もんむす・くえすと!の世界に降り立った1人のヒーローアバターの話   作:ジョーカー:ゼノ

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ヤマタノオロチ、現る

 そして、夜が訪れた。

「いよいよ、ヤマタノオロチとの戦いか……」

「何だかワクワクするぜ……」

 闘志を胸に秘め、村外れで村長達を待つ僕達。彼等が僕達を輿に乗せ、生贄と偽ってヤマタノオロチの所まで運んでくれるという手筈だった。

 アリスとたまもの姿は見当たらないが、どこに行ったのだろう……

「……ん?」

「この気は……」

 風の囁きと気の察知が二人に妙な気配を伝えてくる。この周囲を、敵意に満ちた者達が取り囲んでいるようだ……

「まさか、ヤマタノオロチに計画がバレたのか……!?」

「落ち着け、人間の気だ。」

 ヴィクトリーが、そう言い終わった時だった。

「てやぁっ!」

 不意に背後の草陰から飛び出し、棒を振り下ろしてくる青年。所詮は素人の攻撃、僕達はそれを容易くかわした。

「何すんだてめぇ。」

 ヴィクトリーの言葉で、わらわらと若衆達が出てきた。

「旅の人……今年は、あんた達が生贄だって聞いたよ。」

「無関係なあんたを、生贄になんてできない!ここは俺達に任せてくれ!」

「生贄は俺達の中から選ぶ。あんた達に押しつけはしないぜ!」

「別に殺そうってわけじゃない。しばらく気を失ってもらうだけだ……」

「……」

 ルカは、頭を抱える。

 こいつら……言ってる事は格好良いのに、動機が不純すぎる。

 若衆達は僕達を取り囲み、じりじりと間合いを詰めてきた。

「ぐっ……!」

「やめろよ……素人をぶん殴るわけにはいかねぇんだ……」

 相手はただの人間である以上、力でねじ伏せるわけにもいかない……正直な所、叩きのめしてもいいような気もするけど。

「おめぇら、いいんだな……?マジでいいんだな……?サイヤ人になっちまうぞ俺は……」

「ヤサイ人……?」

「何だか知らんが、まずはあんたからだ!」

 若衆の一人が、ヴィクトリーに棒を振り下ろしてきた。

「……」

 ヴィクトリーは笑いながら棒を顔面で受け止め、その若衆の顔面を蹴り飛ばした。

「なっ……!?」

 蹴り飛ばされた彼は壁に激突し、その一撃で気絶してしまった。

「……」

 次にヴィクトリーは既に構えてる若衆に手を向け、気合砲を放った。

「ぐぁっ!?」

 彼等は吹っ飛び、その場に倒れ込んでしまう。

「ひいぃ……!化け物ぉ……!」

「ま、まるで斉天大聖だ……!」

 残る若衆は、他の若衆を抱え込み……

「に、逃げろぉ〜!!」

 そのまま、一目散に逃げ去ってしまったのである。

「さ、サンキュー、ヴィクトリー……」

「ったく……闇討ちなんてめちゃくちゃな事するぜ……」

「ううむ、これも共存の一つの形かも知らんが……魔物に溺れすぎるのも、考えものだな。」

 複雑そうな表情を浮かべたアリスが、姿を見せた。

「ん、アリス。」

「たまもはどうしたんだ?」

「……魔王城に帰ったぞ。『立場上、勇者に手を貸すのはまずい』だそうだ。」

「え……?そうなのか……?」

 アリスは、ルカの方を向く。

「それで……たまもから、預かり物がある。このアイテムを貴様に渡せ、ということだ。」

「アイテム……?」

 アリスが渡してきたのは、掌サイズの奇妙な毛玉だった。

 なんだか温かくて、モフモフしている……

「こ、これって……」

 指先で、奇妙な毛玉を軽くつつくと……

「うひゃひゃ……くすぐったいのじゃ……!」

 毛玉は、もそもそと蠢いた。

「……」

「……」

「ははは……」

 ルカは、たまも玉を受け取り、道具袋にしまった。

「確かに、渡したからな。」

「あ、あぁ……」

「いつもの如く、余はついていかんぞ。せいぜい、本当に生贄にされてしまわんようにな。」

「あぁ、任せてくれ!」

「安心しろって〜!ちゃっちゃとやって終わらせるからさ!」

 渡すものを渡し、いつものように姿を消してしまうアリス……それと入れ替わりに、村長一行が迎えに来た。

「お待たせ致しました。おや……?蛇神様と狐神様は?」

「えっと、行くのは僕達だけです。」

「なるほど、生贄以外の者がいては、作戦がうまくいかないかも知れませんな。」

 村長はそう言いながら、輿の扉を開ける。

「では、この輿にお乗り下さい。」

 村人達数名で担いでいる、金銀細工の立派な輿。毎年、これで生贄をヤマタノオロチの元に運んでいるのだろう。あまりいい気はしないが、僕達はその輿の中に乗った。

「これで僕達も、立派な生贄という訳だ。」

「悪ぃ冗談はよせよ……」

「では、行きますよ。洞まで一時間ほど、我慢して下され。」

 こうして僕達は、輿で村の外にまで運ばれていった……

 

 そして、ゆらゆらと揺られること一時間……とうとう、僕達の乗った輿は洞の入り口まで運ばれた。

「私達が運ぶのは、ここまでです。ここからは、ヤマタノオロチ様の力で中に運ばれますので。それでは、私どもはこれで……」

 村長および担ぎ役の村人達は、そそくさとその場から去ってしまう。

「……」

 もし僕達が勝てなかったら、そのまま生贄にしてしまえ……そんな意図が、ありありと伺えるようだ。

「心配すんなルカ。俺もいるんだ、負ける筈がねぇ。」

「そうだな……」

 僕達が気合を入れ直した、次の瞬間……僕達の乗った輿が、誰も触れていないのにふわりと浮き上がった。そして、そのまま洞の奥へと引き込まれていくのだ。

「わっ、わっ……!」

「超能力ってやつか……!?」

 ヤマタノオロチの前に運ばれるまで、大人しくしていた方が良い。しばらく輿に乗ったまま奥へと運ばれ、そして地面に下りたようだ。

「つ、着いたのか……!?」

「らしいぜ……」

「さぁ、生贄よ。妾の前に姿を見せるがよい……」

 ヤマタノオロチの声が聞こえる。

 その声の通り輿から降りると、目の前にはとんでもなく異様な魔獣が鎮座していた。八本の蛇の体から生えてる腕無しの女の上半身。その口から長い舌がチロチロと覗かせている。そして、蛇の妖魔なのに何故か大きな前足がある……

「おぉ……今年の生贄は、また随分と可愛い少年達よ……」

「さぁ、近う寄れ。怖がる事はない、快楽の極みを味わわせてくれようぞ……」

「村の者ではないようだな……まぁ、美味そうな男なら気にはせんぞ。」

 あまりの異形に、ヴィクトリーは絶句する。

「ぎえぇー!!何だこのバケモンは!!」

「……」

 それぞれの女体は、どうやら独立した意思を持っているらしい。ヴィクトリーの絶句する通り、なんとも異様な、そして予想以上に強そうな妖魔だ。

「……悪いけど、僕達は生贄じゃない!」

「お、おめぇをぶっ飛ばしに来たんだ!」

 二人は構え、ヤマタノオロチと対峙した。その瞬間、気迫のような妖気が一気に濃くなる。

「なんと、妾を退治とは笑わせおるわ……」

「これは面白い余興よ。少しばかり、遊んでくれようぞ……」

 このまま生贄されてしまうなんて、勘弁願いたい。この戦い、なんとしても勝たねば……!

「行くぞぉっ!!」

 二人は力を開放し、ヤマタノオロチに猛攻を仕掛けた。彼女はそれを軽々と躱し、超スピードで二人の背後に回った。

「なにっ!?」

「なんだとっ!?」

「それっ!」

 驚く二人を、大きな前足で蹴り飛ばした。それで二人揃って、勢いよく壁に叩きつけられてしまった。

「うぐ……!!」

「ごはぁっ!」

 巨体の癖にこのスピード。これは、ちゃっちゃと終わりそうには無いぞ……!

「ちぃっ!」

 ヴィクトリーが単身で壁を蹴り、界王拳を使いながら突撃する。

「くらえ……!!」

 そして、かめはめ波を放った。

「ほう……気功波か……」

「そんなレベルの気功波を使う人間は初めてだ……」

「だが、妾には通用せんっ!!」

 ヤマタノオロチの首の一人が目を鋭くした。次の瞬間、かめはめ波が消し飛んだ。

「そんなんありかっ!?」

「そらっ!」

 驚くヴィクトリーを尻尾で打ち据え、地面に叩きつけた。

「ぐあっ!?」

「うおぉーっ!!」

 今度はルカがノームの力を使い、剣を構えて突撃する。

「ふふふ……今宵は楽しい宴になりそうだ……!」

「ほら、ほら、ほら……!」

 彼女の尻尾が、次々とルカを捉えようと迫る。彼はそれを次々と避けながら、大きく跳び上がった。

「うおぉっ!!」

 剣を振り上げ、強烈な兜割りを放った。

「遅い。」

 しかしそれはかわされ、彼女の首達がルカの体に巻き付いた。

「うわっ!?」

「離せっ!」

 ヴィクトリーはその首を蹴り、拘束を解いた。しかし、八つ首のうちの一体が不敵に笑う。

「ふふ……!!」

 その彼女は、目から破壊光線を放った。それは見事にヴィクトリーの背中に命中し、爆発した。

「ぎゃあっ!?」

「ヴィクトリーっ!」

 彼は悶絶しながらもルカを抱え、振り向きざまに破壊光線を放ってきた首に目をつける。そして、気功波を放った。

「っ!?」

 気功波は直撃し、爆発する。しかし、彼女にはあまり効いてないようだ……

「ほう……」

「妾の破壊光線をくらいながら、かなりの威力の気功波を放つとは……」

「やるな、あの少年……」

 ヴィクトリーは、地面に着地してルカを下ろした。

「くそっ……!」

「大丈夫か!?」

「な、何とか……!」

 ヴィクトリーの道着の背中が焼け、背筋が露出する。ヤマタノオロチの首達は、それを舐めるように見詰めた。

「おぉ……」

「いい体をしているな……」

「これは楽しめそうだ……」

 背後からの、嫌らしい声。

「うるせーエロババア!!」

 ヴィクトリーはキレ気味に、ヤマタノオロチに殴りかかった。

「ほれほれ!その程度か!」

「くそ……!!」

 ヤマタノオロチは八首がかりでヴィクトリーに襲いかかり、彼がそれに対応する。

「ぐぐぐ……うぐぐぐぅ……!!」

 数の暴力で、明らかに防戦一方になる。そこにルカが躍り出た。

「今だ……!!死剣・乱れ星ぃっ!!」

 剣が乱舞され、八首が切り裂かれる……筈の手応えが、剣から伝わってこない。

「効かんな……」

「なにっ!?」

 彼女達の一首が、ルカに頭突きをかました。

「ぅぐぁっ!」

「ルカっ!」

 彼は丁度、ヴィクトリーの足元に叩き伏せられる。

「くふふふ……」

 その瞬間、ヤマタノオロチの十六の目が光った。

「やべぇっ!」

 そして、無数のビームが二人に降り注いだ。凄まじい爆発の衝撃が、洞穴内を揺るがす。

「……ふう……」

「これで、抵抗は出来ぬ筈……」

 爆煙が晴れていく……そこに二人の姿は無かった。

「……!?」

「何処へ行った……!?」

「避けたのか……!?」

「いや、そんな馬鹿な……!!」

「じゃあ、消し飛んだか……?」

「いや、手加減はした筈だ……!」

 次の瞬間、背後から気配が動いた。ヤマタノオロチはそれに気付き、振り向いた。

「……この妾にも、移動が見えなかった……」

「お主ら、一体何をした……?」

「瞬間移動だ。」

 ヴィクトリーがフッと笑い、二人の戦士達は立ち上がった。

「調子こいてんじゃねぇぞ……!」

「僕達は勇者だ、お前なんかにはやられはしない……!」

 戦士達は、ヤマタノオロチにつかつかと歩み寄る。

「……さて、どうすんだ?ルカ……」

「やぶれかぶれにやるしか無いね……」

 ヴィクトリーは、ルカの方を向いて笑う。

「じゃあ、最低三ダウンは奪ってやろうぜ……」

「三ダウン……?」

「あぁ、まずは倒せなくても、すっ転ばせてやることに集中すんだ。そうしてダメージを積み重ねれば、いつかは倒れる筈だ……」

「ああ、そうだな……」

 二人はある程度進み出て止まり、ヤマタノオロチを見た。

「作戦会議は終了か?」

「まぁどんな作戦を立てようが、妾には通用せんがな……」

「せいぜい足掻くがいい……」

 ヤマタノオロチ達はそんな二人を嘲笑するかのようにクスクス笑っている。

「……があぁっ!!」

 ヴィクトリーが一気に気を開放する。

「10倍界王拳だぁああああああ!!!」

 ドオォッと気が吹きすさび、凄まじい熱風が辺りに立ち込めた。

「こ、これは……!」

 アルマエルマ戦の時に見せた、あの限界を超えた界王拳……!出し惜しみはしないということか!

「行くぞルカっ!!」

「おうっ!!」

 二人は並び、圧倒的なスピードで、正面から突進した。

「ぬぉっ!?」

 ヤマタノオロチは驚きながらも、尻尾を二人に振り下ろした。

「ちぇいっ!」

「はぁっ!」

「なにっ!?」

 二人は尻尾が当たる寸前で分かれ、ルカは右足に、ヴィクトリーは左足に来る。

「まずは僕からだ……!!」

 ルカは地面を踏み込み、その右足に魔剣・首刈りを放った。ノームの力が半分乗った剣技で、ヤマタノオロチの右足が浮かぶ。

「ぬっ……!?」

「だぁりゃあああああ!!!」

 次にヴィクトリーが、左足にローキックを放った。

「ぬぁっ!?」

「うぉおっ!?」

「何じゃっ!?」

 右足が浮かんだ彼女はそのローキックを食らって、その場で体が半回転するようにすっ転んだ。

「まずはワンダウンだ……!」

「この調子ならいけそうだな……!」

 何と戦士達は、ヤマタノオロチの巨体を早速すっ転ばせる事に成功したのだ。彼女の方はというと、初めてのダウンに気が動転していた。

「な、何だ……!?」

「こ、この妾が……!?」

「地についただと……!!」

 戦士達は構え直し、ヤマタノオロチと相対する。

「さぁ続けようぜ!ヤマタノオロチ!」

「あと二回は転んでもらうぞ!」

「ぐっ……!」

 戦士達と八つ首の大蛇との戦いは、危険な領域へと突入した……

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