もんむす・くえすと!の世界に降り立った1人のヒーローアバターの話   作:ジョーカー:ゼノ

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北へ……

北へと向かう僕達の前に立ちはだかったのは、ノアの大森林。ここを抜ければ、ゴルドの地だ。

「なぁ、アリス。魔王ってどうやって決めるんだ?」

ルカは、ふと思いついたようにアリスに質問してみた。

「そーいやアリスの母ちゃんも魔王だったんだろ?世襲制なのか?」

ヴィクトリーも、便乗した。

「……先代魔王が死ねば、時代魔王選抜が行われるのだ。次代魔王の第一候補者は、やはり先代魔王の娘。しかし魔王とは、何より力が問われる存在だ。単なる世襲では、力弱き者が魔王となってしまうという過ちもありえる。」

「うん、確かにそうだよね。」

「……まぁ、おめぇら魔族はよえぇ奴の尻に敷かれるのは癪に障るみてぇだしな。」

魔物にだって、プライドはあるからな。

「まぁな……そこで、全妖魔の中からも次代魔王となりたい者を募るのだ。魔王の座を希望する者なのだから、当然ながら腕には自信があるはず。そして先代魔王の娘と、我こそは次代魔王と自負する者の一騎打ちを行う。その戦いに勝った者こそが、新たな魔王になるのだ。」

「へぇ〜……おっそろしくめんどくせぇんだな。」

「そんな戦いなんかじゃなく、平和的に決められないのか……?」

「魔王というのは、全妖魔の中で一番強くなくてはならない。ただでさえ、魔物というのは自由気ままでプライドが高い。そんな連中を従えねばならんのだ、実力不足では話にならん。その一騎打ちにより、新たに位についた魔王の力を広く天下に知らしめる事にもなるのだ。」

「なるほど……」

非合理的にも見える王位争奪戦だが、新魔王の力を知らしめるデモンストレーションも兼ねてるって訳か。

「しかしこれまで、魔王の玉座に座ってきたのは初代様の時代よりアリスフィーズ一族のみ。それが、何故だか分かるか……?」

「さぁ……?」

「知らねぇ……」

その王位争奪戦にイカサマがある……なんて言ったらぶっ殺される。確実に。

「我が祖先達も、母上も、みんな……初代様の血族であるという誇りを常に持っていた。常に妖魔最強を志し、魔王の玉座にあるべくひたすら研鑽してきたのだ。それゆえに次期魔王を決める一騎打ちでも、他の妖魔に遅れを取ったことは無い。初代様、そして先代達に恥じぬ戦いを見せ、どの時代でと魔王の座に着いてきたのだ!」

えっへん!と胸を張って威張るアリス。

「そいつはすげぇや!」

「じゃあ、つまり……お前も魔王になる時は、誰かに一騎打ちで勝ったのか?」

アリスは、首を横に振った。

「余の王位継承時……魔族の歴史に例を見ない変事が起きた。次代魔王として手を挙げた挑戦者が、なんと四人も現れたのだ。」

「いぃっ!?」

「よ、四人……!?」

「あぁ……そして魔王の座は、その四人と余……総勢五人でのバトルロイヤルで争う事となった。」

「お、おめぇと張り合える奴が四人もいたのか……!?」

「ふむ、魔王の座に挑むほどの実力者が、ひとつの時代に四人も存在した……魔族の歴史上、類を見ない黄金期と言えるかもしれんな。」

「も、もしかして……その四人の実力者って……」

アリスは、こくんと頷いた。

「ああ……それが、現在の四天王なのだ。若くして及ぶ者のない剣才、龍人の天才児であるグランベリア。凄まじい魔力と卓越した体術を誇るサキュバスの女王、アルマエルマ。何代も魔王の教育係を務め、全妖魔の中でも最強という噂さえあるたまも。スライム族の突然変異、数万を超える意志を統率できる群体妖魔エルベティエ。そして余を含めた五人の乱闘は、当然ながら熾烈を極めたのだ……」

「その面子でバトルロイヤルか……なんだか、とんでもないな……」

「くぅ〜っ!その戦い、見てみてぇな〜!」

アリスは二人の反応を確認して、話を続けた。

「まず最初に脱落したのは、アルマエルマだった。ほんの僅かな攻防のみで、あっけなく降参を宣言したのだ。」

「その面子では、アルマエルマが一番弱かったのか……?」

「あの時のアルマエルマは、十分に余力を残していたように感じたがな。あいつは気まぐれだから、余にもよく分からん。」

「昔っからあんな奴なのか……嫌な奴だなぁ……」

ヴィクトリーは、後頭部に手を置いてそう言う。

「次に、たまもとエルベティエが潰し合う形になって脱落した。二人とも決してグランベリアに劣らないが、乱戦という形が災いしたのだ。」

「つまり、四天王の実力はだいたい互角って所か。」

「アルマエルマは底が見えねぇけど。」

「ふむ、まぁ戦いにおいての相性の差はあるが、その実力はほぼ互角といっていいだろうな。ともかく戦いは進み、余とグランベリアの一騎打ちという形になったのだ。グランベリアが繰り出した奥義には、さしもの余も一度は膝をついた……」

「おめぇ、膝ねぇだろ。」

ヴィクトリーは、アリスの下半身を見てそう言った。

「ジョークだドアホめ。」

「そんな事はどうでもいいから……」

アリスは咳をついて話を続ける。

「同じ技で二度も膝をつく余でもない。一度見たグランベリアの奥義を打ち破り、最後には余が勝利したのだ。」

「それで、アリスが魔王になったって訳か。」

「そんでもって例の四人も四天王になったってか……」

「うむ、魔王の座を狙えるほどの実力者に、次期魔王の力を示して納得させる……力をこそ全てである妖魔にとっては、最も遺恨の残らない方法だな。」

「へぇ……色々と考えてあるんだな。」

アリスは、キリッとした目つきになる。

「初代アリスフィーズ様がお決めになった事なのだぞ。海よりも深いお考えがあっての事なのだ!」

「わ、分かったよ……」

そんな会話を交わしながら歩いていると……

突如、カマキリ娘が襲来してきた。

「かぁっ!キモッ!やだっ!」

ヴィクトリーは、逃げるように下がった。

「っておい!逃げんな!」

「だ、だって気持ち悪いんだもん……!」

彼はそう言いながら、彼女を指差す。

「ギ、ギギ……男……犯す……」

カマキリ娘は両腕がカマキリのカマで、下半身はなんとカマキリそのもの。ゾンビゲームのクリーチャーとかに出てきそうな感じだ。

「……」

そして、女体部分はというと当たり前のように全裸。豊満な胸が露出されていて、ルカはそれに目を奪われていた。

「目ぇ覚ませーっ!!」

「ぶっ!?」

ヴィクトリーはそんなルカを殴り飛ばし、彼女の前に立たせた。

「し、しょうがないなぁ……」

僕は剣を抜いて構えた。丁度いい、ここで水の力を試してみるか……

「……はぁっ!」

ルカはウンディーネを呼び出し、その力を開放した。

「……何だ?これ……」

目の前に、水の壁が出来ている。これで、敵の攻撃を防ぐのか……?

「ギギギ……ギィーッ!!」

かと思いきや、彼女は水の壁を突き破ってカマを振ってきた。

「わぁっ!?」

僕は咄嗟にしゃがんで避ける。髪にかすってしまった。

「な、何だこれ……全然使えないじゃないか……はぁっ!!」

ルカは水の力を解除し、ノームの力を開放した。

「面倒だから、これで終わらせるよ……!!」

「ギ……!?」

彼姿がふっと消え、彼女の背後に現れる。

「死剣・乱れ星……」

そう言いながら、剣を納めた。次の瞬間、彼女の身体に無数の斬撃が走った。

「ガ……!?」

彼女はバラバラになり、消散してカマキリの姿へと封印されてしまった。

「……何なんだ、水の力のガッカリ性能は……」

あの程度だったら、ノームやシルフの力を使った方がいい。

「いやルカ、そもそも根本的に力の使い方が違うんだと思うぜ。」

「その通りだ、ドアホめ。」

見ると、ヴィクトリーとアリスは並んでいた。

「風の力や土の力とは違い、水の力は己の心に投影するもの。水の流れを心に投影する……すなわち、心に水を宿すという事なのだ。その動きに風を宿し、その身に土を宿し、その心に火を宿し、その技に火を宿す……何度も言っているように、この心持ちを極めるがいい。」

「それが、勇者ハインリヒの教えなんだね……」

勇者ハインリヒも、そうして強くなったのだという。同じようにすれば、僕もハインリヒのように強くなれるはず!

「貴様に欠けているのは、やはり精神の修養だな。剣の腕だけではなく心も鍛えなければ、勇者とは言えんぞ。」

「精神の修養か……苦手だけど、頑張るよ!」

「俺も手伝うぜ!」

「ほとんど本能で動くような貴様には無理だと思うがな……」

「うっせぇ!」

どうやら、精神の修行にはヴィクトリーも付き合ってくれるらしい。勇者ハインリヒに近づくためにも、意気込む僕であった。

 

さて、もうそろそろこの森も抜ける筈だ……森を抜けたら、すっかり夕暮れ時になってしまっていた。ここらで野営するか……と思っていたら、モンスターが現れた。

「ふふっ……可愛い子が、こんな時間にいけないわね。こわ〜いお姉さんの触手に巻き付かれて、弄ばれてしまうわよ……?」

下半身がタコのような触手を持ったモンスターが、強襲してきたのだ。

「タコ星人?」

「スキュラだよ。」

魔物の中でも知名度が高く、そして強い魔物。下半身の触手を用いた拘束攻撃が、かなり厄介そうだ……

「ふふっ、この触手でた」

「おりゃああっ!!」

ヴィクトリーお得意の不意打ちの拳が、その顔面を打ち抜く。そして、その不意打ちに倒れた彼女の顔面を踏みつけた。

更に、彼は跳び上がる。

「はい終わりっ!」

上空で両手にエネルギーを溜め、かめはめ波を放った。

「ひ、ひどい……」

スキュラは黒焦げになりながら、気絶した……

「よ、容赦ないなお前……」

「早くやれば早く終わるんだからいいだろ。」

北方の魔物は、強力だ。ヴィクトリーもこうしなければキツイものがあるだろう。

「……余のおなかはぺこぺこだ。そろそろ野営にするぞ。」

「戻ってくるなり、それか……」

まぁ、これもいつもの事。早速僕達は、野営の準備を始めたのだった……

 

夕食を終え、そしていつもの特訓の時間……

「ルカの水の力を体得するため、ヴィクトリーはそのついでに、今日から貴様らの緩みきった精神を鍛えるぞ。」

「う、うん……よろしく頼むよ……」

「つ、ついでにって……」

少し尻込みしながら、二人は頷くのみ。苦手な修行ではあるが、やるしかない。

「では、さっそく座禅を組め。そして心を無にするのだ。」

「あの、僕は悟りを開きたいんじゃなくて、強くなりたいんだけど……」

「……こうか?」

ヴィクトリーは、律儀に座禅を組んで手を合わせて目を瞑る。

こんな事をしていて、強くなれるとは思えない。

「ドアホめ、心を鍛えずして水の力を使いこなせるか!さもなければ貴様は、勇者ハインリヒの足下にも及ばんぞ!」

「そ、そう言われればやるしかないな……!」

……何だか、ハインリヒの名前がうまく使われているような気がするが……とりあえず僕もヴィクトリーの隣で座禅を組んだ。

「心を無にする……つまり、何も考えなきゃいいんだな?」

「……厳密にはちげぇよ。」

「何故貴様が答える。まぁいい、心を無にし、精神を水の流れに委ねるのだ。」

そう言われ、僕も目を閉じた……

何も考えるな……心を無にしろ……無だ……

……

……

「あぶねっ!?」

ヴィクトリーの声が響いた、次の瞬間だった。

「てぇいっ!」

「うわっ!?」

突然、アリスは僕達の頭に尻尾を振るった。ヴィクトリーは避けたみたいだが、僕はくらってしまう。

「な、何すんだアリス!」

「そうだ!」

「ルカ、何故避けられん!」

……逆ギレされた。いきなり頭を殴られて、よけろと逆ギレされた……

「……すねるなドアホめ。心を水の流れに委ねていれば、あの程度はたやすく(かわ)せる筈だ……」

「なるほど……俺、こういう修行なら得意だぜ!」

「……ほう?」

アリスは、ヴィクトリーに目をやる。

「たまたま避けれたんじゃないのか?」

「いや、自分で攻撃を察知して避けたさ……」

「本当か……?」

彼を睨みながら、アリスはゴソゴソと懐を漁る。

「これをつけるがいい。」

出したのは……アイマスクだった。

「種も仕掛けも無いぞ。」

「……はは〜ん、そういうことか……」

彼はそのアイマスクを着け、構えた。

「な、何が始まるんだ……?」

「まぁ見てろ……」

アリスはそう言い、そこら辺から木の棒を手に取った。

「……はぁっ!」

そして、それでヴィクトリーに殴りかかった。だが、彼はそれをかわした。

「ふんっ!」

「よっ!」

「はぁっ!」

「ほいっ!」

「せいっ!」

「あらよっと!」

……なんと、彼はアイマスクで視界を塞がれた状態のまんま、彼女の攻撃を避けまくっている。

「……ふむ、やはり本物か。」

「だろ?」

アイマスクを外したヴィクトリーが、ニッと笑う。

「……最も、俺が心にイメージしてるのは空だけどな。」

「空……」

「空か……」

三人は、空を見上げた。

「空のように静かに、雷より速く動く……こんな心置きだ。」

「なるほどな……空のように静かに……雷より速くっ!」

……何だか、難しそうだ。

「こうだ、まず心を無にする……ここまではアリスと同じだ。」

そう言うと、ヴィクトリーからたちまち気配のようなものが消え失せていった。

「す、すごい……何も感じない……」

「な、なかなかやりおるな……」

「次に雷より素早く動くっ!」

そう言うと、その姿が消えた。

「なっ……!?」

「後ろだ、ルカ。」

「大正解!」

彼は、背中を合わせるようにルカの背後に立っていた。どうやら、アリスだけが彼の動きを追えたようだ。

「す、凄い……全然見えなかった……」

「ついでにこんな事も分かる。ルカ、おめぇ今右手で自分の顎を撫でただろ。」

僕に背を向けたまんま、ヴィクトリーは言う。

「え……!?」

彼の言う通り、僕は右手で自分の顎を撫でていた。

「なに……!?」

「な、何で分かったんだ?お前、後ろに目でもあるのか……?」

「にひひ〜!」

ヴィクトリーは笑いながら、ルカ達の方に振り返った。

「おめぇは目だけでものを見ようとするから、俺の動きが見えねぇんだ。気配や僅かな空気の動き、それに勘……見るだけじゃなく、感じる事も大切なんだ。」

「な、なるほど……」

「……どうやら、貴様に精神の修行は余計なお世話だったようだな……」

見るだけじゃない、感じる事だって重要なのだ。僕には水の流れが根付いているんだ。必ず出来るはず。

「よ、よし……!」

僕は座禅を組み直し、静かに目を閉じた。まずは心を無にする……

感じろ、感じるんだ……

……

今、僅かに気のようなものが乱れた。そしてそれは鋭い殺意のようなものに変わり──

「てぇいっ!」

「あぎゃっ!」

次の瞬間、頭を張り飛ばされていた。

「う、うぐ……!」

「何をしている、ちゃんとかわせ!」

「でも、早くもいいセン行ったっぽいぞ!その調子だ!」

ヴィクトリーの言う通り、何かを感じ取れたのだ。風の流れを読むのとは違う。流れを察知するのではなく、僕自身が水となるイメージだ。

「よし、ガンガン来い!」

「急にやる気になったな……それでは、ガンガン行くぞ……」

「頑張れ〜!」

……

「てぇいっ!心と身体は一体!それを感じずして、水の力は使いこなせん!」

……

「てりゃっ!己の心の中にある水を感じ取れ!ウンディーネの水を、そこに投影するのだ!」

……

「ていっ!」

「あ、あうぅ……」

気づくと、ルカはボコボコになっていた。

「……そろそろ、やめにするぞ。」

「いや、もうちょっと……」

「いや、既におめぇの集中力は限界だ……これ以上やっても無駄っぽいぜ。」

「で、でも……」

ぐずるルカに、アリスは頭を抱えた。

「やれやれ……そんなに言うんだったら、新しい剣技を教えてやろう。」

「あ……」

「新しい剣技!?」

二人は、アリスを見た。

「よし、つべこべ言わずやるぞホイ!ヴィクトリーっ!貴様も手伝えっ!」

「あ、あぁ……!」

アリスが監修する中、二人の修行は続いたのだった……

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