もんむす・くえすと!の世界に降り立った1人のヒーローアバターの話 作:ジョーカー:ゼノ
ウンディーネの泉の地下、四体のスライムと二人の戦士が対峙した。
「波っ!!」
ヴィクトリーはいきなり、かめはめ波をパープルスライムに放った。
「させないっ!」
それをレッドスライムが弾き飛ばし、ブルースライムと共に彼に襲いかかってきた。赤と青の猛攻が、一身にふりかかる。
「うわぁあ!バータとジースみてぇ!」
二人のコンビネーションに対応しながら、そう呟く。
「はあぁ……!」
ルカはノームの力を解放し、パープルスライムに突進した。
「させないよー!」
その眼前に、グリーンスライムが入ってきた。
「おらぁっ!」
「きゃあっ!」
そこにヴィクトリーが瞬間移動し、彼女を蹴り飛ばした。緑のスライムは、「べちょっ」という音と共に壁に叩きつけられる。
「なっ……!」
「死剣・乱れ星っ!!」
動揺するパープルスライムに無数の斬撃が叩き込まれ、大ダメージを与えた。
「ぐ……!」
グリーンスライムとレッドスライムとブルースライムは、ヴィクトリーに目をつけ、囲んだ。
「おい、マジか……!」
「ヴィクトリーっ!」
「君の相手は……こっちでしょ!」
パープルスライムはルカの後頭部を掴み、壁に顔面を叩きつけた。
「うぶっ……!」
「もう一回……!」
「そぉいっ!」
もう一回叩きつけようとした所で彼女の手を切り返し、雷鳴突きを一閃させた。
「うぐ……!」
「界王拳4倍!」
ヴィクトリーはというと、三体のスライムからの猛攻に対応していた。飛び交う粘液、粘液、粘液を弾いたり防御したりした……が、明らかに数の暴力で分が悪い。
「くそったれ……!」
「僕がパープルを倒すまで耐えるんだ!」
「期待してるぜ……!」
彼は三体の中から脱出し、かめはめ波を放った。彼女達はそれを、難なく避ける。
「動くんじゃ……ねぇっ!!」
「じゃあ動かないであげるわ。」
「っ!?」
彼の拳が、ブルースライムの中に入る。粘液状の体に拳が飲み込まれてしまったのだ。
「なっ……!」
ヴィクトリーの方に、目がいくルカ。
「余所見をしないのっ!」
そこに、パープルスライムからの攻撃が飛んできた。彼は身を反らし、顎をかすらせてギリギリで避ける。
「こんの……!!10倍界王拳ーーーっ!!!」
そんなルカの背後で、ヴィクトリーの気が爆発した。
「きゃあっ!?」
「わっ!?」
「なに……!?」
三体のスライムはその気にぶっ飛ばされ、壁に叩きつけられてしまった。
「よーし……俺は反撃開始といくか……!!」
ヴィクトリーはゆらりと揺れ、構える。
「な、舐めない事ね!」
「三人に勝てる訳無いでしょ!」
「馬鹿野郎おめぇ俺は勝つぞ!」
彼は飛びかかってきたグリーンスライムの腕を掴み、身を反らして背後から迫ったレッドスライムに叩きつけた。
「くっ!」
「はぁいっ!」
正面から迫るブルースライムにも、グリーンスライムを叩きつける。
「は、離しなさいよぉ!」
「くっ……!」
「グリーンを離しなさーいっ!」
レッドスライムとブルースライムが立ち上がり、彼に迫った。
「ふんっ!」
ヴィクトリーはグリーンスライムを振り回し、三体のスライムを巻き込む。
「うわっ!?」
「きゃ……!?」
「おりゃあぁーっ!!」
そして、洞窟の天井めがけてぶん投げた。粘液質な彼女を叩きつけられたにも関わらず、天井は派手に破壊され、砂埃がパラパラ降ってくる。
「はい、離した!」
パープルスライムは、ヴィクトリー達を見る。
「さ、三人ともっ!何やってるのよ、人間ごときに!」
「お前の相手は……!」
パープルスライムの背後から、ルカの声が響いた。
次の瞬間、彼は天井から彼女に強襲し、渾身の兜割りを放った。
「この僕だっ!」
「きゃあっ!」
その兜割りで、彼女はよろめく。
「あ、あぐっ……!」
「はあぁ……!!」
ルカはまたもや力を溜め……ふっと姿を消した。そして、彼女に背を向けながら剣を納めた。
「死剣・乱れ星……!」
剣が完全に納まったその次の瞬間、その体に無数の斬撃が走った。
「きゃああぁっ!」
全身を駆け巡る斬撃に、悶える。その前にヴィクトリーが現れた。
「はぁ……はぁ……!」
「……超龍閃撃!!」
彼女の胸に、ドムッと放たれる超龍閃撃。その鈍痛は全身に響き渡り、凄まじい衝撃が体を貫いた。
「きゃああぁーーーっ!!」
彼女は三体のスライムが倒れている所に、転がり込む。
「悪ィなぁ、あんまりにもスキだらけだったもんで。」
「このまま降参するなら、僕達はこれ以上危害は加えない……」
「とっととウンディーネに会いに行かなきゃならねぇんだ。頼むぜ。」
四体のスライムは、ぐぬぬと歯を食いしばりながら立ち上がる。
「ど、どうするのよぉ……?この人間達、私達の手に負えないんじゃない……?」
リーダーを追い詰めたことによって、メンバーにも動揺が走っているようだ。なんとか、ここは乗り越えられたか……?
「……仕方ありません。ここは、エルベティエ様にご協力を乞いましょう……!」
パープルスライムはそう言って、指をパチンと鳴らした。
「……?」
「……!!」
ヴィクトリーの体が、ゾワッとする。
でけぇ気を持った奴が近づいてくる……とてつもなくでけぇ気を持った奴が……!!
「……警告したのに、ここまで来るなんて……更に、私の同胞に手を出すなんて……」
不意に、異様な圧迫感が周囲に張り詰めた。そして、何度も聞いたあの不思議な声……
「くっ……何が来るんだ……!?」
「分かんねぇ……ただ、とてつもなくつえぇ奴が来るって事は確かみてぇだ……!!」
この異様な重圧感は、普通ではない。ヴィクトリーの言う通り、とてつもなく強い奴がここに近づいているようだ。
「さて、そういう事です。エルベティエ様自らが、あなた達を討伐なされるようで……」
「もう、あんた達も終わりなんだからね!エルベティエ様に溶かされて、ドロドロになっちゃえ!」
そう言って、スライム四体は姿を消した。
「……」
「……」
スライム達が立ち去った後でも、二人は固唾を飲んで立ち竦んでいた。
エルベティエという名前、何処かで聞いたことがある……
「アリスがそんな事言ってたような言ってなかったような……」
ルカはそんな事言ってたっけと思いながら、周りを警戒している。
「……ヴィクトリー、見ろ。」
見ると、地面から青い粘液のようなものが染み出していた。それは徐々に、女の体を形作り……そして、一体の妖魔として僕達に立ちふさがった。
「ぐっ……!」
「っ……」
な、なんてヤツだ……凄まじい気で全身が震えてやがる……
ルカもヴィクトリーの心情通り、ぞわぞわとした寒気により手が震えていた。
こいつは、今までのスライムとは別格のようだ……
相対しただけで、息苦しくなるほどの強烈なプレッシャー。それは、グランベリアやアルマエルマに匹敵する程だった。
「エルベティエってまさか……!」
ようやく、思い出せた。以前アリスが言っていた……僕達の出会っていない、最後の四天王……!
「あれだけ警告したのに、ここまで来てしまったのね……」
「来るなと言われると余計行きたくなる性分でさ……」
いつものヴィクトリーのジョーク口は、エルベティエの凍てつく視線により閉じられた。
「ここは、私の同胞達が静かに暮らしている聖域なの。」
「へぇ……」
「人間は水を汚し、スライム族の魔物の住処を奪っていった……そして、ここが私達が安息して生きていける最後の地。そんな場所まで、人間は土足で踏み荒らそうというの……?」
「いや、違うんだ!僕達は、魔物達に迷惑をかけに来たわけじゃない!」
ルカはエルベティエの凍てつく視線にも怯えず、一歩を踏み出した。
「僕達は、ただウンディーネに会いに来ただけで……」
「ウンディーネも、私と気持ちは変わらないわ……人間に会う気も無ければ、興味も無いの。」
エルベティエは冷酷にそう返し、徐々に気を高めていった。
「だから……ここに踏み込んでしまった代償を受けなさい。その体を、嫐って……溶かして……食べてあげる。」
そして、気を解放してきた。気が轟き、洞窟を揺るがした。
「ま、待てよ!俺達は……!」
「私達の住処を奪う者は……誰であろうと、溶かすわ……」
「くっ……!」
こいつは、今までの四天王とは違う感じだ。殺し合いではなく、戦士としての手合わせを望むグランべリア……僕達を見下し、手を抜いて戦っていたアルマエルマ……そもそも、最初から戦う気がないたまも……
だが、このエルベティエは違う。全く容赦なく、相手を始末するという冷酷な意志がありありと感じ取れた。
「ちょっとでも油断したら、あっという間にぶっ殺されちまうって事か……!」
「だな……!」
二人は今なれる限りの最高状態になり、エルベティエと対峙した。
「……」
エルベティエは、そんな二人をじっと見つめている……
「な、なんなんだ……?」
「な、なんか気持ち悪ぃぞおめぇ……」
「私は、人間が大嫌いなの。」
エルベティエの凍るような声が響く。
「なぜスライム族の魔物達が、ここで暮らしているか分かる……?人間達が水を汚し、生活環境を奪ったからなのよ……」
「そ、それは……」
人間と魔物の共存を理想とする僕にとって、避けては通れない問題だ。
「でも、人間は……」
「黙って。」
ルカの言葉を、エルベティエは重圧のある声で遮った。
「あなた達と意見を交換するつもりは無いの。スライム達を地下に追いやり、その聖域を汚そうとする……その報い、受けてもらうわ。」
「話し合いも通用しねぇのか……」
どうやら、エルベティエに容赦の二文字は無いらしい。グランベリアやアルマエルマの時と違って、本気の本気で僕達を倒そうとしている。
このレベルのモンスターが本気で来たら、僕達に勝ち目はない……!
「かめはめ波ーっ!!」
牽制に、ヴィクトリーがかめはめ波を放つ。
「……」
エルベティエはそれを片手で弾き飛ばし、彼の眼前に迫って掌を見せつける形をとった。
「……っ!?」
「嫐り溶かしてあげるわ……惨めに溶かされながら、私達の怒りと悲しみを知りなさい……メルトシュトローム!!」
次の瞬間、彼にドッパァアンッと粘液の渦が叩きつけられた。
「な……!?」
「まずは一人……」
彼女はそう言いながら、手をグーパーしてルカを睨む。
冗談じゃない、あんな威力の大技をまともに受けたら死んでしまう……!
「はっ!ヴィクトリーは!?」
ここで、ある事に気付く。ヴィクトリーの姿が見えない。
「……どうやら、チリの一つも残さず消えてしまったみたいね……可哀想に……」
「そんな……!」
僕が絶望しかけた、その時だった。
「っ!?」
彼女の背中に、かめはめ波が叩きつけられた。
「死んじゃいねぇよ……」
ヴィクトリーが、そう言いながらつかつかと歩いてきた。
「……瞬間移動ね。」
彼女はかめはめ波で消し飛んだ部分を再生しながら彼の方に向いた。
「やっぱ生半可な攻撃は効かねぇか。」
「それどころか、私を怒らせる結果になっただけよ……」
そう言いながら、またもや片手にエネルギーを溜める。
「なっ……あんな大技をチャージ無しで連発出来んのか……!?」
「今度こそ消えなさい!!」
そして手を突き出し、とてつもないエネルギーが爆発した──
「くそったれ!」
「うわあぁーっ!!」
ルカは、その手を切り上げた。彼女の大技は、全く見当違いの方向に放たれ、天井を穿った。
「なっ……!?」
「くっ!!」
そのまま、剣を振り下すが……
「邪魔よ……」
「なっ……!」
がら空きになった腹に手をつけられ、魔力でぶっ飛ばされた。
「ぐはぁっ!」
「……本当なら、この一撃で倒れてるはず……精霊の力ね……なぜ人間が、精霊の力を……」
「くそっ!」
ルカは大ダメージを受けてぶっ飛び、ヴィクトリーが彼をお姫様だっこするかのようにキャッチする。
「ちっ……!」
「消えなさいっ!」
エルベティエが真正面から突っ込み、腕を薙ぎ払った──が、腕は二人をすり抜ける。
「なっ……残像拳……!?」
「こっちだぁああああ!!!」
彼女の背後に、ヴィクトリーとルカが居た。
ヴィクトリーは10倍界王拳を使い、全力のかめはめ波を放とうとしていた。
「往生際の悪い子……」
彼女は片手にエネルギーを溜め、彼に向ける。
「かめはめ波ああぁーーーっ!!!!」
「メルトシュトロームっ!!」
そして、二人の大技がぶつかり合った。双方の技は相殺され、消し飛んでしまった。
「はぁ……はぁ……!くそったれめ……!!」
「そ、そんな……!」
「……」
エルベティエはどうか知らないが、ヴィクトリーは全力でかめはめ波を放ったのだ。その全力が、あっさりと相殺された……あんな技程度に……!
「も、もうムリみてぇだ……」
「く、くそぉ……!」
「観念したみたいね……それじゃあ……消えなさい。」
エルベティエは無情にも僕達に片手を向けて、エネルギーを溜める。
来る……最後の一撃が……
いきなり現れた最後の四天王、エルベティエの強襲により追い詰められてしまった二人の戦士達。二人の冒険は、もうここまでか……!?
流血表現
-
もっとする
-
このままでいい
-
しなくていい