もんむす・くえすと!の世界に降り立った1人のヒーローアバターの話 作:ジョーカー:ゼノ
サファル遺跡で、謎の泥人形を追いかける戦士達。泥人形が逃げた先には……変わった格好の少女が居た。不思議な帽子を被った、寡黙な感じの少女だ。
「……おめぇがノームか……?」
「……」
ヴィクトリーの問いに、少女はこくりと頷いた。この少女が、土の精霊ノームなのか。僕は、鎮座する彼女に話を切り出した。
「あの、君の力を貸して欲しいんだけど……」
すると……
「わーい、ノームちゃんだー!」
唐突に、僕の中にいるシルフが姿を現した。同じ精霊同士、中が良いのだろうか。
「ねぇ、ノームちゃん。この人間に取り憑いて、いっしょにあそぼうよー!」
「……」
「……そうなの。そうだね、ノームちゃんはルカと会ったばかりだもんね。」
「おい、何でコミュニケーションがとれんだ。」
「あの……どういう事なんだ……?」
さっきからノームの方は全く喋っていないが……
「力を貸してほしかったら、その前に力を示せだって。つまり、ノームちゃんと戦って勝たなきゃいけないってこと。」
「なるほどな……」
ヴィクトリーはそう言うと、腕を組んで柱の残骸に寄りかかった。
「そうなると、僕とノームの一騎打ちになるのか……」
「みてぇだな……負けんなよ。」
ヴィクトリーの言葉を背に受け、僕は気が進まないながらも剣を抜いた。悪い奴以外に剣を振るうのは嫌だが、力を示せというなら仕方ない。
「……」
ノームの周りに、何体もの泥人形が現れる。流石は土の精霊、気を解放していないのに、この魔力だ。
「あんまり加減できる相手でも無さそうだな……!」
相手が少女だからといって、油断はできない。ノームに力を示し、精霊の力を貸してもらわなければ……!
「いざ、参る!」
僕はシルフの力を解放し、ノームと対峙した。
まずは、泥人形達が彼に迫ってきた。
「はぁっ!」
その泥人形をズバズバと切伏せ、ノームに接近した。
「雷鳴突きっ!!」
ノームの体にドスッと突きが入った。
「……よし……!」
「……」
ノームは無表情を通しているが、一応ダメージはあるらしい。ファーストアタックとしてはいい切り出しだ。
「はぁっ!」
次に剣を脳天に振り下ろした。
「……」
ノームはそれをガッと掴み、受け止めた。
「な、なに……!?」
そして、剣が全く動かない。見た目は少女なのに、凄い怪力。これが、土の力なのか……!?
「……」
「うわぁっ!」
ノームは僕を剣ごと乱暴に投げ飛ばす。僕は地面に転がった後、腰をつきながら彼女の方を見た。
「ぐ……!」
「……」
ノームはそんな僕を指差しながら、何か指示を出した。すると、泥人形達が一斉に僕に飛びついてきたのだ。
「うわわっ……!」
僕はその泥人形達に飛びつかれ、拘束されてしまった。
「この……!離せ……!」
僕はその場で泥人形達を引きはがそうと奮闘した。泥人形の一人がこっちを向いて微笑んだ。
「……?」
「ルカっ!!そいつを引っぺがせ!!」
「え……!?」
僕はヴィクトリーに言われるがままに、その泥人形を引きはがし、投げつけた。すると、その泥人形が爆発を起こした。
「うわっ……!?」
「さ、サイバイマン……」
ヴィクトリーはそう呟いていた。体に飛びつき、怪力で押さえ込み、自爆する……そんな感じの戦法が、その記憶を呼び覚ましていたのだ。
「うぐぐ……!!離せぇえええ……!!」
僕は気合で、全部の泥人形を引き剥がした。
「……」
ノームは依然として、僕を無表情で見ている。
「なめるなよ……!!」
そんなノームに魔剣・首刈りを放ち、攻撃する。
「うぉおおおっ!」
そしてズバズバと連続で剣技を叩き込みながら、勝負を早める事にした。
「よし、いける……!」
そう口にした時だった。背中に泥人形が飛びついたのだ。
「……」
「し、しまっ……!!」
泥人形はニヤっと笑い、ルカの背中で自爆した。
「ぐあぁっ!!」
凄い威力の爆発をまともにくらい、大ダメージを負った。
「……すぅーっ……」
「……?」
僕は落ち着いて目を瞑り、手を合わせた。すると、背中の傷がみるみる内に癒えた。
「め、瞑想……!そうか、あいつは瞑想で回復できんのか……!」
「……」
自前で回復技を持ってるとは、なんとも羨ましい。回復技がある以上、それなりのアドバンテージはとれる筈だ。
「はぁっ!」
ルカは柱の残骸によじ登り、そこから身を投げ出した。
「天魔頭蓋斬っ!!」
ズドォッとノームに重い一撃が放たれ、周囲を揺るがした。
「そいっ!」
回転切りを放ち、追い討ちにもう一撃くわえる。
「……」
ノームはその剣を掴み、受け止めた。
「やっ!」
「っ……!」
ドムッとルカはノームの腹に蹴りを入れ、彼女手から剣を剥がす。
「うぉおおおっ!!」
「……」
ノームの拳とルカの剣技がラッシュし、ぶつかり合う。
「はぁっ!!」
打ち勝ったのはルカで、剣でノームを切りつけ、ぶっ飛ばした。
「っ……!」
ぶっ飛びながらノームはシュバババッと手を動かしてから、ルカの方に手を向けた。そして、そこからエネルギー波が発射された。
「っ……!!でぇやあぁっ!!」
ルカはそのエネルギー波を弾いた。弾いた先には、ヴィクトリーが居た。
「うわっ!?」
彼は、そのエネルギー波を受け止めた。
「どっせーい!!」
そして、上空へと投げ飛ばした。
「あっぶねぇな……!」
ヴィクトリーは再び、ルカ達の戦いに目を向けた。
「……」
ノームは一回転して着地し、ルカを指差した。すると、泥人形がわらわらと寄ってきて、彼の体に飛んできた。
「死剣・乱れ星っ!!」
ルカは踊るような斬撃を周囲に繰り出し、泥人形達を切り伏せた。その攻撃で、泥人形がすべて崩れた。
「その攻撃は、もう僕には効かないっ!」
「おぉ……!後はノーム本体だけか……!」
「……」
ノームは手を合わせ、目を瞑り、魔力を集中した。その魔力集中により、溢れ出た気で大地が揺れ始めた。
「な、なんだ……!?」
「わぁ、なんだか危ないよぉ!あたしの風で助けてあげる!」
「……っ!!」
ノームは魔力を解き放った。大地の怒りにより、流砂が津波のように押し寄せてくる。
「やべっ!!」
「うわぁああ……!!」
ルカの周囲にのみ、突風が渦巻き、砂の津波から身を守った。当のノームも、砂の津波に巻き込まれてしまった。やがて流砂は止み、砂漠が鎮静する。
「ノームの奴、思いっきり自分の攻撃に巻き込まれてっぞ……」
ヴィクトリーは、そう言いながら上空から降りてきた。どうやら、砂の津波を舞空術で避けたらしい。
「当のノームはどこに行ったんだ?」
「そ、そう言えば……あっ。」
見れば、砂の中からノームの帽子が覗いている。掘り出してみると……ノームは、完全に目を回していた。
「……」
「あ、あちゃ〜……これじゃあ、戦闘の続行は無理だな……」
ノームが戦闘不能……って事は、僕が勝ったのか!
「だ、大丈夫か……?」
とりあえず、僕はノームの顔を覗き込んだ。
「……」
ノームは、ぱっちりと目を開け、こくこくと頷いた。そしてじっと僕の顔を見て、右手をすっと差し出す。
「え……?」
「……」
僕の顔を見たまま、手をわきわきとさせるノーム。
「握手してやれよ。」
「あ、あぁ……はい、あくしゅ。」
ノームの小さな手を、きゅっと握ると……その体が光に包まれ、そして消えてしまった。
「これは……!」
「どんな感じだ?」
「……なんだか、体に力が流れ込んできた感じがする……」
この体に、確かにノームが根付いているのだ。不意に、僕の心の中で変な二人が姿を成した……
「わーい!ノームちゃんもいっしょー!」
「シルフとノームは、仲がいいのか……?」
「そうなんか?」
ヴィクトリーも、僕の背中に手をつけ、二人を覗いているようだ。
「うん!あたし達、とってもなかよしなんだよ〜!」
「……」
すると、ノームはいきなりシルフにビシッと叩いた。
「ひゃぁっ!」
「……」
「ははは……」
本当に、仲がいいのか……?
「ふむ、ノームの力を手に入れたようだな。」
二人の背後に、いつの間にかアリスが居た。
「あ、アリス。」
「うん。大変だったけど、何とかなったよ。」
アリスは、ルカの肩に手を置いた。
「土の精霊の力は、風よりもはるかに大味で使いづらい。下手をすれば、自分が巻き込まれてしまうこともあるぞ。」
「……あぁ、うん。骨身に染みて分かってるよ……」
「現に、ノームが自分の攻撃に巻き込まれてたしな。」
ちょっと力のさじ加減を間違えると、自分まで危険なのだ。使用する僕も、気をつけなければならない。
「……さて、残りはウンディーネとサラマンダーっつったっけ……」
「シルフもノームも、魔力こそ膨大だが戦闘には不慣れだった。しかし、ウンディーネとサラマンダーはそうはいかんぞ。ウンディーネは手馴れだし、サラマンダーに至っては……」
アリスは、そこで言葉を止めた。
「サラマンダーに至っては……?」
「……まぁ、黙っておくとしよう。ルカが下手に萎縮しても困るしな。」
「おいおい、気になるだろ……」
サラマンダーは、いったい何なのか。そんな所で黙られては、気になって夜も眠れないじゃないか。
「まぁ、時が来れば分かるだろうよ。」
「うむ、大したこともないしな。」
アリスは、ルカの方に向かい直した。
「ところで、ノームの力を手にしたことで変化はあるか……?」
「いや……ノームの息吹は感じるけどね。具体的な事は、まだあんまり……」
シルフの時のように、風の流れが感じ取れたりといった変化はない。と思えば、僕の心から精霊達が語りかけてきた。
「……」
「ノームちゃんは、まだルカの中に入ったばかりなの。少し落ち着けば、ノームちゃんの力も使えるようになるよ!そうだよね、ノームちゃん!」
「……」
ノームは、またシルフをビシッと叩いた。
「ひゃんっ!」
「……」
ともかく、ノームが馴染むのはまだ時間がかかりそうだ。
「とにかく、後は火と水だろ?この調子でどんどん行こうぜ!」
「あぁ、そうだな……!」
東のノア地方にはウンディーネ。北のゴルド地方にはサラマンダー。
とりあえず東に向かい、ウンディーネに会いに行くのが最も近いか。それから北上し、セントラ大陸最北のゴルド地方でサラマンダーに会おう。
「じゃあ……次はノア地方だな。このまま、東に向かうとするか!」
「おーっ!」
砂漠を抜ければ、後は平野のみ。このサフィーナ地方に来た時に比べれば、平穏な旅路の筈だ。
「ノア地方は自然も多いゆえ、食文化も華やかだろう。楽しみだな、くくくくく……」
「そいつは本当か!?」
「二人とも、おいてくよ。」
こうして僕達は、東の方角へと進路を向けたのだった。向かう先は、深い自然の根付くノアの大地。
そこで、何が僕達を待ち受けているのか……
「……ええ。奴は確実に強くなっています。」
遠くから、赤髪の女性が双眼鏡でヴィクトリーを見ていた。この女性は、魔女狩りの村の騒動が収まった後、領主の館の前に立っていた謎の女性だ。そして、誰かに語りかけていた。
「……なる日も近いかも知れませんね……その、『超サイヤ人』とやらも。」
……しかし、この赤髪の女性には『超サイヤ人』とは具体的には何なのかを知らない。そして、赤髪の女性に指示を出している者も同様だった。
「……ですが、まだその兆候は見られません……計画に支障は無いと思われます。」
女性はしばらく黙った後、また口を開いた。
「……えぇ、分かっています……勇者一行が、魔王を討ち逃した場合に、ですよね。」
女性はふふっと笑い、双眼鏡から目を離した。
「別に、私が出る幕も無さそうですが……了解しました……」
赤髪の女性は通信を切って振り返り、歩く。
「……何であんな少年一人如きに、私の仕事が増えるんだ……」
そのまま、女性は砂漠の向こうへと歩き去ってしまった。征服の野望のようなものを抱いた眼光をしながら……
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