もんむす・くえすと!の世界に降り立った1人のヒーローアバターの話 作:ジョーカー:ゼノ
「ルカ、ちょっと行ってみてぇ場所があるんだ。」
旅路を歩きながら、唐突にヴィクトリーはルカに言った。
「なんだ?」
「貴婦人の村って所だ……場所は……」
彼はルカのカバンから地図を取り、指を指す。
「ここだ。」
「意外と近くだな……」
「それで、何故行ってみたいと思ったんだ?」
ヴィクトリーは地図を僕のカバンにしまいながら切り株に座り、アリスとルカを見る。
「そこは、確かに貴婦人が住む村なんだが……どうも嫌な噂があるんだ……」
「嫌な噂……?」
「あぁ……グランゴルドの外交官の話なんだけどさ……どうもその村に行った男は帰ってこなくなるらしい。」
不穏な表情で、ヴィクトリーは言う。
「なに……?」
「ふむ……」
アリスとルカの眉がピクッと動く。彼は反応を見ながらも、続けた。
「それがよ、消えるのは『若い男』のみなんだ。何でだと思う?」
「さ、さぁ……?」
「ふん、どうせ近隣のモンスターにやられたのだろう。」
言い捨てるアリス。
そんな彼女に構わず、ヴィクトリーは自らの後頭部に頭を回した。
「少なくともここの外交官だってある程度実力のある奴が行くだろう。だったら、みんながみんな居なくなるなんて事は有り得ねぇ筈だ。」
「た、確かに……」
「ふむ……どういう所なのだ?その貴婦人の村とやら……」
「小さな村なんだけどよ、花と森に囲まれたイイ所だって聞いてるぜ。確か領主が居て、その領主ってのがカサンドラって奴で……」
「カサンドラだと……!?」
アリスはその名を聞いた瞬間、顔色を変えた。
「……どうしたんだ?」
「……悪い事は言わん。貴様ら、絶対にそこには行くな。」
「何だと……!?」
ヴィクトリーは、目を鋭くする。
「……どういう事だ、分かるように説明しろ。」
「説明する事は無い。とにかく、そこには行くな。」
彼は問いかけるが、アリスはきっぱりと断ってしまう。
問答は無駄だと感じた彼は、改めてルカの方へ向いた。
「……と言うわけだ。行くのか行かねぇのかはおめぇに任せるけど……」
「えっ、僕……?」
「当たり前だろう。このパーティのリーダーは貴様なのだから。」
そう言うアリスは、腕を組んでルカを見る。
「あくまで余は貴様に同行しているだけだ。敵でも味方でもない。」
ヴィクトリーも便乗して、ルカを見た。
「俺はメンバーであって、行きたい所を言っただけだ。俺に決定権は無ぇし、俺の独断で皆を引っ張るわけには行かねぇ。さぁどうする?」
「……」
ルカは少し考えてから、顔を上げた。
「よし、その貴婦人の村とやらに行ってみよう。」
若い男ばかりが消えているというのは、どう考えても普通ではない。確かにこの近辺には強力な魔物が居るが、原因は本当にそれだけだろうか。
「……余の忠告が聞こえなかったのか?その村には絶対に近づくな。」
「アリスがそう言う以上、やっぱりその村には何かあるんだな。」
「ふん、余計な知恵を付けおって……」
アリスは、ため息を吐く。
「ともかく、貴様らには関係あるまい。わざわざ首を突っ込む理由も無いはずだ。」
「その村に危険な妖魔が住んでいるとしたら、放置は出来ないよ。これじゃ、犠牲者も増える一方じゃないか。」
「わくわくしてきたぜ!今度はどんなすげぇ奴が待ってるんだ!?」
アリスは、はぁ〜っと大きなため息をついた。
「やれやれ、戦闘欲と英雄願望で死にたいという訳か。」
呆れ果てながらそう言うが、二人は揺るぐことは無かった。
「……まぁ、俺は戦って死ぬんなら……」
「僕は英雄になりたい訳じゃないって。さぁ行くよ皆。」
「……」
やる気満々の二人を見て、怪訝な顔をするアリス。
「れっつごー!」
不服そうなアリスと目を輝かせたヴィクトリーを連れ立ち、僕達は貴婦人の村へと向かったのだった。
この村で、何が僕達を待ち受けているのだろうか……
一行は、貴婦人の村へと辿り着いた。
「ここが、貴婦人の村……?」
「見た所、普通の村みてぇだな。」
ヴィクトリーの言う通り、見た所は普通の村だ。
目につくのは、なんとも上品そうな貴婦人達の姿。彼女達は優雅に散歩したり、談笑したりしている。
「まぁ、『ザ・村』って感じだな。事件の匂いはしなさそうだけど……」
「ザ・村て……あれ?アリス?」
ふと振り返ると、アリスの姿は無い。まぁ、すぐ何処かに消えるのはいつもの事か。
「よし、じゃあ住民に話を聞いてみるか……」
「おーっ!」
こうして到着早々、情報収集を開始したのだった……
「あら、旅人の方かしら?」
開始した瞬間、散歩中の貴婦人が声をかけてきた。
「おっす!」
「あっ、こんにちは……」
「のんびりしている以外に、何の取り柄もない村ですけれど……旅の疲れを落として下されば幸いですわ。」
貴婦人はそう言い、微笑む。どうやら、歓迎してくれているようだ。
「あの、少しお聞きしたいんですけど……この村に、若い男の旅人は来ますか?」
ルカがそう聞くと、貴婦人は辺りを見回しながら答えた。
「ええ……たまに来られますけど、この通り何も無い村ですから。ほとんどの場合、すぐに立ち去ってしまわれますわね。それがどうかいたしましたか……?」
「いや……」
「……」
やっぱり、若い男は普通に村を出て、その後に襲われたのだろうか。
その後も傘を指した貴婦人やらにも聞いてみるが……具体的な答えは出そうに無かった。
そこで、ヴィクトリーは一人のメイドに目をつけた。
「おっす!あんたメイドさんか?」
「はい、私は領主カサンドラにお仕えする給仕、ランと申します。仕事で買い出しをした帰りなのですが……さて、私に何か御用でしょうか?」
「聞きたい事があんだけどよ──」
ヴィクトリーが聞こうとするが、ランと名乗ったメイドは首を振った。
「申し訳ございません、今は職務中でございます。主人の命令があれば、なんなりと……」
「ふぇっ?」
きょとんとするヴィクトリーを前に、彼女は去ってしまった。
何か御用でしょうかって聞かれたから、とりあえず話を聞こうとしたら、断られた。
「む〜……」
ヴィクトリーは、頬を膨らませた。
「まぁまぁ……ん?」
ルカはヴィクトリーをなだめながら、周りを見る。そこでふと、お嬢様風の少女が彼の目についた。
「あの……」
「何よ、あんた。話しかける前に、自己紹介ぐらいしなさいよ。」
いきなり叱られ、僕は萎縮してしまった。
「ごめん……」
仕切り直し、ヴィクトリーが先に手を上げる。
「俺はヴィクトリーだ。」
「僕は勇者見習いのルカ。えっと、君は?」
自己紹介を終え、彼女の番。
「あたしはエミリ、領主カサンドラの一人娘よ。あんた達も、お母様に会いに来たの?」
「その前に、ちょっと聞きたい事があるんだ。この村に関する噂なんだけど……」
エミリはその話を聞いて、ふっと鼻で笑った。
「あぁ、あの下らない噂?この村に来た男の冒険者は、戻らない……っていうやつね。」
「……知ってるのか?」
「……」
二人の真剣な表情──しかし、彼女は笑った。
「あはは……!そんなの信じて、わざわざやって来たんだ〜!そんなの、根も葉もない都市伝説じゃない……」
エミリと名乗った少女は、くすくすと笑う。
都市伝説……?ただの噂だったのか……?
「せっかくだから、一応お母様に会っていく?あんた無駄足だったみたいだし、可愛そうだから取り次いであげるよ?」
「それじゃあ、頼もうかな……」
「まぁ、一応はな……」
「じゃあ、私は先に戻ってるからね。」
そう言い残し、エミリは駆け去ってしまう。
「都市伝説……ねぇ……」
「一応、領主に話を聞いてみようか。」
二人は遅れて、彼女の後をついて行った……
「うわぁ、大きな屋敷だなぁ……」
たどり着いたのは、大きな屋敷だった。
エミリの話が通っているのか、さっき会ったランが門前で向かえてくれた。
「ようこそ、ルカ様、ヴィクトリー様。主人が中でお待ちしております。」
「あ、はい……」
「……」
ヴィクトリーはこの頃から違和感のようなものを感じていたようで、神妙な顔をしていた。
そんな顔をしてる彼を連れながら、給仕に導かれ、僕達は領主の館に招待されたのである。
導かれたのは、豪華な応接間。そこには、エミリが待っていた。
「母さんに取り次いであげたから、感謝しなさいよ。今は手が離せないから、十分ほど待ってってさ。」
エミリは次に、ランの方を向いた。
「ランも、もういいわよ。自分の仕事、してきなさい。」
「了解致しました。では、失礼致します……」
深々と礼をし、ランはその場を後にした。
「ねぇねぇ、あんた達旅人でしょ?今まで、どんなとこ旅してきたの?」
「イリアス大陸から北上して、魔王城を目指して……」
「……」
エミリは興味深げに、旅の話を聞いてくる。その様子は、屈託のないお嬢様そのものだった。
そして、十分程経った後……
「……来たぜ。」
ヴィクトリーの声で顔を上げると、綺麗な貴婦人が入ってきたのだ。
「ずいぶんと待たせてしまったようですね……」
「あっ、どうも……」
「俺がヴィクトリーで、こっちはルカだ。」
ヴィクトリーが何を言うでもなく、ルカの分まで自己紹介する。
「お初にお目に掛かります。この村の領主であるカサンドラ・ネーレイドと申します。あなた達の事は、娘のエミリから伺っていますわ……」
「あ、どうも……」
僕達は、おずおずと頭を下げた。
妖艶な雰囲気ながら、そんなに怪しい人には見えない。
「ではエミリ、少し席を外してください。お客様と、お話がありますので……」
「は〜い、じゃあね……」
エミリは席から立ち、ぱたぱたと部屋を駆け出ていく。そんな彼女と入れ替わるように、僕達の正面に女領主が座った。
「さて、エミリから伺いましたが……この村で、男性が戻って来ないという噂を聞かれたとか。」
「えぇ……そういう話を聞きまして……」
「やっぱり、噂はただの噂だったんか?」
「えぇ、その通りです。この村に、魔物の影もないでしょう?」
ヴィクトリーはそれを聞き、何故か目を鋭くした。
「……まぁ……はい。」
カサンドラはクスッと笑って、僕達を眺め回した。
「それに……その噂が真実なら、あなた達もここから戻れないことになってしまいますよ……」
「ひえっ……」
「冗談はやめてくれよ……」
怯える二人を前に、彼女はクスクス笑いながら続ける。
「しかし……あなた達は、この村を無事に出ることが出来るでしょう。それが、噂は事実無根という何よりの証明となるでしょうね。」
「なるほど……」
「確かに、俺達が無事に戻れば噂はただの噂って証明できるな……」
僕達は、顔を見合わせて頷いた。
「……さて、愉快ではないお話はこのくらいにしておきましょう。よろしければ、晩餐をご一緒しませんか……?」
「いえ……せっかくですが、遠慮しておきます。」
「俺達も、ゆっくりしてる暇はねぇからな……」
それ以前に、夕食まで食べるのも厚かましいことこの上ない。それに正直なところ、居心地もあまり良く無かった。
「色々と伺い、申し訳ありませんでした。それでは、僕達はこの辺で……」
「あら、お帰りになるのですか?ちょうど、お茶が入りましたのに……」
「あんた、居たのかよ……」
ヴィクトリーはそう言いながらランの持っているお盆からコップを取り、お茶を一気飲みした。
「っておい!」
ルカはそれを見て、ずっこけそうになる。
「わ、わりぃ……喉乾いてたもんだから……」
そう言うヴィクトリーは、悪びれもせずにコップを盆へ戻した。
それを見ていたカサンドラは、面白かったのか、クスクス笑う。
「いえ、いいのですよ。むしろこれ以上出来ないことが恐縮です。」
「い、いえいえ、こちらこそご迷惑をお掛けしました。それでは、失礼します……」
こうして、僕達は応接室を後にしたのだった……
「ふぅ……」
屋敷から出て、僕はほっと一息吐く。
「……」
ヴィクトリーは屋敷を睨んでいた。
「あら、あんた達もう帰っちゃうの?」
そこにひょっこりと顔を出したのは、エミリだった。
「まぁな……」
「噂もただの噂だったしね。」
エミリはくすくす笑いながら、僕達に迫ってきた。
「ふふっ……お母様はあんた達を見逃すみたいだけど……私、あんた達が気に入っちゃったなぁ……」
「えっ……?」
「はは……そうなんか……」
「ねぇねぇ……私、もっとあんたの事を知りたいな……」
次の瞬間、エミリの背後にぬっとカサンドラが現れた。
「エミリ……お客様に失礼ですよ。」
「お、お母様……」
「そのまま行かせて差し上げなさい、エミリ。」
「……うん、分かった。お母様が、そう言うのなら……」
エミリは肩を落とし、深々とため息を吐く。
「えっと……それじゃあ、失礼します……」
「……」
妙な違和感を抱きながら、僕達は領主の屋敷を後にしたのだった……
そのまま通りを進み、村の入口まで戻る。
すると……
「アリスか。」
「……」
ヴィクトリーの呟きで背後を振り返ると、アリスがいた。
しかも、いつもと違う険しい顔をしている。珍しく、何かを思い悩んでいるようだ。
「……さて、貴様らも気付いただろう。この村が異常である事にな……」
「……あぁ、もちろん……」
「この村、男が居ねぇ所か、人間が一人も居ねぇ。」
そう、村に入ってから僕達以外の男の姿を見ていないのだ。それは分かるのだが──
「人間が一人も居ない?」
ルカは、ヴィクトリーを見る。
「あぁ……みんな気を隠してるから普通の奴にはただの貴婦人の村に見えるけど……ここ、魔物の溜まり場だぜ?」
「そんな事が分かるのか……?」
彼の気の探知は、精密だ。気を感じただけでも、その者が邪悪かそうじゃないかまで分かる。
「あぁ、戻るぜ。もう少し調べるんだ。」
「あぁ……」
僕達が道を引き返そうと、歩いていたら……
「あら、どうされました?」
声をかけてきたのは、散歩中の貴婦人だった。
「おい、この村に男は居ねぇのか?」
ヴィクトリーが単刀直入に貴婦人に言い放った。すると、彼女は妖艶な笑みを浮かべた。
「それでは、教えて差し上げましょう……この村に来た殿方が、どうなったかを……」
次の瞬間、貴婦人の下半身が変異し、魔物の姿に変わった。
「なっ……!?」
「やっぱりな……」
「ふふっ、美味しそうな殿方。あなた達の体液も、じっくりと吸い取って差し上げますわ……」
遂に、牙を向いた貴婦人の村。戦士達はどう戦う……!?
流血表現
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もっとする
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このままでいい
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しなくていい