もんむす・くえすと!の世界に降り立った1人のヒーローアバターの話   作:ジョーカー:ゼノ

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新たな旅路

 女王杯に優勝した戦士達は、グランドノア女王と謁見していた。

「女王に即位して以来、ここまで感無量な事はありませんでした。まさか、このような枚挙を成し遂げる戦士が現れるなど……!」

 興奮冷めやらない女王の前で、僕達は呆けた気分でいる。

「……どうも、ありがとうございます。」

「では、優勝者にグリーンオーブを授けましょう。我が王宮の宝、受け取ってください。」

「あ、はい……」

 女王から差し出されたのは、美しい緑色の宝玉。僕は、それを静かに受け取ったのだった。ヴィクトリーはその様子を腕を組んで見ていた。

 まぁたオーブか……いったい、何なんだ?

「来訪の際には、またこの城にも立ち寄ってください。私の夢を叶えてくれた英雄、心を込めてもてなしましょう。」

「はい……恐れ入ります……」

「失礼しました……」

 うやうやしく礼をして、退出の言葉を述べる。こうして僕達は、優勝賞品を受け取り女王の間を辞したのだった……

 

 城下町では、アリスが迎えてくれた。

「ひとまず、優勝おめでとうと言っておく。しかし、貴様らはまだまだ未熟、今回の結果に驕るでないぞ。……などと言った気分では無いようだな。」

 ヴィクトリーは、拳を握りしめる。

「あぁ……奴はまだまだ強かった……」

「うん……こんなに勝った気がしないのは、初めてだよ……」

 あそこまで手を抜いて戦われ、力の差を実感するばかり。向こうにとっては、僕達など全力を出すまでもない相手なのだ。

「正直、ヴィクトリーがアルマエルマに一撃食らわせるとは余も思っていなかったぞ。」

「あんなん、避けようと思ってたら避けれた筈なんだ……何処までも馬鹿にしやがって……!!」

 ヴィクトリーの拳から、血が出る。どうやら、相当頭にキテるらしい。まぁ無理もないだろう。こいつには武闘家としてのプライドがあるのだ。

「僕達は、まだまだ強くならないといけないみたいだ……」

「あぁ、そのためには四精霊の力を全て手に入れる事だ。一つ一つでも強力だが、四つの力が合わさった時の相乗効果は凄まじい。それを使いこなすことができれば、四天王レベルとも互角に戦えるだろう……と思う。」

「思うって……」

「すべては、貴様次第という事だ。どんなに強い力を持とうと、使う者がヘボならば話にならん。」

「そうだよな……よし、頑張るぞ!」

 ルカが気合を入れた所で、アリスはヴィクトリーに向かう。

「貴様はどうするのだ?界王拳を20倍近くまで引き上げる修行でもするのか?」

「いや、ルカと同じくまずは自分を鍛えねぇと。どんなに術が優秀でも、使う奴がヘボかったら無駄なんだろ?」

「ふむ……その通りだな。その方が良いだろう。」

「……あぁ!」

 二人は敗北感と不完全燃焼感を吹き飛ばし、あらためて気合いを入れ直した。

 残る精霊は、ウンディーネとサラマンダー。彼女達に会いに行って、力を借してもらわなければ始まらないのだ。

 コロシアムのほとぼりが冷めた二人は、新たな旅路へと駆り出した。

 

「よし、ヤマタイ村に向かうぞ!」

「うむ、実に楽しみだな……『おにぎり』や『おそば』など、ぜひ食べてみたいぞ。」

 ……やっぱり、アリスは食い物の事か。

「……」

 ヴィクトリーは、珍しく黙っていた。

「ヴィクトリー?」

「……あ、あぁ!れ、レッツゴー!」

 ヴィクトリーもヤマタイ村に行きたいって言ってたな……何か、あるのかもしれない……

 そう思いながら、僕達は東方のヤマタイ村へと向かったのだった。

 

 しばらく歩いてから、山の前で止まる。

「地図を見ると、ここで山越えだね。」

「余は過酷な環境でも平気だが、貴様らは登山の準備が必要ではないか?」

「そうだね、登山の準備を整えるか……」

「一応、俺も準備しとこっと……」

 そこに通りかかったのは、見慣れない服装の老人だった。

「オッス!」

 ヴィクトリーは、欠かさず老人と挨拶を交わした。

「お前さん達、ヤマタイ村に行くだか?」

「あぁ、山越えの準備の最中だ。」

「はっはっは、そんなのいらねぇだよ。わしもちょうど、ヤマタイ村から野菜を売りに来たとこだべさ。こんな爺ッコロでも、一日でサクッと越えられる山だべ。」

「へぇ〜……」

「なるほど……そうなんですか。」

 やはり、地元の人の助言は頼りになる。もう少しで、大層な準備をして拍子抜けする所だった。

 こうして僕達は、軽装で山越えを試みたのだった……

「うひゃあああ……!」

「さ、さみぃ……!」

 山は、極寒の雪に覆われていた。

 ……どこが、大したことのない山なんだ?もしかして、はめられた……!?いや、あの老人の脚力が凄まじいのか……?

「ふむ……」

 一方のアリスはというと、雪を前にそわそわしている様子だ。

「ふむ……雪か……雪だな……」

「アリス……雪、初めてなのか?」

「……その通りだ。しかし幼児ではないのだから、別に嬉しくも楽しくもない。」

「……」

「……」

「……」

 三人は黙ってしまった。それでもなお、アリスはうずうずしている。

「……少し、遊んできてもいいよ。」

「……!」

 アリスは両手を高く上げ、雪の中を走り出した……いや、這い回り出した。そして、あっという間に目の届かないところまで消えてしまう。

「やれやれ……」

「よくはしゃげるなぁ……」

 あまりのはしゃぎように、僕は立ち尽くすのみだった……

 

「おいおいおいおい……」

「ま、マジかよ……!!」

 アリスは帰って来ないし、日は暮れるし、吹雪き始めたし……これは、まずい。このまま、ここで待っているのはまずい。

「おいアリス!!」

「アリスー!!返事しろー!!」

 二人で呼びかけても、まるで返事はない。風の音に、二人の声がかき消されるだけだった。

「仕方ない……ここから動かないと……」

「こ、凍っちまうよ……!」

 ……言い忘れていたが、ヴィクトリーは半袖だ。多分、このままだとこいつが先に死ぬ。

 ともかく、ここから動かねば。なにせ相手は魔王。はぐれたとしても向こうは大丈夫なはず。むしろ、危ないのは僕達のはず。この吹雪の中悠長に待っていたら、二人まとめて凍死してしまう……

「まずい、どうしよう……」

「ちくしょう……!集中が出来ねぇから気の察知もできねぇ……!」

 とにかく下山しようとしたのだが、猛吹雪が視界を阻み、二人を振り回す。やみくもに進んでいる内に、方向も何も分からなくなってしまった。

 しかも、追い打ちをかけるように、魔物が襲ってきたのだった……

「あら、遭難者のようね……私が、抱いてあげる……この胸で抱きしめて、温めてあげるわ……」

 白い肌をして、白い着物を纏った雪女だった。

「おめぇに抱きしめられたら凍るだろうが……!!」

「くっ……!」

 こいつは、旅人を襲うモンスターのようだ。

「界王拳3倍!!」

 ヴィクトリーが、早速界王拳を使った。すると、彼の周囲の雪がジュウジュウと溶けた。

「そ、それいいな……!」

「だろ?」

 ルカは早速、ヴィクトリーの横につく。彼の体がスチームのように熱を放っているのだ。極熱だが、外の極寒と相まって丁度いいぐらいだ。

「ルカ、ここは俺一人でやる……おめぇは背中に掴まってろ。」

「分かった!」

 言われるがままに、ヴィクトリーの背中におぶる。男が男におぶるのはアレだが、この環境ではそんな事も言ってられない。

「へぇ……」

 雪女は、僕達に氷つぶてを飛ばしてきた。

「かぁっ!!」

 しかし、ヴィクトリーの咆哮でそれは瞬時に溶けてしまった。

「こっちから行くぜっ!!」

 ダァンッと地面を蹴り、雪女の頬を拳で打ち抜いた。ジュウウゥッと焼けるような音が彼女の頬から出る。

()ぅうっ……!!」

 そのまま吹っ飛び、木に叩きつけられた。

「だぁりゃあぁーっ!!」

 ヴィクトリーはそんな彼女に、容赦なく蹴りの追い打ちをかける。蹴った部分からも、焼ける音が聞こえてきた。

「ぎゃぁぁぁぁ……!!」

「効果てきめんみてぇだ……案の定、熱によえぇぞ。」

「みたいだな……」

 話していたら、雪女の髪がヴィクトリーの体を拘束してきた。

「捕まえた……」

 雪女から放たれる凍てつく殺気に動けなくなり、二人まとめて抱きしめられてしまった。

「ふふふ……」

「ま、まずいぞヴィクトリーっ!」

「手はある!」

 雪女の抱擁……吸精だけではなく、吸温も行っているようだ。それならば……

「はぁっ!!」

 界王拳を4倍にして、更に熱を放つ。その熱気は、炎にも匹敵するものだった。

「熱っ!!?」

 彼女の全身が焼かれ、拘束が解かれる。

「スキありぃっ!!」

 そして、ヴィクトリーは自分の今ある力の全てを使い、その腹をぶん殴った。

「がああぁ……っ!!」

 彼女はその一撃で倒れ、気絶してしまった。

「よ、よし……!」

「いや、遭難してる事には変わりねぇぞ……!やべぇ……!」

 何とか敵を倒したはいいものの、遭難しているという危機的状況には変わりない。

「わりぃ、界王拳を解くぞ……!そういつまでも使っていい技じゃねぇんだ……!」

「あぁ、分かってる……!」

 ルカはヴィクトリーの体から降り、彼も気を沈める。

 二人はその後、宛もなく歩き続け……そして、とうとうルカが先に極寒の中で倒れてしまった。

「だ、大丈夫かルカっ!」

「うぐ……」

 ルカは、瞼を重そうにしている。

「ね、寝るんじゃねぇ!二度と覚めねぇぞ!」

「わ、分かってる……」

 分かっていても、体が痺れて動けない。

 ヴィクトリーはルカをおぶろうとした所で、膝をついてしまった。

「ち、ちくしょう……俺も……ダメみてぇだ……!!」

 どうやら、ヴィクトリーも限界が来たようだ。体が痺れ始め、凄まじい疲労が重くのしかかってきた。

「そん……な……」

「く……そ……」

 二人は雪に倒れ、意識を失ってしまった……

 

 気がつくと、僕は木陰で寝転んでいた。周囲には、のどかな光景が広がっている……

「やれやれ、勇者が雪山で遭難するとはな。なんと情けない勇者なのだ、貴様らは……」

「アリス……助けてくれたのか?」

 どうやら、ここは山を越えた場所らしい。人里も近いようで、東方情緒溢れる光景が広がっている。

「……ヴィクトリーはっ!?」

 さっきから、ヴィクトリーの姿が見えない。あいつ、まさか死んだんじゃ無いだろうな……!?

「安心しろ。あいつは貴様より早く起きて川に魚を取りに行った。きっとすぐ帰ってくる。」

「そ、そうか……」

 どうやら、無事らしい。こればかりは、アリスに感謝するべきか……いや……先にはぐれたのはアリスじゃないか……?

「お〜っす!取ってきたぞ〜!」

 ヴィクトリーは、シャケを三匹まるまる手に持って現れた。

「いや、熊か僕達は!シャケ一匹まるまる食えるわけないだろ!」

「うっせぇな……じゃあ俺が全部食っちまうぞ……」

「ふむ、丁度いい。メシにするとするか。貴様も疲れているだろう。」

「あ、あぁ……」

 そう言えば、魚の干物が残っていたか。体力を消耗しすぎたせいか、確かにお腹がペコペコだ。

「よっ。」

 ヴィクトリーはシャケに気功波を放ち、焼きシャケにした。

 熊みたいにシャケをがつがつ食う彼の横で、僕は道具袋からニシンの干物を取り出した……

「ん……?」

「なんだ?」

 何かが、草陰からじっとこちらを見ている……

「……」

「にゃ!」

 草陰から姿を見せたのは、なんと猫の魔物だった。

「……欲しいんか?」

 ヴィクトリーは焼きシャケ一匹をまるまる掲げる。

「ばか、相手は猫だよ……」

「にゃあ!」

 どうやら、好反応らしい。

 干物は、僕とアリスが食べている分で全部だし……

「じゃあ、一緒に食うか!」

「にゃっ!」

 ヴィクトリーとねこまたは焼きシャケを一緒にがつがつと貪った。そしてもう一匹のシャケも半分こして、なんと完食してしまった。

「にゃあ!」

「お、おめぇ結構食うんだな〜!」

 食べ終えた後、ねこまたは彼に何かを差し出した。

 これは……鈴だろうか。

「……くれんのか?」

「にゃっ!」

 こうしてヴィクトリーは、ねこまたから鈴を受け取ったのだった。

「……こいつは……」

 不思議な力が、二人の体に流れ込んでくる。二人はまた一段階強くなった……気がした。

「にゃ!」

 そしてねこまたは、草陰へと消えてしまった。

「……変な魔物だなぁ。」

「でも、面白ぇなあいつ!」

 人を襲うことなく、餌だけもらって消えてしまった。あんな魔物は、初めてだ。

 とにかく、先に進もう。ヤマタイ村は、すぐ近くのはずだ……

 

 そして、ヤマタイ村に続くと思われる道を進んでいると……見慣れない装束の二人が、先への道を遮った。

「見かけない顔だな、よそ者か……!」

「これ以上、先に進むようなら消えてもらう……」

 サムライ風の女性と、くのいち風の女性だ。両者とも、耳が尖っている。

「ちょ、ちょい待ち!俺達はヤマタイ村に行きてぇだけで……!」

「ヤマタイ村に行くだと……?それなら、なおさら通しはしない!」

 見慣れない装束の女性達は、有無を言わさず襲いかかってきた。

「人間……じゃねぇみてぇだ。」

「うん、耳の形からしてエルフだな……!」

 二人は臨戦態勢に入る。

 また二対二のバトル……骨が折れそうだ。

「退かぬつもりか!」

「では参る!」

 サムライエルフは刀を抜いてルカに、くのいちエルフはクナイを両手にヴィクトリーに襲いかかった。

「ほらほらほらほらほらぁ!」

「その程度か!よそ者!」

「ぐ……!」

「やるな……!!」

 二人の猛攻を防御しながら応戦する。東方のエルフ、どうやらそこらのエルフとは格が違うようだ。

「がぁっ!!」

 ヴィクトリーは、気合砲で二人を吹っ飛ばした。

「むぅっ!?」

「摩訶不思議っ!」

 彼女達は吹っ飛びながらも体勢を整え、ダウンはせずに構え直す。

「こっちの番だ!」

「行くぞっ!」

 ヴィクトリーは両手にエネルギーを込め、エルフ二人に放った。

「ぬぉっ!?」

「ぐぅっ!」

 サムライエルフは素早くかわし、くのいちエルフは跳び上がって回避する。

「こっちだ!」

 ヴィクトリーはくのいちエルフの背後に瞬間移動し、地面に蹴り飛ばした。

「ぐぅっ!」

 彼女は地面に伏せるも、なんとか顔は地に伏せずにする。

「てやぁっ!」

 そこにルカが切りかかった……が、突如として煙幕がルカの視界を邪魔した。

「っ!?」

「何だっ!?」

「煙玉だ……私の姿は見えまい……」

 ヴィクトリーの足元に、ころんと玉が転がって来る。見ると、そこから煙が噴き出していた。

「……確かに、姿は見えねぇ……だがよっ!!」

 煙の中で不気味に戦闘音が響く……

 次の瞬間、煙がヴィクトリーを中心に吹っ飛んだ。

「な……何故だ……!?」

 くのいちエルフは、ボロボロになりながらヴィクトリーを睨む。

「重要なのは気の強さや動きを捉えることだ。目で追っているようなお前らじゃあ俺には追いつけねぇ。」

 そう言い、二本指で彼女の胸を指した。

「終わりだっ!!」

 そして、その胸にドズッと超龍閃撃が放たれた。

「がっ……!!む、無念……!!」

 その一撃で彼女は膝をつき、倒れてしまった。

「なっ……!?くのいちが……!?」

「す、すごいなアレ……」

 顔を合わせる、サムライエルフとルカ。次の瞬間、彼女は彼に向かって刀をなぎ払った。それを避けながら彼は精霊を呼び出す。

「ノームっ!」

 呼び出したのはノーム。大地の剛力が彼に宿った。

「てやぁっ!!」

 そして、ドスッと彼女の腹に剣の柄を叩きつけた。

「うっ……!?」

 彼女は揺らいだが、踏みとどまった。

「そ、そんな力如きで……この私を倒す事は出来んっ!!」

 そして、思いっきり振りかぶり、刀を振り下ろしてくる。

「どうかな……!?」

「なにっ!?」

 ルカは、その一撃を受け止めていた。そして、刀を弾き飛ばした。

「ぐぁっ……!?」

「くらえっ!魔剣・首刈りっ!!」

 揺らいだサムライエルフの懐に踏み込み、喉元を突き上げた。

「ぐ……な、何と面妖な……!!」

 彼女はその一撃で封印され、小人の姿になった。

「ふぅっ、片付いたか!」

「なんだか、変わった連中だったな……」

 のどかな田園風景に似つかわしくないエルフの戦士。有無を言わさず襲いかかってきた以上、人間と共存しているとも思えない。あんなのが生活園をうろついていて、ヤマタイ村は大丈夫なのか?

「……あいつら、村人は襲わねぇみてぇだ。俺の見立てだとヨソ者だけを狙ってるって感じだ。」

「そう言えば、そんな事を言ってたな……」

 ヨソ者を村に近づけまいとするエルフの戦士達。それに、他の地方では見られない独特の魔物……なんだか、おかしな話だ。

「とにかく、村に行って話を聞こうか。」

 こうして僕達は、もう目前のヤマタイ村に向かったのだった……

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