もんむす・くえすと!の世界に降り立った1人のヒーローアバターの話   作:ジョーカー:ゼノ

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ノアの大地

 俺達は、更に東へと向かっていた。あと数日ほどでグランドノア城につくらしい。

「ひゃ〜……綺麗な川だなぁ……」

「そうだなぁ……」

 さすがは自然の美しいノア地方。心の安まる風景が広がっている。

「安らいでいる場合か、ドアホ共め。今も魔物どもが、美味そうな貴様らを虎視眈々と狙っているぞ……」

「え……?」

「……確かに、そうみてぇだな……」

 周囲を見回すと……川の中から、複数のカエル娘が現れた。

「うわっ!?キモッ!」

 全身がヌメヌメしてて、大きい目に長い舌。それを見て、思わず俺は正直な感想を口にした。

「あはは、人間だ〜!」

「精子を搾り取って、餌にして差し上げますわ……」

 ぬらぬらした肢体を見せ付けながら、二体の魔物が襲いかかってくる。

「……いや、二体だけじゃねぇ。川の中にもう何体か潜んでやがるな……」

 川の中から、もう複数体の気を感じる……これは、早くは終わりそうにねぇな……

「人間に危害を加える魔物なら、退治してやる!」

 カエル娘達を前に、二人は臨戦態勢に入った。

「界王拳3倍っ!!」

「はああああ……!!」

 ヴィクトリーはいつもの界王拳3倍、ルカはノームの力を解き放ち、気を開放した。

「はぁあああっ!!」

「だあぁーっ!!」

 二人はカエル娘の体に一撃くらわせ、ぶっ飛ばした。

「ぶっ……!?」

「ぐっ……!?」

「これで終わるか……!」

 ヴィクトリーがカエル娘の足を掴み、また別のカエル娘に、その体を叩きつけた。

「ぐえっ……!?」

「死剣・乱れ星っ!!」

 怯んだカエル娘達に、ルカが連続で斬撃を叩きこんだ。大きく振られた剣は、魔物の群れを切り裂く。

「がはぁっ!」

「きゃあっ!」

 まだ、封印されない。この地方のモンスター、なかなか厄介そうだ……!

「やったわねぇっ!」

 カエル娘のうちの一体が舌を伸ばし、ルカの体に巻き付けた。

「うわっ!?」

 ルカは一瞬怯んだものの、すぐに冷静を取り戻す。そして、巻き付いた舌を掴み、無理矢理解いた。

「なっ……!?」

「てやぁっ!!」

 そして、その舌を引っ張り回した後、大きく上方向に投げ、地面に叩きつけた。

「がっ……!」

「ふんっ!」

「させないっ!」

 ヴィクトリーは、その彼女の起き上がりの顔面に蹴りを放とうとしたが、背後から別のカエル娘に押さえ込まれてしまった。

「うわっ……!?」

 拘束された隙に、彼女はルカの方に向かってしまった。

 カエル娘の体はヌメヌメしていて、ほんのりと暖かく、気持ちがいい。そんな感覚に少しは揺らいだが……

「ふんっ!」

「んぎゃっ!」

 ヴィクトリーは後頭部で彼女の顔面を打ち、拘束から逃れた。

「どりゃっ!!」

「きゃあっ!」

 そして、背負い投げをして、地面に叩きつけた。

「まだまだぁっ!!」

 更にその腕を掴み、思いっきりぶん回し、別のカエル娘に投げ飛ばした。

「ぎゃんっ!?」

「ふぎゃっ!?」

 ルカとヴィクトリーは、カエル娘達越しに互いの目を見た。

「行くぞっ!ヴィクトリーっ!」

「任せろっ!」

 ヴィクトリーは超龍撃拳を、ルカは雷鳴突きを放つ。そして、二人の一撃がカエル娘達にクロスした。

「きゃあああ……!?」

「がっ……!?」

 あるカエル娘は小さなカエルに封印され、またあるカエル娘は気絶した……

「な、なんなのよ……あいつら……!」

「に、逃げるわよっ!」

 池の彼女達は、すたこらさっさと逃げてしまった……

「いぇーい!」

「……ふぅっ!」

 二人は、ハイタッチを交わす。

「ふむ、二人ともなかなか成長したではないか。」

 帰ってきたアリスが、そう言った。

「でも、まだまださ。こんなもんじゃ四天王には勝てねぇんだろ?」

「まぁな。」

 アリスは、ヴィクトリーにきっぱりと告げる。

「はっきりと言ってくれんじゃねぇか……ひひひ……」

 レベル1の時よりは遥かにマシになった……が、これでも四天王には及ばないという。そう、俺達はまだまだ強くなる必要がある。

「進もうぜ、ルカ。」

「あぁ、そうだな!」

 戦士達は、再び東へと歩んでいった……

 

「この分だと、今日中にグランドノア城に着くね。今夜は柔らかいベッドで眠れるかな……」

「コロシアムの『パワーもりもり弁当』とやら、楽しみだ……」

「コロシアムか……俺も参加してぇな……」

 そんな会話を交わしながら、僕達はノア地方の平野を行く。しかし何処に行っても、魔物は道を遮ってくるのだった。

「あははっ、おいしそうな人間です……!精液、じゅるじゅる吸い取っちゃいますね……」

 現れたのは、花の魔物だった。

「ルカ、こいつは?」

「アルラウネ……見た目の通り、花の魔物だよ……気をつけろ……」

「……ん。」

 あぁ、ケンタウロスとルカはもう一対一でやってんのか。じゃあ、俺はこいつとか。

 アルラウネを相手に、ヴィクトリーは構えた。

「悪ぃけど……容赦はしねぇぜ……」

「あははっ……!そんな口がいつまで叩けますかね……?」

 ヴィクトリーはいきなり両手を振りかぶり、かめはめ波を放った。

「……っ!?」

 完全に油断していたアルラウネ、そのかめはめ波をくらう。

「あぅ……」

「ふんっ!」

 アルラウネの側にヴィクトリーが瞬間移動し、肘打ちでぶっ飛ばした。

「や、やりましたね……!」

 彼女はその場でドンッと床を蹴り、ヴィクトリーに頭突きを放った。彼は、なんとその頭突きを掌で受け止める。

「ふっ!!」

 そして、思いっきり足を上げ、彼女を蹴り上げた。

「あぐっ……!?」

「おりゃあああああっ!!」

 ヴィクトリーはその背後にパッと現れ、拳を振り下ろした。背中にとてつもない一撃を食らった彼女は、地面に叩き伏せられてしまう。

「ぐぅっ……!や、やりますね……」

「だろぉ?」

 アルラウネは起き上がりながら、ヴィクトリーは地上に着地しながら互いを見る。

 しばらくすると、彼女の体から、妙な煙が湧いてきた。

「ん……?」

「ふふふ……」

 煙を噴く彼女が、不敵な笑みを見せたその時だった。

「……ぁ……か……」

 急に、体に力が入らなくなった。ヴィクトリーは、肩膝をついてアルラウネの方を見る。

「て、てめぇ……!何を……!」

「フラワーフレグランスですよ……ふふふ〜ん……」

 アルラウネは、ヴィクトリーをツタで拘束した。

「これで、もう抵抗できませんね……」

「ぁ……ぅ……それはどうかな……!?」

 ヴィクトリーは何とか力を振り絞り、限界を超えた奥義をアルラウネに見せた。

「3倍界王拳……!!」

「な……!?」

 3倍界王拳の影響で、周囲に熱風が吹きすさぶ。その熱風で、フラワーフレグランスも吹き飛んだ。

「おめぇ相手に界王拳は使いたくなかった……だけど、こうしねぇと勝てねぇみたいだな……」

「ふ、ふふふ……それで、どうするんです……?私の優位は変わりませんよ……」

「優位?今のおめぇの何処が優位だ。」

「だってあなたは今、私に拘束されているじゃないですか!」

「あぁ、これか……」

 ヴィクトリーは自分の体を見て、ツタの拘束を確認する。どうやら、相当にきつく拘束しているらしい……こいつにとっては。

「むんっ!」

 ヴィクトリーは、体に力を込める。するとツタがブチブチと千切れ、拘束が解かれてしまった。

「ふぇ……!?」

「よし……反撃開始!!」

 ヴィクトリーは地面を蹴り、アルラウネに突進して、その頬に肘打ちを放った。

「がっ……!?」

「だだだだだ……!!」

 そして彼女の体に蹴りを連打させ、しばらく蹴り続けてから地面に踏み込み、その腹に拳を一撃させた。

「がっ……!?」

 彼女は腹を押さえ、膝をつく。

「終わりだっ!」

 ヴィクトリーは思いっきり飛び上がり、両手を振りかぶった。

「ま、待って……!」

「波ああぁーーーっ!!!」

 そして、渾身のかめはめ波をアルラウネに放った。それは直撃と同時に大爆発し、彼女は気絶してしまった。

「おっし……!」

 ヴィクトリーは着地し、ルカの所に来る。

「シルフの力っていいよなぁ。」

「な、何だよ急に……」

 こいつは、いきなり何を言い出すんだ……精霊の力は必要ないって言ってたくせに……

「だってよ、状態異常防いでくれんだろ?俺なんか状態異常くらったら気合で持ち直すしかねぇんだぞ。」

「あ〜……」

「ならば、無理せずにシルフの力を貰った方がいいんじゃないか?」

 現れるなり、ごもっともな意見を言うアリス。

「でもさ、精霊の力って結局は『自分の力』じゃねぇんだろ?」

「ふむ、確かにそうだな……どんなに精霊の力を持った者が強かろうが、精霊から力を借りているにすぎない精霊の力が無ければ、ただの腕の立つ剣士だ……」

 ……アリス、何故僕の方を見る。

「俺は、自分の力で戦いてぇんだ……だから精霊の力は借りねぇ!」

「……まぁ、貴様がそう言うのならば余は強制はしない。事実、貴様は精霊の力無しでも見事に戦えているのだからな。」

「へへへ……」

 ヴィクトリーはアリスの言葉を受け、笑った。

「だが、慢心するなよ。今の貴様ではアルマエルマには指一本触れられんぞ。」

「む、むぅ……」

 ヴィクトリーは、アリスの言葉に頭を抱えた。

「そもそも、不器用な俺に精霊の力を操れるとは思えねぇ。ルカがおかしいんだよ。」

「そ、そうかな……えへへ……」

「何をぬかすか。こやつはまだまだ精霊の力を満足には扱えておらん。」

「わ、分かってるよ……」

「むぅ……」

 ふと、僕の心の中でおかしな二人が姿を成した。ヴィクトリーもそれを感じ、僕の背中に手をつく。

「あたしたちも、いっぱいがんばるよ!がんばろうね、ノームちゃん!」

「……」

 ノームはやはり、シルフをビシッと叩いた。

「ひゃん!」

「おいおい、あんまりシルフをいじめるなよ……」

「あはは……」

 ともかく、僕達はまだまだ未熟という事らしい。力不足を痛感しながらも、僕達はグランドノア城へと向かうのであった……

 

 グランドノア城もいよいよ目前の平野。整備された街道を進んでいると、おそらくグランドノアから来たであろう一人のシスターに遭遇した。

「あら、ずいぶんとお若い旅の方ですね。少しばかり、今後の旅の安全をイリアス様に祈りましょうか?」

「えぇ、ぜひ一緒に祈りを……」

「……」

「……」

 アリスが僕を遮り、ヴィクトリーは目を鋭くする。

「……モンスターだろ。おめぇ。」

「あら、お分かりになりましたか……」

 シスターはそう呟き、下半身を蛇に変えて見せた。

「やっぱりな……」

「くっ……!モンスターだったのか!」

 ルカは、慌てて剣を抜こうとした。

「……お待ち下さい。私は人間に敵対する者ではありません。」

「え……?」

 確かに、目の前の魔物に敵意は無いようだ。僕は自分のそそっかしさを恥じながら、静かに剣を納めた。

「ご、ごめんなさい……」

「何でラミアがシスターなんかやってんだ?」

 ラミアのシスター……シスターラミアは二人に微笑みかけた。

「私が、身も心もイリアス様の忠実な信徒だからですよ。」

「イリアス様は魔物を嫌ってなかったか……?」

「ええ、確かにイリアス様は魔物をお嫌いになられます。しかし私は魔物ながら、イリアス様の慈愛に満ちた教えに心惹かれました。ごく少数ですが、そういう魔物もいるのですよ。」

「そ、そうだったんですか……知りませんでした……」

 まさか魔物にも、イリアス様の信徒がいるとは思わなかった。当のイリアス様が魔物をお嫌いになる以上、色々と辛い事もあるだろう。でも、どんな苦難にも負けず頑張って欲しいものだ。

「そういうわけで、魔物の身ながら伝道活動を行っているのです。今は南に向かうところだったので、人の姿を偽らなければなりませんでした。」

「南に向かうから人の姿に化けた……?」

「……って事は、この辺だと人の姿でなくてもいいんですか?」

 シスターラミアは、こほんと咳をする。

「北方は初めてのようですね、旅の方。グランドノアはもちろん、周囲の町や村にも多数の魔物が暮らしています。多少の偏見こそあれ、人間に混じって暮らす人間は珍しくありませんよ。」

「そ、そうなんですか……ノア地方は、モンスターの排斥思想は薄いと聞いていたけど……」

 自然を愛し、そして共生するノア地方の人々。そのおおらかな心は、魔物をも受け入れているようだ。

 シスターラミアは、アリスに目をやった。

「ですので、そこの女の方も……蛇の妖魔でしょう?このノア地方では、正体を隠す必要などありませんよ。」

「ふむ、そうなのか……」

 町が近いので、アリスも人間の姿をしていたが……どうやら、ノア地方では余計な心配という事らしい。

「では私は、これにて失礼します。御三方も、イリアス様のご加護のあらん事を……」

「えぇ、そちらも。」

「がんばれよ。」

「イリアスの加護などいらんわ、ドアホめ。」

 こうして、信仰深いラミアは去っていく。僕達は、目を細めながらその背中を見送ったのだった。

「ノア地方だと、人間と魔物の共存は上手くいってるみてぇだな……」

「あぁ、何だかとっても嬉しく感じるよ。」

 僕の理想は、人間と魔物の共存。このノア地方では、それがかなり実現しているようだ。

「しかし、イリアスを信仰する魔物まで居たとはな……」

 不意に、アリスは口を開いた。

「いい気はしねぇんか?」

「……別に、何を信じるかは個人の自由だ。」

 そう言い、アリスは元の魔物の姿に戻った。

「それはともかく、姿を偽らなくても済むのは面倒がなくて良いな。」

「じゃあ、行こう!」

「おーっ!」

 元の姿に戻ったアリスと共に、僕達はグランドノア城へと道を軽やかに進んだのだった……

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