もんむす・くえすと!の世界に降り立った1人のヒーローアバターの話 作:ジョーカー:ゼノ
ウンディーネの泉の地下洞窟にて、最後の四天王エルベティエと対峙した戦士達。だが圧倒的なパワーと容赦ない猛攻で、戦士達は追い詰められてしまった……
「も、もうだめ……だ……」
「俺達も……これまでか……はは、はははは……」
「今、楽にしてあげるわ……!」
エルベティエの気が爆発し、その手からメルトシュトロームが放たれた。そして、ドッパァアンッと二人に直撃したかに思われた……
「……?」
「こ、これは……!?」
見ると水の波動が魔法陣を描いており、二人を守っていた。
これは……そうだ、クラーケンも使っていたアレか……!
「る、ルカ……おめぇ、そんな技使えたのか……!?」
「いや、ヴィクトリーじゃないの……?」
「いいえ……これは……」
エルベティエが、背後に視線をやると……こちらに手を向けている下半身が魚のようなスライムのような魔物がいた。いや、ただのスライムじゃなさそうだ……
「あなたの仕業ね、ウンディーネ……なぜ、その人間達をかばうような真似をするの……?」
ウンディーネと呼ばれた魔物は手を下げ、彼女の隣に立つ。
「この人間達は、私に会いに来たの。あなたが勝手に始末するいわれは無いわ……」
「あなたも、人間が嫌いだったはずでしょう……?まぁいいわ……そうまで言うなら、あなたが始末しなさい……」
そう言うと、その体がドロドロと溶け、地面へと沈んでいく。そして、彼女はこの場から去ってしまった……
「……」
「た、助かったのか……?」
「いや……」
エルベティエが去り、ウンディーネと僕とヴィクトリーがこの場に残される。僕達の危機を救ってくれたウンディーネ……にも関わらず、友好的な雰囲気は全く感じなかった。
「おい魚スライム、何で俺達を助けた。」
「ウンディーネよ。その人間がシルフとノームを従えている以上、会ってみる価値はあると判断したの。」
ウンディーネは、ルカの方を見て続ける。
「そして、人間と魔物との融和を願っているのなら……力を試す価値もあるわ。」
「つまり、力を示せばいいんだな……!」
ルカは、剣を抜いて構えた。ヴィクトリーはその場から離れ、壁に寄りかかる。
「……?あなたは試練を受けないの?」
「悪ぃけど、俺は精霊の力なんて借りずに一人で戦いてぇんだ。」
「……ふぅん。」
ウンディーネは、改めてルカの方に向かい直した。
「それじゃあ、始めるわよ……」
「あぁ……!」
ルカは気を開放し、ノームの力を爆発させた。
「はああぁ……!!」
筋肉が張り、凄まじいエネルギーが体中から噴き出す。
「へぇ……」
「行くぞ……!」
「……」
ルカのやつ、全力か……!こいつは面白ぇ戦いになりそうだ……
「……」
ルカはシャッと素早く彼女の懐に入り、魔剣・首狩りを放った。
「ふんっ!」
彼女は当たる寸前の所で剣を白刃取りし、彼を睨んだ。
「言っておくけど、私はシルフやノームのように甘くないわ……あなたに資格が無いと判断したら、容赦はしないわ……」
「安心してよ、絶対に失望なんてさせないから!」
そう言いながら切り返し、その腹に蹴りを放つ。しかし、その足が粘液に捕らわれてしまった。
「なにっ!?」
「ふっ!」
彼女は彼の顔面に手を向け、気弾を放つ。彼はそれを避け、彼女を切りつけ、脱出する。
次に彼は剣を寝かせ、構えた。
「雷鳴突き!!」
そして、雷鳴突きでの一閃を放った。
「っ……」
その一閃をまともにくらうが……彼女は揺らぐことなく耐えていた。
「はぁっ!」
ルカはその背後で振り返り、横一文字に薙ぎ払おうとしたが、彼女は刃を掴んで止めた。
「ノームの力を少しは使えるようね……でも、それだと使いこなしているとは言えない……」
更には剣を弾き、彼の腹に一撃食らわせた。
「ごっふぅ……!?」
「たあっ!」
そして壁に殴り飛ばされる……
「くっ!」
かと思いきや、その身を翻して足を壁についた。
「へぇ、運動神経はなかなかね。」
「だぁっ!!」
そのまま壁を蹴り、一直線に突進した。
「はぁっ!」
「ふんっ!」
二人がぶつかり合い、ズドドド……と凄まじい打ち合いになる。しばらくそれが続いた後、バチッと二人は離れた。
「包んであげるわ……あなたの体……!」
「はあぁ……!!」
彼女が粘液質な体で飛びつこうとした瞬間、彼の姿が消えた。
「……っ」
飛びつきが空ぶった彼女は地面に転がるも、すぐに立ち上がる。その正面に、標的だった彼が背中を見せるように現れた。
「……死剣・乱れ星。」
そう言って、剣を納める。次の瞬間、彼女の全身に斬撃が走った。
「はぁ……はぁ……!どうだ!?」
ルカは振り返り、彼女の方を見た。
「……」
彼女はというと、動じた様子も無く彼を睨んでいた。
「な、なんだと……!?」
僕の最高の技を受けて、あの程度のダメージ。まずいぞ、このままじゃ勝ち目がない……!
「風と土の力を同時に使って見せて。その程度の事さえ出来なければ、精霊の力を使いこなした事にはならない……」
ウンディーネは突然、そんな事を提案してきた。
「い、いや……それはまだ……」
アリスが言っていた。今の僕の集中力では、二体の精霊を同時に呼び出す事はできないと……
「出来なければ、あなたに力なんて貸せない。資格の無い人間は、このまま私の餌食にしてしまうわ……ついでに、あそこの武道家もね。」
「なにっ!?」
「何だと……!?」
そんな事……させるわけには行かない!!
「……出来るか、ルカ?」
「あぁ……!」
やらなければ、やられる……!やられる訳にはいかないんだ!!
「来いっ!シルフーっ!!」
ルカは、シルフの力を開放してみせた。
「っ!?」
「……」
ルカの体から、風が吹き荒れる。それに続いて、地面もゴゴゴと唸っていた。そうして荒ぶっていたエネルギーが落ち着き、充実していく……
「かぁああああ……!!」
そして遂に、風と土の力を同時に身体に宿すことに成功した。かなりの集中力を食うが、何とか同時召喚が出来たのだ。
「す、すげぇ……すげぇ気だ……!!」
「はああああああ……!!」
「……二人の精霊の力、同時に扱う事が出来たようね。これなら、私の力も使いこなせるようになるはず……」
「……って事は……!」
ウンディーネは、ルカに微笑んだ。
「合格よ……水の力、あなたに授けてあげる……」
「やった!」
「やるじゃねぇか!」
二人は駆け寄り、ハイタッチを交わす。
これで、ウンディーネの試練に合格したのだ!
「あなたには、確かに私の力を使う資格があるようね……水の力は心に映す鏡。明鏡止水の心に投影する、澄み渡った一筋の刃……」
「え……?え……?」
正直なところ、何がなにやら分からない。どうやら、とても扱いが難しそうだ……
「かつて、四精霊の力をその身に宿した剣士が居たわ。彼は天賦の才を持っていたけれど、水の力を使いこなすまでには一年掛かったのよ。果たしてあなたは、どれだけの時間が掛かるのかしら……」
「修行しねぇとな〜!」
「あはは……一年か……」
ウンディーネは、笑う僕に手を向けた。その掌が、まばゆく光り……そして、彼女の姿は消える。
「これは……」
「どんな感じだ?」
「……」
僕の中に根付く、新たな力。水の流れのようなものが、自分の中にあるのを感じる。いや、中だけではない。その流れは外界にまで広がり、大きな潮流となるのが感じられる。
「風や土の時と同じだな……」
「……というと?」
シルフやノームの力を手に入れた時も、まず風や土が感じられた。それから徐々に慣れ、その力に干渉して風や土が操れるようになったのだ。この水の流れも、まず流れの感覚に慣れる必要があるだろう……
「へぇ〜……そいつはすげぇや……追い越されちまったんじゃねぇかな……」
「……」
確かに、これなら10倍界王拳に対抗できるか……?でも、お互いにまだ不完全な事には変わりないし……
「よし、上に戻ろう!」
「そうだな!もうスライムはゴメンだぜ!」
目的を果たした僕達は、意気揚々と洞窟を脱出したのだった。
「……遅かったではないか。」
「アリス……お前、そんなにヒマだったのか?」
見れば、周囲の地面にはいっぱい落書きがされている。
なんだか、変な顔まで書いてあるが……
「ドアホ偽勇者って……この顔、僕か!?」
「ど、ドアホ脳みそ筋肉……」
「ドアホ共め、そんな事はどうでもいい。それよりルカ、水の力はどのような感じだ……?」
ルカが水の力をアリスに説明している間、ヴィクトリーは地面に落書きを始めた。
「……ん?ヴィクトリー、それは……」
「あっ……」
アリスに、目をつけられてしまった。
見ると、地味に上手い絵でアリスの顔が描かれており、その額には……
「大食らいドアホ魔王……」
彼女は少し黙ってから、ヴィクトリーをギロッと睨む。すると、蛇部分の腹が裂け、おぞましい口を露出し、彼の上半身を咥え込んだ。
「うわぁあああーっ!!!」
「わーっ!!落ち着けーっ!!」
ルカは、バタバタと暴れる彼の足を掴み、引っ張った。そして、何とかヴィクトリーを救出した。
「た、助かったぜ……」
「地味に上手いのが腹立たしいわ……」
彼女はというと、尻尾でその落書きをぐしぐしと消した。
「全く……」
他人にやるのは愉快なくせに、いざ自分がやられたら怒るんだから……
「それで、話を続けようか。」
「うん……何か……自分の中に流れのようなものが広がって……それが拡散して……こう……分かるかな?」
「ふむ、全然分からん。……が、そういうものなのかも知れんな。」
アリスも、分かったようなフリして全然分からないようだ。ここで、ルカの中の精霊が語りかけてきた。ヴィクトリーはそれを感じ取り、彼の背中に手をつける。
「……それ、やる意味あるの?」
「精霊たちの姿がクリアに見える。」
……なるほど。
「大丈夫だよ〜!世界には、火、風、土、水の四つの力が流れているの。この四つの流れは、ルカやほかの人の人間にも流れてるんだよ。その流れを、ルカは感じられるようになっただけ。これも、ウンディーネちゃんのおかげだね!」
「へぇ……」
シルフはそう説明した後、ウンディーネの所に寄ってきた。
「これで、ウンディーネちゃんと一緒に遊べるよね!うわーい、やったー!」
ハエのようにウンディーネの周りを飛び回るシルフだったが……
「……」
ウンディーネが指パッチンすると、シルフは水に包まれてしまった。
「ごぼごぼ……ごぼごぼ……」
「おいおい……」
「あはは……」
とにかく、ウンディーネの力を使いこなすのは非常に難しいという。僕が非常に苦手な、精神の修練も必須のようだ。
「でも、頑張らねぇとな〜!四天王はめっちゃくちゃつえぇんだし!」
「あぁ、頑張るぞ!」
ウンディーネとの戦いにより、風と土の力を同時に使えるようになったのだ。修練を重ねれば、水の力も使いこなせるようになるはず。
「……ところで、エルベティエにも会ったようだな。」
「あぁ……めちゃくちゃ強かったし、容赦も無かったぜ。」
「それに、ひどく人間を拒んでいた……」
「低級なスライム族ほど、水の綺麗な土地でなければ生きられん。しかし人間が生息域を広めるにつれ、スライム族の住処は狭まっていった。自然が豊かなノア地方でさえ、この泉が最後の拠り所となっているようだな。」
「……」
「……みてぇだな……」
人間が生活をすれば、必ず水を汚してしまう。そうすれば、スライム族はその地域に住みにくくなる……そこには、人間と魔物の共存とは相反する問題があった。
「だから、エルベティエは俺達人間を敵視してんのか……」
「奴自身は極めて協力な妖魔、どこだろうが生きていけるだろう。しかしスライム族は、決して上級の者達ばかりではない。下級のスライム娘にとって、人間による水質環境の破壊は深刻なのだ。」
「まさか、そこまで追い詰められていたなんて……」
スライム族は、体に含む水の量が極めて多いことが予想できる。だからこそ、水質汚染の影響をモロに受けてしまうのだろう。
「これまでエルベティエは先代魔王や余の方針に従い、人間とは争わなかった。奴は元々、冷静で穏やかな性格なのだ。しかし今は……」
「人間には容赦なしの冷酷なモンスターになってんのか……凍りつくような気がビンビン感じたぜ……」
「……人間への憎悪や怒りが、奴を冷静から冷酷に変えたのだ……そんなエルベティエに、貴様らはどんな答えを与えてやれる……?」
二人は顔を見合わせた後、首を傾げて考えた。
「えっと……みんなが、水を汚さないようにするとか……」
「いや、無理だろ……」
「愚鈍かつ短絡的かつ実現性のまるでない答えだな。貴様は、水を汚さないよう訴えながら世界を回るつもりか?」
「やっぱり無理だよね……多分、誰も耳を貸してはくれないだろうし……」
アリスは、溜息を吐く。
「貴様は、人と魔物の共存を唱えている割には具体的なヴィジョンに欠けているな……とは言え、この難問を貴様ら個人に投げかけるのも酷かも知れん。答えを出すのは、『ヒト』という種族全体であるべきなのだからな……」
「アリスは、その答えを知っているのか……?」
「……その答えを出すのが、余の目的の一つでもあるのかもしれんな……」
魔物を倒すだけじゃなくて、こういう事も考えなければいけない。アリスに負けないように、自分達も答えを出さなければ……
「……一つ思ったんだけどさ、エルベティエはそんな悪いやつじゃねぇと思うんだ。」
ヴィクトリーが、急にそんな事を言い出した。
「え……?」
「ほう……」
「あいつだって自分の同胞のために戦ってるんだろ?視点を変えれば仲間想いのいいやつじゃねぇか。だから、話せば分かってくれる筈だ。」
アリスは嘲笑するように、彼を鼻で笑う。
「今はその話が通じない状態なんだぞ……」
「だったら、ぶん殴ってでも話を聞く姿勢を作ってもらうまでだ。」
彼はそう言い、拳をギュッと握った。
「俺達の第一目的は四天王を倒す事だ。そして、ルカの精霊は火の精霊のみだ。」
「確か、北のゴルド地方だったよね。」
ゴルド地方は山も多く、大きな火山も有名だ。そして、セントラ大陸最北部の港町ゴルドポートもこの地方にある。
「ルカも俺もここから更に強くなって、まずはあいつら四天王をぶっ倒す!ごちゃごちゃ考えるのはそれからだ!」
「ドアホめ……と言いたいところだが、それがいいだろう。」
ルカはバッと地図を開き、ヴィクトリーがすかさず覗き込む。
「じゃあ、次の目的はグランゴルド城だ。そこで情報を集めて、サラマンダーの居場所を調べよう。」
「くくく……今度はどんなご馳走が、余の前に待ち受けている事やら……」
「ゴルド地方は荒地が多いから、あんまり美味しいものは無いと思うよ……」
「な、なんと……」
「メシなんて腹が膨れりゃ上等だ。行こうぜ!」
ショックを受けるアリスと、やる気に満ちたヴィクトリーを引き連れ、北へと進む僕達。向かう先はセントラ大陸最北の地、ゴルド地方だ……
流血表現
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もっとする
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このままでいい
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しなくていい