もんむす・くえすと!の世界に降り立った1人のヒーローアバターの話   作:ジョーカー:ゼノ

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暴動

 情報収集を終えた夜……宿屋から「あひぃー」という声が響く。

 ヴィクトリーはそんな宿屋の屋根に座って、夜なのに働くアリ娘達を見ていた。

『はははって……俺達ここのアリ娘共が造反したりとかしても知らねぇぞ……』

「……」

 ふと、グランゴルド王との会話が頭によぎる。

「……まさか、な。」

 ヴィクトリーはそのまま後頭部に手を回し、寝っ転がった。

 空には、月が浮かんでいた。

「……」

 ちなみに、サイヤ人の特徴である尻尾はイリアスヴィルに来て二日目に切り落としてある。変な所で大猿になられても困るからな……まぁ、やろうと思えばまた生やせるんだが……尻尾は前に一本あればそれでいい。

「……」

 その月を眺めていたら、気づけば寝ていた……

 

 朝……

 街全体を揺るがすような爆発音で、目が覚めた。

「なんだっ!?」

 俺は起き上がり、街を見下ろす。見ると、アリ娘達が次々に住人達達に襲いかかっていた。アリの腕力で人々を抱え、どこかへと運んでいくのだ。

「いや……アリ娘だけじゃねぇみてぇだ……なっ!!」

 ヴィクトリーはその場で、廻し蹴りを放った。それは、背後から迫っていた者に当たる……

「……こいつは……!」

 なんと、メイドのような魔導人形が彼に襲いかかろうとしていたのだ。

「奉仕します……奉仕します……殿方に奉仕します……」

「お、おいおい……完全にキマッてやがるぜ……」

 この人形、オートマータ娘というらしい。殿方サマを満足させるために造られた人形みたいだが……どういうわけだか、暴走している。

 いや……こいつだけじゃないな……見ると、地上のマッドゴーレム娘まで人を襲っているのが見えた。

「奉仕します……」

「おっと、よそ見してる暇でもねぇか……」

 オートマータ娘はヴィクトリーに迫り、攻撃を仕掛けてきた。その拳を、腕でガードする。彼女の肢体は鉄で出来ており、ガードした腕が痺れた。

「い、いぢぢぢ……!」

「奉仕します、奉仕します、奉仕します……」

「よっ!はっ!おっと!」

 その攻撃を一通り避けた後、別の建物の屋根に飛び移る。

「さぁどうする、おめぇはここまで来れるか!?」

「奉仕します、奉仕します、奉仕します、奉仕します、奉仕します……」

 彼女は助走をつけて幅跳びし、彼のいる建物の屋根に立った。

「……マジで?」

「奉仕します……」

 動揺する彼に彼女は組み付いて、顔を近づけてきた。

「おらっ!」

 ヴィクトリーが、その顔面に頭突きを放つ。彼女は少し後方に、よろめいた。

「でやっ!」

 追い討ちに足払いをかけ、すっ転ばせる。

「よし……!」

 その足を掴み、屋根から飛び出した。

「おりゃあーっ!!」

 彼女の足を抱え、地面に思いっきりぶん投げた。彼女は頭から地面に激突し、地面に上半身が埋まってしまった。

 覗いている足はじたばたしてるままだが……まぁ、こうなってしまえば何もできないだろう。

 だが、この事態が終わっていないのも事実。アリ娘と人造モンスターが人々を強襲し続けている。とりあえず、ルカの所に行かなければ……

「……ルカの気は……これかっ!」

 俺は瞬間移動で、ルカの所に行った……

 

「待たせたな!」

「ヴィクトリーっ!」

 ルカは、グランゴルド城に向かう途中だった。

「無事だったのか!?……っていうか、ずっと屋根で寝てたのか……?」

「目覚めのいい朝だったぜ……それより、この事態は何だ!?いったい何が起きている!?」

「クィーンアントが復活して、お前の言ってた事が現実になった!ついでに人造モンスターもクィーンアントによって誤作動を起こしている!」

「OK、把握!」

 それだけ情報が揃えばいい。何で人造モンスターがクィーンアントによって暴走してるかなんて、聞いてもたぶん分からんだろう。

「……それにしても奇妙だな……このアリ娘共、住人達を城なんかに運んでどうするつもりだ……!?」

「分からない……ただ、グランゴルド城に人を集めている事は確かみたいだ……!」

「何で!?」

「女王蟻は城の地下に封印されているって話だ……おそらく、その女王の元に人間を集めているのだろう……何を企んでいるのかは分からないけど、とにかく急ぐぞ!飛ばせ!」

「おうっ!」

 二人は気を解放し、大混乱に陥っている大通りを突っ切り、グランゴルド城にへと突入したのだった……

 

 開け放たれてる城門を潜り、城の中へと飛び込む。

 城内の大ロビーには、多数の男性達が集まっていた。恐怖でうずくまり、ただ怯えている男性達……その中には、グランゴルド王の姿もあるようだ。

「タクサンノ捕虜、女王様ニ捧ゲル……」

「良質ノ遺伝子ノ主ハ、女王様ノ生殖相手……ソウデナイ者ハ、奴隷……」

「なるほどな……捕虜を集めてたってわけか……」

「だな……」

 大多数のアリ娘は城外で活動しているのか、ここの見張は少数。この程度なら……!

「俺があいつらをぶっ飛ばす!おめぇは住人達を!」

「分かった!」

 僕は、捕らわれてる人達の前に来た。

「助けに来た!さぁ、立って!」

「で、でも……」

「足がすくんで……」

 捕らわれてる人達は突然の事態で、思うように体が動かないらしい。

 すると、グランゴルド王は立ち上がった。

「皆の者!ここは勇者に任せるのだ!さぁ、私の後に続け!!」

 そう叫んだと思ったら、マントを翻して颯爽と城から飛び出していく。とっとと逃げたというべきか、なすべきことをその身で示したというべきか……それに続いて兵達も、住民達も……みんな王に続き、一斉に逃げ始めた。

「よし、後はアリ娘……」

 僕がアリ娘の方を向いた瞬間、彼女達のうちの一体が僕の所に飛んできた,

「わっ!?」

 そのアリ娘を撫で切って封印し、ヴィクトリーの方を見ると……

「もう終わってるぜ。こいつら、パワーはそこそこあるけどそれ以外は大したことねぇ。」

 そこにはヴィクトリーの足元には頬に拳の痕がついたアリ娘と、壁には上半身が埋まって足をじたばたさせてるアリ娘がいた。

「ン〜ッ!グゥッ!」

 そのアリ娘は何とか壁から出てきて、僕達を睨んだ。

「ハァ……ハァ……!」

「……もう結構です、妾の可愛い子供達。その人間は捨て置き、逃げた男達を集めなさい……」

 アリ娘の脳内に、突如女王の声が響く。

「デモ、コノ人間達ハ女王様ノ元ヘ行ッテシマイマス……」

「可愛いあなた達が、これ以上傷つくのは許されません。その人間達は、妾が相手をしましょう……」

「ワカリマシタ……女王様……」

 アリ娘は攻撃を控え、その場から去っていった……

「……」

「逃げるやつを追う暇はねぇ、女王をぶっ飛ばしに行くぞ。」

「あぁ……」

 クィーンアントを止めれば、この暴動も収まるはずだ……

「城の地下っていう話だけど、どこから行けばいいんだ……?」

「待ってろ、今床をブチ抜く。」

「いや、できる限り穏便に行きたい……」

 床にかめはめ波を放とうとしたヴィクトリーを止める。だがしかし、この広大な城で地下への階段を探していたらキリがない……

「……こっちだ、二人とも。クィーンアントの魔力がこちらから溢れ出ている。」

「あ、アリス……?」

 突如現れたと思ったら、アリスは僕達を城の奥へと導いてくる。僕達は慌てて、地下への階段へと踏み込むアリスの後を追ったのだった……

 

「おいアリス、どういう風の吹き回しだ……?」

「俺達には協力しないんじゃなかったか……?」

 アリスは僕達を先導しながら、顎を撫でていた。

「そのつもりだったが、今回は少し引っかかるのだ。人間の力で、クィーンをどう封印してきたのかがな……」

 そう言い、表情を曇らせる。

「それに、ゴーレム製造などの技術……あのようなものを、人間が手にしているのも不可解だ。魔王として、確かめておかねばならん……」

 アリスがそう呟いた時……

「おっ?」

 ヴィクトリーは僕の背中に手をつく。そしてその瞬間、僕の心におかしな三人の姿が浮かび上がった。

「ちぃぱっぱ!ちぃぱっぱ!あたまのお花がちぃぱっぱ!」

 ……シルフが何やら荒ぶっている。

「どうしたシルフ、タミ〇ルでも飲んだのか?」

「なんだか、様子がおかしいぞ……?」

「そうか?普段からこんなものだと思うが……」

「ちぃぱっぱ!ちぃぱっぱ!鳥さんぴよぴよ、ちぃぱっぱ!」

 ……いや、やはり様子がおかしい。

「……強固な結界の影響ね。もともと空っぽだった頭が、さらに気の毒になったみたい……」

 ウンディーネは、冷静に状況を分析した。シルフはそんな中でも相変わらずやかましく荒ぶっている。

「ちぃぱっぱ!ちぃぱっぱ!お魚ぴちゃぴちゃ、ちぃぱっぱ!」

「……」

 ノームはシルフを一発殴ってみる……が、依然としてシルフは荒ぶったままだ。

「ちぃぱっぱ!ちぃぱっぱ!ぐるぐるお日さま、ちぃぱっぱ!」

「……」

 次の瞬間、ノームはヒットの時とばし並のラッシュをシルフに放った。シルフはその攻撃を受け、落ちてしまった。

「おいおい……」

「ははは……」

 ともかく、シルフが気の毒な事になるくらい強固な結界が展開されているのだという。警戒しながら、僕達は長い階段を降りていったのだった。クィーンアントの封印されているという、最下層のフロアを目指して……

 

「な、なんだ……これ……!?」

「す、すげぇ……!俺達の世界の文明にまでは追いついていねぇけど、こんなサイバーパンクな所がこんな所に……!?」

 うなるような作動音を上げる、意図のわからない機械装置。壁や装置に備わった画面は点滅し、謎の文字や数式を映し出している。この世界で見たことの無いほど高度な技術が、この場所には惜しみなく使われていた……

「まさか、人間にこれほどの技術力が……!?」

 さすがのアリスも、驚きを隠せないようだ。ここまで高度なテクノロジーが、グランゴルドにあったなんて……

「ど、どうなってるのよ……!?なんで、制御が効かないの……!?」

 そこに、装置のようなものを必死に操作している魔導技師がいる。僕達は彼女の元に駆け寄り、問い(ただ)した。

「おい、この設備はいったいどうなってやがる!?」

「何が起こっているんだ!?」

「わ、分からないのよ……!封印術式が破られ、制御できなくなったの!既に思念や魔力が漏れ出ているし、クィーンアントも外に……!」

 いつの間にか人間に化けたアリスが、僕達を分けて入ってきた。

「おい貴様、少し聞きたいことがある。ここの装置や設備は、本当に貴様達が開発したのか……?」

「はぁ?今はそんな事を言ってる場合じゃ……」

「答えよ!ここの設備はなんだ!?」

 アリスは魔導技師の胸ぐらを掴み、顔を近づけた。そして目が妖しく輝き、それを直視した魔導技師は魔眼に囚われてしまった。

「……ここの技術は、私達が開発したものじゃないわ。無償で技術供与を受けたものなの……」

「無償で技術供与だと……?いったい、何者からだ……?」

「それは……私も知らないのよ……」

「ウソを言うな、知らない奴がタダでくれたとでも言うのか!?」

「アリス、その状態だと嘘は言えねぇ筈だ……」

「おっと、そうだったか……」

 アリスは、魔導技師の胸ぐらから手を離した。

「どういう事だ……?説明しろ……」

「あれは……五年前の事よ……」

 五年前……ホムンクルスの生成に苦心していた所に、あの赤髪の研究者風の女が現れたらしい。その女は、プロメスティンと名乗ったとか……

「何者だ?そのプロメスティンという女は……?」

「……」

「あ、あいつ……プロメスティンって言うのかよ……」

 その人物の特徴は、見覚えがある。北のお化け屋敷や、リリィの館で見たあいつと同一人物として見てもいいだろう。

「最初は、在野の魔導師が売り込みに来たのだと思ったわ。でも……彼女が提供した魔素濃縮炉は、とんでもないものだった。ほとんど原理不明の、いわばオーバーテクノロジーの産物。あまりに高度すぎて、原理も分からないまま使わざるを得なかったわ……それからも、プロメスティンからの技術提供は続いたの。特殊磁場発生システム、空間位相転移技術、他にも色々……そうしてグランゴルドは、わずか数年で魔導科学立国への道を歩んだ。それは我々の素晴らしい研究成果、王までがそう思い込んでいたの……その実、私達が生み出した技術は何も無い。借り物のテクノロジーを、原理不明のまま使っていただけなのよ。」

 ヴィクトリーは長ったらしく話すアリスや魔導技師を横目に装置の画面を見ながら、パネルを操作していた。

「ヴィクトリー、動かせるのか!?」

「機械には弱いけど何となく分かる……分かるけど結界の再構築は無理みてぇだ……」

 パタパタとパネルを押しながらカチカチとボタンを押す。エラーコードに目を通しながらパネルを操作するも……

「くそっ!メインシステムが制御できなくなった!封印がぶっ壊される!」

「えっ……!?」

 アリスや魔導技師達はヴィクトリーの声に反応する。そして、魔導技師の方は脱兎のように逃げてしまった。

「……この気……アリの代表が来るらしいな……!」

 ヴィクトリーがそう言うと、異様な緊迫感が周囲に広がった。どうやら、凄まじい戦闘力を持ったやつがここに来るらしい。

「……どうやら、本当に封印が解けたらしいな……」

「貴様にも、それが分かるようになったか。ともかく、さっきの話は……」

「それより、今は目の前の強敵に集中しようぜ……」

「あぁ……!」

 二人は構え、臨戦態勢に入った。怒りと敵意に満ちた気が、ここに近づいてくる……

「……そうだな。この反乱劇も、魔王として放置はできんようだ。」

 アリスは背を向け、僕達から離れる。

「……少しばかり、席を外すぞ。この場は、貴様らに任せる。」

 そう言って、アリスは姿を消してしまった。放置できないと言ってた割には、いつものように高みの見物か……?

「……おいルカ……相手は相当ご立腹らしいぜ……」

「そうみたいだな……」

 怒気を孕んだ凄まじい気が、一歩一歩近づいてくる……そして、それは戦士達の前に現れた……

流血表現

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