もんむす・くえすと!の世界に降り立った1人のヒーローアバターの話   作:ジョーカー:ゼノ

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蝿の女王達

 古錆びたセレーネ号の船長室にて、三体の太古の妖魔ベルゼバブ達と、現代の戦士達は構えていた。

「太古の妖魔か……わくわくするぜ!」

「……君だけは簡単には殺さないからね……」

 ヴィクトリーの不意打ちで舌をザックリと噛んだベルゼバブCは、さっそく彼に怒りの矛先を向けていた。

「……行くぞっ!!」

「おおっ!」

 二人は構え、眼前の邪悪三体を見据えた。

「開戦ね……」

「ふふふ……」

「……」

 ベルゼバブ達も気を解放し、構える。

 両陣営は、ぶつかり合った。

「おっしゃあっ!!」

 ヴィクトリーがベルゼバブ達の顔面を蹴り上げ、ベルゼバブCにラリアットをかました。

「んぐっ……!?」

「このっ!」

 ヴィクトリーの背後から、ベルゼバブAが迫る。

「おっと!」

 ルカは走り、その彼女の背中を切りつけた。

「んぎゃあっ!」

「はぁっ!」

 次にベルゼバブBがルカの背後に現れ、手を振り下ろす。

「ふんっ!」

 しかしルカは剣で手を受け止め、切り返した。

「っ!?」

「はあぁっ!!」

 そして、回転斬りで、ベルゼバブAとベルゼバブBを薙ぎ払った。

 ベルゼバブAはヴィクトリーの方にぶっ飛んでくる。

「おっ!?」

 彼は、そんな彼女を抱きすくめる形をとる。その背後に、濃厚な殺意を持ったベルゼバブCが迫っていた。

「ほらよっ!!」

 ヴィクトリーはベルゼバブAにバックドロップを決め、ベルゼバブCごと床に叩き伏せた。

「!?」

「ぐあぁっ!」

 二体とも、頭を押さえて転げ回る。

 その間に、ヴィクトリーは立ち上がった。

「よしっ!」

 ルカとヴィクトリーは背中を合わせ、またベルゼバブ達を正面に置くように構える。

「ぐぐぐ……!」

「はあぁーっ!!」

 ベルゼバブAは立ち上がり、ベルゼバブBと共にルカとヴィクトリーに組み付いた。

「なにっ!?」

「おっ!?」

 なるほど、蝿達も馬鹿では無いらしい。一人一体を相手に、そして一体が補佐に回る……

「……とすると……!!」

「ふふっ……」

 ベルゼバブCは船長室の机を放り投げ、真っ直ぐにヴィクトリーの方へ蹴り飛ばした。彼に組み付いていたベルゼバブBは、すぐさま離れる。

「だっ!!」

 ヴィクトリーは蹴りで飛んできた机を拳で粉砕する──が、粉砕した木片の向こうからベルゼバブCが飛び出してきた。

「なにっ!?」

 次の瞬間、ヴィクトリーの頬に、彼女の鉄拳が叩き込まれる。その威力に、彼はよろめいてしまう。

「ぐぁっ……!!」

「ふふ……」

 そこにベルゼバブBが飛んできて、二人がかりでヴィクトリーに猛攻を仕掛けた。

「く、くそ……!!」

「ヴィクトリーっ!!」

 ルカはベルゼバブAを突き飛ばし、彼とベルゼバブ達の間に入った。

「なにっ!?」

「サンキュー!ルカぁ!」

「うおおぉ……!!」

 二人の猛攻は、二体を圧倒する。

「ぐ……!?」

「そ、そんな……!?」

「はぁっ!!」

 そこにベルゼバブAが加わり、一旦は攻撃が止まる。

「へっ……!!」

「ぐぐぐ……!!」

「はぁ……!!」

「……っ!」

「……すぅ……っ!!」

 五人は一旦距離を置き、拳と剣の打ち合いを開始した。

「はああぁぁぁ……!!!」

「だああぁぁぁ……!!!」

「がぁああ……!!」

「はぁああ……!!」

「でゃああ……!!」

 打ち合いは加速し、驚異的なスピードに上り詰める。それでもなお、戦士達と妖魔達のぶつかり合いは加速した。

「だあぁーっ!!」

 不毛な打ち合いを破ったのは、ヴィクトリーだった。気を解放してベルゼバブBとベルゼバブCの腹にパンチを入れ、ぶっ飛ばしたのだ。

「がはっ……!?」

「きゃあっ……!?」

「なっ……!?」

 うろたえるベルゼバブAの懐には……ルカが潜り込んでいた。

「はあぁっ!!」

 そして、魔剣・首刈りで彼女の体を打ち上げた。

「ごっ……!?」

「ふっ!」

 ルカはそこまで跳び上がり、大きく剣を振りかぶった。

「壊斧・大山鳴動ーーーっ!!!」

 そしてとてつもない一撃をベルゼバブAに振り下ろし、床にまで叩き下ろし、真っ二つにした。

「そ、そんな……!!」

 真っ二つになったベルゼバブAは、蝿の姿へと封印される。

「へぇ……」

「あんまり悠長な事は言ってられないようですね……命を奪うつもりで相手をするわ……」

 ベルゼバブ達は腕をクロスしてから、気を解放した。ただでさえ凄まじいエネルギーが、一気に圧迫感を増した。

「……すげぇ……っ!!すげぇ気だ……!!」

「な、なんてエネルギーなんだ……!!」

 二人が、そう尻込みをしてしまった時だった。

「……やれやれ。このような連中、いつまでも調子に乗せてはおけんな。」

 アリスが、二人の肩をぽんと叩いて登場した。

「アリス……?」

「おめぇ……」

 そして二人の間に入り、ベルゼバブ達と対峙する……

「お前、戦うつもりなのか……?」

「そもそも、俺らの味方はしねぇって……」

 アリスはニヤッと笑い、目を鋭くする。

「こいつらを封じたのは、初代魔王様の仕事。そしてこいつらを冥土に送り返すのは、現役の魔王たる余の仕事よ。ゆえに、余も戦うとしよう!魔物と戦うのは自分達だけの仕事などと抜かすなよ!ルカ、ヴィクトリー!」

「あ、あぁ……」

「サイキョートリオ結成だぜ……」

 三人は、気を全解放した。ルカとヴィクトリーはなれる限りの最高状態になり、アリスはその場で必要最低限の状態になる。

 初代魔王からの因縁、そして現在の魔王としての職務。それに対し、僕達が横から口を挟むわけにもいかないようだ。

「さっきまでそこで怯えていた分際で、舐めた口を叩きますわ……」

 ベルゼバブ二体も気を全開放してくる。

 戯れの時は終わった。ここからが、本当の勝負。血を血で洗う、凄惨な戦いになるだろう。

 ふと、ベルゼバブCは不敵にニヤついた。

「やはり現役魔王、とんだ出来損ないのようね……この戦──」

 ヴィクトリーがまた、ベルゼバブCの顎を蹴った。今度は彼女の舌が切断され、床にビチャッと落ちた。

「〜〜〜!!!!」

「学習しねぇな、おめぇ。」

「っ!!」

 ベルゼバブCはヴィクトリーと組み合い、ぶつかり合った。

 その横でベルゼバブBとルカとアリスが乱戦していた。

「はぁっ!」

「だあっ!」

「そこだっ!」

 ぶつかり合う拳、剣、尻尾……

「がぁっ!!」

「ぐあっ!」

 ベルゼバブBはルカを殴り飛ばし、アリスの方を向いた。

 アリスは、その彼女に指を向けている……

「生意気だな貴様。」

 次の瞬間、アリスの指から闇の魔力を込めたビームが無数に迸った。

「はっ!」

 ベルゼバブBはそれらを素手ではじき飛ばし、アリスにフルパワーのエネルギー波を放った。

「ふんっ!」

 アリスは、そのエネルギー波をはじき飛ばす。その先には、ヴィクトリーが居た。

「おっ!」

 ヴィクトリーは、ベルゼバブCを盾にした。

「んぎゃあっ!」

「よっしゃあっ!!」

 そしてベルゼバブCの顎を、思いっきりのストレートで打ち抜いた。

「かっ……!?」

 顎を打たれれば、脳は揺れる。頭だけでも人間の形をしている以上、その方程式からは逃れられない。

「ふっ……!」

 ルカはそのベルゼバブCに向かって走り、無数の斬撃を叩き込んだ。

「きゃあぁあっ……!!?」

「どっせいっ!!」

 そして跳び、顔面に両足蹴りを叩き込んだ。

 ベルゼバブCはベルゼバブBに激突し、壁に叩きつけられた。

「ははっ……!」

「やるわね……!」

 ベルゼバブ達は消え、ヴィクトリーに喰ってかかった。

「アリスっ!!」

 ヴィクトリーがそう叫ぶと……瞬間移動でアリスの横についた。

「やれぇーーーっ!!」

「バーベキューにしてくれるわっ!」

 アリスは、指をクンッと上げる。その時、ベルゼバブ達を灼熱の業火が包み込んだ。

「ぎゃあああーっ!!」

「きゃあーーーっ!!」

「終わりだ……!!」

 アリスは助走をつけて跳躍し、両手にエネルギーを溜める。

「ダークネスボールッ!!」

 そして凄まじいエネルギーを込めたボールを、ベルゼバブBに投げつけた。

「そ、そんな……!!きゃ……!!!」

 彼女はそれに直撃し、悲鳴も残さずに消し飛んだ。

「残り一体……」

 アリスは指をボキボキ鳴らしながら、ベルゼバブCを見る。

「行くぞルカっ!ヴィクトリーっ!」

「おおっ!」

「分かってらぁっ!」

 アリスはベルゼバブCと拳を交え、そしてドカドカとぶつかり合った。凄まじいぶつかり合いの末、アリスは尻尾で彼女をぶっ飛ばす。

「きゃあ……!?」

「余所見をするなよ……!!」

 次にルカが切りかかり、ベルゼバブCはそれを避ける。

「そう来る事は……分かっていた!」

 ルカは剣を寝かせ、ベルゼバブCに突きを放った。

 だが、彼女はそれを白刃取りのように受け止めた。

「はぁっ!」

「くっ!」

 そして、二人は姿を消してぶつかり合う。不気味に戦闘音が響き渡り……

「てやぁっ!!」

「ぐぁっ!!」

 ルカが押し勝ち、その胸に斬撃を刻んだ。

「ぐ……!!」

 ベルゼバブCの肩が、不意に叩かれた。それに応じて振り返ってみると──

「おらぁっ!!」

「ぶっ!?」

 ヴィクトリーに、頬を打ち抜かれた。

「くうぅっ!!」

「行くぞぉっ!!」

 そして、ヴィクトリーとベルゼバブCはぶつかり合った。

「ぐ、ぐ、ぐぅうう……!!」

「おらおらおらっ!!それでも太古の妖魔か!!」

 やはり、ここでもヴィクトリーが押し気味にしていた。

「あ、あなた……!!何者なの……!!?」

「俺か……?俺は、ただのサイヤ人だ……多分な。」

「サイヤ人……!?」

 ベルゼバブCの顎が蹴り上げられ、宙に浮かぶ。

「合わせろ!二人とも!」

 アリスはそう言い、拳を掲げた。

「おおっ!」

 ルカも剣を掲げ、そして寝かせる。

「よっしゃあっ!」

 ヴィクトリーも気を解放し、拳を掲げた。

「ま、まさか……!!」

「はああぁーーーっ!!!」

 アリスとルカとヴィクトリーの一撃が、ベルゼバブCにクロスした。

 まさに、粉砕のトリプルアタックだった。ベルゼバブCの組織のほとんどを粉砕したのだ。

「ぐ……ぐ……!!くそ……!!」

 ボロボロになったベルゼバブCの額には、青筋が浮かんでいた。

 三人同時攻撃を食らってもなお、闘志は死なないようだ。

「こ、こうなったら……!!」

 彼女は羽を羽ばたかせ、うるさい羽音と共にヴィクトリーに突進した。

「せめて、お前だけでも殺してやるーーーっ!!」

「なっ……!?」

「あいつ、まだ動け……!?」

「……」

 ヴィクトリーは両手にエネルギーを溜め、ベルゼバブCを見た。

「死ねーーーっ!!!」

 彼女が、手刀を振り上げた時だった。

「10倍界王拳かめはめ波ーーーっ!!!」

 ヴィクトリーは渾身のかめはめ波を使い、至近距離で全エネルギーをぶつけた。

「〜〜〜ッッッ!!!?」

 ベルゼバブCは、細胞一つ残らず滅び去った……

「……ふぅ、終わったか……」

「は、はは……」

 アリスの手助けが無ければ、勝利は難しかった。毎度の事ながら、アリスには感謝だな。

「太古に封じ込められた伝説の妖魔か……」

「確かにすげぇ奴らだったけど、四天王には劣るな……」

「ベルゼバブ達の真の恐ろしさは、異常なまでの繁殖力なのだ。あんな連中が一万匹も一億匹も増えれば、世界が食われ尽くされかねん。」

「そりゃ、確かにとんでもないな……」

「おそろし……」

 あんな妖魔がそんなに増えたら、世界は大混乱だ。キャプテン・セレーネの封印は、世界を救った事になるのかもしれない。

「よっしゃ、パープルオーブとやらを見つけようぜ。本来の目的も忘れるわけにはいかねぇし。」

「あぁ、そうだな……ここが船長室だったっけ。オーブはキャプテン・セレーネが持ってたって言うけど……」

 あらためて、船長室を見渡すと……棚の中に、きらりと光る紫の宝玉を見つけた。

「間違いない、これだ……!!」

「おぉっ!」

 ルカは棚を開け、その宝玉を手に取った。

「よし、これでやるべき事は全部終わったな!」

「ベルゼバブ達も、これで完全に滅び去った。再び世に這い出ることは、もうあるまい。」

 アリスも、初代魔王の代から受け継がれた仕事を終えて満足のようだ。

 こうして一行は、セレーネ号を出たのだった……

 

 セレーネ号から降りて、乗ってきた船に戻る。すると、そこにはセレナが待っていた。

 いや、セレナだけではない。女海賊一同、甲板に揃って僕達を出迎えていたのだ。

「ありがとう、二人とも。あなた達のおかげで、恐ろしい妖魔も滅びたわ。」

「セレナさん……」

「……セレナさん、あんた生きてる人間じゃねぇな……?」

 ルカの言葉を遮り、ヴィクトリーが言い放った。彼女は驚いたような顔をした後、クスッと笑った。

「その通りよ、ヴィクトリー君……私はキャプテン・セレーネの孫なんかではなく、キャプテン・セレーネ本人なのよ。」

「え……!」

「へっへへへ!ビンゴっ!」

「……五十年前、あの箱を開けた私達は即座に命を奪われたわ。でも、私達が目覚めさせてしまった『蝿の女王』……その事が心残りで、あの世に行けなかったのよ。」

「そうだったのか……」

「……それじゃあ、あんただけじゃなくて、ここの皆もあの世に行くことが出来なかったのか……」

 ヴィクトリーがそう言った途端、彼女の体が透け始めた。

「そう……でも、これで心残りは無いわ。ありがとう、ルカ君、ヴィクトリー君。あなた達の旅にも、幸運があらん事を……」

「これで、私達も心置きなく旅立てるわ……」

「感謝するぜ、勇者……」

 そのまま、セレナや海賊達の姿は薄れ……安らかな笑みを浮かべながら、煙のように消えてしまったのだった。

「……」

「……どうか、安らかに眠ってくれよ……」

 太古の妖魔を目覚めさせてしまった責任と後悔……それにより、あの世にも行けずに留まっていた海賊達。

 今、ようやく彼女達の魂も解き放たれたのだ。後は、安らかに眠れるよう祈るばかりである。

「それにしても……まさか、乗ってきた船の方が幽霊船だったとはなぁ。びっくりしたよな、二人とも……」

「あ、確かに……」

「……」

 ヴィクトリーは笑いながら応えたが、アリスだけは返事をしなかった。

「……アリス?」

「アリス?どうした?」

 ふと、アリスを見てみると……

「……」

 白眼を剥いたまま、動かなくなっていた。

「き、気絶してるし……」

「立ったまんま……」

 二人は笑いながら、アリスを揺すったのだった……

 

 僕達の船は、セレナに導かれるような不思議な力でゴルドポートに着いた。これで、オーブは6つ揃った。

 

 よし、次は──

流血表現

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