もんむす・くえすと!の世界に降り立った1人のヒーローアバターの話 作:ジョーカー:ゼノ
パープルオーブを求め、キャプテン・セレーネ号を探しに海賊達の手助けをする戦士達。
そして、ついにその日が来ようとしていた……
「おかしら、見えましたぜ!前方にセレーネ号、海の真ん中で停まってます!」
「ルカ君、ヴィクトリー君、起きてもらえるかしら……?」
「う〜ん……」
「んだよ……こんな朝早くから……」
目を醒まし、慌てて甲板へと上がると……
「……こ、こいつが……」
「セレーネ号……」
朽ち果てたような巨大な船体に、薄汚れた帆。そこには、キャプテン・セレーネの紋章が備わっていた。
周囲には霧が立ち込め、なんとも不気味な雰囲気だ。
「……まるっきり幽霊船だな……」
……そう言えば、ここら辺には幽霊船の噂があったか。そんな噂があるのも頷ける、異様な空気である……
「さぁ、
「あいさー!」
海賊達はてきぱきと準備を進め、セレーネ号の間近にまで接近する。そのままロープを引っ掛け、移乗できる大勢を整えた。
「ぞろぞろ行っても仕方ないから、少数精鋭で行くわ。ルカ君、ヴィクトリー君、来てくれるわね……?」
「はい、もちろん!」
「ワクワクするぜ!」
「……」
アリスは、そっぽ向いて黙っている。
「あ……アリスは、幽霊船とか、そういうのは怖いんだったな。こっちの船で大人しく待っててくれよ。」
ルカはそう言うが、彼女は目を鋭くした。
「だ、誰が怖いものか!こんなの屁でもない、余も行ってやろう!」
口調は勇ましく、態度はおどおどと進み出るアリス。
こうして四人は、まるで幽霊船のようなセレーネ号へと踏み込んだのであった。
「これは、結界か……?」
幽霊船に入るなり、アリスはそう呟いた。ルカの腕をがっしり掴み、しっかり身を寄せながら。
「結界……?」
「どういう事なんだ……?」
ルカとヴィクトリーは、揃って船を見回す。
「かなり強固な結界だったようだが……今では、効力を失いかけているな。」
「結界が張ってある割には、僕達はあっさり入れたじゃないか。」
「これは中に入れない結界ではなく、外に出さない結界のようだ。船が長年沈まずに留まっていたのも、この結界のせいらしいな。」
「つまり、どういう事なんだ……?そんな結界を誰が──」
「キャプテン・セレーネって奴だろうな……」
「ご名答よ。」
ヴィクトリーがルカの話を遮り、セレナも答えた。
「おそらく、『災厄の箱』とやらを開けた時に何かを外に出さねぇようにするために、こんな結界張ってるんだろうよ。」
「そうよ……セレーネはたまたま持っていた秘宝、『朽界の宝石』を使ったの。その効力で船全体に結界が張られ、船内から外界への移動は遮断された。呼び覚ましてしまった『あれ』を、外に出さないためにもね……」
「……」
ヴィクトリーは、少し目を鋭くしてセレナを見る。
「そのあれってのは何なんだ。だいたい、何でおめぇがそんなに詳しいんだよ……」
「……」
僕もそう思っていた。前々から思っていたが……いくらキャプテン・セレーネの孫だからと言っても、セレナは事情に詳しすぎる。
「……話は、後にしておいた方がいいわね……」
「へっ……」
ヴィクトリーの気の察知が、一体の敵意を捉えた。
「はい、魔物ですね……?もしかして、『災厄の箱』とやらに封印されていた奴か……?」
「いや……別者のようだな。結界内に入り込んでしまい、出られなくなった別の魔物だろう。しかし、この結界の中で、随分と力を溜め込んでいたと見えるな。雑魚と言えども、侮るなよ……」
「それじゃあ、この場は君達に任せるわね……」
アリスとセレナは、いっぺんこの場を後にする。
そして、魔物が二人の前に姿を現した。ヒトデのモンスター、ヒトデ娘だ。
「ふふっ、久しぶりに人間の精液が吸えそうね。ここに封じ込められて、数十年もご無沙汰だったわ……あなた達の精液、じゅるじゅる搾り取ってあげる……それから、ゆっくりと捕食してあげるからね……」
「確かに、強そうだな……」
「そうか?」
元々は、魔の大陸の近海に居た強豪モンスター。この結界内で魔素を溜め込み、更に力をつけたようだ。精霊の力があるからと言って、油断はできない……
「……次はルカだっけ。」
「ああ……」
ヴィクトリーは下がり、ルカは剣を抜いて構えた。
「だぁっ!!」
そして気を解放し、ヒトデ娘に切りかかった。
彼女は腕で剣を受け止め、ルカを睨んだ。
「ぐっ……!!」
「ふんっ!」
ヒトデ娘は剣を切り返し、はじき飛ばした。
「なっ!?」
はじき飛ばされた剣が、ヴィクトリーの方へ向かう。
「おっと!」
首をひょいと傾げ、剣は壁に突き刺さった。
「余所見をしてる場合っ!?」
「しまっ……!!」
次の瞬間、ヒトデ娘の魔力がルカの腹に叩き込まれ、爆発した。
「がはっ……!!」
ルカはヴィクトリーの所までぶっ飛ばされ、お姫様抱っこでキャッチされる。
「大丈夫か?」
「……まぁね。」
ルカは立ち上がり、剣を取ってシルフの力を解放した。
「はっ!!」
次の瞬間には、ヒトデ娘のアゴへ、膝蹴りを叩き込んでいた。
「ぐっ……!?」
ヒトデ娘は、上空へとぶっ飛ばされた。
その彼女を見据えながら、ルカは気を解放し、無数の斬撃を放った。
「……死剣・乱れ星。」
そう言いながら剣を納める。すると、ヒトデ娘はバラバラになった。
「ここまで鍛えた私が……負けるなんて……」
そしてバラバラになった肉体は消散し、一匹のヒトデへと封印された。
「……ふう。」
「まぁ、鍛えたっつってもあんな雑魚に負けるわけねぇな……」
ヴィクトリーと適当に会話を交わしながら、しばし待つ……だが、アリスとセレナは帰ってこない。
「……あれ?どうしたんだ……?」
「便所にでも行ってるんじゃねぇのか?何にしても魔王だから心配はいらねぇと思うけど……」
「そうだな……ここでのんびり待っていても僕達の方が危険だし……とりあえず、先に行くしかないな。」
「おう、そうだな。」
セレナも、アリスと一緒にいる以上は大丈夫な筈。二人は船内の階段を降り、先へと進むのであった……
そして船内を進んでいると……
「ひゃぁぁぁぁ……」
不意に、甲板の方から情けない悲鳴が聞こえてきた。
「……おい、この悲鳴……」
「アリス……!?」
「ひゃぁぁぁぁ……」
アリスは泣きながら、高速でしゅるしゅると這い寄ってくる。
「アリス……一体、どうしたんだ?」
「セっ、セっ、セっ……!」
何やら噛みながら、アリスはルカの背中に隠れてしまった。尻尾もぷるぷると震え、すっかり怯えきっているようだ。
いったい何が、魔王であるアリスをここまで怯えさせているのか……まぁ、どうせ大した事じゃねぇけど。
「所でアリス、セレナさんはどうした?」
「そうだよ、一緒に居たんじゃないのか?」
「そ、そんなの……アレは、アレ……!」
「何だか分からないけど……まさか、置いて逃げたんじゃないだろうな!?」
「ちが……あ、あいつ……ゆ、ゆゆ……」
「……私なら、ここに居るわよ。」
何事も無かったかのように、セレナはすたすたと階段を降りてくる。
「セレナさん、いったい何があったんだ?」
「妖魔のお嬢さん、とっても怖がりみたいね……」
そう言えば、今のアリスは魔物の姿を晒している。それでもセレナには、驚いている様子は見られなかった。
「それより、二人とも……この扉の向こうに居るわよ、『あれ』が……」
セレナはそう言って扉を指す。あの扉は……おそらく、船長室。そこに、『あれ』と呼んでいる存在が……
「『災厄の箱』に封じられていた『あれ』って何なんですか?話からして、やっぱり魔物なんでしょう……?」
「えぇ……伝説級の、恐ろしい妖魔よ。蘇らせてしまったセレーネは、なんとか船ごと封じるのが精一杯だったの。しかし、それから五十年もの時が流れたわ。結界も効力を失い、再び封印が解けようとしているの……」
「そんなすげぇ妖魔がこの奥に……ちょっとワクワクしてきたぜ……」
「……」
二人は息を飲み込み……
それと同時に、セレナへの疑問が湧いてくる。どうしてこいつは、こんなに事情に詳しいのか……
「あいつらを、外に出しては駄目なのよ。ルカ君、ヴィクトリー君……どうかあなた達の手で奴らを……」
そう言い残し……セレナは幻のように消えてしまった。
「え……!?セ、セレナさん……!?」
「……ヘッ、どうせこんなこったろうと思ったぜ……」
「……」
アリスは、縮こまってしまった。
「いったい、何がどうなっている……?」
ルカの疑問に、ヴィクトリーが「さぁな」と言い、続けた。
「あくまで推測だけど、あのセレナって奴はキャプテン・セレーネ本人で、そいつが幽霊になって俺達に頼み申したんだろうよ。あの扉の奥の妖魔をぶっ飛ばしてくれってな……」
「……そいつは放置しておけないな。行くぞアリス、ヴィクトリー……」
「おうよ……」
「……」
ヴィクトリーは指をボキボキ鳴らしながら今にも船長室の扉を蹴破ろうとしてる雰囲気だが、アリスはやだやだと首を振り、その場から動かない。
そんなアリスの手を二人で引っ張りながら、ルカは船長室の扉に手をかけようとする──
「だぁああっ!!!」
ルカが扉を掴む寸前で、ヴィクトリーが扉を蹴破った。
「おっしゃあっ!!」
「は、派手に行くなぁ……」
そこには、いかにも強そうな感じの三体の妖魔が佇んでいた。その姿は、まるで蝿のようだ……
「あら……あなた達があの海賊が連れてきた戦士?どれほどの豪傑かと思ったら、ずいぶんと若すぎない?」
「ふふっ……でも、とっても可愛いですわ……たっぷりといたぶってあげましてよ……ほほほ……」
「所詮は人間、私達の産卵道具に過ぎない……その器でさえなければ、すぐさま楽に出来るのに……」
「……な、何なんだこいつら……!?」
「……三対二って初めてじゃねぇの?」
今まで戦ってきた魔物とは、どこか異質な感じがする。精霊の森で出会った謎の突然変異とも、また違うようだ。まるで、今の魔物の系統樹とは異なる太古の魔物のようだ。
「蝿の女王だ……」
「え……?」
「なに……!?」
アリスの言葉に、二人は振り向く。
「今から千年以上も前、この海域には大きな島があった。そこに住む妖魔達は絶大な力を誇り、悪行を重ねていたのだという。故に初代アリスフィーズが討伐し、その女王を箱に封じたのだ。」
「それが、『災厄の箱』ってわけか……」
「開けてはならんと言い伝わったはずなのに、いつしか秘宝伝説にすり変わっていたようだな……そこに封じられた『蝿の女王』こそが、ベルゼバブ。即ち、目の前の連中だ。」
「じゃあ、ド〇クエ方式で言うとあの紫のがベルゼバブAで赤いのがベルゼバブBで青いのがベルゼバブCか。」
ベルゼバブ三人はアリスを見ながらクスクス笑っている……
「あなた……魔王の血族のようね……面白いわ、ここで意趣返しが出来るなんて……」
「女王の癖に三体もいるのかよ……アリス、お前は下がってろ。」
「……何を言う、余があんな連中に後れを取るとも?」
そう言うアリスは、尻尾が震えている。
「まだ震えが収まんねぇ癖に……」
「あらあら、可愛いわねぇ。私達を前にして、恐怖で縮こまっているなんて……」
「……現代の魔王は、とんだ腰抜けみたい。この分だと、外界の支配より簡単のようね……」
ヴィクトリーは腰に手を置き、ベルゼバブ三人を睨んだ。
「おいおい、勘違いすんじゃねぇよ……」
「アリスはお前達を恐れている訳じゃない。ともかくアリス、ベルゼバブ達は僕達が相手をする。」
「わ、分かった……ここは任せたぞ……」
アリスは、そのまま消えてしまった。
こうして二人は、ベルゼバブ達と対峙する。
すると……彼女達は、にやりと笑みを浮かべた。
「先の言葉、撤回するわ……あなた達、相当に鍛えこまれているみたいね……」
ヴィクトリーが、その言葉に眉を潜める。
「おめぇ、気を感じる事が出来るみてぇだな……」
「ふふふっ……」
ベルゼバブ達は、クスクスと二人を見て笑う。
「あの海賊は、私達に素晴らしい贈り物をしたみたいです……これほどの戦士達の子種なら、最強の蝿軍団も夢じゃ無いみたいですね……」
「さぁ、私達と子作りをしなさい。私達とあなた達で、最強の蝿の帝国を作り上げるのです!」
「この地上を、蝿の楽園にするの。そのために、あなた達の子種を搾らないと……」
「ふざけるな!そんな事はさせない!」
「悪いけど、その夢は叶わねぇよ……何故ならおめぇらは今、ここで俺らにぶっ飛ばされるからな!」
「あらあら、ずいぶんと勇ましい事ね。教えてあげるわ、人間のオスなど生殖のみ──」
「よっ!」
急にヴィクトリーが、喋っている最中のベルゼバブCの顎を蹴った。彼女の口内から、ザクッという音が鳴った。
「〜〜〜!!!?」
「あ〜あ〜……舌切っちまったか……」
悪びれもせず、そう言うヴィクトリー。
「……」
え、えげつないなこいつ……
「がっ、ぐっ……!」
ベルゼバブCは口を押さえながら指の間から血を垂らし、ヴィクトリーを睨んだ。
彼は依然として悪びれもせず、構える。
「悪いなぁ、あんまりにもベラベラ喋るもんだから隙だらけでさぁ……」
「……あなたはただじゃおかないからね……」
こうして太古の蝿の女王と、現代の戦士達の激突は幕を開けた……
流血表現
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もっとする
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このままでいい
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しなくていい