もんむす・くえすと!の世界に降り立った1人のヒーローアバターの話   作:ジョーカー:ゼノ

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コロシアムの女王、キュバ

 女王杯、決勝戦……

 決勝戦と言うことで、闘技場のボルテージも極まっていた。

「……おい、この気は……!!」

 ヴィクトリーは早速異変に気付いたらしく、身構えていた。そして、僕達の前にその気の主が立った……

「お前は……!?」

「アルマ……!!」

 そう、決勝戦の相手はアルマエルマだったのだ。

「……あらあら、ルカちゃんとヴィクトリーちゃんじゃない。こんな所で会うなんて奇遇ねぇ。」

 アルマエルマ……魔王軍四天王の一人、風使いのサキュバス。そんな奴が、いったいなぜここに……!?

「おめぇがキュバか……?」

「何でこんな所に……いったい、何を企んでいる!?」

 アルマエルマは、ニヤニヤと僕達を見ながら答えた。

「あら……別に何も企んではいないわよ。実は私、格闘ショーが大好きの!ぶつかり合う技と技、絡み合う肉体と肉体……ふふふっ、素敵じゃない。」

 キュバの正体は、仮名を使って出場していたアルマエルマだった。これは確かに、アリスが棄権を勧めるわけだ……

「じゃあ、面倒ごとなんて忘れて試合を楽しみましょう。今日は勇者とか四天王とか、野暮な事は言わないわ……」

「くっ……!」

「やるしかねぇか……!」

 以前は、尻尾のみで戦うアルマエルマにさえ大苦戦を喫した。今の僕達なら、どれだけ戦えるだろうか……

 ここで、シルフが僕の中で浮上してきた。

「ルカ、すぐに私を呼んで!あのお姉ちゃんの風、とってもすごいよ!こっちも風で対抗しないと、やられちゃうよ!」

「え……?わ、分かった……」

「あら……シルフとお話しているようね。風の力とやら、是非私に見せてもらえるかしら……?」

 アルマエルマはルカの方を見ながらクスクス笑っている……どうやら、余裕のようだ。

「舐めやがって……!!はぁっ!!」

「来いっ!シルフ!」

 二人は、現状なれる限りの最高状態になる。

 出し惜しみは不要だ。全力で行くぞ!

「あら……ヴィクトリーちゃんもなかなか凄いじゃない……3倍って所かしら……?」

「うっせぇ!行くぞ!」

「じゃあ、まずはぁ……」

 アルマエルマは早速、ルカを抱きしめるように掴みかかってきた。しかし、突風がアルマエルマの接近を遮った。

「へぇ……でも、それじゃあダメね……そんな使い方じゃ、せっかくの風が泣いているわよ。」

「何を……!」

「やぁっ!」

 二人は同時にアルマエルマに攻撃しにかかった。しかし、避けられてしまった。まるで、瞬間移動のように避けてしまったのだ。

「ほらほらっ!」

 アルマエルマはヴィクトリーをひっぱたき、ルカの風の防壁を突き破りながら腹に蹴りを放った。

「ぐっ……!」

「くそっ……!」

「言ったでしょう……?そんなのは、私にとって涼風に過ぎないわ。」

 二人は立ち上がり、アルマエルマを見据えた。

「うぉおおおっ!」

「でゃあああっ!」

 そして、次々と疾風怒涛の猛攻を繰り出した。

「ふんふんふ〜ん……」

 アルマエルマは、鼻歌を歌いながら二人の攻撃をかわし続ける。

「はっ!」

 時期を見た彼女は目を見開き、二人の腹に発勁を叩き込んだ。当然の如く、ルカの風の防壁を突き破る。

「が、がふっ……!?」

「ぐぇえ……!!」

 これでは、まるで勝負になっていない。

 風を操る技においても、格闘の技術においても、僕達とアルマエルマでは天と地ほどの差があるのだ……

「おらおらおらっ!!」

「うぉおおおっ!!」

 そんな事を分かっていながらも、ルカとヴィクトリーはアルマエルマにくらいついた。

「遅いわ……」

 彼女は二人の襟袖を掴み、互いの顔面をぶつけた。

「いでぇっ!」

「だっ!?」

 二人は、顔面を押さえながら悶絶した。

「る、ルカっ!さっきからおめぇ何処狙ってやがる!」

「お、お前こそ……!全く見当違いの方向を向いてるじゃないか!」

「あらあら……仲間割れかしら……?」

「黙れぇーっ!!」

 ヴィクトリーは3倍界王拳かめはめ波をアルマエルマに放つ。彼女は飛び上がり、それを避けた。

「危ないわねぇ〜……」

「やあぁっ!!」

 ヴィクトリーも舞空術で飛び、アルマエルマと空中で殴りあった。

「うぉおおおおっ!!」

「よっ!」

 アルマエルマはヴィクトリーの首筋に指を立てた。すると、彼の全身が静止し、界王拳も解けてしまった。

「う……動けねぇ……!!」

「ほっ!」

 そのまま、ヴィクトリーを床へとぶん投げる。そしてアルマエルマは消え、彼の背後から肘打ちをかまし、ぶっ飛ばした。

「ヴィクトリーっ!!」

「こっちよ。」

 ルカにも、回し蹴りが飛んできた。

「ぐぁああっ!!」

 やはり、アルマエルマの動きが全く捉えられない。速過ぎて、残像さえ捉えられないのだ。

「ルカちゃんには、風の声が聞こえないのかしら……?もっと戯れたい、ルカちゃんと一緒に吹き荒れたい……さっきからずっとそう風が囁いているじゃない。」

「え……?」

 シルフでは無く、風そのものの声……そんなもの、僕には全く聞こえなかった。

「風っていうのは、とっても自由で気まぐれなの。風を道具として使おうとしたって、嫌がられるだけよ。それより、風の誘いに乗ってみなさい。自分も風になって、一緒に戯れるのよ……」

「風と……戯れる……?」

 アルマエルマの疾風のような身のこなしも、風の力を用いたもの。風を道具として扱うのではなく、風と戯れる……

 アルマエルマの言葉の意味が、ほんの少しだけ見えてきた気がした。

「くそ……!!」

「まだまだぁっ!」

 二人の猛攻は、依然として命中する気配が無かった。

「ルカちゃんには、風が囁いてくるのが聞こえないのかしら……?シルフの力を通じて、さっきから語りかけてくるでしょう?もっともっと吹き荒れたい、もっともっと戯れたいって……」

「……」

「ちっ……!」

 両者は距離をとり、戦いを静止させる。

 ルカは目を瞑り、周りに集中した……ひゅうひゅうと、周囲に漂う風。その流れが、確かに語りかけてきた気がした。僕自身も風になり、そしてシルフの力で自分を操る……そのイメージが、風の声を通じて確かに形作られたのだ。

「なんだか、分かってきたぞ……?」

「本当か……?」

「あぁ……!」

 ルカの気が、一転する。シルフの力が爆発し、疾風のような身のこなしをその身に宿した。

「こ、これは……!」

 まるで、肉体そのものが風になったような感じ。今の僕ならば、疾風のように動くことも出来るはずだ……

「ふふふっ……やるじゃない、ルカちゃん……」

 アルマエルマは、ルカに攻撃を放った。しかし彼は疾風のようにかわした。

「おぉ……!」

「……今、初めて分かったよ。風は今までずっと、僕に語りかけてきたんだな……」

 自分自身が疾風となり、その流れをシルフでコントロールするイメージ。そして、これこそがアルマエルマが見せた高速移動の正体。その動きに風を宿し、その身に……あとは忘れた。

 ともかく、「動きに風を宿す」とはこういう事だったのだ。

「あらあら……ルカちゃん、一皮剥けちゃったようね。風の扱い、とっても上手になっちゃったわ……」

「はぁっ!」

 ルカは早速アルマエルマに一撃放ってみる……が、かわされてしまった。

「でも、条件は同じよ……あなたの攻撃は、私に届かないわ……」

「くっ……!」

 アルマエルマもルカに攻撃を仕掛ける……が、ルカは疾風のようにかわしてしまった。

「あらあら……どっちの攻撃も当たらないんじゃ、決着はつかないわねぇ……」

「そうみたいだな……」

 アルマエルマは次に、ヴィクトリーに目をつける。

「さて……誇り高き戦闘民族、ヴィクトリーちゃん?君はもう攻撃を仕掛けなくもいいのかな……?」

「……やるだけやってやる……!」

「それじゃあ、今度はヴィクトリーちゃんの番ね……」

 この一言で、僕の出番は終了したようだ。この場はヴィクトリーとアルマエルマの一騎打ちになる。

 二人は構える。互いの構えは武闘派の構え。この勝負、どうなる……?

「うぉおおっ!!」

「熱くなっちゃって……」

 ヴィクトリーは、アルマエルマに猛烈なラッシュを放つ。だが全部避けられてしまい、指一本擦りもしない。

「やっ!」

 次の瞬間、ヴィクトリーの腹にドズッと重い一撃が入った。

「がぁあ……っ!!ぅぐぁっ……!!」

「ヴィクトリー……っ!!」

 ヴィクトリーは膝をつき、アルマエルマに跪いた。

「ふふふ……」

「うぐぐ……!!ぐふっ……!!」

 タァンッと床を蹴り、跳び上がって構え直すヴィクトリー。

「はぁっ……!はぁっ……!」

「この際だからはっきりと言うわ……無駄よ。風の力を持っていない君なんかがいくら頑張った所で、私には追いつけない……」

「そんな事はねぇ……!ぜってぇ追いついてやる……!」

 アルマエルマの攻撃……もって、あと数発は耐えられるはず……その数発のうちに、奴の動きを見極めてみせる!

 ルカが風の力を通して、見極められたんだ。この俺にも見極められる筈だ!!

「ヴィクトリーちゃん……何か、思い違いをしていないかな……?」

「ん……?」

「君は、『後数発程度ならアルマエルマの攻撃に耐えられる』って考えているでしょう……?」

「……!」

 まるで、見透かされたかのような指摘。それに驚かざるを得なかった。

「それが、思い違いだって言うのよ……」

「ぐっ……!!」

 ヴィクトリーは、真正面からアルマエルマに食ってかかった。

「だだだだだだだ……!!」

「甘い……甘いわ、ヴィクトリーちゃん……」

 ヴィクトリーの怒涛の猛攻を、次々と避けるアルマエルマ。

「たっ!」

「よっ!」

 ヴィクトリーは足払いをかけたが、アルマエルマはそれを飛んで避ける。

「待てっ!!」

 ヴィクトリーも舞空術で追いかけ、アルマエルマに凄まじいラッシュを仕掛けた。

「うぉおおおお!!」

「全く……無駄だって、分からないかなぁ?」

 アルマエルマは、ヴィクトリーを尻尾で床に叩きつけた。

「ぎゃあっ!!」

 闘技場に叩きつけられたヴィクトリー。だがすぐさま立ち上がり、アルマエルマの方を向いた。

「こっちよ。」

「なにっ!?」

 そこにアルマエルマの姿は無く、背後から彼女の山突きがヴィクトリーの背中に飛んできた。

「が、がはぁっ……!!」

 ヴィクトリーは、唾を飛ばしながらルカの横に吹っ飛んだ。

「ヴィクトリーっ!もういいっ!よすんだ!」

「まだだ……!まだ俺はやれる……!!」

 ヴィクトリーはルカの言葉を振り切り、再びアルマエルマの方に向かって構えた。

 彼女はというと、観客席のアリスの方を向いていた。

「……」

 アリスは目を逸らし、弁当を食べていた。

「……」

 アルマエルマはその様子を見て、ヴィクトリーに微笑んだ。

「……」

 あとちょっと……あとちょっとの筈だ……

 ヴィクトリーはダァンッと床を蹴り、アルマエルマに突進した。

「……」

 彼の体がアルマエルマの制空圏に触れる、次の瞬間だった。彼女の風の気が爆発し、とんでもないスピードでヴィクトリーに連続攻撃を叩き込んだ。

「!!!!」

 全身に猛烈なダメージを与えられたヴィクトリーは、ボロボロになりながらその場に立ち尽くした。

「とどめっ!!」

 アルマエルマはそんな彼の胸に、発勁を叩き込んだ。風の力を宿した発勁は、彼の全身に衝撃を駆け巡らせた。

「が……がはっ……」

「ヴィクトリー……っ!?」

 ヴィクトリーはとうとう、膝をつく。そのまま床に倒れ付し、動かなくなってしまった。

「安心しなさい。死にはしないわ……ちょっと眠ってもらうだけ……」

 アルマエルマは、背を向ける。

「ヴィクトリーちゃんは倒れちゃったけど、優勝は……」

「……だ……だ……!!」

 アルマエルマの声を遮るように、ヴィクトリーは立ち上がった。

「……まだだ……!!まだ……まだやれるさ……!!」

「……っ!!?」

 アルマエルマは振り返り、ヴィクトリーを見る。これには流石の彼女もびっくり仰天していた。

 なんと、気絶した筈のヴィクトリーがまた立ち上がろうとしているのだ。

「な、何が……何が君をそこまで動かしているの……!?」

「ぐぐ……!!ぐぐぅ……!!」

 ヴィクトリーは、床に手を付き立ち上がる。そこに、ルカが寄ってきた。

「も、もうやめろ……!本当に死んじゃうぞ!」

「……」

 ヴィクトリーはルカを突き飛ばして立ち上がった。見ると、彼は今まで見せて来なかったようなシリアスな顔をしていた。こんなヴィクトリーは、見た事ない……

 アルマエルマは汗を垂らしながらうろたえた。

「何が君を立ち上がらせているの……?意地?プライド?それとも、勝利への執念……!?」

「そうじゃねぇっ!!」

 ヴィクトリーは、深呼吸をして息を整える。そして、しっかりとアルマエルマを見据えた。

「なに……!?」

「ここで終わりじゃあ、おめぇに申し訳ねぇと思ってよ……」

「どういう事よ……!?」

「……まさか、こんな所でこいつを使う事になるとはな……でも、仕方ねぇ……!!」

 ヴィクトリーの言葉に、闘技場は凍りついた。

「え……!?」

「な、何だって……!?」

 こいつ、この後に及んで秘策を隠し持っていたのか……!?

 遂に、境地へと追いやられたヴィクトリーの秘策が炸裂する。果たして、それは……!?

流血表現

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