もんむす・くえすと!の世界に降り立った1人のヒーローアバターの話 作:ジョーカー:ゼノ
グランゴルド城の地下……
二人の戦士達の前に、凄まじい怒気と戦闘力を持った魔物が立ちはだかった……
褐色の肌、銀色の髪、黒い複腕……そして頭の王冠。間違いない、こいつがアリ娘達の代表、クィーンアントか……
「妾は、一万の蟻を束ねる女王……人間よ、妾の前に立ちはだかる汝は何者です?」
「俺はヴィクトリー、こっちはルカ。」
「ただの偽勇者一行だよ……あんたが、この反乱を指示してるんだな?」
クィーンアントは、頷いた。
「えぇ、その通りです。長い封印の間に妾の思念は強まり、外部にまで届くようになりました。それを我が子達に伝え、人間と戦うように指示したのです。妾自身もようやく脱出が成り、もはや我が眷属を縛るものは何もありません。」
「おめぇのせいでグランゴルド城が大騒ぎになってんだ。今すぐやめさせろ。」
俺は指をボキボキと鳴らしながら、クィーンアントに歩み寄った。正直、自分でもデリカシーねぇなと思ってる。自分の子供達があんな使われ方をしていたんだから、そりゃ怒髪天を衝いても仕方ねぇとは思うけど……
「許してやってやれよ。人間ってのは過ちを重ねて……」
「ふんっ!!」
説得を試みたヴィクトリーは、有無も言わさずにバキィっとぶん殴られた。そのままぶっ飛んで壁に激突し、壁は粉砕する。ガラガラと砕けた壁の瓦礫をかぶってしまった。
「ヴィクトリーっ!」
「……許せません……機械装置の封印に閉じ込められ、娘達を奴隷のように酷使される……その怒りが、汝達に分かるのですか?人間ごときに、愛する娘達をひどい目に合わされた悲しみが!!」
「……」
「……」
軽々しく、分かるなんて言えない。彼女の言う苦しみは、同じ目に合った者しか理解できないだろう。それでも……
「僕からも頼むよ……こんな復讐なんてやめてくれ。この町の人達も悪かったけど、これじゃあんまりだよ……」
「ふっ、戯言を……この町は、もはや妾と子供達のもの。これからは、人間が妾達の奴隷なのです。そして若いオスは、妾や娘達の性奴隷。イキの良さそうな汝達も、妾の性奴隷にして差し上げましょう……」
クィーンアントの言葉が終わった時、瓦礫の中から舌打ちが鳴った。
「何だよ、結局やる事は人間達と一緒じゃねぇか……へっへっへ……」
ヴィクトリーはそう言いながら立ち上がり、服のホコリを払う。
「さぁて、おめぇみてぇな奴はぶっ飛ばさねぇと分からねぇタチのようだな……悪いけど、手加減しねぇぞ……」
「僕もだ……始めから全力で行かせてもらう……!」
「ふふっ、戦うつもりなのですか……?蟻の女王に対し、たかだかヒト風情が……」
クィーンアントはそう言って、構えた。
「僕は、あんたを悪党だと思っていない。あんたの怒りには、正当な理由がある……」
「あ、俺もだぜ?」
二人も構え、クィーンアントに向かった。
「……ならば、何故妾に剣を向けるのです?」
「城を一つ丸ごと征服すれば、人間側だって黙っちゃいない。各国から、このグランゴルドに解放軍が押し寄せてくるだろう……」
「そうなっちまうと、人間と魔物の大戦争が起こるぜ……そうやって憎しみと報復は繰り返される……」
「……だから、妾の怒りは黙って呑み込めと?汝は加害者を哀れみ、被害者に寛容を説くので」
「おりゃあっ!!」
ヴィクトリーはいきなり踏み込んでクィーンアントの顎に膝蹴りを叩き込んだ。不意打ちの一撃は確かに効いたらしく、彼女はダウンしてしまった。
「さっきのパンチのお返しだ……」
「……ぐ……!」
彼女は立ち上がり、距離をとった。そこに、ルカが飛び込んできた。
「瞬剣・疾風迅雷!!」
「ぐぅっ!?」
凄まじい威力の突きは直撃し、彼女をぶっ飛ばした。しかし、彼女は床に踏ん張って、ダウンを免れる。そして、二人をギロリと睨みつけた。
「……なるほど、私も手加減無用と言うわけですね……はぁっ!!」
その気が爆発し、凄まじい衝撃が辺りに響いた。
「……ディーナ以上だ……!」
ヴィクトリーが、そう呟く。
「なっ!?」
プランセクト村、あのカナン三姉妹の長女ディーナ。僕達をさんざん苦しめ、やられる一歩手前まで追い込んだが……クィーンアントはそんな奴より強いのか……!?
「10倍界王拳!!」
「シルフっ!!」
二人も気を解放し、突撃した。そして拳と拳と剣技の打ち合いが始まった。
「ふふふ……やはり所詮は人ですね……」
クィーンアントは踏ん張り、二人の拳と剣を止めた。
「なっ……!?」
「なに……!?」
「はぁっ!」
そして複腕で二人の腹をぶん殴り、ぶっ飛ばした。
「がはぁっ……!!」
「ぐっ……!!」
ルカはぶっ飛んだが、ヴィクトリーは耐えた。
「おりゃあっ!」
そして反撃に、その頬をぶん殴った。
「ぶっ……!?」
彼女は揺らいだが、踏ん張って殴り返した。
「こんの……!」
彼は鼻血を垂らしながら、またそれをぶん殴り返す。が、彼女は背を向けるように腕をいなし、その腕を掴んだ。
「なにっ!?」
「はぁっ!」
そして、彼を思いっきり背負い投げた。
「ぐっ……!」
「クィーンっ!!」
そこにルカが、天井から身を投げ出してきた。
「天魔頭蓋斬っ!!」
「くっ……!」
「あぶねっ!」
クィーンアントが先に避け、ヴィクトリーも体を転がして何とか避ける。
「行ってこい!」
「分かった!」
ルカは突進し、剣を振るった猛攻を仕掛けた。
「くっ……!失せなさい!」
彼女は、その顔面に拳を放つ。彼はそれを見切り、その懐に潜り込んだ。
「なにっ!?」
「魔剣・首狩りっ!」
彼女の喉元が突き上げられ、体が宙に浮く。その時、ヴィクトリーがその眼前に瞬間移動し、顔面に肘打ちをして床に叩きつけた。
「がはぁっ……!」
「瞬剣・疾風迅雷!」
床にバウンドした彼女に、彼の技が一閃した。
「ぐ……!」
その体が再び宙に浮く……その足を掴んだのはヴィクトリーだった。
「おりゃあぁーーーっ!!」
そのクィーンアントをグルグルとぶん回し、ルカの方にぶん投げた。
「はああぁ……!!」
ルカに彼女が直撃する瞬間に、彼の姿が消えた。そして、彼女は壁に思いっきり叩きつけられた。
「がふっ……!」
ルカはその背後に背を向けるようにして、現れた。
「……死剣・乱れ星。」
そう言いながら剣を納める。次の瞬間、彼女の体中に無数の斬撃が走った。
「きゃああああっ!?」
クィーンアントは、その技で完全にダウンしてしまった。
「うぅっ……ぐぐぐ……なんという力……」
彼女は倒れた状態のまま、何とか身をよじって僕達の方を向く。ヴィクトリーは掌を、ルカは刃をそのクィーンに突きつけた。
「降参しろクィーンアント。今のおめぇじゃ俺達には勝てねぇ……」
「……頼むから、こんな事はやめてくれ。さもないと、あんたをまた封印しなくちゃいけなくなるんだ。」
クィーンアントは、二人を睨みつけた。
「降参する気も無いし、復讐をやめる気もありません。この町を支配し、全ての人間を奴隷とするまで妾の気は晴れないのです。」
「……」
「そうか……」
仕方ない、命まで奪うわけではないのだ。しばらくの間、封印させてもらおうかな……
戦いが再始動しようとした、その時だった。
「待てっ!」
その場に飛び込んで来たのはアリスだった。しかも、グランゴルド王の首根っこを捕まえてぶら下げている。
「……何者です、汝は?妖魔が、こんな所に何の用件で……」
クィーンアントはまじまじとアリスの顔を眺め……その顔が、驚きの表情で硬直した。
「まさか……貴女様は!?」
「いかにも、貴様が悟った通りだ。しかし余の素性など、今は関係ない。」
アリスは、グランゴルド王を床に転がした。
「少しばかり、この男から話があるようだ。クィーンアントよ、とりあえず聞くがいい。」
とりあえずクィーンアントとグランゴルド王の話が始まったが……ヴィクトリーはちょいちょいと僕の肩を引っ張ってきた。
「ん……?」
「話が済んだら呼んでくれ。」
小声でそう告げると、ヴィクトリーは例の装置の所へ走った。その様子に皆の視線が殺到する。
「武道家……汝はふざけているのですか……!?」
「グランゴルド王の話を聞け。あいつはこういう重い話は苦手なんだ……」
アリスは、激昂するクィーンアントを静止した。俺はそんな連中を横目に、装置のパネルを操作する。
言語はよくわからないが、操作の勝手は俺達の世界のコンピュータと一緒らしい。ついでに携帯端末とライトニングケーブルも取り出し、何処かにUSBを挿せる所が無いかダメもとで探してみる……
「これか……?」
何であるんだよ。そうは思いながらも、とりあえずUSBを挿し込んで端末に繋いだ。
「……っ!?」
吸い出した情報から、思いもよらぬロゴの画像が表示された。
「ば、馬鹿な……どういう事だよ……!?いや、これが『そう』なら、俺の携帯に対応するのも納得できる……だけど……!!」
出てきたのは……カプセルコーポレーションのロゴだった。しかも、エイジ753年当時の。この時代は、天津飯が天下一武道会で優勝したり、少年悟空がピッコロ大魔王を貫いたりした時代……ここの技術が少し遅れていると考えると、考えやすい。だが、驚く事はこれだけじゃなかった。
「この装置、カプセルコーポレーションの技術で改良されたものか……つまり、改良前はノーヒントで誰かが一から作り上げたって訳か……」
ありえない。流石にありえない。この世界の時代は、ルネッサンス初期の時代のはずだ。それなのに、こんな高度な技術をノーヒントで生み出して、更に別の世界の機械とも適合させるなんて……
「……」
「……ヴィクトリー、話は終わった。行くぞ。」
「さっきからどうしたんだ……?」
ルカとアリスが、俺を呼ぶ。どうやら、話は終わったらしい。こっちも、情報を吸い出す作業が終わった。
「あぁ、分かった……」
「……結局、汝は最後まで話に参加しませんでしたね……」
「……すっごく顔色が悪いよ?大丈夫かい?」
「……」
俺はこの部屋を出ていく寸前で振り返り、装置にかめはめ波を放った。装置は爆発し、完全にショートしてしまった……
「あぁっ、なんて事を……」
「……」
「本当に、君達には世話になったね。この感謝、言葉では言い尽くせないよ。」
キリッとした表情のグランゴルド王が俺達に言う。
俺達が集められたのは、謁見の間ではなく、町の集会所だった。グランゴルド城はボロボロなので、しばらくは入れないのだ。町の修復作業には、クィーンアントやアリ娘達も協力してくれるらしい。
「妾も、また同じ過ちを犯してしまう所でした。妾が虐げようとしたこの町の住民達も、必ず誰かの子であり、誰かの父や母かもしれない存在。妾が娘達を愛するのと同様に、人間達にも深い絆があるはず。それに気付いた以上、妾の目にはもはや、人は下等な存在などと映らなくなりました。」
クィーンアントの怒りは収まり、今は優しげなたたずまいをしている。
「妾達がひどく破壊してしまったこの町、妾達が復興に協力します。その後は……まぁ、その後ですね。我が娘達も、この町の暮らし自体は嫌いでは無いようです。人間達が許すのであれば、ここに根を下ろしたいのですが……」
グランゴルド王は、頷いた。
「このグランゴルドは、人と魔物の共存が最も成功した町と言われてきた……でも今思えば、あんなものは共存とは呼べない。これから真の共存を築いていくべく、尽力しようと思っているよ。」
「それは、妾もしても同じ事。人との歩み、模索することも悪くは無いでしょう……」
こうして、円満に事は解決した。結果的に人間と魔物の共存の橋渡しができて、良かったんじゃねぇか。だけど、これからの事は両者次第だ。仲良くできるといいな。
「ルカ君達は、人間と魔物の共存のために旅をしているのだったね。その想いが、このグランゴルドを救ってくれたんだよ。」
「いえいえ、グランゴルド王も立派だと思います。自分の過ちを認め、アリ娘達に謝罪する決断をするなんて……」
「普通の奴じゃ出来ねぇ決断だ。王様、おめぇ変わったな……」
「いやいや……」
グランゴルド王は、自分が変わった経緯を語った。どうやら、アリスが彼に喝を入れたらしい。
「無自覚とは罪なものだ。私は本当に愚かだった。君達の仲間のおかげで、私はようやく目が醒めたんだよ。」
「そうだったんですか……」
「あははっ!あいつらしくねぇな!」
どうやら、僕達が戦っている間にアリスはグランゴルド王の所に行ってたらしい。確かに、あいつらしくない……かも……?
「そういうわけで、君達には感謝したくてもし足りない程だ。何か礼がしたいのだが、今は復興で手一杯でね……」
「礼なんて結構ですよ。なぁ、二人とも。」
「あぁ!すげぇ奴にも出会えたし、俺は満足だ!」
「うむ……礼など……」
ご馳走が出ないからなのか、アリスは何だか悲しそうだ。
「と、とにかく……僕達は、そろそろ行きますね。まだまだ、やらなければいけない事がありますから。」
「そうか……名残惜しいな、旅の人……」
「ありがとうございました、人間の勇者一行……そして……」
クィーンアントは、アリスの方に向いた。
「……余は、旅のグルメだ。」
クィーンアントは意外そうな顔をする。
「……ありがとうございました、美食家の方。この御恩は、一生忘れません。」
二人が見送る中、僕達は集会所を後にしたのだった……
通りでは、町の人々が崩れた路面を補修していた。そして、それを手伝うアリ娘や人造妖魔……
ほんの僅かな期間に、この町は見違えたと思う。
二人が会話してる間、俺はずっと端末のカプセルコーポレーションのロゴを見ていた。
何故だ……?何故、このロゴが……?もしかして、この世界から俺の世界に来たやつが居るのか……!?
「……なぁ、どう思う?ヴィクトリー。」
「えっ!?俺っ!?」
いきなり、アリスから話を振られた。
「どうしたんだ?そんな険しい顔で光る薄い箱なんて見つめて……」
「あ、まぁ……何でもねぇよ。」
俺はゴホンと咳をつき、端末をしまう。
「……人間も魔物もまだ互いを理解できてねぇんだ。この前言っただろ?『争いを生むのは悪なんかじゃない、それぞれの規範や理想の対立だ』って……」
「ふむ……」
「だから……ここからお互いに歩み寄っていかねぇと。待ってるだけじゃ訪れねぇんだから……」
「そうだな……」
「だけど、歩み寄る過程にも障害があるんだから……」
世界中で暴れる四天王。そいつらを何とかしないと、少なくとも人間の側は魔物との共存なんて考えないだろう。
「それを何とかするのが、俺達の使命だ……頑張ろうぜ。」
「……あぁ……それにしても……」
「……プロメスティンって奴の事か?」
「……」
僕は頷いた。城の地下にあった、高度な妖魔封印設備。それらの技術を提供した、プロメスティンという人物……その素性も目的も、全くもって不明のままだ。
「ヴィクトリーはあそこで何かやってたみたいだけど……何か分かったのか?」
「……さっぱり分かんなかった……」
今、こいつらに話しても無駄だろう。とりあえず今の段階では黙っておこう。
「それにしてもあの技術、人の世のものとは思えなかった……」
「人じゃない……?じゃあ魔物なのか……?」
「……さぁな。」
それ以上は、アリスは語らなかった。
アリ娘との諍い、そして和解。得体の知れないままのプロメスティンという女……
謎を残したまま、僕達はグランゴルドを後にした……
流血表現
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もっとする
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このままでいい
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しなくていい