もんむす・くえすと!の世界に降り立った1人のヒーローアバターの話   作:ジョーカー:ゼノ

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淫魔に染まる村

 偽勇者二人は、走る。淫魔に瘴気に染まった、村の大通りを。

 男達のけたたましくも、痛々しい喘ぎ声が響く。女達の快楽を貪る鳴き声が聞こえる。男の精の匂いを上書きするような、彼女達の甘ったるいメスの香りが鼻腔をつく。そんな空気が彼らの肌を舐め回し、劣情を煽ってくる。

 嗚呼、彼女達はサキュバス。男を貪り、その精を食らう悪魔。淫靡で禍々しく、美しくもおぞましい。

 紫に光る月は、村を妖しく照らす。それに照らされながら、彼らはひたすら迫り来るサキュバスを倒しながら、宛も無く走っていた。

「でやぁあっ!!」

 天使の剣(エンジェルハイロウ)は、振るえば彼女達の変異を解くことが出来た。

 然し、切っても切っても彼女達は現れる。其れも当然か、このサキュバス達は、元々村に住んでた女性がサキュバスの瘴気にあてられ、変異してしまったモノ。この村は女性人口が多かったのだろう。

「ぐ……!!」

 ヴィクトリーは、手加減を込めながら両手に気を集約させる。かめはめ波で、彼女達の集団を吹き飛ばそうという算段だ。

「かめはめ波ーっ!!」

 光の飛翔と共に、青き波動が飛ぶ。其れは一直線に、彼女達へ伸びる。

「あはっ……!」

 集団のうちから、一体が前に出てくる。彼女はおもむろに、迫り来るかめはめ波に手を向ける。

 それが触れた瞬間、なんと彼女の手がかめはめ波を飲み込んでしまった。

「な……!!?」

「ヴィクトリー、アレはエナジードレインって技だ!」

 驚くヴィクトリーに、ルカが来る。二人は背を合わせ、互いをカバーする。

「エナジードレイン?」

「ああ……読んで字のごとく、対象のエネルギーとかエナジーとかを吸っちゃうんだ……特に、レベルドレインっていうのが厄介でね。」

 迫るサキュバスを相手しながら、彼らは会話する。

「レベルドレイン?」

「ああ……その人の戦闘力を吸っちゃう技なんだ。吸われたら、今まで修行してた分が無駄になっちゃう。気をつけて!」

「そりゃ恐ろしい……何処でそんな事知ったんだ?」

「旅立つ前に、魔物の知識はある程度勉強したのさ!ほら、気は抜かない!」

 そう言いながら二人は、サキュバスを倒し続ける。しかし、倒せども倒せども彼女達は迫り来る。

「ちくしょう、これじゃラチが開かねぇ……!」

 気功波の類は撃てないので、素手で勝負するしかない。しかし、それだと集団を相手するのには限界がある。

 このままでは、こちらが先にバテてしまう……

「ヴィクトリー、太陽拳だ!」

「えっ!?」

「僕に考えがある!早く!」

「っ……」

 確かに、この集団の中で太陽拳をやれば大部分のサキュバスは怯むとは思うが──

「あははっ!」

「っやるしかねぇっ!!」

 太陽拳をやる時のあのポーズを取り、気を集中させる。そして──

「太陽拳っ!!」

 身体中から、眩い閃光を発した。

「!!?」

「きゃあっ!!」

 それを直視した彼女達は視力を奪われ、目を押さえて悶絶する。それで、大部分を怯ませることは出来たが……

「ヴィクトリー、こっち!」

「むっ!?」

 ルカは手を引いて、走る。

「どうした、ルカ?」

「アリスが言ってた事を思い出して。」

「アリスが言ってたこと……?」

 言われて、記憶を覗く。

『新たな仲間を迎えるため、上級のサキュバスが少数、あらかじめ村に潜伏している事が多いな。そんな上級サキュバスの手引きで、生まれたてのサキュバス達が狂乱する……それこそが『紫のサバト』の本領よ。』

「──そうか!」

 アリスの話通りならば、この村には予め上位のサキュバスが居るに違いない。そして、その上位のサキュバスは──

「村長さん……の可能性が、高い!」

「……ああ!」

 このサキュバスの村の村長──確かに、今になって思い返したら、アレは妙な気を放っていた。なんとなく勘づいてはいたが、なぜ気付けなかったのか。

「とにかく、村長さんの家に急ぐぞ!」

「ああ!」

 二人は目を押さえるサキュバス達の合間を走り、村長の家に向かったのだった……

 

「っだぁあっ!!」

「てぇいっ!!」

 ルカとヴィクトリーの同調(ハモ)ッたような声と共に、村長の家の扉が蹴破られる。

 二人は蹴破った扉を踏み倒しながら、眼前を向いた。

「あらあら、乱暴ねぇ……」

「ふふっ、でも、よくここまで来る事が出来たわね。あなた達は、そこらの戦士とは違うと思っていたわ……」

 そこには、村長と、何故か占い師の女の人が居た。

「おめぇらが、この村を乗っ取ったサキュバスだな!」

「何で、村をこんなにした……?」

 ルカが目を鋭くしながら、聞く。サキュバスの村長は、それで「ふふっ」と笑った。

「この村の長は、代々サキュバスの血族なのよ。そして百年に一度、淫気を振りまいて村人をサキュバス化させるの。それこそが、「紫のサバト」なのよ……」

「くっ、そういう事か……」

「外からサキュバスが来たんじゃあねぇ……おめぇらが潜伏して、この村の女の人をサキュバス化させたんだな……ゾンビが人間を食らって、またゾンビにするように、バイオハザードみてぇに……!」

 ヴィクトリーの言う通り……これは、百年に一度の集団感染(パンデミック)みたいなものだ。

「ウィッチ、あなたは儀式の準備を進めておいて。この子達は、私が搾るわ。」

 ウィッチと呼ばれた占い師は微笑み、背を向ける。

「分かった、この場は任せるわよ。その子達の精は、儀式のためにもぜひ必要だから……あんまり、自分のために搾らないようにね。」

「ふふっ……分かっているわ。私が吸うのは、味見程度にしておくわよ。」

「じゃあ、また後で……」

 ウィッチは、そのまま扉の向こうへと消えてしまった。

「ルカ、この場を任せていいか?」

「ああ……お前には瞬間移動があるんだっけ……分かった、ここは僕が引き受ける。」

「あらあら?逃がすつもりは無いわよ?」

 立ちはだかる、サキュバス村長。

 彼女は扉の前に立ち、淫靡な笑みを浮かべながら気を解放した。服が弾け飛び、背からは蝙蝠のような黒翼が生え、こめかみ辺りからは角が生えた。

「すげぇ気だ……!」

 ヴィクトリーは吹っ飛ばされまいと床に踏ん張り、構える。

 ルカも剣を取り、構えた。

「……お前達……いったい、何を企んでいるんだ……?今回の「紫のサバト」は、いつもと違うって言ってたな……!?」

「昼間、さっきの占い師がそんな事言ってたんだ……その時点で怪しいとは思ったけどよ。」

「ふふっ……今回の「紫のサバト」は、ただの仲間作りじゃないわ。五百年前に封印された、伝説の淫魔リリスを復活させる為の宴なのよ。」

「伝説の淫魔……だと!?」

 聞くからに、ヤバそうな存在。

 村長は誇らしげに手を広げながら、二人を見た。

「サキュバスというのは、種族としての定住地を持たない流浪(るろう)の存在……そんな私達に、約束の地を与えてくれるリリス──彼女を復活させるのが、私達サキュバスの悲願なの。淫魔リリスの元で、全ての人間達を搾精家畜にしてしまうのよ……」

「そんな事、させはしない!」

「そうなる前におめぇ達をぶっ飛ばして、止めさせてやる!」

 伝説の淫魔、リリス──どうやら、その復活を許してはならないようだ。

「ヴィクトリー、瞬間移動を!既に儀式は始まってる!」

「分かってるさぁっ!」

 ヴィクトリーは額に指を当て、瞬間移動で消え失せた。

「なっ!?」

 村長の勘が、ビビっと働く。

 彼は、転送魔術の類で消えた。現れた場所は──

「儀式中のウィッチの所──」

 村長は、自分の背にある扉を開けようとする。

 その寸前──

「かぁああっ!!」

 ルカはシルフの力を解放し、村長を蹴り飛ばした。

 蹴っ飛ばされた彼女は壁に叩きつけられ、倒れる。

「お前の相手は、僕だ!」

「……ふぅん……」

 彼女はゴキゴキと首を鳴らし、ルカを見た。

 どうやら、蹴りの効果は薄いらしい。

「それにしても、あなた……本当に、美味しそうね……」

 それどころか、捕食者の目になり、発情した様子でルカを舐めるように見回した。捕食者らしく、じゅるりと舌なめずりをする。

「ウィッチにああは言ったけれど……あなたの精、独り占めさせて貰おうかしら。君が倒れても、()()()()が居るからリリスの復活には影響は無いわ……」

 その妖気は、外に居るサキュバス達とは段違い。

 フェロモンのような芳香が周囲に漂い、意識が乱されそうになる。

 これが、上位サキュバスの力なのか──

「ふふっ、犯してあげるわ……一滴残さず搾り取って、干涸らびさせてあげる……」

「来いッ!!」

 ルカと村長はそのまま、激突したのだった……

流血表現

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