投げた。確かに、俺の服だ。ヴィクトリーはそれを受け取って、女性を睨んだ。
「さ、サンキュ……うぐぐ……!!」
「……ふん。」
そのまま、女性は歩き去ってしまった。
「……はぁっ……はぁっ……!!」
腹に入った一撃が痛む。奴にとっては少し触った程度なのだろうけど、俺じゃなければ死んでいた……多分、四天王よりつえぇんじゃねぇかあいつ……
「……」
まぁ、服は手に入ったんだ。さっさとあいつらの所に戻らねぇと……
「うぐ……!」
飛ぼうとしたら、腹にダメージが響いた。痛いのは嫌だし、仕方ない。歩いていくか。
「おまたせ〜」
「おかえり、ヴィクトリー。」
「ようやく帰ってきたか。回収するべきものも回収出来たようだな。」
戦士達は合流して、旅路を進む。
「さて、満を持していよいよ……」
「あぁ、ノームの所に行くんだ。」
「ふむ、ノームの力を得れば、こんな暑い地域にとどまる理由はない。」
戦士達の足取りが、確実なものになる。
「サファル遺跡って言ったっけ……ノームってのは、どんな奴なんだろうな……」
「きっと、めちゃくちゃつえぇ精霊なんだろうなぁ!俺、わくわくしてきたぜ!」
いよいよ、この砂漠の最終目的に手をつける時が来たようだ。こうして僕達は、北のサファル遺跡へと向かったのだった……
流血表現
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もっとする
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このままでいい
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しなくていい