もんむす・くえすと!の世界に降り立った1人のヒーローアバターの話 作:ジョーカー:ゼノ
無事、クィーン・ビーを倒した戦士達。だが、駆けつけた二体のアルラウネの暴虐が、昆虫族に襲いかかった。
無益な暴虐を目にした二人の戦士は、怒りを露にするのだった……
「それじゃあ、行くぜっ!」
「カラカラになるまで吸ってあげますね……!」
ルーティーはヴィクトリーに、アルムはルカに襲いかかった。しかし、ここで二人の気が跳ね上がる。
「……ふぅんっ!!」
「……だあぁっ!!」
「!!?」
戦士達の放った怒りの一撃でアルムは断末魔も残さずミズバショウの姿に封印され、ルーティーは壁にぶっ飛んだ。
「が、がはぁっ……!?」
とてつもない勢いで壁に叩きつけられる、ルーティー。
速すぎる一撃に、何が起きたかを理解するのに時間を要した。
「ば、馬鹿な……!アルムも私も、プリエステス公認の精鋭のはず……!!こ、こんな……!!」
「こんな筈じゃねぇってか?」
壁にめり込んだ彼女に、つかつかと歩み寄るヴィクトリー。その目には、怒りの炎が燃えていた。
「く、くそぉ……!!カナン姉妹さえ来れば、お前らなんか……!!」
「カナン姉妹……」
そう言えば、そんな奴も居たっけな。
「あぁ、そうだ!いくらオマエらが強くても、カナン姉妹には絶対勝てないからな!はっはっはっ」
「どらぁっ!!」
笑う彼女の顔面を、容赦なく蹴りつける。その手がビクンビクンと跳ね、やがてガクッと垂れる。それを見届けた後、足をそっと離した。
彼女の顔面には靴の痕がくっきり残り、目は白目を向いている。ただ気絶しているだけだし、命に別状は無さそうだ。
「ちょっと眠ってろおめぇ。」
「……」
その一連のやり取りを見ながら、ルカは考えていた。彼の服を、誰かが引っ張る。
「ねぇお兄ちゃん……どうして敵なのに助けてくれたの……?」
服を引っ張ったのは、今にも泣きだしそうなイモムシ娘だった。
「敵とか味方とか……そんなの、うんざりだよ……」
なぜ、こんな事になってしまったのだろう。僕達は、本当に勇者として正しい事をしたのだろうか……
「あたし達、負けちゃったの……?みんな、植物に食べられちゃうの……?」
「お前らだって、自分達が勝っていたら同じ事をしてただろう……?」
「……虐げられた弱者の痛みは、そいつにしか分からねぇからな。」
「やだよぉ、カナン姉妹に食べられたくないよぉ……あいつら、仲間達を百体以上も溶かして食べちゃったんだよぉ……」
まだ無垢な少女は、涙を浮かべながら二人の戦士に訴えた。
「カナン姉妹に食べられたくないから、がんばって戦ったんだよぉ……」
「……」
いったい、この戦いはどうなっているのか。どっちが悪くて、僕達は何に味方するべきだったのか。僕はただ、争いを止めさせたかっただけなのに……
ふと、騒がしい足音が聞こえてきた。
「まずいわよ、もうすぐここにも植物族の軍勢が……!」
「籠城ダ!最後ノ一体マデ戦イ抜クゾ!」
駆け込んできたのは、数名の昆虫娘達。いずれも怪我をしていて、その劣勢は明らかだ。その中に、入口付近で会ったモスキート娘も居た。
「人間……!?あんた達は……!」
「オマエモ敵カ!?」
「うるせぇよ……」
「敵とか味方とか……もううんざりだよ。」
戦士達は立ち上がり、ゆっくりと歩を進めた。昆虫娘達の横を素通りし、そしてゆっくりと巣の出入り口へと向かう。
「ヴィクトリー……植物族の軍勢はどれぐらいで、どの辺まで来ている?」
「六十体ぐらいだ。もうすぐそこまで来てるぜ。」
そのやり取りを見た昆虫娘達は、目を瞬かせる。
「人間……!?」
「オマエラ……マサカ、味方ヲシテクレルノカ?」
ルカとヴィクトリーは、一緒になって振り返る。
「言っただろう?敵とか味方とか関係ないって……!」
「俺達が……俺達が目の前の暴虐を止めなきゃなんねぇんだ!」
二人は正面を向き、巣の外へと歩み出る……そこでは、容赦ない敗残兵狩りが行われていた。
戦意を失い、逃げ惑う昆虫族の魔物達。それを追い、捕らえ、優越混じりにいたぶる植物族の魔物達。ツタを絡め、花びらで包んで養分を吸い取ったり、締め付けて弄んだり……様々な責めで、敗者達を弄んでいたのだ。
「うっわぁ……思ったよりひでぇな……!」
「命を何だと思っているんだ……!!」
二人の戦士の前に、三体の植物族が立った。キノコのアルラウネ、食虫植物のアルラウネ、でっかい花のアルラウネだ。
「あら、この戦いの功労者ではありませんか。あなた達のおかげで、我々は圧勝ですよ。」
「あんた達も、勝者の宴に加わりなさいよ。犯すなり食べるなり、思いのままよ……?」
三体はクスクス笑いながら、僕達の前に昆虫娘を転がしてきた。
「う、うぐぅ……!!」
昆虫娘達は、恐怖の表情でルカ達を見詰める。
「……」
「……てめぇら〜……!!」
どっちが正しいとか、どっちが間違っているとか……もうそんなのどうでもいい。
立場さえ違えば、昆虫族の方が植物族を虐げたりする。結局、そういう事だ。
つまり、結局の所……僕達に出来るのは、目の前の蛮行をやめさせる事だけだ!
「食べないのかしら……?それじゃあ……」
「はぁっ!!」
ヴィクトリーは昆虫娘を抱きかかえ、キノコのアルラウネの腹を蹴り飛ばした。
「!?」
「なっ……!?」
「でやぁっ!!」
ルカが剣を横一文字に払い、呆気に取られる二匹を封印した。
「ふえぇん……怖かったよぉ……」
「とっとと逃げろ……!」
ヴィクトリーは昆虫娘を巣に導き、またルカの横に並んだ。
そして、三体を倒してもアルラウネ達は間髪入れずに襲いかかってきた。
「……敵は六十体ぐらい……って言ったな。」
「ん……まぁな。」
「じゃあ、一人三十体がノルマだ!行くぞっ!」
「おうっ!!」
二人は構え、一直線に駆け出した。
「観念しなさい!裏切り者!」
「いくらあなた達が強いからといって、これだけの数に勝てるとお思いですか!?」
「うるせぇ!!」
「どけぇっ!!」
二人は、アルラウネ達に一撃放つ。
「あうっ……!!」
それで、二体のアルラウネがぶっ飛んで、宙を舞った。
「ふんっ!」
ルカの刃を横薙ぎして、もう一体も封印。
「このぉ……!後ろからなら!」
「よっ!!」
ヴィクトリーがその背後につき、飛びかかってきたアルラウネの顎を蹴り上げる。
「おのれ、人間共……!」
「よくも同胞たちを……!」
「うるせぇって……」
「どけって……」
前方に立ちはだかる二体が、襲いかかってくる……
「言ってるだろ!!!!」
二人の咆哮が重なり、二体のアルラウネをぶっ飛ばした。
「ぶ、武道家よ!丸腰の武道家から先に倒すのよ!」
アルラウネの一体がそう言うと、敵意の矛はヴィクトリーに集中した。
「離れてろルカ!」
「あぁ!」
ルカは迫り来るアルラウネ達を薙ぎ払いながら、離れる。
ヴィクトリーは彼女達の顔面を一斉に蹴った。そして、後方から迫ってきたアルラウネ達に、倒れながら足払いをかけた。
「きゃあっ!」
そのまま一回転し、周囲の敵達をすっ転ばせる。地面には、コンパスで描いたような円が描かれていた。
彼は起き上がり、腕をクロスする。
「はぁっ!!」
そして、両手を左右に突き出した。次の瞬間、謎の衝撃が発生し、敵達が吹っ飛んだ。
「きゃあああっ!!」
「な、何が起きたの……!?」
「き、気合いよ……!気合いだけでぶっ飛ばしたんだわ……!」
「どこを見てるっ!」
ルカはうろたえるアルラウネ達を薙ぎ払い、再びヴィクトリーと背中を合わせた。
「し、信じられない……!こ、こんな人間が……!」
「あなた達、本当に人間なの……!?」
「人間だから……こんなの黙って見ていられないんだ!」
「そーだそーだ!人間なめんな!」
二人は立ちはだかってくる植物族達を、斬って、殴って、倒しまくり……そして……瞬く間に、周囲は花と気絶したアルラウネだらけになり、まるで花畑のようになってしまった。
その花畑の中心に、僕達はたたずんでいた。
「……」
「……」
「……」
そこに、ふっとアリスが現れた。それに気付いたルカは、すぐに彼女の方を向いた。
「アリス……僕達は、間違っていたのかな?」
「貴様らの過ちは、争いの言い分を一方からしか聞かなかった事だ。自分は正義で敵は悪逆非道、こちらは被害者、戦いは望んでいない、守るための戦い……戦争では、みんなそう言う。嘘をついてる訳ではない、実際にそう信じているのだ。自分達は正義の側で、敵から理不尽な暴力を受けているとな……」
「……思えば、そうだったな……」
「……」
一方の話だけ聞いて、何も考えずに力を振るって……その挙句に、怒りに任せてアルラウネ達を封印してしまった。
彼女達は死んだわけじゃないし、封印を解くのも難しくないだろう。それでも、僕は後悔と自己嫌悪に苛まれていた。こんな僕の、一体どこが勇者なのか……
「さぁ、これからどうする……?」
「僕にはもう、分からないよ……」
このままプリエステスやカナン姉妹とも戦うのか、ここでプランセクトを去るのか……
「僕は、これから何をすれば……真の勇者なら、どうすれば……」
「虚像にすがってんじゃねぇ!!」
そうルカを叱咤したのは、ヴィクトリーだった。
「おめぇにはおめぇの正義があるだろうが!!おめぇのやるべき事があるだろうが!!」
「ヴィクトリー……」
「……」
アリスは真剣な、ヴィクトリーの顔を見て硬直してしまった。
彼はルカの胸ぐらを掴み、顔を近づける。
「おめぇがこの戦いに参加した理由は何だ!?真の勇者ならそうするからか!?違ぇだろ!」
「……この戦いに……参加した理由……?」
僕がこの戦いに参加した理由……
劣勢だった植物族の手助けをした理由……
植物族達の暴虐から、昆虫族をかばった理由……
「……弱い者が虐げられるのを、見ていられなかった……人間でも魔物でも、傷つけ合うのが許せなかった……」
「……」
彼はその言葉を聞いた後、胸ぐらからそっと手を離した。
「……俺はルカが何と言おうが、今からプリエステスとカナン姉妹をぶっ飛ばしに行く。今はそれが俺のやるべき事だ。」
「……一人で行く気か!?」
アリスは、ヴィクトリーの肩を掴む。
「……安心しろ、ぜってぇ何とかする。」
そう言ってその手を払い、走ってからプランの森へと飛び去ってしまった。
「……全く、あの脳みそ筋肉は……」
「……」
ルカは、飛んでいくヴィクトリーの背中を見つめていた。
「……と言うわけだ。奴には奴なりの理由があるのだろう。」
「……そうだな。」
「さっきの言葉、嘘じゃないのだろう?ならばその思いを忘れずにさっさと行ってこい。さもないとあいつ、殺されるぞ。」
「殺されっ……!?」
ルカは、目を瞬かせた。
「プリエステスは植物族達の女王だが……流石にあいつがプリエステスに負ける事はないにしても、カナン姉妹も控えている。あの脳みそ筋肉一人ではあまりにも絶望的だぞ……」
「……っ!」
魔物同士の戦いを見るのは嫌だが……仲間を見殺しにするのは、もっと嫌だ!
「なら、行かなくちゃ……プランの森へ!」
このまま放置していては、昆虫族の連中もヴィクトリーも嫐り者にされる。僕は、なんとしてもそれを止めたい。真の勇者としてではなく……僕自身として。
「どうするべきか、道を見出したようだな。忘れるな、戦いの理由は貴様自身のものなのだ……」
この言葉が終わった次の瞬間には、アリスの姿は消えていた。
「僕自身の理由で……か。」
真の勇者なら、こうする……本当の勇者なら、ああするべきだ……それに振り回され、結果的に僕は道を間違えてしまった。結局、自分の作り上げた理想の勇者像に踊らされていたに過ぎない。
それを、ヴィクトリーが気付かせてくれた。今になって分かった気がする……プライドの高いあいつが、僕の仲間になった理由が……だから、今からが僕としての戦いだ。目の前にいる、虐げられた者を守る……そのための。
「……急がなくちゃ!」
こうして僕は、プランの森へと向かったのだった……
流血表現
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もっとする
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このままでいい
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しなくていい