もんむす・くえすと!の世界に降り立った1人のヒーローアバターの話   作:ジョーカー:ゼノ

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オーブ求めて大海へ

 ゴルドポートの一角……

「ふふっ、来てくれたわね……あなたのような勇者をずっと探していたのよ。」

 例の女の人が、声をかけてくれた。

「腕が立ちそうで、人がよい戦士……ましてキャプテンセレーネに興味があるのなら、うってつけね。」

「は、はぁ……」

「……」

 どうも彼女は、単にキャプテン・セレーネの情報を与えてくれるのではない。それと引き替えに、なにか悩み事があるようだ。

「私はセレナ。あなた達は?」

「えっと……勇者見習いのルカです。」

「武闘家のヴィクトリーだ。」

「……余は旅のグルメ、アリスだ。」

「それじゃあ、私の家に来てもらえるかしら。そこで、詳しい話をするわ。」

「は、はい……」

「……何だか、すげぇ急展開だな……」

 いつもの事だろうが。

 こうして、戦士達はセレナの家に導かれた……

 

「私と一緒に大海に出て、キャプテン・セレーネの船を探して欲しいのよ。そのための船は、私の方で用意してあるわ。」

 客間に来てすぐに、要件を切り出された。

「おめぇと一緒に……」

「キャプテン・セレーネの船を探しに……?」

 この辺の魔物は手強く、海の上にも出現する。その用心棒を頼みたいということらしいが……

「なぜ、そんな面倒な事を余が……」

「アリス、このレモンジュース美味しいよ。」

 ルカは、そっとアリスにレモンジュースを渡す。

「餌付けされている気がする……」

 そう言いつつ、大人しくジュースを啜り始めるアリス。

 今の内に、話を進めよう。

「あなたの頼みは分かりました……でもセレナさんは、何のためにセレーネ号を探すんですか?ちょっとした冒険趣味とか、海賊への憧れ程度ならやめた方が……」

「……私は、キャプテン・セレーネの孫なの。」

「えっ……!?」

「なんだと……!?」

 思わぬ言葉に、二人は息を飲んでしまう。あのキャプテン・セレーネに、子孫が居たなんて……

「キャプテン・セレーネはこの町に滞在している時、女の子を産んだの。それが私の母親……つまり、キャプテン・セレーネは私の祖母なのよ。──これは秘密にしておいてね、色々と面倒だから。」

「わ、分かりました……」

「ひゃ〜……」

 確かに、キャプテン・セレーネの孫の存在が世界に知れ渡ったら、この家周辺にトレジャーハンター達がごった返す騒ぎになるだろう。

「セレーネ号の場所には少し手がかりがあるわ。キャプテン・セレーネは航海中、この町で待つ恋人……つまり、私の祖父に手紙をよこしていたの。伝書鳩を用いて、最低でも月に一回はね。そして手紙の往来は、遭難するその日まで続いたのよ。」

「その手紙、残ってんのか?」

「えぇ……全部、私が保管してあるわ。これを詳細に辿ればわ最後の航海の足取りも分かるのよ。」

 そう言ってセレナは、テーブルに海図を広げた。そこには、色々と線のようなものが描き込んである。

「この海図に、セレーネ号の足取りを書き込んでみたの。最後の航海で目指したのは、古文書にある海底洞窟。ゴルドポートから南西に向かい、一週間でそこに辿りついた……到着の喜びを、キャプテン・セレーネは手紙で伝えているわ。」

「最後の航海で、目的地には辿りついたんだな……」

「その海底洞窟で、キャプテン・セレーネは目的の秘宝を得たの。古文書には、『災厄の箱』と記された金細工の箱。今夜、その箱を開けてみる……そう記された手紙を最後に、セレーネ号の足取りは途絶えてしまったのよ。」

「なるほど、九割九分九厘そいつが原因だな。」

「まさか……」

『災厄の箱』とやらを開ける、と告げた手紙……そして、その直後に失踪したセレーネ号。

「おいルカ、面白そうになって来たな!」

「……つまり、ただの海難事故じゃないって事か……?」

 ここでアリスが、ガタッと立ち上がった。

「災厄の箱だと……?」

「知ってんのか、アリス?」

「『あれ』は、初代魔王様に滅ぼされた筈だが……まさか、解き放たれたという事か……?いや、それにしても『あれ』の出現報告は聞かんな。やはり、封印が解かれたとは考えられん……」

 ぶつぶつ独り言するアリスに、二人は不振な目を向けた。

「どうしたんだ、アリス……?」

「あれやこれじゃ分かんねぇよ……」

「……こっちの話だ、貴様らには関係ない。」

「……」

 そういう事を言っておいて、本当に関係がなかった試しがない。しかし、無理矢理聞き出すのも無理そうだ。

「ともかく……セレーネ号が沈んだ位置が、最後の手紙から分かるんですね……?」

「沈んだのかもしれないし、そのまま今も浮いているのかもしれない……でも、行ってみる価値はあるはずよ。」

 そう言って、セレナは海図を畳んだ。

「あなた達が求めているのはパープルオーブだったわね。キャプテン・セレーネの手紙にも、その秘宝の事が何度も出てきたわ。船長室に保管し、暇さえあればその美しさを楽しんでたそうよ。」

「変な趣味の女……」

「そうか、やっぱりセレーネ号にオーブがあった事は確かなんだな。」

 今も、パープルオーブがそこにある事を祈るしかない。それはそれとして、まだ腑に落ちない事があった。

「そんでもって、おめぇの目的は何だ?」

「ただ祖母の船だから見付けたい……って訳じゃないですよね?」

 セレナは少し黙ってから、真剣な目つきになった。

「『災厄の箱』を……正確には、その中身を外に出してはいけないの。キャプテン・セレーネが解放してしまった災厄、再び海底に封じなければいけないのよ……」

 そう言って、彼女は腰を上げた。

「さて、話は以上よ。これで納得してくれたかしら?」

「あぁ……面白そうだな……」

「……」

 何度も言っている気がするが、ヴィクトリーの言う『面白そう』は、だいたいただ事ではない事件だ。この件、何か大きな影がある。

「さっき言ったとおり、船は私が用意してあるわ。あなた達には、用心棒として船に乗って欲しいの。その報酬は、パープルオーブ……当然、無事に手に入った場合だけどね。この取引、乗る?乗らない?」

「……当然、乗ります。」

「俺も乗るぜ。」

 何だか分からないことが多いが、断るという選択肢はない。魔の大陸に行くためには、どうしてもパープルオーブが必要なのだ。

「じゃあ、さっそく港に行きましょう。既に出航の準備は整っていて、後は私達が乗るだけよ。」

「え……?そこまで準備が進んでいたのですか……?」

「この話が済んだら、さっそく出航する気で居たの。あなた達が、首を縦に振っても横に振ってもね……」

「は、はぁ……」

「あ、あはは……」

 セレナは、よほどセレーネ号の探索にこだわっているらしい。

 こうして、一行はゴルドポートの港へと向かったのだった……

 

「……」

「……」

 僕とヴィクトリーはそこら辺に座り、船の様子を見ていた。

「おかしら、問題なしです!」

「久方ぶりのいい風だ……こりゃ、いい航海になりそうだぜ!」

「久しぶりの航海だけど、みんなカンは鈍ってないようね。」

 セレナが用意した船……それはなんと、豪華な海賊船だった。しかも船員は、全員が若い女性なのだ。

「ふふっ、驚いたかしら……?私、これでも海賊船の船長なのよ。」

「そ、そうだったんですか……」

 あのキャプテン・セレーネの孫も、なんと同業の海賊だったとは。そのたたずまいも、随分と堂に入っている感じだ。

「こんだけ居れば用心棒要らねぇんじゃねぇの?」

「……私達には、戦えない理由があるのよ。だから、荒事は全部君達に任せるわね。」

「……はい、分かりました。」

 戦えない理由……?船員をざっと見ただけでも、腕の立ちそうなのは何人も居るようだが……

 そんな事を考えていたら、不意に嫌な感じがした。

「……これは、歌?」

「……みてぇだな……」

 どこからか、不意に歌が聞こえた気がした。誘うような、理性を失わせるような……そんな甘い歌声だ。

 この歌は……聞いては行けない気がする……

「この歌……セイレーンが来ますね。」

 女海賊の一人が、そう呟いた。

「……みんな、船内に入りなさい。じゃあ二人とも、任せていいわね?」

「は、はい……!」

「おっしゃ、任せとけ!」

 こういう事態のために、船に乗せてもらったのだ。

 二人は舳先で、飛来してくる魔物を待ち受ける。すると、鳥の魔物が現れた。

「こいつがセイレーンか?」

「あぁ、そうだ……」

「女ばかりの船かと思えば……ずいぶんと、上質の獲物が居るようね。」

 その歌声で船員を惑わす、非常に有名な魔物。こいつの歌声には、注意しなければ……

「あなた達の精、存分に貪──」

「かめはめ波っ!!」

 ヴィクトリーは、不意打ちのかめはめ波を発射する。それは、見事に直撃した。

「悪いな!こいつは俺のだ!」

「あっ!」

 ヴィクトリーは走ってジャンプしてから、スレッジハンマーでセイレーンを海面に叩き落とした。

「……ぐっ!!」

 だがすぐさま戻り、ヴィクトリーを睨みつける。

「よっ。」

 彼は舞空術で浮きながら、セイレーンを挑発するように声をかける。だが、それが彼女を昂らせた。

「……妙な術を使う人間のオスだな……これは味わいがいがあるぞ……」

 そして二人は空中で組み合い、ぶつかり合った。攻撃と攻撃が、高速で飛び交う攻防が始まる。

「なるほど、流石は魔の大陸近くの魔物だ……!」

 攻防している腕が、ビリビリ痺れる。

「ふふっ……」

 セイレーンは一旦離れ、手を広げて歌を歌い始めた。

「まずいっ!耳をふさげヴィクトリーっ!!」

 ルカは耳を塞ぎながら、叫ぶ。

「おーっ!!」

 ヴィクトリーは両手でパンッと耳を塞ぎ、セイレーンの顎に蹴りを入れた。

「ごっ……!?」

「……にひひっ!」

 そして体を回転させ、セイレーンを再び海に蹴り落とした。

「……戦いは歯を食いしばるのが基本だ。歌ってる暇なんかねぇぞ!」

「うぐ……!ぐぐぅ……!」

 またセイレーンは浮上し、ヴィクトリーを睨む。そして、超スピードで突進した。

「はあぁーっ!!」

「……っ!!」

 ヴィクトリーはセイレーンの一瞬のスキを突き、腹に肘打ちを放つ。空を切って放ったそれは見事に命中し、彼女は目を見開いて苦悶した。

「な、なんて人間なの……!!」

 彼女はそう言って離れ、背中を見せ、飛び去ってしまった。

 何とかセイレーンを追い払い、ヴィクトリーはルカの横に着地する。

「やるわね、あなた。さすがは、私の見込んだ勇者の仲間だわ。」

 そこに、女海賊の一人が拍手しながら来た。

「まぁな……」

 ヴィクトリーは、ニッと笑いながら答えた。

「周囲に、セイレーンは居なさそうね。」

「それじゃあ、進路は予定通り西に取りますぜ!」

 こうして、航海は再開される。

 

 それ以降、船を襲撃してくる魔物は現れなかった。

 目的地までは、あと数日。僕達は、やる事のないままに船内で過ごしたのであった……

 

 この航海に出てから、何度目の夜だっただろうか。

 明朝には、いよいよ目的のポイントに到着するのだそうだ。

「いよいよ、明日か……」

 なんだか眠れず、僕は夜の甲板をうろついていた。ヴィクトリーはそこらに座って僕を見る。

 ここに居ると、冷たい潮風に当てられる……

「……なんだか、ぞわぞわする。」

 不意に、アリスがそう漏らした。

「どうした?」

「風邪か?」

「ぞわぞわする……」

 アリスの様子が、なんだか変だ。まぁ、夜の潮風に当てられただけだろうが……

「もしセレーネ号が沈んでいたら、厄介だな。いったん引き返して、サルベージ船でも連れてくるのかな……」

「その心配は無用よ……あの船は、今も海に浮かんでいるから。」

 突然現れたセレナは、何故か確信を込めて断言した。彼女は、『災厄の箱』を再び封じるのが目的だと言うが……

「でも……キャプテン・セレーネが『災厄の箱』を開けたのは、もう五十年も前ですよね?そんな昔の事なのに、今まで何も無かったって事は……『災厄の箱』って、大したものじゃ無かったんじゃないですか?」

「そうだったら、良かったのですけど……」

 セレナは軽く溜息を吐き、そしてくるりと背を向けた。

「あなた達も、早く寝たほうがいいわ。明日は、いよいよセレーネ号の所に辿り着くのだから……」

 そう言って、セレナは船室に戻っていった。

「俺達もとっとと寝ようぜ……ふぁ……」

「そうだな……」

「ぞわぞわする……」

「……?」

 なんだか妙な態度のアリスが、妙に気にかかった……

流血表現

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