もんむす・くえすと!の世界に降り立った1人のヒーローアバターの話 作:ジョーカー:ゼノ
女王杯の決勝戦。ルカはヴィクトリーのプライドを考慮し、隅で彼を見守っていた。
そして今、彼の秘策が爆発しようとしていた……!
「はぁああっ!!」
ボオォッと気が膨れ上がり、凄まじい気の嵐がコロシアムに吹きすさんだ。
「……別に隠しておいてた訳じゃねぇんだ。この先に待ち構える大きな戦いのため……そして、絶対に負けたくない奴の為に……つまり……」
ヴィクトリーは、ルカの方を向いた。
「おめぇの為に捧げる筈の技だったんだ!」
「ぼ、僕に……!?」
ルカは、思わず身構えていた。
「そうだ!だから、じっくりと時間をかけて磨いていこうと思っていたんだ!」
「それを、私にぶつけるの……?うふふ……やってみなさい。」
アルマエルマは、谷間を見せつけるように屈む。どうやら、余裕の様子だ。
ヴィクトリーは拳を握り、彼女の方に向かい直した。
「未完成の技だ……成功する確率は十に一つも満たねぇ……失敗すれば、体がぶっ壊れるどころじゃすまねぇ……!だが……!!」
ヴィクトリーは更に気を高め、そして界王拳を使った。
「はぁあああああ……!!」
「結局それじゃない……それを、限界まで引き上げるって訳ね……言っておくけど、4倍に引き上げたところで何も変わらないわよ……?」
僕はヴィクトリーの気合に吹っ飛ばされそうになりながらも、見守っていた。
「ヴィクトリー……っ!!」
お前が力を強めれば強めるほど、アルマエルマはそれを圧倒する……!この競り合い、今のお前が何処まで付き合える……!?
「……」
すると、急にヴィクトリーは気の上昇をやめた。
「……ふっ……」
「……」
ヴィクトリーが不敵に笑い、アルマエルマはそれを見つめる……
空気が、空間が、戦いが、気迫が、静止する……
そして、ヴィクトリーは目を鋭くした──
「……界王拳ッッ!!!」
ヴィクトリーは界王拳を使った。それは今までの界王拳と違い、凄まじいパワーが周りに放たれ、暴風のように吹き荒れた。
「ヴィクトリーの風……凄い……あたしの力がなくても、ここまで出来るなんて……!」
「え……!?」
僕の中に居たシルフですら、ヴィクトリーに賞賛を送った。感じてみると、彼からは相当に凄い風が溢れ出していた。シルフ無しで、ここまでたどり着けるのか……!?
「出来たぜ……!!4倍の壁を越えた界王拳だ!!」
「戦闘力が6倍近くに……!?」
「あぁ……今は確かに6倍に『制御』している……ちぃーっとさじ加減間違えたら、気が暴走して死んじまう所だったよ……!どうやら、技は成功したみてぇだ……!!」
ヴィクトリーは拳を握り、笑った。
「限界を越えた界王拳……!!これが俺の奥の手さ!!」
「へぇ……!」
アルマエルマはサッと構え、ヴィクトリーに向かう。
「行くぞっ!!」
彼は、シュンッと消えた。
「はっ!?」
アルマエルマは止まった。そして、その背後にヴィクトリーは立っていた。
「ふっ……」
「後ろっ!」
アルマエルマはヴィクトリーに回し蹴りを放つが、彼は消えてしまった。
「なっ……!?」
「うわっ……!?」
闘技場に不気味にギュンギュンという音が響く。超スピードでヴィクトリーが移動しているため、風が彼と擦れ、そんな音を奏でているのだろう。
アルマエルマと僕はきょろきょろと周りを見回すが、彼の姿は捉えられなかった。
「こっちだ!!」
「っ!?」
声の方を向くと、ヴィクトリーはアルマエルマの正面に立っていた。
「へ、へぇ……やるじゃない。」
「へっへっへ……どうだ、おもしれぇだろ……!」
「ヴィクトリーちゃんも、いやらしい子ね……そんな技があるなら、さっさと使っちゃえば良かったのに……」
ルカは、声には出さずにアルマエルマの言葉に食いついた。
界王拳を知らないからそんな事が言えるんだ……!界王拳は、戦闘力の増強と引き換えに、体力を大幅に削る技……今でもヴィクトリーは、それを無理やり6倍に引き上げているから体に負担を強いているんだ!今までのヴィクトリーの界王拳の限界は4倍程度だった……なのに、いきなり6倍に引き上げるなんて、自殺行為だ!
「でも、今なら出来るんじゃねぇかと思ってよ……!今の俺、この極限のバトル、そしておめぇという超すげぇ強敵の前ならなぁっ!!」
ルカは震え、そして確信していた。
あいつ……もう、僕の遥か先に立っている……!!
「ん……待てよ……?」
あいつ、6倍の状態を『制御』って言ってなかったか……!?まさか……!!
「はぁあああああ……!!!」
やっぱり!ヴィクトリーはまだまだ界王拳を引き上げるつもりだ!
「な……7倍……8倍……!!いや……!!」
「10倍だぁあああああああ!!!!」
「なっ……!?」
ヴィクトリーの界王拳が、10倍になった。吹きすさんでいた烈風に、猛熱が宿る。
「10倍界王拳だぁああああーっ!!!」
「ぐっ……!!」
ヴィクトリーの咆哮で、熱風が勢いを増した。
「でぇりゃああぁーーーっ!!」
次の瞬間、アルマエルマの頬に渾身の一撃が入った。
「うぶっ……!?」
「あ、当たった……!!」
「おぉりゃあぁーっ!!!」
「くっ……!!」
アルマエルマはすぐさま持ち直し、疾風の動きでヴィクトリーに突っ込んだ。しかし、彼はその疾風の動きすら見切り、彼女の腹に一撃を放った。
「なっ……!?」
「無駄だ……今の俺の立っている場所は、おめぇの疾風の世界の遥か先だ!」
「そうかしらっ!?」
アルマエルマはヴィクトリーの股間に手を伸ばしたが、熱すぎてとても体には触れなかった。
「あづっ……!」
「でゃだだだだだだだだだだ!!!」
ヴィクトリーはそんなアルマエルマに容赦なく拳と蹴りのラッシュを叩き込んだ。
「どりゃああぁーーーっ!!!」
「きゃああぁっ!!」
ヴィクトリーはアルマエルマを思いっ切り蹴り上げ、上空にぶっ飛ばした。
「くっ……!」
アルマエルマは体制を立て直し、飛び上がった。
「うぉおおおおおっ!!」
「え……!?」
するとそこにヴィクトリーが超スピードで飛んできて、脇腹に思いっ切りパンチを入れられ、アルマエルマは更に上空へと打ち上げられた。
「ぐっはぁ……!!」
そこで、ヴィクトリーの動きが落ち着く。
「10倍界王拳……長くはもたねぇ……!!」
無理な大技をやったせいで、ヴィクトリーの体が悲鳴を上げ始めたのだ。
「一気に決めるぞ!!」
ヴィクトリーは、ルカの横に瞬間移動する。
「下がってろ。巻き添えをくらうぜ。」
「……いや、見届けるよ。」
「……ふふっ……!!」
ヴィクトリーは笑いながら両手に気を込めて、アルマエルマに狙いを定めた。
「か……め……は……め……!!」
「くっ……!」
アルマエルマはヴィクトリーの方を見て、手を突き出した。
「波あああぁーーーっ!!!!」
10倍界王拳かめはめ波が、彼女に放たれた。
「何の……!!」
アルマエルマは、自らかめはめ波の中に飛び込む。
「そこだぁっ!!」
ヴィクトリーもかめはめ波の中に入り込み、アルマエルマに接近する。
「どぁらぁああああああああーーーーーっ!!!!」
「はぁあぁああああああああーーーーーっ!!!!」
かめはめ波の中で、二人の拳が一閃する……すると、かめはめ波は大爆発を起こした。
「ぐっ!!」
爆発はルカを残して場内の殆どを消し飛ばし、衝撃は観客席まで響き渡った。
「きゃあっ!」
「ど、どうなったのよ……!?」
騒然とする観客達の中、アリスは迷惑そうにホコリを払っていた。
「派手にやりおって……弁当にホコリが付くだろうが……」
そう言いながら、むしゃむしゃと弁当を頬張る。そんな事をしている内に、爆煙が晴れていく……
「……はっ!!」
「……」
「ぐ……がは……」
アルマエルマは右手で口から垂れた血を拭い、左手で界王拳の解けたヴィクトリーの襟袖を掴んでいた。
ま、まさか……!やられたのか……!?
「ヴィクトリーっ!!」
「よくやったわ、ヴィクトリーちゃん……まさか、今の段階で私に触れられるなんて思いもしなかったわ……」
そう言いながら、アルマエルマはヴィクトリーをルカの方に投げた。ルカはノームの力を使って、彼をお姫様抱っこするように受け止めた。
「わ、わりぃ……勝てなかった……全く……歯が立たなかった……!!」
「ヴィクトリー……」
それでも、一矢報いただけでもよくやったと思う。決して何も出来なかった訳じゃないのに……
彼はルカから落ちて、何とか自力で立ち上がる。
「でも、優勝は君達に譲っちゃうわ。優勝おめでとう、二人とも!」
「は……!?」
ここから先、どう戦えばいいか練っていた僕に浴びせられたのは、意外な言葉だった。
「そういうわけで、私は降参するわ。」
アルマエルマは手を挙げて、降参を宣言した。
「いったい、どういうつもりなんだ……!?」
勝負の終わりは見えていたが、こんな所では終わる局面ではなかったはずだ。
「今日はもう、十分に楽しませてもらったわ。二人とも、いっぱいがんばったしね……」
「え……!?」
アルマエルマの姿が、唐突に風の中へと消えた。その次の瞬間、二人の頬に柔らかな唇が押し付けられる……
「……それじゃあ、またね。」
一瞬のキスの後、アルマエルマは闘技場から姿を消してしまった。もはや、気配さえこの場に残されていない……
「……」
最後に見せた動きは、今までの高速移動の比ではなかった。消失に気付いた次の瞬間、すでに僕達の間近まで接近していたのだ。
「……くそっ!!」
「……ちくしょう……!!!」
ようやく追いついたと思ったら、遥か先を見せられたのだ。結局アルマエルマは、最初から最後まで本気を出していなかったのだ。
これがコロシアムの試合だったからか……それとも、僕達が本気を出すに足りる相手ではなかったからか……
「……」
四天王とは、どれほど僕達より遠くにいるのだろう。女王杯優勝の喜びは薄く、僕達は闘技場に佇んだのだった……
流血表現
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もっとする
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このままでいい
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しなくていい