もんむす・くえすと!の世界に降り立った1人のヒーローアバターの話 作:ジョーカー:ゼノ
「ひゃ〜……」
「うわぁ……」
僕達が目にしたのは、これまで思いもしなかった光景だった。普通の人間に混じり、一見して魔物と分かる者が通りを行き交っている。三分の一は男性、三分の一は女性、三分の一は魔物……といった感じか。彼女達は、ごく当たり前のようにこの町で生活しているように見えた。
「……なんと、こうまで魔物が馴染んでいたとはな。話には聞いていたが、ここまで開放的だとは……」
かく言うアリスも魔物の姿をさらしているが、特に気にする人はいない。
「すごいね、ここまで人間と魔物が共同生活しているなんて……」
「ナタリアポートじゃ、人魚しか居なかったからなぁ……」
ナタリアポートでは人間と人魚が共存していたが、あくまで人魚のみ。ここグランドノアでは、魔物の種類すら問題ではないようだ。
人間と魔物が共存する世界が、僕の理想。このグランドノアは、まさに理想そのものであるのだ。
「……どういう気分だ、ルカ?己が理想とする社会を目の前にして嬉しいか?それとも、自分の理想が既に実現しているのを見て、拍子抜けしたか?」
「いいや、拍子抜けなんてするものか。こういう光景が、世界のどの町や村でも見られるようにしないとね。」
いつかは、そんな世界を築くと誓う僕だった。さて、宿を探す前に情報収集でもするか……
「俺一人と、ルカとアリスで解散しよう。」
「ん、そうだな。」
「確かに、解散した方が効率がいいかもな。」
僕達は解散し、情報収集にかかった……
「なぁ、コロシアムやってるって噂、本当なのか?」
ヴィクトリーが、町娘の一人に声をかけた。
「本当よ。ふふふっ……」
こんな町娘でも、コロシアムのことを知っているのか……
「明日は、楽しみにしていた試合があるの。朝からコロシアムに行って、席をキープしないとね。」
「へぇ〜、戦いに興味あんのか?」
「いいえ、戦いそのものは別に……でも……うふふふっ。」
な、何だこいつ気持ち悪いな……
「あなたもかっこいいし、コロシアムに出てみればどう?私、絶対に見に行くから。」
「……あぁ!ぜってぇ優勝してやる!」
「うふふ……頑張ってね!」
そう言って町娘は、ヴィクトリーに手を振り、去ってしまった。
「……旅の武闘家ね?コロシアムに興味があって?」
俺の背後から、貴婦人風の女性が話しかけてきた。
「あ……おっす!おめぇもコロシアムに?」
「えぇ。明日の試合は、特等席で見られますわ。ふふっ、とっても楽しみですわ……」
「やっぱし、戦いに興味あんのか?」
「ふふっ、そのようなものを見たいのではありませんわ。もっともっと、素敵なお楽しみがありますのよ。」
ヴィクトリーは、首を傾げる。
「ショーでもやんのか?」
「ショー……うふふふっ……そんな所ですね……ふふふふふっ……」
……どうやら、今のコロシアムは観客を喜ばせるだけのショーと化しているらしい。この俺が、こいつらに本物の戦いを見せなきゃ……
ヴィクトリーはそう思い、拳を固めた。
……ついでに町を歩いていると、何やら昂っている戦士を見つける。
「コ、コロシアムに出場するため……お金を……貯めないと……で、出たい……あぁぁぁ……早くコロシアムに出たぁい……!」
「お、おいおい……」
……あいつ、キマってんのか?剣に生き、戦いに飢える男……って訳でも無さそうだ……
「ねぇねぇ、お兄ちゃん。」
「ん?」
突然、スライム娘が俺に話しかけてきた。
「お兄ちゃん、私とあそぼーよー。一緒にぷるぷるしようよー。」
「ぷるぷる……?」
ヴィクトリーは、少し考える。
「……こうか?」
そして、ド〇クエのスライムみたいな顔をしながら、震えてみた。
「あはは!じょうず〜!ぷるぷる〜!」
「ぷるぷる〜」
……こんなんでいいのか。何だかよく分かんねぇが、スライム娘はこれが楽しいらしい。まぁ種族によって感覚は違うんだし、いいか。俺も面白いし。
……そうか、これが人間と魔物の共存か……悪くはねぇかもな……
とは言っても、俺の世界ではここより発達した社会なんだがな。目が三つある人、鼻が無い人、よく死ぬ人、宇宙人……俺の世界では、ここほどではないがいろんな人外が共存しているんだった。ルカが俺達の世界を見たらどうなるんだろうなぁ……きっと、驚くだろうなぁ……
そんな事を考えながら、スライム娘と二人でぷるぷるし続けていた……
ぷるぷるしてたら、時間が過ぎていた。俺は瞬間移動でルカ達の所に現れた。
「ん、ヴィクトリー。何してたんだ?」
「ぷるぷるしてた。」
「は……?」
ちゃんと情報収集したのかこいつは。分かりかけたと思ったら、よく分からない……なんだか、こいつの性格を探っていると、ゴールが遠ざかるマラソンを走っている気分だ。
「ふん……」
見ると、アリスは尻尾にリボンをしていた。
「アリス、その尻尾のリボン、似合ってるじゃねぇか。」
「そうか……?ふふふ……」
彼女は尻尾をぴこぴこと動かし、嬉しそうだ。
「ど、どうしても欲しいっていうからさ……意外と高かったけど……」
「でも、本人が幸せそうで良かったじゃねぇか。」
「……それで、情報収集はしてきたの?」
「わ、わりぃ……コロシアムに関する情報しか……」
「……まぁ、良しとしよう。」
僕達は、情報を交換した……
「なにっ?またアミラが?」
「あぁ。」
どうやら、ルカとアリスのグループはアミラに会ったらしい。
アミラからの情報はウンディーネに関するもので、ウンディーネの泉はここらでは『禁忌の泉』と呼ばれ、その中はダンジョンになっているという。しかも、そのダンジョンに帰ってこれた者はいないそうだ。
「わくわくするな……アミラはどうしたんだ?」
「サラマンダーの情報を集めにゴルド地方に行ったよ。」
「へぇ〜……」
あいつも、頑張っているようだ……俺達も、負けちゃいられねぇ……
「さて、宿を探そうか。」
「あぁ、細けぇ情報はそこで話し合うか。」
野宿が長い事続いたので、ふかふかのベッドで眠れるのがありがたい。こうして僕達は、冒険者用の宿にチェックインしたのだった……
「ここは、いい町だね……」
「あぁ、そうだなぁ……」
「正直、余も驚いたぞ。人間というものは、みな魔物を忌み嫌っているとばかり思っていたが……」
三人は宿で雑談していた……ようやく、休息の時が訪れたのだ。
「このノア地方は豊穣な自然に包まれ、そして親しんできた大地だからね。きっと人間と魔物も、古来から互いに親しんできたんだよ。」
「確かに、それもあるだろうが……北に行くにつれ、魔物が強くなっていくのも関係しているのだろうな。」
「どういう事だ?」
「人間が魔物を排斥しようにも、力関係の差がある故に不可能という事情もあるのだろう。」
「それにしては、魔物が力で人間を支配しているって雰囲気じゃないよ。人間の側も、普通に魔物と親しんでいる感じだったじゃないか。」
「人間の町で暮らそうとする魔物など、そもそも変わり者揃い。それなりに、人間の町が気に入っているのかも知れんな……」
「細けぇトラブルこそあれど、魔物との共存は成功してるみてぇだな。そう考えると、人間と魔物の共存も夢じゃねぇって事だ。」
ヴィクトリーは、窓を覗きながらそう呟いた。
「ふむ、そうなのかもな。これならば、あるいは……」
アリスも、ヴィクトリーと並んで窓を覗き見た。
「ところでアリス、全く関係ないことを聞いていいかな?」
「む……なんだ?」
「ずっと気になってたんだけど……その髪の花、何なの?」
ルカは、アリスの髪についてる花を指してそう聞いた。
「あっ、俺も気になってたぞ。髪飾りなのか?それとも本物?」
「これは、余の本体の一部。魔王たる余の肉体は、様々な生物の遺伝子を内包しているのだ。」
アリスはそう言って、髪の花を撫でた。
「しかし、この花は最近養分をやっていないから、萎れてきていてな……」
そう言って、アリスは僕達の顔をまじまじと眺め……そして、にやりと不穏な笑みを浮かべた。
「この花にも、少し養分を与えてやるとするか。もちろん、養分とは何か分かっているな……?」
「やべっ!避難すっぞ!」
ヴィクトリーは走って逃げようとしたが……
「ふんっ!」
「うわぁあああ!」
尻尾で壁に叩きつけられてしまった。その壁には、何故か大きなクレーターが刻まれる。
「も、もうダメだ……おしまいだぁ……」
ルカは膝をつき、四つん這いになった。
「こらー!無茶すんなー!」
「出来ぬぅ!」
ヴィクトリーは復活早々、ルカの横にぶっ飛ばされてしまった。
「ちっとは手加減しろぉ!」
「手加減って何だ……?」
「やめろ、ヴィクトリーっ!アリスは魔王なんだぞ……!絶対に……勝てる訳がない!」
ルカがヴィクトリーに注意喚起している間にも、アリスの尻尾が二人に巻きついてきた。
「ちょっ、ちょっ、ダーメだぁ!伝説のスーパーダーメだぁ!」
「ヴィクトリー、ここは大人しくしておこう!アリスの機嫌を損ねたら何をされるかわからない!」
「ちょっ、おめぇっ!」
確かに、もうこうなってしまえば逃れられないようだ。
「ふふふ……」
「うわぁああーーっ!!」
「あひぃいいーーっ!!」
旅の宿に二人の断末魔が響く。
ヴィクトリー、この世界を再認識する。この世界では、妖女に犯されると全人類あんな感じである。まぁこういう世界だし、仕方ないね。
……気付けば、久しぶりのあのイリアスの夢。
「久しぶりだな〜。何を言いに来たんだ?」
「だから、言葉は慎めっての……」
イリアスは、微笑みながら二人を見る。
「迷ってはいけませんよ、二人とも……あなた達には、世界の命運が掛かっているのですよ。」
「で、でも……」
「魔王を討ちなさい、二人とも。」
イリアスは、ルカの言葉を遮った。
「それこそが、真の勇者の使命なのです……」
「……」
「……」
これは、イリアス様のお言葉なのだろうか。それとも、僕の心が生み出した幻想なのだろうか。何にしろ、僕達は使命に殉ずるしか出来ないのだ。
そんな事を考えていたら、また意識が黒く染まる。そして、眠りの世界へと二人は戻っていったのだった……
そして、翌朝……
「……だりぃ。」
早起きな筈のヴィクトリーが、ベッドにだらんと寝込んでいる。どうやら、搾られたのが相当キテいるようだ。
「ねぇ、アリス……お願いがあるんだけど……」
「何だ?また搾って欲しいのか?それならヴィクトリーも強制参加だぞ。」
その言葉でヴィクトリーがガバッと起きて、ルカを睨んだ。
「てめぇ、俺をぶっ殺す気か!!」
「ち、違うよ!」
ヴィクトリーは、「何だよ……」と呟きながらまたベッドに寝込んでしまった。
「この町を出る前に、コロシアムに寄ってみたいんだけど……」
「ん、俺も気になってたぞ。」
ヴィクトリーは、また起き上がる。何だか、寝込んだり起き上がったり忙しい奴だ。
まぁ、僕もヴィクトリーも戦士のはしくれ。コロシアムには興味があるのだ。流石に出場までは望まないが、観戦ぐらいはしておきたい。
「……これまで貴様らは、他人のために働かされてきたからな。たまには、自分のための時間を過ごすのも良いだろう。」
「……?」
アリスは妙に物分かりが良く、何だか不気味だ。
「『パワーもりもり弁当』……どんなものか、楽しみだな……」
やっぱり、食い物絡みだったか……
ともかく僕達は、コロシアムに向かったのだった……
「観戦チケット、意外に高いんだな……」
「こんなモンだろ。しゃあねぇさ。」
大金を費やし、僕とヴィクトリーとアリスは指定の客席へと座った。観客席を埋め尽くしているのは、屈強で粗野そうな男達……ではなかった。
客席にいるのは、若い娘や女性ばかり。不思議な事に、男の姿はほとんど見られないのだ。
「……何だか、イメージと違うなぁ……」
「もっと燃えがってるようなものをイメージしてたんだけどな……」
「ふむ……美味い。カロリーが高めで、パワーがもりもり溢れるかのようだ!」
「おいおい、もう食べてるのか……!?」
席に腰を下ろすと同時に、アリスは弁当をがっつき始めたようだ。
「……」
隣の席に座っていた貴族の女性は、迷惑そうに眉をひそめている。
「す、すみません……」
「保護者か俺達は……」
保護者として、僕達はすかさず頭を下げざるを得なかった。そんな事をしている内に……
「始まったぜ、ルカ。」
「あぁ、そうみたいだな……」
入場口から現れたのは、巨大な斧を持ったミノタウロス娘。それに対するは、俊敏そうなケンタウロス娘だ。コロシアムに出る戦士として、両者ともかなり鍛えられているようだ。
「さぁ、どっちが勝つかな……?」
「俺はミノタウロスに10G賭けるぜ。」
「闇闘技じゃないんだから……じゃあ、僕はケンタウロスに5Gで。」
ヴィクトリーに、何だかんだ言ってノッてくれるルカ。
ワクワクする二人の眼前で、いよいよ試合が始まる。二体の魔物が肉体をぶつけあって争う真剣勝負……
しかし、一方の形勢はみるみる悪くなっていた。
「ミノタウロスの方は、ケンタウロスのスピードについていけないみたいだね。」
「うわっ!?ウッソだろ!?が、頑張れーっ!!ミノタウロスーっ!!」
身軽なケンタウロス娘が、鈍重なミノタウロス娘を速度で翻弄する一方的な展開になりつつある。縦横無尽に駆け回りつつ、ヒットアンドアウェイに徹するケンタウロス娘。その速度についていけず、鈍重なミノタウロス娘は反撃さえ出来ないようだ。
これでは、もはや勝敗は決まったようなもの……のようには、僕達の目には映らなかった。
「見ろよルカ……」
「あぁ、誘ってるね……」
「うむ、貴様らでも分かるようだな。決定的なダメージは避けつつ、あえて防戦に専念しているようだ。」
「誘ってる……?」
そんな僕達の会話が耳に入ったのか、隣の女貴族は目を瞬かせた。
「……失礼ですが、それはどういう意味でしょうか。」
「一方的にやられているように見えて、反撃のチャンスを伺っているんですよ。」
「素早い相手だから、まずは一発逆転のタイミングを見極めているんだ。」
「しかし、ケンタウロス娘の方はすっかり勝った気分だな。優勢ムードに呑まれおって、間抜けな魔物だ……」
「……そうなのでしょうか?私には、ケンタウロス娘の圧勝にしか見えませんが……」
女貴族の言葉は、次の瞬間の展開によって途切れた。ミノタウロス娘の繰り出した痛恨の一撃が、ケンタウロス娘に直撃したのだ。彼女は場外まで吹き飛ばされ、昏倒してしまった……
「……な?」
「うわぁ、大丈夫かな……あれ……」
「人間ならば即死だが、命に別状は無かろう。まして、戦士として鍛えられた魔物なら問題ない。」
命に別状はないとは言え……今ので、勝負は決したようだ。勝者のミノタウロス娘は斧をふりあげ、観客の声援に応えている。
「ほい、5G。」
「ちぇっ……」
ヴィクトリーの手に、ルカは5Gを置く。
「なんと……あなた達の言った通りになりましたね。所で、あなた達自身も、腕には覚えがあるのですか?」
「まぁ、それなりに……」
「自身はあるぜ。」
ルカは少し照れながら、ヴィクトリーは5Gを握りながらそう答えた。
「ふむ、なるほど……」
顎に手をやり、軽く頷く女貴族。
一方の試合場では、次の試合が始まっていた。騎士のようなデュラハンに対し、相手は人間の戦士。大きな斧を手にした、いかにも屈強そうな男だ。
「今度は人間対魔物だぜ。」
「みたいだな……」
しかし、勝負はあっさりと終わってしまった。戦士はあっという間に敗北し、デュラハンの足元に這わされたのだ。
次の瞬間、会場がどっと白熱し始めた。まるで、これからが本番だといった風に。
「よし、やっちゃえー!」
「犯せ!犯せ!」
「な、なんだ……!?」
「ま、まさか……!」
観客席から口々に上がる、意外な言葉。まさか、これから始まるのは……
「……これより先は、見るに堪えません。それより、少しばかりあなた達にお話があるのですが。」
女貴族は腰を上げ、そう告げた。まるで、これから行われる見世物など見たくもないといった風に。
「は、はい……」
「あぁ……」
「ん?もう行くのか?」
僕達は、女貴族に導かれるがままにコロシアムから出ていく。
「あひぃいいい……!!」
背後からは、戦士の断末魔と観客の歓喜の声が、響いていた……
流血表現
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もっとする
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このままでいい
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しなくていい